緊急依頼、夢のない花園
翌朝
「────で───だ。全員馬車に乗り込め!出発だ!」
ゼルの演説が終わった。
正直に言うと、ほとんど聞いていなかった。
皆が馬車に乗り、馬車が走り出した。
今回の作戦は、馬車で2日程の場所にいる魔物の群れを殲滅するのが目的だ。
馬車で一日進んでそこで一泊して、翌日徒歩で半日移動してそこで待ち伏せして一気に叩くというものだ。
私は今上空で警戒を兼ねて遊覧飛行をしていた。
「やっぱり、この世界は自然が豊かだなーあっちとは大違いですね」
今、私の下には地平線まで続く草原と青々と茂る林があるのだ、それこそアフリカかニュージーランドにでも行かないと見れないような景色が。
私はそんなことを呟きながら手に持った風の弓を引き、風の矢を林に向かって射る
林からオークの頭が転がり出る
更に矢を射る
木が紫色の体液を飛び散らせながら倒れた
更に射る
林から棍棒が飛んだ
「はぁ~、何もいなければ、いい景色なのに・・・」
私は警戒を続ける。
一方ケイトは、馬車で以前買った古文書を読んでいた。
この古文書には約三百年前のことが書かれている
三百年前の「幻獣大量消滅」とか言う仰々しい名前がついてる現象について書いてある。
ケイトはそのまま読書を続けるのだった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
そして日は暮れて…
今回のような大規模な依頼、作戦の場合、冒険者はある程度役割を分担する。
それによりその後集団の中の空気が良くなるかもしれないからだ。
作戦時に3つのグループに別れ右翼、中央、左翼を分担して担当することが移動中の休憩の間に決まった。
一つのグループが大体100人、その100人を十個のパーティー(臨時)に別け、夜営での仕事もそのパーティー(臨時)で行うことになっている。
私達のパーティーは、私とケイトはもちろんのこと、女性五人のランクCパーティーの戦場の華のツバキ・アリシア、アヤメ・アリシア、サクラ・アリシア、ユリ・アリシア、ラン・アリシア
と勿論のことながらアリシアに拠点を置く人間しか居ないから似たような名前が続き…
花の話は置いといて、
あと、三人でランクCパーティーのヴァルキリーを組んでいるユリア=アリシア、マリア=アリシア、キャスリン=アリシアの10人だ。
全員女性冒険者のパーティーであるのは周りの意向とゼルの指示だ。
そして今、私はサクラとユリアとテントの設置をしている。
ケイトとアヤメとマリアは炊き出しをしている。
ツバキとランとユリとキャスリンは警備をしている。
ユリア:「サクラさん、ここ杭刺しちゃっていいですか?」
サクラ:「ちょっと待って、いいよ。フウカさん刺しましたか?」
フウカ:「はい、刺しました」
サクラ:「じゃあ紐引っ張って」
一方ケイト達
アヤメ:「ケイトさん、肉できましたか?」
ケイト:「できたわよ。マリア、スープ出来た?手伝おうか?」
マリア:「後少しで出来ます、手伝いは大丈夫です」
ケイト:「そう?じゃあ、よろしくね」
一方ツバキ達
ツバキ:「何にもいないわね」
ラン:「これだけ人がいますし、さっきフウカさんがそこら一帯に魔法の矢を放ってましたからね、今考えるとあれ何かを 狙ってたように思えて……」
ツバキ:「はぁー暇だなー」
彼女達は、各々のやるべきことをやるのだった。
その夜午前0:00
私ケイトは、サクラと警備をしていた。
「ケイトさんとフウカさんは、どういう関係なんですか?」
「臨時パーティーかな」
「職業面じゃなくて、私的な方で」
「フウカは、私の命の恩人であり、戦友でもあるの」
「命の恩人ですか・・・」
「フウカと出会ったのは一週間前」
「かなり最近ですね」
「カインとジムと臨時パーティーを組んでいた時にオーガの討伐依頼を受けたの」
「カインさんとジムさんですか、どちらも有名人ですね。最近見ませんが何かあったんですかね?」
ケイトは無視して続ける
「そのとき、オーガ5体を相手にしていたの、その前に8体倒していて皆疲れていた。」
「オーガ8体もですか」
「そのとき、呪文を詠唱していたジムが殺されて、心が乱れたカインも殺されて、私一人でオーガを4体相手にしなきゃいけなくなったの」
