表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

冬隣には淡い彼らの物語

メモ書き小説16より

秋は快適な気候だ。


空気は澄み、風は戦ぐ。

空は高く、晴れ渡る。


今年、

初紅葉を見たのは、

もういつのことだったろうか。


肌を刺すようになった冷気が、

冬の訪れを予兆させる。


あれだけ綺麗だった

紅葉のグラデーションも

わずかに残るばかりである。


「なにしてるの?」


すっかり隣に居着いた彼女が、

なんとも自然に覗き込んでいた。


「別に」


彼女の目を、

見られるようになったのは、

もういつのことだったろうか。


目を逸らすではなく。

見つめるでもではなく。

ほんの少しの予定された邂逅。


たった数秒にも満たない繰り返し。


心に巣食う暗い自分が、

どこかに消えるような瞬間。


胸に満たす揺らめくものが、

自分をそっと照らすような感じ。


そんな彼女から、

目が離せなくなったのは、

もう、いつのことだったろうか。


自らの内を彩る紅葉は、

どんなグラデーションを、

見せているのだろうか。


それはきっと、

もう姿を見せない秋の紅葉。


美しいようで、透き通らない。


麗らかに晴れ渡る秋。

その場所に二人が居て、

幸せそうな空気だけが包む。


楽しさを見せない、楽しげな彼女。

嬉しさを見せない、卑屈そうな俺。


彼らは歪んだ平行線。

いつか絡み合う二本の糸。




自由な彼女が、

いつも少し先に歩き出す。


慣れた様子で、

彼が後ろで歩き出した。


互いの頬が、

見事な色彩を見せたことを、

また互いに知らぬままに。


今は、彼らに少しの、ほのかな恋物語を。

メモ書き小説17へ続く。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