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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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お雑煮を作りました

早朝、魔法少女?によりボコボコにされた男性とそれをボコボコにした蒼龍少女を名乗る亜人の少女の噂は裏から表から駆け巡っていた。あの少年はソウジ君に言われた通りに各所でその話を広めたらしく噂になりつつあった。


『このくそ寒いのに袖を千切る変態が出るんだってさ!』


『なんだそいつ、頭おかしいんじゃね?』


主にノースリーブについてでしたが…


「少年よ~、どんな噂の流し方したんだ」


ソウジ君は額に手を置いてから、ため息をつく。


「ソウジ君、そんなに噂の魔法少女になりたいんですか?」


「どうせなら、ちょっと有名になってみたかったんです!」


「"ちょっと有名に"ね~ソウジ君、言っとくけどソウジ君にしてもフウカにしても、充分有名だと思うわよ?」


「そうですか?私はそんな自覚ないですよ?別になんか噂とかになった覚えもありません」


実際そう言う噂を聞いた覚えはない。

ケイトの仲間で、そこそこ成果を挙げてるから注目はされてるらしいけど…


「そりゃ、本人の居るところで噂するようなまぬけはいないわよ」


「え、俺なんか噂になってるんですか?」


ソウジ君はテンション高めでした。

日頃の生活で承認欲求が満たされていないのなら、少しは気にかけてお礼を言うべきなのかもしれない。


「なってるわよ?最初は『ケイトパーティーの黒一点。彼はハーレムの主となれるのか』とか言われてたけど、最近は『セイと会瀬重ねる、男色なら女パーティーでの生存も納得だ』とかね?」


