連絡待ちの噂
作者:「最近忙しくてちょっとの間お暇を頂きました。これから就活なんでちょくちょく更新途絶えると思いますけど御容赦下さい」
レン:「在学中に終われるの?」
作者:「ま、たぶん無理だと諦めてるよ」
「暇ですね」
一周目の1月2日、世間はまだまだお正月ムードで、若干寒さを忘れる為にどんちゃん騒ぎしてる印象すらある。
地方巡業ならぬ相転移門開通の為に国中を
回る予定の私なのだが、肝心の設置場所について王都も含めて全然決まっていなかったからその辺の調整待ちなのだ。
で、特にやることもなく暇を持て余していたのでソウジ君の魔法少女ゴッコに手を貸す事にしました。
「フウカ、別に暇だからって晒し者にならなくても良いと私は思うのよ」
創着の術の練習をしていると、ケイトにそう言われた。
「いや、別に晒し者って訳じゃないですよ。暇つぶしですよー変・身」
まずはエルさんに身体特徴共有の術で角質層の構造を寄せる。
「のー、なんで我なのだ?リンの方が性別的に近いだろ…」
「エルさんの、硬質な羽毛は魅力的ですよ」
さっそく私の産毛が羽毛に代わり始める。
「魔法少女ゴッコなんだろ?ゆるふわ系に寄せた方が良いだろ」
「ゆるふわ系って…こんな感じですか?」
ふわっと羽毛が繊維に切り替わり、白いフィッシュテールのドレスになる。
「うーん、まあ確かに似合う。似合うけどさ?態々晒し者にならなくても良いんじゃないかな」
魔法少女って言うとパニエのイメージで、もっとフワッとしたカラフルなドレスのイメージだし…私って言えば風、黄緑かな。フィッシュテールは残して……
「んー、こんな風かな?」
フワッと服が形状変化してドレスは薄黄緑に変化して、スカートの下には真っ白なパニエ。胸元も金属パーツでちょっと装飾して黄緑の外側の下の白地がところどころ見えるようになる。
腕にも白地の上に黄緑と金属装飾を施したデタッチドスリーブを作る。ブーツも色を合わせて上の方のパーツを黄緑にしてタンと呼ばれる靴紐の下、足の甲から上を抑えるパーツを白に紐は黄色で足の甲の周りから踵まで白にした。
「髪飾りは…ちょっとだけ身体特徴共有して羽を…」
左の前髪の一部が羽になって後ろ向きに跳ねる。
「こんなとこですね」
「うん、可愛い。こんなとこ見せたらすぐ悪い虫が付いちゃうから。そんな可愛い格好して外なんか出るのはダメだからね?」
「ダメなんですか?刺客、頑張って考えて作ったんですよ?」
「フウカのセンスが良いのは前から知ってるから、ね?」
「はーい…じゃあV作戦で協力します」
「なにそのV作戦って」
『V作戦とは某公国軍に対して人型起動兵器の開発分野で遅れをとったことで押されぎみだった某連邦軍が戦局を覆す為に人型起動兵器とその母艦を配備する計画の名称です!』
『メイ、それほんとに言ってるの?フウカがソウジ君の手伝いで人型起動兵器と母艦を手配すると思うの?』
『ルミ、フウカならやるかもしれないわよ?』
「(違いますよ)VはVillainのV、つまり悪党作戦です。リン、おいで」
「はーい。なんですか?」
「この前の胃袋を掴むシチューの時の疑似魔法生物生成魔法の事を覚えてる?」
「はい。鍋に対して魔法によるイメージと意味付けを行うことで概念を固定化して物質を魔物に昇華させました」
「それを行えば理論上は魔物は作れます。なので魔物を使った悪役怪人を用意すれば、簡単に噂を広げられます。人間相手じゃないので、全くの遠慮なしで殴れますし観客も盛り上がります」
「この前のアレは遠慮なかった気がするわよ?」
「あれは他にギャラリーが居なかったからですよ。街中それも人目があったら絶対躊躇しますから」
「いや、街中で怪人を拳でボコボコにする魔法少女って良いのかの?確か一応は戦闘行為禁止だろ?」
「怪人相手なら仕方ないですよ。実際、街に魔物が侵入したら冒険者とか警備兵が総出で討伐するでしょうしね」
「フウカ、一応町の中では魔物は作れないようになってるのよ?」
「できましたよ?恐らく妨害魔法の類いなんでしょうが…術者の概念優先度が私より低いから影響がないんでしょうね。試しに実演してみましょうか『集え、集え、暴虐の意思。その肉体は鬼のよう。その膂力は鬼のよう。その容姿は鬼のよう。その糧たるは人の恐れ。その糧たるは私の許し。突き動かすは礼を受取り消え行く命。我が魔力と椅子をより代に今ここに顕現せよ デモニックオーガ』
