現代風のお正月
昨晩、貴族の面々は近衛兵の皆さんがお迎えに入らして帰られ、エレナとアリアとカイさんとディーダラスさんとドルクスさん、あと戦場の華の面々は転移で自宅に送り返して、自宅がわからないソフィアさんだけが二階の談話室に布団を用意して泊まることになった。
そして早朝五時過ぎ、私はソウジ君の部屋に居た。
最近は割りとよくあるこの面子で。
「朝早いですけど早速準備しましょうフウカさん」
時間を加速させて恙無く準備を終えられるように準備したソウジ君に
「君ら、面白いこと考えるね~いや、前々から僕もやりたいとは思ってたけどさ」
必要な物を必要なだけ創り出しているレン
「それに着せ替え人形役に私ですか…」
「まあまあ、下に適当に着てて良いからさ?」
「別に良いですよ…脱ぎますよ。脱げば良いんですよね?」
私は着ていた服を全部脱いだ。
「フウカさん、少しは躊躇とかないんですか?」
「躊躇って、どのみち脱ぐんですよ?それにさっさと済ませた方が寒いのは短く済みます」
「はい、そうですか…」
「なんだろう、フウカ君が男気な君になってる…」
「まあ、良いですけど…フウカさんの着付けを俺とレンがやるのも違和感ありますけどね」
「と言うかそもそもソウジ君着付けとかできるの?」
「そりゃ、人のをやるのは初めてですけど…自分のなら何度かやってるし…詳しいやり方についても兄から聞いてるし」
「ソウジ君、お兄さん居たんだ」
「血は繋がってなかったですけどね」
◆◇◆◇◆◇
レン:「へー、君、お兄さんが居るんだ」
作者:「居ないぞ?俺、長男だし」
ジン:「ってことは?」
作者:「兄が居るのは量産型の話であって作者には関係ないから」
レン:「紛らわしいな~」
◇◆◇◆◇◆
「なんか複雑な家系なんですね」
「あぁ~、俺が養子だったんですよ」
「ソウジ君、君は壮絶な過去があるのね。さっフウカ君、先ずは肌襦袢なんだけど…下着着てた方が温かいと思うよ?」
「まあ、そう言うなら…」
「あとは、レン任せていいか?俺も着替えるから」
「おっけー、って言い出しっぺが着付け手伝わないのか~」
「言い出しっぺは自分の着付けで大変なんだよ」
「ハイハイ、じゃあこっちは任せてくれていいよ?」
ソウジ君はレンが用意したそれらを持つと部屋の隅で広げ始めた。
「じゃあ、手早くやってこうか」
私はほとんど立ってただけで、レンに言われて腕を動かしたり回ったりした物のレンが何をしたのかよくわからないまま、着付けが終わってしまった。
「って手際良すぎないですか?」
「って言われても僕って器用だから仕方ないよね?説明は面倒だから省いたよ!詳しわくはルミちゃん辺りに聞いたらいいよ?ルミちゃんは確か武術家の家の子だから着付けぐらいできると思うし」
「ルミさんか~ルミさんね…」
『何?』
「なんでもないです」
「へー、そういう感じなんだ」
「なんですか?」
「いやなに、そういう風になってるのか~って素直に感心しただけだよ?」
「だから何がですか?」
「何がって繋ぎ合わされた魄の記憶領域を幾つも持つってなると本人がどういう風にその記憶を保持するのか、気になっては居たんだよね。自分で実験する気にはなれないけどさ」
「って、なんで貴方がルミさんを知ってるんですか!」
「そりゃ知ってるよ、フウカ君さぁ?君を創ったのはこの僕だよ?君の素体となった二人の事はキッチリ情報が僕の手元にあるんだから知らないわけないじゃん」
レンは左手全部で自分を指す。
「それに二人の魂魄を融合させてインスタントボディに植えたのも僕だからね。君の状況は、わ・り・と!想定の範囲内なんだよね!」
「じゃあなぜ、今まで私にその事を話さなかったんですか?」
それを聞くとレンは一度ため息をついて肩を落とす。
「逆に聞くけど話したら君は僕の話を信じたかな?」
「それは…」
ちょっと前の私だったら理由もなく沸いてくるレンに対する侮蔑感・嫌悪感・敵対心から話を聞く前に槍を突き刺して居ただろう。
