4.終点
以降、音葉はずっと沈んだままで。それは二学期が終わっても続いていた。
俺は音葉を元気付けたくて、クリスマスイブにデートに誘った。元々、付き合うようになってから、クリスマスには何かしようと思ってはいたのだ。こういう理由で何かすることになるとは思いもしなかったが。
繁華街に近い公園で待ち合わせしようと電話で呼び出す。
俺はそこに向かう途中で、──神林さんが居ることに気付いた。彼女の視線の先には、地面に座り込む尚康が居て。連中もデートでもしているのだろうと思って、ひと声かけようと気軽に近付いたのだが──様子がおかしい。
神林さんは呆然としていて。尚康は座り込んだまま、ピクリとも動かない。
「……どうした?」
恐る恐る声を掛けると、神林さんはビクッと驚いたように俺を見た。
その表情に、ただ事ではないと感じて。俺は──尚康の傍まで駆け寄った。
「尚康?」
ピクリとも動かない尚康に、不安になる。
尚康の肩を掴んでゆするも、尚康は反応を返すことも無く。
尚康の顔を触ると──既に体温が失われていることに愕然とした。
「おい、尚康っ!」
叩いたりつねったりしても、何も反応が無くて。そして、呼吸も脈も確認出来なかった。
「尚康……死んでるのか……?」
俺は尚康から手を離して、呆然と立ち上がって。
神林さんの存在を思い出して、彼女に振り向く。彼女は、悲しげにこちらを見ていた。
「何が……あったんだ?」
彼女の方に手を伸ばそうとして。それを見て、彼女が後ずさるのが判った。
「君が……?」
彼女が何かしたのか?
じわじわと彼女に詰め寄る。
「来ないで!」
彼女が叫ぶ。俺は、慌てて彼女を捕まえた。
彼女は逃げようとしている訳でも無かった。
ただ、彼女は、俺のことを拒絶していた。
俺は訳が判らず、彼女の肩を諤々と揺さぶるが、彼女は何も答えない。
やがて。
視界がぼやけた。
彼女の姿が霞んで見えて。
そして。
俺は気を失った。