私の掌で練り上げられた魔力、それも結晶化寸前の濃密な半固体のそれをすぐそこの椅子に塗りつける。
「いや、流石に椅子じゃ無理よ。責めて死肉か人形とか要るでしょ」
「大丈夫だと思います。変質が始まりました」
私の見下ろすその半固体の魔力だったそれは今は肉のようになり、椅子に根を張り、まるで心臓のように脈打っている。
「ねぇ、コレでいいの?」
『我が許そう、ここに間もなく姿を成せ、顕現せよ』
肉がビクリと震えて、椅子を一気に呑み込む。
そして瞬く間に体を成長させて鬼となり、私を見下ろしてくる。身長が高いな。
「フウカ、大丈夫なのよね?これ、襲ってきたりしない?」
ケイトはポーチから取り出した短杖を握り締めている。
「オーガ、お座り」
オーガが床に跪く。
「これからあなたの忠誠を確認するゲームをします」
オーガは頷く
「右手上げて」
オーガは右手を上げる
「左手上げて」
オーガは左手を上げる
「右手下げて左手そのままで右手を前に出して」
オーガは言われた通りにした。
「うん、完璧。休んでよし!」
オーガは立ち上がると後で手を組む。
「忠実な僕ですよ」
「我はどうかと思うぞ?そもそもマッチポンプだし、魔物とは言え命のあれば魂だってある。それを生み出して使い捨てにするのは気が引ける」
「じゃあオーガに聞いてみましょうか。傾注!今からあなたに質問します」
オーガは頷く
「あなたは私のために死ねますか?」
オーガは頷く
「だそうです」
「うん、なんだろう…オーガを殺したことは結構あるけどこうやって物のように使い潰させる運命にあるオーガを見ると、可哀想に思えちゃって…」
「じゃあケイトはどうするんですか?このオーガを飼うんですか?養うんですか?」
「いや、それは流石に怖い」
「じゃあ放り出すんですね。その結果このオーガはソウジ君の本気の蒼龍鋭鱗斬で真っ二つにされて息絶えます」
オーガが頷く
「お主、もう少し自分と言うか意地と言うかはないのか?」
オーガは反応しなかった。
「我もフウカの眷属だぞ?同僚だろ?」
オーガは反応しない。
「おーい、ちょいちょい、我のことわかるかー?」
オーガは見向きもしなかった。
「フウカ、これ大丈夫なの?」
「さっきも言いましたけど、擬似的な生物を作る魔法です。魔法という形で世界の理に呼び掛けて、願いを成就し想像を具現化したんです。」
エルさんとオーガはフムフムと頷き、ケイトは首をかしげる。
「そこには私の想像した行動も含まれますが、それはあくまでも私の魄を介して魔力に伝わった残響による物で彼らには魂がありません。どちらかと言えばプログラムで動くロボットや簡単なゴーレムに近いですね」
「だが、重雪には恐らく心があるぞ?あれは太古のゴーレムだが、魂魄がないなどとは欠片も思わんが?」
「重雪さんはソウジ君と魔力的な繋がりがあるので、ソウジ君の魂魄の演算領域を間借りして魔力経由で反応しているんでしょうね。私の脳内会議と同じでしょうね」
『うん、確かに形式上は近いところですね』
『あたしたちは魔力を介してフウカになんか言うとかしてるつもりないぞー』
『まあ、あくまでも魔力は伝達のための手段、糸電話の糸みたいな物よ。私たちはお互い耳許で話してるようなものだから必要ないの』
『なるほど?』
『魂の演算領域って他人の魂三個よ余計に演算できるほど大きいんですか?』
『まあ、なんとでもなるんじゃない?』
で、話を現実に引き戻すと
「でも、重雪さんの前例があるから魂があるとかないとかの問題でもないでしょ?」
「こいつもお主の魂に接続すれば重雪のようになるだろうし」
『フウカ、あなたの容量はもういっぱいよ』
「それが無理みたいです。色々抱え込んでるのでもう容量がないみたいです」
「でも何て言うか、やっぱりこうして生き物だと認識しちゃうとそう簡単に割り切れないわよ」
「そうですか…ごめんね。ありがとう、次はいい人の所に生まれてね」
私はオーガの首に手を絡めて、そっと頬にキスする。
「ちょっとフウカ!そう言うことを私以外にするのはちょっと」
「これは必要な儀式なんですよ」
オーガの体が淡く光って崩れていく。
「なんか崩壊しとるぞ」
「そう言う魔法です。私のお礼を聞くと崩壊して元の魔力と元素に戻っちゃうんです」
オーガはみるみる光と散っていき、最後には椅子だけが残った。
「なんと言うか非人道的な魔法だな、倫理観がまるでないぞ…」
「酷い言われようです」
「フウカ、これは言われても仕方ないわよ」