「でしょ?まあ、わかるよ?会ったときから僕の事が嫌いで仕方なかった、憎くて、許しがたかったんだろうね」
レンは飄々と笑い、私の胸中を事も無げに言う。
「当然じゃん、だってハネキ ルミとシスイ メイの魂魄を切り刻んで一つに繋ぎ会わせた神は僕だからね」
私の脳内で閃光が走り、まるで知ってたことを突然思い出すように大量の情報が溢れだした。
「そうですか」
「そう言うことだよ?」
「まあ、そのおかげで私はここに在るので咎めるのはおかしいのでしませんけどね」
「フウカ君も大人になったね!まぁ、まだ処女だけどさ…」
「あなたは、またそうやって他人のデリケートな所を無遠慮にっ!」
私はレンの胸に手を当てて、暴風掌を叩き込んだ。
「ぐぇっ!」
「はぁ、朝っぱらからなんて神ですか…恥を知れ」
私はソウジ君の方を見る。
ソウジ君は既に着替え終わっていた。
そしてなにやら、自分の着てる物を入念にチェックしていた。
「何してるんですか?」
「再現に綻びがないかの確認をしてるんですよ」
「?」
「これが俺の新しい便利能力です!創着!」
ソウジ君の服と体がサファイアのような蒼い鱗に覆われて、端から新たな繊維に変質して服を成す。
いつも通りの格好になっていた。
上からコートを着れば完璧にいつも通りだった。
「これだけじゃないですよ?イメージ次第では思いのままです。なので、着物にもなれます。創着!」
再び鱗に覆われてから着物姿に変身した。
「ほらほら、他にも…燕尾服とか、ジャージとか、フルプレートメイルとか、なんでもアリですよ」
「凄いですね」
「まあ、これのせいで髪が青から戻らなくなっちゃったんですけどね…」
「私も使うときは気を付けます。そろそろ行きましょうか」
「早くないですか?」
「元旦の朝はやっぱり"おせち"かなって」
「まさか…」
「あ、さすがに私も手伝いますよ。ソウジ君の力があれば今からでも余裕ですよね?」
「でも、材料が…」
「材料ならここにありますよ」
私は突っ立ってたレンの首に抱きつく。
「え、な、ナニコレ…抱えろってこと?」
「なるほど、神もフウカさんの前では冷蔵庫と化しますか…」
「まあ、減るものじゃないし良いけどさ…」
そんなこんなで私達、異世界に日本文化を伝えようと粛々と準備を進めていきました。
▲▽▲▽▲▽
そして、ザックリ2時間後…ケイトがいつも通り起きてきました。
ケイトはいつも、朝起きて来ると一人でキッチンへ行き、湯を沸かして紅茶の準備をして、談話室で朝を過ごします。
しかし今日は起きてきた時点で二人と一柱が居るため、いつも通りとはいかなかった。
「…おはよう。今日は早いわね…」
そして紅茶の前のケイトはかなり寝ぼけていたりする。
「なにその格好…お揃いで、二人共ズルいわよ?」
「ケイト、とりあえず紅茶飲んで目を覚ましてください」
私はソウジ君が準備してくれたお湯でささっと濃い目のお茶を入れる。
「ん、ありがとう…なんか、頭痛いわ…」
「完全な二日酔いですね。今日の朝御飯はちょっと趣向を凝らしたんです、ソウジ君が」
「まあ、はい。主に俺がやりましたとも。フウカさん、料理できないんですもん」
ソウジ君が重箱を持ってキッチンから出てきた。
「ほら、フウカさん。そろそろやりますよ」
「そうですね、一年の始めの挨拶は早めにしましょうか」
私とソウジ君は並んで、恒例の挨拶を口にする。
『新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
ケイトが( ゜д゜)ポカーンとしている。
「え、ちょっと待って…暮れましては昨日散々言ったわよね?」
「はい、私達の世界だと一年の始めの日の挨拶では『あけましておめでとうございます』と言うんです無事一年乗り越えた事を祝い、また一年一緒に頑張りましょうって意味ですね」
「因みにこの服は向こうでもこう言うおめでたい日に着る伝統的な衣装です」
