想い落ちて彼らの秋を知る
メモ書き小説14より
一葉落ちて天下の秋を知る。
青桐は他より早く落葉し、
秋の前触れを感じさせる。
もっとも前触れを感じた頃には、
大抵は秋がもう始まっていて,
夏が過ぎ去ったことをまた知る。
しかしながら、
小さな前触れは時として、
物事を予見させ、予知させる。
誰かに何か知らせようとしている。
そんなことを感じさせるのだ。
一枚の葉が視界の端で、
水に浸るように静かに、
地面に優しく落ちる。
「まだ少し暑いね」
雨上がりの水溜りが薄く光り、
落ち葉が弱く舞い上がった。
涼しげな風景とは裏腹に、
残炎がまだ肌に触れる。
「もう少しすれば涼しくなるだろ」
「そうだといいね」
盗み見た彼女の微笑む横顔。
一瞬の時間に見惚れ、
主観に準ずる時間だけ長く思えた。
その時間は必然ではなく、
存在したのだとしても、
別に変化することはない。
それは、可愛らしい微笑み。
ただの笑顔であるが故に、
微熱に踊らされた者が滅ぶ、
あるべき弱点を象徴している。
時として弱点は性質となり、
彼の主観にさえも影響し、
その薄い表情を鮮やかに彩る。
明るく可愛い性格で、
しかしそれを表に出せず、
仕舞い込んでいる彼女。
そんな顔で、
歩いていく彼女を見て。
緩みそうな顔で、
隣を歩みながら彼女を思う。
明るい笑顔が、
とても可愛らしいな、と。
秋の空、
雲ひとつなく澄み渡り、
高く広々とした空が心を映す。
秋の空
大気が澄んでいて、
心も空も高くなるような感じ。
秋高し、空は澄んで高く上がり。
天高し、空の彼方まで心は舞い上がる。
今日も秋空は澄み渡り、
彼らの心を静かに映して、
小さな前触れを知らせている。