そんなこんなで、街に怪人が出現するようになった。
△▼△▼△▼
ミーナは繁華街に現れたマジックハンドの群体からなる怪人、オレノモノダーと対峙していた。
「出たな!怪人オレノモノダー!人の物を勝手に盗るなんて神と神とフウカさんが許しても私が許さない!」
もちろん名前は私がつけた。
◇◆◇◆◇◆
ジン:「いや許した覚えないんだが」
レン:「僕も」
◆◇◆◇◆◇
オレノモンダーは付近の冒険者から奪った装備に、付近の商人から盗った商品に、付近の住人から捕った人質を、文字通り持っていた。
「蒼龍の加護よ!」
さっそく変身してポーズを決めたミーナに、ヤジが飛ぶ。
「あ、女装野郎だ!」「セイ様のご側室が戦ってルゾー」「頑張れよ、秩序の魔法"少女"っ!」
一方でミーナは一瞬顔をしかめた。
その顔から察するに
『今は完璧な女の子だから女装じゃないし』って心の中で言い訳していた。
「蒼い鱗は秩序の印。秩序の魔法少女ミーナ!」
ミーナはヤジに怯んだものの名乗りを終える。
そしてオレノモンダーをすっと見据える。
「(すぅっ…)一瞬で粉微塵にしてやる」
ミーナは蒼い拳をオレノモンダーの腹に撃ち込む。
所詮はバターと砂糖と卵と小麦粉に気持ちばかりの魔法を掛けて、ラスト一枚のクッキーを求める欲望をかき集めて作って練り上げてオーブンで160℃で11分焼いて作った怪人だ、その体はとても脆い。
怪人の腹は宣言通りに粉々になって後方へと飛び散った。
しかし、このぐらいではどうと言うこともないのがマジックハンドの強いところだ。
オレノモンダーに再び粉々になった体が集まって穴を塞ぐ。そして彼らは群であり個である。
故に各々に分裂して掴み掛かる事もできる。
バラけた手が続々とミーナの四肢に掴み掛かる。
「こんな可愛い、女の子に、そんな卑猥な手付きで掴み掛かると、痴漢で人生、ぶっ壊されるぞ!」
ミーナは迫り来る数多の手を蒼い装甲で覆われた拳と脚と肘で粉々に砕き、撃ち落としていく。
しかし、欠片は無限にオレノモンダーに集って、ひたすら再生と分裂を繰り返す。
「きりがないし、早いけど仕方ない!私の必殺技を見せてあげる!」
「おおっ、蒼龍逆上撃だろ?」「無駄だろそれ」「と言うかなんで普通に魔法使わないんだろ魔法少女なのに」「使うとソウジだってバレちゃうだろ?今はミーナなんだからそこは隠さないとな」「いやお前がバラしてるよ」「アハハハハ、そだな!」
ヤジが五月蝿かった。
「蒼龍・呑喰咬撃!」
ミーナの左手に鱗が集り、瞬く間に肉を膨れ上がられせて巨大な龍の頭を作る。それこそ怪人の上半身を丸呑みにするような大きさだ。
そこからは早かった。再び飛んできた手を残らず龍の頭が喰らい取り込み、オレノモンダーを喰い千切り、平らげた。
「無秩序なんかに秩序の魔法少女は屈しない!」
ミーナは龍の頭となった左手を掲げて勝利を宣言し、私はオーディエンスにバレる前にさっさと撤退するのだった。
▼△▼△▼△
で、私達は今回の魔法少女ショーの成果について祝杯を上げた。もちろん私の腐るほどある金貨の山からお金は出ている。
「上手く行きましたね」
「ちょっとヒヤッとしましたよ?あれで良いのかは怪しいですけど」
そう言うソウジ君はタイムリミットがまだらしくまだミーナだった。
「なかなかの盛り上がりみたいね。さっそく新たな魔物『怪人』現る!って話題になってるわよ?」
ケイトはさっそく刷られた号外新聞をテーブルに広げる。
「そりゃ、騒ぎにはなりますよね。町の中に侵入できる魔物は存在しません。居ても門や空や壁から入ってくるのでわかります。しかし、怪人は町の中にどこからともなく湧いて出た。原因もわからずどこに現れるのかも不明な怪人の存在は人々を恐怖のどん底に叩き落とすでしょうね」
実際、怪人は私が魔力を練って素材を与えて生み出している。
イメージにも寄るがその気になれば何体も同時に作れるから、私一人で軍隊を相手取る怪人軍団を用意することも難しくはない。手間ではあるし、私が直接赴いた方が話は簡単なのだが。
「でもフウカ、これホントに問題にならない?」
「大丈夫ですよ~怪人は全部私の一言で消えるんですから。野生の怪人でも生まれない限りは問題ないですよ。それが生まれたとしても新種の魔物ですからギルドがなんとかしますよ」
「フウカさん、今の発言はフラグじゃないですか?」
「ソウジ君、フラグなんてこの世にはないんですよ」
こうして私達の二日目は過ぎ去った。