「一人で4体ですか、良く生き残れましたね」
「そのときに加勢してくれたのがフウカよ。彼女は風の魔法を得意な旅人で鬼人の森まで飛んできたと言っていたわ。私はその後フウカと協力して新たに5体倒したわ」
「オーガ18体ですかかなりの数ですね」
「その後この辺りのこと知らないみたいだったからアリシアまで案内したの途中から私は彼女となら気兼ねなく話せる仲間、身分の関係ない友達になれるんじゃないかと思ったの、それで今臨時パーティーを組んでいるの」
「確かにアリシアでケイトさんと身分の関係ない友達なんてそうそう作れる訳ないですもんね、だってケイトさんは今でこそ冒険者ですが前は辺境都市アリシアの領主の娘ですもんね」
「その事だけど出来ればフウカには言わないで」
「わかりました、言いません。ですがその代わり私と友達になってくれませんか?」
「いいわよ。これからよろしくね、サクラちゃん」
「よろしくね、ケイトさん」
一方、フウカはアヤメさんに抱きつかれユリさんに抱きついていた。
文字通り川の字で寝ていた
午前5:00頃
私フウカはユリと警備をしていた。
「フウカさん達は臨時パーティーだと聞いていますが、これから正式なパーティーにするおつもりですか?」
「今は、そのつもりはありません。私は旅人ですから。それに私みたいな未熟者じゃ色々迷惑をかけてしまうかもしれないし」
「ケイトさんはそんなこと気にしませんよ」
「私には鬼人の森の奥の湖で目覚めた時より前の記憶がありません。わかっていたのは、自分がフウカという名の旅人であるということだけだったんです。なんの記憶も想いも持たない私は、自分が何者で、なぜ鬼人の森で倒れていたのか、何をするために旅をしていたのかさえわからないんです。私が居ることで周りに迷惑がかかるなら、私はすぐにでも…」
「立ち止まってもいいのでは?記憶がないのは、記憶が消える前の自分が立ち止まり休む為のきっかけを作るために消したのかもしれません。それにあなたは自分が何者か解ってるじゃないですか。あなたは冒険者で旅人でケイトさんと臨時パーティーを組んでいるフウカ、それじゃダメなんですか?」
「確かにそうですね。私は過去にこだわってたんですね。過去は過去で現在は現在ですもんね。」
「そうですよ、冒険者はそれぐらいの気持ちじゃないとやっていけませんから」
「ユリさんは、何か悩みとか無いんですか?」
「悩みの無い人間は居ませんよ。私、ときどき思うんです。もっと違う職に就けなかったのか?って、でも今の仲間の方が大切だから辞められないんですよね」
「辞めてもいいんじゃないですか?例え辞めたとしても、それであなたが幸せになれるなら、皆は喜んで送り出してくれると、私は思いますよ」
「私は、たぶんどちらを選んでも後悔するってホントは解ってるんですよ」
「一つの後悔もしないで生きていける人間なんて金持ちのボンボンぐらいですよ」
「そうですよね」
「でも、どうしても決められないなら今を大切にしたらいいと思います。今はもう来なくて、やり直せないかららせめて今を楽しんだ方がいいって昔誰かが言ってた気がします」
「そうですか、いままで先のために明日のためにって生きてきたので考えたこともありませんでした」
「そうなんですか。昔の記憶がない私が言うのもあれですけど、損な人生送ってますね」
「フウカさんがそれを言うんですか」
「もう日が昇り始めたみたいですね。皆を起こしましょう」
朝日は、私にも、ユリにも、そして、いきなりどことも知らない場所に飛ばされたかわいそうなオーガにも平等に朝を告げた。
作者:「何故こんなにもとの世界の花の名前があるかというと、この世界にはカレーと同様にあっちの世界の名前の物も多々ある。そして庶民の間では女の子に花の名前を付けることも少なくないのだ」
レン:「よっ天下一の解説係、案内役、ヤ○チャポジション!でも夢のない花園だね」
作者:「こんなもんでしょ?」
レン:「君の仕事は現実を追求することじゃなくて読者に夢を提供することだからね?」
作者:「夢を提供してるじゃん!ファンタジーなんか夢の中でみる夢だよ!」