閑話10.タイムリープ
※神林視点です。
「──そんなことにはさせない。どんな形にせよ、私はあなたを救ってみせる」
いつの間にか駆けつけてきたらしい土原さんの声が聞こえたけど、それどころではなかった。
智哉の手から力が抜け、私の方に向けていた顔が、重力に逆らえなくなった様子で項垂れた。
私は慌てて、智哉の顔を抱え込んだ。
呼吸が感じられない。
「嘘……どうして……!?」
智哉が──死んでしまった。
「──あなたが死なせたのよ!」
土原さんに胸倉を掴まれ、智哉から引き離されてしまった。
「……榊? ねぇ、榊ってば!?」
土原さんの後ろから三城谷さんが現れ、智哉の亡骸に縋りついた。その後ろには、楠見さんの姿も見えた。
「……どういう、意味よ」
ここに土原さんがいるということは。やはり、智哉は──
「何か勘違いしているみたいだけど。あなたが思っている様なことは、何もないから」
憤怒の表情で睨まれる。
だけど、私だって負けていられない。
「じゃあどういうこと? どうしてあなたがここにいるのよ!?」
「榊君を助けたかったからに決まってるじゃない!!」
土原さんは叫びながら泣き出してしまった。
「でも、間に合わなかったから……後は、あなたの力に縋るしかないわね……」
私の力?
「何を言っているの? 私に力なんて──」
「いいえ。あなたにはそれがある。そのことを、私は榊君から教えて貰ったの」
智哉から? 私の知らないところで、智哉は彼女と繋がっていた?
「榊君が入院している間、あなたがいないときに、見舞いに行ったことがあるだけよ。そこで、あなたの力を教えて貰った。あなたの、時間を遡る力について、ね。榊君が、あなたが覚えていないことも知っていると、始業式の日に言っていたのを忘れた?」
そう言えば。智哉は、私以上に私のことを知っている節があった。でも、どうして?
「四の五の言っている余裕は無いわ。あなたに出来ることは、この現実を否定することよ」
「現実を否定?」
「ええ。榊君が死んでしまったことを、否定するのよ。榊君がいない世界を、認めてはいけない。あなたがそれを否定出来たなら。榊君の死を無かったことに出来るのよ!」
私には何のことか判らなかったけれど。土原さんが、ふざけて言っているとは思えなかった。
土原さんに両手を掴まれる。右肩は三城谷さんに、左肩は楠見さんに掴まれた。
土原さんに言われなくても。私は、智哉の死を認めたくなかった。
いいえ、認める訳にはいかなかった。
智哉がいない世界。私はそれを全力で否定した。
やがて。
私は意識を失った。




