ちょっとした夜の想い出
メモ書き小説15より
夕方に降った雨が夜に止んだ。
雨上がりの雲一つない空。
月夜の明かりが照らす空。
星が煌めいて澄み渡る。
いつもの窓から見上げる空ある。
この空には、朝がある。
あの空には、昼がある。
その空には、夜がある。
空の下にはいつも人がいて、人の中に自分が居る。
そして、自分は空の下にいる。
物思いに耽るには、
空の下は十分すぎる環境だ。
考えなくてもいいことも、
ついつい考えてしまうような、
そんな静かな場所なのだ。
秋らしい気配が辺りを包み、
長い夜だけが秋意を思わせる。
開け放たれた窓から秋声を聞く。
戦ぐ風の音と木の葉の舞う音。
秋を感じさせるほどではないが、
遠くにも秋の広がりを感じさせる。
「ちょっと寒いな」
冷気が肌に少し触れる。
夏の暑さがまだ残る夜ではあるが、
日に追うごとにに冷たさを感じるようになってきた。
夏休みが終わって少し経って、
なんとなく気怠い日常が続き、
それでも夜は静かに澄み渡る。
ふと昨日のことを考えて、
また一昨日のことまで考えて、
さらに頭の中の時が遡る。
静かすぎる雰囲気は、
やはり考えなくてもいいことを、
考えさせる空気をしている。
そして頭を切り替えると、
また彼女のことを考えていた。
紅葉を散らす様子を、
未だに見たことのない彼女。
元より上辺の表情のみで、
ほとんど揺れ動かない顔をする。
そんな彼女の顔が浮かぶ。
人には時と場合によって、
色々な顔があるのだろうが。
まぁちょっと見たいなと、思ったわけで。
そんなちょっとした夜だった。