年始初仕事
新年一発目の仕事は、国王陛下から直接受けている依頼である相転移門の設置、引いては相転移門を用いた運送ネットワークの構築が今回の仕事の内容となっています。
「一番面倒でした、集積地となる都市において門を設置、管理するための土地についてはヴィンス陛下のお陰で根回しが終了したとの報告が今しがた届きました」
私は今しがた届いた書状を片手に、談話室で集まった面々に現状報告する。
「じゃあ、暫くフウカ君はお出かけかな?ってなると暫くは僕もお手伝いはできないかな?」
「そうですね、今回の件はケイトもソウジ君も協力お願いします。で、程ほどの期間家をあける事になり、その間に家を管理する人間が必要ですし、いくら急ぎの案件とは言え私達もそんな連続勤務はごめん被る話なので…ソウジ君!」
「へ?俺ですか?」
「私達はこれから一日を二周して依頼遂行と休日を両立させます」
「あと迅速に進めることと機密保持をそれぞれ確固たる物とするためにも今回ソウジ君には沢山働いて貰うと思います」
「あー、はい。わかりました」
「備考ですが、今回は書状を見せれば結界の貫通や各町の関所を無視する事について許可が下りました。それと当該都市の責任者が拒否した場合は報告は必要ですが、その場で反逆罪を適用して黙らせる権限が付与されるみたいですね」
私は読み終えた紙束を机に放り投げる。
「なんか権力で完全武装ですね」
「国家権力って素晴らしいです…金と女はもうあるのでホントあとは地位と権力だけですね」
「金と女ってフウカさんの場合は男なんじゃ」
「それもそうですけど、男が沢山並んでてもゾッとするだけでしょ?一人で十分ですよ。ケイトはなにか意見ありますか?」
「そうね、あんまり早く済ませるべきじゃないかもしれないわよ?」
「そうですか?」
「今後、良いように使われないためにはね?」
「でも、私としては国王陛下といい関係を築ければ国内では不自由ない生活が約束されると思いますよ?もちろん結婚も含めてです」
「はぁ…なるほどね。フウカは国内で同姓婚を認めさせるつもりなのね」
「はい、どうせならアリシアだけと言わずゼレゼス全域で認めさせて新婚旅行も楽しく行きたいので!」
「なんか、突然乗り気ね…」
「さてと、そうと決まればさっさと出発です、翌朝起きたら出発する私達に合わして私達も24時間戻りますよ!」
こんな感じで私達の旅は開始された。
▲▽▲▽▲▽
まず訪れたのは王都の指定された広場だった。
「そこそこ広いですね、先にどこにどこの都市の門を置くかを決めときたいですね。ここに置く門は15枚、若干手狭ですね」
「ここ、交通が集中することを考えると設置の仕方を考えた方が良いですね」
「私も同意よ、ここに普通より若干大きめの馬車が何台も並んだら、どうしようもなくなるわよ?」
「ってなるとさっそく管理を担当する予定の方に考えて貰わないとですね」
私は書状を広げて提げて手招きして立ってる衛兵を呼び寄せる。
「はい、なにかご用でしょうか?」
「ここを管理する担当者に取り次いでください。ここは今後交通の要となります。深刻な交通渋滞が予想されますので、実質的な交通整理および門の管理の方法と一緒に門の配置について至急考案して下さい。と」
「はっ!」
「すぐに!行ってください」
衛兵は走って行った。
「はぁ、こんなことなら設置する場所とその管理方法について各領主に予め考えておいて貰うんでしたね」
「一度戻りますか?」
「変えるとどうなるかわからないのでこのまま進めます。ただし、先にヴィンスさんとミゼリアさんには連絡して協力をお願いしましょう」
「フウカ、すっかり仕事の顔ね」
ケイトは肩をすくめた。
「当然です。この仕事をさっさと片付ける必要があるので」
私は王都の設置予定地に踵を返し、改めてアリシアの相転移門近辺…ようするに領主の館の前庭に転移した。
「さてと、私はこのままエネシスに向かいます。ソウジ君とケイトはヴィンス様に事情を説明してきてくれますか?」
「良いけど、フウカが直接行った方が良いんじゃない?」