「…え、酷い噂だ。とんでもない風評被害だ」


「ソウジ君、セイさんとイチャイチャしてるからそう言うことになるんですよ?」


「イチャイチャって…イチャイチャしてるのは女性体の時だけですよ~」


「あそうそう、ソウジ君の変身についてはもう正体がバレてるみたいよ?」


「え…なんで?」


「ほらほら、希に居るでしょ?条件を満たすと変身して容姿が変わる人。そう言う人が変身しててもギルドを使えるように変身時の容姿を登録情報に追記できるのよ」


「えっと…つまり?」


「アリアが、そのままじゃ不便だろうからって追記してくれたんでしょ。容姿の記録もギルドカードの記録映像で確認できるし…」


ソウジ君は胸ポケットからギルドカードを出す。


「そんな機能初耳なんですけど…」


「まあ、登録情報に追記されたからそれが広まったんだろうね。ソウジ君は注目されてるから」


「うわぁぁ…ってことは今朝のあれも?あぁぁ…」


「安心してソウジ君、町の皆もソウジ君だしなって考えて気にしないでくれるわよ!」


「あー……俺の風体がぁ~」


ソウジ君は膝をついて、遠くを見つめ始めた。


「ケイト、私の噂は何があるんですか?」


「そうね、夏の頃は私の新しい女だって言われてたわ」


「間違いではないです。今も…そうですし…」


「フウカは可愛いなー、ぎゅーってしたくなっちゃう」


私は特に抵抗することもなくケイトの腕の中に収まる。


「ケイト、町中でちょっと恥ずかしい…」


「良いじゃん、見せつけてあげましょ?皆、フウカの可愛さを知らないからあんな噂をできるのよ」


ケイトは純粋な膂力だけで私をお姫様抱っこして歩き出す。


「さすがケイトさん、カッコいいですよ」


「でしょ?腕力には自信があるのよ」


「それでフウカさんの噂ってなんですか?」


あっという間に立ち直ったソウジ君はコートの裾の汚れを払い落としている。


「そうね、簡単に言えば性悪女とか詐欺師とか腹黒とかってさ」


「間違いではないですね…そう言うことしましたし…」


「あー、百万枚マッチポンプ…」


「他にも領主からむしりとったり、ゴロツキからむしりとったりしてるのが広まっててね」


ケイトは少し悲しそうな顔をした。


一方で私の脳内会議もとい魂魄会議ではと言えば…


「やっぱりフウカは色々やり過ぎたんだと思うね。でもフウカの心は私達三人で構成されてるんだからこの中にそう言うひねくれた性根の人が居るわけですね」


「ルミにしては珍しく理屈が通ってると思うけど、それは私かアイさんのどちらかの性格が悪いって言いたいの?」


「そうだけど?…言っちゃダメだった?」


「アイさん、どう思います?」


「まあ、ルミちゃんの言うことも一理あるかな。お仕置きはまた後で考えるとして、やっぱりメイちゃんじゃないの?」


「私は違いますよ!?もっと善良な科学者ですから!!」


「それは私がマッドサイエンティストって言いたいの?」


「いや、そう言う訳じゃなくてですね…」


「どう言うわけ?」


三人の内で一番性格が悪いのは誰かで言い争っていた。


あっという間にアイーシャの誘導に掛かったメイは防戦一方だったのだが、後の圧力に気づかないルミが一言


「やっぱり、アイさんが一番性格歪んでて卑屈っぽくて陰湿っすよね」


と言ったことで、後程のルミのお仕置きとアイーシャの性格の悪さが確定した。


▲▽▲▽▲▽


そして、一周目の私達が出てったのを見計らって家に帰ってきた。


「ただいまー」


「あ、皆さん。どこか行かれてたんですか?」


まるで玄関で待機してたかのようにソフィアさんが出迎えてくれた。


「ちょっと町にね」


「そうでしたか。私は勝手ながら泊めて貰ったお礼も兼ねて軽くお掃除をしてました」


「別に気にしなくて良いのに」


「ケイトさん、そう言う訳にも行きませんよ。昨晩はご馳走になった上、泊めて貰って、何もなしでは私が許せません」


「そう?でも無理はしなくていいからね?」


「ケイトさんとフウカさんはこのあとは…その…えっと…営まれますか?」


ソウジ君が口元を抑えて笑いを堪えている。


「営みって…別にしないわよ。こんな昼間からその…ね?愛し合うようなことはさ…ね?」


「なんで俺の方を見るんです?」


「なんでもないわよ。でもソフィアもなんで突然そんな発想に?」


「だって、お二人の格好が…わかりやすく恋仲同士のそれだったのでこのままベッドの方に行かれるのかと…」


私は未だにケイトに抱えられていた。


「あ、そう言うこと…大丈夫よ?刺客ソフィアが掃除してくれた部屋をいきなり汚したりしないわよ。それにね?フウカが部屋を汚すと資料がってうるさいからね」


「あ、フウカさんのお部屋は…触って大丈夫かいまいちわからなかったので触らずに床とベッドの掃除だけにしときました」


「賢明です。下手に触ると怪我しますよ」


「それとソウジ君!」


ソフィアさんの目線がより厳しくなる。

ソフィアさんも大概な女好きだ。


「は、はい、なんですか」


「お昼ご飯はなんですか!」


「あ、そっちの話ですか。(そして俺が作ることは既に確定してるんですよね…)お正月ですしお雑煮にしようかと」


「オウゾーニ?」


「お雑煮です、ご飯を潰して作る餅とか色々入れて煮る料理です。今回は材料が足らないのでアリシア風ですが…」


「はへー、ご飯を潰しちゃうんですか…ぐちゃぐちゃになっちゃいそうですね」


「あ、じゃあソフィアさん一緒に作りましょうか」


「え、私でもできるんですか?」


「まあ、大変ですけど簡単ですよ?」


「言ってる意味がわかりませんが頑張ります!」


そんなこんなで、ソウジ君はソフィアさんと餅をつくことになったのです。


▽▲▽▲▽▲


で、私とケイトは食堂のテーブルを脇に寄せてそこそこ広いスペースを作った。


そこにソウジ君が氷で作ったと思われる透明な臼と杵を持ってきて、ソフィアさんがお釜からご飯をありったけと大量の水を持ってきた。


「材料はモチモチ感の強い米と水です!」


「ソウジ君、重大な欠陥があると思います。その米はうるち米に近いので餅には不適格では?」


「フウカさん、この米はうるち米ではありません!この世界のお米なので正確にはエリアス米です、成分分析とかはできませんが…うるち米より若干粘り気が強いような気がします!それにうるち米で餅をつく地域もあります、問題はないでしょう!」


