10.ループ2
気がつくと、俺は自分のベッドの上で寝ていた。目覚ましに起こされたのだ。
俺は起き上がって、目覚ましを止めた。今、時刻は朝の七時。いつもの時間だ。
既視感。
あれからどうなったのか。
今度も、繰り返しなのだろうか。
カレンダーを確認。やはり四月のページだ。
そして、着ている寝巻きは薄手のものだった。
俺は、また最初からやり直すことになったのか?
再びやり直すことが出来るのか?
それとも、あれはどちらもただの夢か何かだったのか?
部屋を飛び出して、ダイニングのテレビを見る。桜並木が映し出されていて、ニュースの話題も、全て四月の時節的なものばかりだった。
俺は何事も無いかの様に朝食を済ませて、学校に向かった。
呆然としながらも、慣れ親しんだ学校までの道のりをゆっくりと歩いて。
俺は普段よりも遅めに、学校に到着した。
教室に入ると、既に殆どの生徒が居た。
「よっ、遅かったな」
尚康から声を掛けられた。
そこには。
音葉が俺に気付いて、こちらを睨んでいて。
楠見さんは、速水さんと那須さんを相手に談笑していて。
土原さんは自分の席で、文庫本を読んでいた。
俺は。
左手で、慌てて自分の口を塞いだ。叫び出してしまいそうだったから。
そして、我慢出来そうになかったから、教室を飛び出して、男子トイレに駆け込んだ。
個室に飛び込んで、扉に背を預けて。声に出すのを我慢しながら、ただ涙が流れるままに、呆然と立ち尽くしていた。
彼女たちは。まだ、生きている。
それが、俺には何より嬉しかった。
始業式をサボって。携帯電話のスケジュール帳に、これからの予定を忘れないように書き込んだ。
今度こそ、彼女たちを助けなければ。
それが出来なかったら。俺は今度こそ発狂してしまうだろう。
どうにか気持ちを落ち着けて。涙が止まった頃には既に始業式は終わっていた。
俺は教室に戻ろうとして、廊下で神林さんを連れた担任と鉢合わせしてしまった。
担任には始業式に出ていなかったことを気付かれている様子。俺は、
「気分が悪くなって、トイレに篭っていました」
と言い訳した。
俺が涙目になっている様子を見て、担任はそれを信じたらしく、何も言わなかった。
教室に向かう道中、神林さんと目が合う。
俺は彼女の耳元に顔を寄せて、
「今回は、礼を言わせて貰うよ。ありがとう」
小声で話しかけた。
彼女は、物憂げに俺を見て。それでも何も言わなかった。