「ヴィンス様は聡明な方なので、私程度が考えてることは既に想定済みだと思うので大丈夫ですよ」
こう言って私はさっさとエネシスへと転移した。それも、ミゼリアさんの執務室の手前に。
「お邪魔します」
ノックと同時にドアを開けると、ミゼリアは書状と地図とにらめっこしていた。
「フウカちゃん、これはどういうこと?」
「どうもこうもないですよ。グレイス陛下の指示ですよ。国をあげての依頼なので国家事業とも言えますか」
「これじゃ弱点を作るようなものじゃない?」
「それは私も危惧しましたが、有効な生命線を作ると言う事でも有効だと判断しました」
「有効なって…グレイスはリスクよりリターンを選んだってこと?」
「恐らくはリスクとリターンを取ったんだと思いますよ?」
「リスクを取った?」
ミゼリアさんが微妙な顔をして、机の端から裏紙を取る。
「説明してくれるかしら?」
「そうですね。まず相転移門による輸送網を仮に運送ネットワークと呼称してます。」
私は先ずは大きな丸を三つ、それぞれゼレゼス、アリシア、エネシスと書き込む。
さらに周りに幾つか少し大きな丸を書き込み、その周りに小さな丸を書き込み、それらを丸で囲って南ゼレゼス王国と書く。
「主要となる三都市とそれらの近隣の中規模都市と更に小さな街や村があって、それらを組織的に繋ぐ物が相転移門で、それらの組織体が運送ネットワークです」
「つまり、街や村に上下をつけて組織化して門で繋ぐことで機能性の高い軍隊のような系譜を作ると」
「まあ、平たく言えばそうですね。全ての村や街を相互に繋がない理由は単純でそれをするには土地も人も足りないからです」
「土地ならあるでしょ?」
「ミゼリアさん、軍事転用可能な施設を野外にでも放置するつもりですか?夜盗とか魔物に利用されますよ。なので管理する必要があります」
「管理…ってなると全部おいて見張りを立てて、交代制で四六時中監視するには…」
「監視するだけじゃなく、通行の整理なども必要でしょうね」
「じゃあ、ようするに人が足りない訳ね」
「話を進めますよ。こうして組織化して道を整えて置くことで効率的に管理、運用できるのはもちろんですけど、この道の通りに敵が入ってくるなら待ち伏せして迎撃するのは容易いと思いませんか?」
「確かにそこから入ってくることが分かってれば、出てきた頭を叩くのは簡単だけど察知できなかった場合とか相手が暗殺者だった場合とか」
「それについては魔導街道建設の際にも話が挙がっているのではないですか?例えば潜在的な暗殺者への対処は騎士の仕事であり、建築士や運送業者の仕事ではない。とか…むしろ外に出ずとも移動できる点では魔物の脅威を完全に払拭できます」
「逆に末端の村落から直接強力な魔物が侵入してくるそう言う事態についてはどう説明するつもり?」
「あらかじめ都市部に救援を要請できます。早く情報が届くんですから早く戦力を用意して準備ができます。それに最悪、門を停止すれば魔物の侵入は防げます。タイミング次第では真っ二つにできるある意味最強の待ち伏せ兵器です。正直に言えば私の持つ最強の武器の一つを国内に格安で配備するような物ですよ?」
ミゼリアさんはなんとも微妙な苦笑いを浮かべる。
「それで私には海浜領内の運送ネットワークの構築をしろと?」
「各領主への説得とエネシスの相転移門の管理のための設置位置の決定もなんですが…、小規模な村や集落についてはその地域の大きな都市の領主に任せても構いませんので早急にまとめて、設計と整備に取りかかってください」
「そんな急に言われたってできないわよ」
私は空かさず書状を取り出す。
「国王陛下はやれと仰せです」
「はぁ、それもこれも戦争のためってことね」
「そうです、私が肩凝りから解放される日も近いんです。その為に無理にでも協力をお願いしますよ」
ミゼリアさんは物憂げに窓の外に視線を向ける。
冬の海は若干荒れ気味で、寒々とした雰囲気を醸し出していた。
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一方アリシアでは俺とケイトさんはヴィンスさんの執務机を挟んで説明を終えた所だ。
