暇待つ暇に待ち焦がれ
メモ書き小説13より
秋はいつから始まるのか。
当然のことであるが、
それは夏が終わったらだ。
では夏はいつ終わるのか。
暦の上での立秋は、
八月が始まって少しした頃らしい。
それは正しいが、そうでもない。
高校生の秋は、
二期制でも三期制でも、
だいたい九月が始まりである。
高校生にとって、
暦の上での秋の始まりは、
青春を謳歌する夏休みなのだから。
誰かにとって短くあり、
誰かにとって長くあり、
誰かにとって過ぎる夏だ。
もう遠い昔に過ぎ去ったように思える夏。
茹だるような暑さ思い出しながら、
ほどよい秋の心地に包まれて、
春と変わらない教室から空を見上げる。
この学校には、
席替えという制度がない。
毎日同じ位置に座れば、
見える景色にも飽きるかと思ったが、
意外とそういうことはない。
むしろ、
自分の定位置に居ることで、
少しの安心感を得られるほど。
俺にとってこの場所は、
それだけ親しみある場所になっている。
まだ人の少ない教室から、
朝の空を見上げるのも、
もはや日課となりつつある。
「宿題やった?」
夏の前頃から、
休憩時間の定位置の近くには、
春過ぎても枯れないさくらが居る。
「もちろん」
それは、彼の多く感情を内包した一言。
ふわふわとした想いが宙を舞い、
スッと心に落とし込まれるような感じ。
毎日の話し合いは、
特に生産的なものではなく、
非生産的であると言って過言ではない。
それでも確かに、
何かが生み出されているような気がしていた。
少し時間が空いてしまえば、
物足りなさを感じずにはいられない。
あの日、
頑張ることを辞めた彼が、
ちょっと頑張ろうかと思う程には、
大きな意味を持った時間なのである。
それがない時間は、
果てしなく長く感じられる。
一日三秋とは、よく言ったものである。