「え、もしかして二人はあえて昨日何も知らないような顔して挨拶して回ってたの?暮れましてがあけましてのニアミスだってわかってて?」
「ええ、まあ…エリアスは日本文化のニアミスが多いですから、そうそう驚きませんよ」
「恥ずかし…昨日あれだけ自信満々に説明しといて微妙に間違ってるなんて…」
「まあまあ、おせち食べて今日も皆に新年の挨拶して回りますよ」
「おせち?」
「お正月にかまどの神様の休日と言うことで、年はじめにかまどに火を起こさずに過ごすための痛みにくくて冷めててもおいしい料理が由来とも聞きますが、それぞれの料理に意味がある縁起物ですよ」
「へー、そんなのもあるんだ…」
「そう言えばリンと涼さん遅いですね」
「涼はまあ寝てるとして、リンちゃんにはお年玉あげないとだから早めに来てほしい所なんだけど…」
「落とし玉?」
「お年玉です、年始めに子供たちの健やかな成長を祈って少しのお金を渡すんです。由来は知りません」
『えと…お母さん、ケイトさん、ソウジさん、あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします』
リンは白い髪が綺麗に見える桜色の着物を着てペコリとお辞儀をした。
「リン、それ一人で着れたの?」
「これは創着の術で、体毛を変化させて創った服で一から着てはないです」
「上手にできてるよ」
私はリンの頭をそっと撫でる。
「実はレンさんが着物を持ってきてくれたんです。それを見て変身してみました。えへへ、似合ってますか?」
「うん、スゴく似合ってるよ?」
「ソウジさん、どう思いますか?」
「うん、綺麗だよ」
ソウジ君がリンの頭に手を伸ばすと
「あ、髪が崩れちゃうのでなでなでは控えめでお願いします」
「そうだね。でもリンちゃん、よく向こうの挨拶を知ってたね」
「お母さんの思考が朝から駄々漏れだったのでマネしてみました!」
「うんうん、上手だったよ」
ソウジ君に褒められて、ぴょんぴょんするリンは真面目に天使だった。
「ほら、早いとこ食べましょ?」
ケイトが待ちくたびれていた事もあり、私達はエルさんと涼さん、そしてソフィアさんが降りてくる前におせちを食べることにした。
「でさっき縁起物って言ってたけど…」
「はい、それぞれの料理に意味があるんです。例えば黒豆は『マメマメしく生きる』要するに勤勉に一年過ごせますようにって意味ですね。数の子は魚の玉子です、いっぱい玉子が付いてる事から『子宝に恵まれますように』、エビはその姿から『腰が曲がるまで健康で居られるように』要は長寿祈願ですね」
ソウジ君は若干早口で説明を続ける。
「他にも栗きんとんは、色からお金がたくさん稼げるように『金運上昇』、紅白なますは平和、伊達巻きは『学力向上』、かまぼこは紅白で魔除けに意味があって、鰤は出世魚なので『立身出世』、他にも色々ありますけど皆意味があるので全種類食べるのがオススメです。そう言えば宗教上食べられない食べ物とかありましたか?」
「・・・殆どみたことないけどたぶん大丈夫だと思う」
「向こうとこっちじゃ生態系が違いますからね~」
「まあ、苦手だったら無理して食べなくても大丈夫なので。あ、味はソウジ君が付けてるので美味しいですよ」
そんな感じで元旦の朝は過ぎていくのでした。
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作者:「また、いつも本作を楽しんで貰ってる読者の友人からイラストを頂き、掲載の許可を頂きました!」
レン:「お、うかれてるね!」
作者:「そりゃ、うかれますとも、例え友人でも絵を描いてもらえるのは嬉しいですとも!それにレン君も描いて貰っちゃって!」
ジン:「お、俺は?」
作者:「残念!居ないよ!」
作者:「これ繋がるようになってるんだって、凄い労力かかってて感動した」
レン:「お、僕が一人じゃなくなった」
ジン:「次は俺も入れるのか?」
作者:「さあ?次は涼さんかケイトちゃんじゃないかな?」