「フウカ君がエネシスにか…ミゼリアは不運だな」
ヴィンスは窓辺に立ち、外に哀れみの目を向けた。
「それでお父さん協力してくれるかしら?」
「曰く、相転移門の管理施設の設計とネットワークの構築の為の根回しと情報伝達をして欲しいとのことで」
「ああ、その件に関しては内々に実は計画を進めていたからな。直ぐにでも計画を加速させよう」
ヴィンスを尋ねたケイトとソウジの方は順調だった。
「でも、フウカ君はこと政治が絡むと少し恐いからな。あの真顔で淡々と状況を並べ立てて、正論を突きつけられるとワシでも少し震える」
「お父さん、そこは確りしてよ…」
「フウカさんの仕事モードは有無を言わせない気迫がありますからね。オーガだって逃げ出しますよ」
「いや、オーガぐらいなら逃げる前に殺されちゃうわよ。ミゼリア様にもそのうちお礼をしに行かなきゃね」
「最近はお世話になってますしね。海とかで…」
「そうね、戦争が始まる前に例のボート遊びもしたいわね」
「海?ボート?」
「ええ、最近ミゼリアさんにご愛顧頂いてまして、高額な請求をするのもなんなので島と海を貰ったんです」
「で、ソウジ君とフウカが作った特製魔導高速艇の試験運転も兼ねて外洋でボート遊びをするんです」
「軍事兵器でボート遊びか…前から思ってたが、段々冒険者らしくなくなってきてるな」
「そうですね、最近は金貨が普通なら置き場に困るぐらいにはあるので仕事もしてませんし、ミゼリアさんに雇われてからはそっちの手伝いばかりですね。あ、今は国王陛下からの指名依頼中ですけどね」
「その内容でもまだランクはCなんだもんなおかしなもんだな」
「まあ、私がお父さんの娘だからね…ギルドとしてもあまり強く出られると困るんでしょ」
ケイトさんはつかつかと執務室の中央にある一人掛けのソファーにどっかり座ると茶菓子に手を伸ばす。
「でもそろそろランクアップが来ると思いますよ。フウカさんなんて海竜の一件でランクアップしててもおかしくないと思うんですけどね」
「どうだろうな…今の冒険者ギルドは独占状態になって久しい、その上層部は長い平穏で老衰して組織として腐っている。力の強すぎる人間に権力を与えるとは思えん」
「瞬撃の隼は危険視されていると?」
「当然だ、神話の生き物とも並ぶ伝説の魔物のロック鳥との交遊関係があり、同じく伝説の魔物の海竜、アトラスを仕留め、ゼレゼス王国に広く影響力を持っている。歯向かわれた時に対応しきれるかを気にしてるんだろうな。これ以降はあまり目立たない方がいい、面倒ごとに巻き込まれたくなければな」
ヴィンスさんの目は珍しく真面目な領主の目だった。
「無理ですね、今回の戦争ではフウカさんは大きな大きな花火をぶち上げるつもりみたいですし、あの調子のフウカさんの邪魔立てをしてお仕置きを受けるのはごめんですよ」
「そうか、私は君らが今後も健やかであることを祈るよ…」
俺はケイトさんの方を見る。
ケイトさんはのんびりカップを両手であおっていた。
「まあまあ、のんびりしていけば良いだろう?どのみちこちらの準備が整わない事には相転移門の設置もままならないだろう?」
「そうですね…あ、そう言えば。ヴィンスさん、あけましておめでとうございます」
「ん?暮れましてなら昨日だが」
「年始の挨拶ですよ」
「そ、そうなのか…因みにこの辺だと年始には去り際に『いい年を』って言うんだぞ?知ってたか!」
「知りませんでした…どこまでもニアミスなんですね」
俺はフウカさんから連絡が来るのを待つことにした。
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作者:「また書いてもらいました。良かったね、ジン君書いてもらえたよ!お願いしてみるものだね」
ジン:「ありがとうございます!!」
レン:「ジン君が笑ってると違和感ない?」
作者:「そうかも?」
ジン:「俺が笑っちゃダメなのか!?せっかく書いてくれたのにこんな風に言われてます!俺のせいで申し訳ありません!!」
作者:「ジン君、はじめて感想もらった作者みたいになってるよ」