「まあ、良いですけど失敗したら…ちゃんとソフィアさんに謝ってくださいね?」


「フウカさん、お忘れかもしれませんが今日のお昼ご飯については既に結果が出ているんですよ。なので俺は今回は失敗しません。と言うかこの家で料理するようになって俺が失敗したことありますか?」


一同考える。


「そう言えばないかも…」


「ソウジ君のご飯はだいたい美味しいからそれが普通になってたわ」


「信頼でハードルが高くなるやつ…」


「まあまあ、ソウジ君はこれでもアリシア屈指の料理人ですし!」


ソフィアさんが太鼓判を押した。


「それじゃあソフィアさん、やっていきましょうか!お米は蒸し上がってるので、先ずはコレを杵…そのハンマーで押して潰します。まとめる感じで」


「は、はい、こんな感じですか?」


「一纏まりになるまで潰したらついていきます。基本動作は重力に任せて杵を落とす。勢いよく叩くと言うよりぐっと力強く潰す感じですね」


「はい!」


「数回叩いて広がったら俺が折り畳みます。畳んだらそれを平らにするイメージで叩きます。米が杵に付くようなら水をつけてください」


「あ、はい。長丁場になりますが頑張りましょう!」


そのあとはひたすら…

ペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタン畳んでペッタンペッタンペッタンペッタン──────


ソフィアさんはそろそろ30分ぐらい杵を降り下ろす動作をし続けており、少しと言うかかなり汗もかいて、目に見えて疲労していた。


「はぁっ…はぁ…ソウジ君っ、コレってあと何回…」


ソフィアさんは重い杵を餅に落として、持ち上げる、餅に落として持ち上げる、餅に落として…持ち上げる。


「まだまだですねもっとお米の粒がなくなるまでつきまくりますよ。はい、どうぞ」


そんなソフィアさんに対して、非道にも涼しい顔で餅を返すソウジ君。


「はい!」


ソフィアさんはヘロヘロの両手で杵を持ち上げて、落とす、持ち上げて、落とす、持ち上げて、落とす、持ち上げて、落とす…


「はい、どうぞ」


「ソウジ君…」


ソフィアさんは餅を付きながら、息継ぎの合間に言葉を紡ぐ。


「そろそろ交代…」


「限界ですか?」


「もう無理ぃ…」


そして杵が餅に刺さったまま、ソフィアさんの手から抜ける。


「手がぁーぷるぷるしますー」


ソフィアさんは床に仰向けに転がって、ピクピク動いていた。


「ケイトさーん、次お願いしまーす」


「どっちやれば良いかしら?杵?合の手?」


「じゃあ、合の手お願いします。俺もそろそろつきたい気分だったので」


ソウジ君は杵を片手で軽く振る。


「ハンマーはハンマーで悪くないな」


ケイトは手早く餅を返す。


「ほら、早くついて」


ソウジ君がつく。


「そうですね。急がないとお昼になっちゃいますね」


ソウジ君とケイトはテンポ良く、リズミカルに餅をつく。

なかなかのコンビネーションだと思いつつ私は若干不満に思いながらそれを見ている。


理由は一つ、ソウジ君が私を避けたこと。


恐らくソウジ君は私が料理下手な事を考慮してケイトを選んだのだ。私でも餅をつくぐらいの簡単な作業はできるのに!


ただ、ソウジ君とケイトの餅つきはやっぱり早くて、そのうちケイトの手が杵でつかれるんじゃないかと思うぐらいだった。


「早いわねソウジ君」


「ハンマーには少しだけ心得があるんですよ!」


「ケイトさんこそ熱くないんですか?」


「私はこのぐらいの熱さは慣れてるからね。野営するときとか態々鍋つかみなんて持ってかないもの」


そうしてできたお雑煮は普通に美味しかったです。

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