色んな人を巡ります
そんなこんなで3時過ぎまでアルバイトした私とソウジ君はギルド金貨60枚の日当を貰って退勤した。
「アルバイト、楽しかったー。なんか久々にお仕事しましたね!フウカさん!」
私は袋に入った金貨を財布と呼んでるレン印の小銭入れに移す。
「まあ、こんなもんですね。さ、この泡銭で肉を調達です!の前に昼前まで戻りましょうか。ケイト達が待ってますよ」
「あ、そうですね。ちょっと待ってくださいね。時間感覚を掴みます」
「時間感覚?」
「あー、ここ最近詠唱破棄の訓練してるんですけど、時魔法はどうもイメージを作りにくいんです。なので俺が編み出したイメージのしかたが時間感覚です。こう、糸を手繰るイメージですね。因果の糸を手繰って過去や未来へ移動する感じです」
「糸ですか…その辺の解釈はどうなんでしょう…」
『大方間違ってはいないと思うわ。アナログな考えではあるけど、そもそもアナログな因果を遡る上ではアナログこそ正攻法なのよ』
『ただ時間を飛ぶって考えるのであれば、過去をログとして解釈して書く時間のログを画面のようにイメージして跳ぶってことも可能だと思います』
『因果?ログ?糸?つまりどういう事だ?要するにビデオテープのテープを手動で巻いて巻き戻すのと違うのか?』
脳内会議では瑠美を除いて間違いではないと結論が出ていた。
「過去、未来、俺が抱くは遡及の意思。願うは跳躍、過去と未来を繋ぐこより。見えた、跳びます!」
私たちの回りに漂っていた魔力が淡く銀の光となって降り注ぎ沈殿する。
沈殿した魔力のさらに奥底、銀の向こうに私達は沈む。
そこは暗い闇の中、銀の糸が縺れて絡まって連面と続いている。
重力は小さく、私達は宙を漂いつつ少しずつ底へと沈んでいる
「そんなに戻る必要はないので、この辺ですね」
ソウジ君は無機質な糸から自分の時間を感じ取っているようで私には理解しがたい、神業だった。
そして再び銀の光が満ちると私達は月光の竹林亭の直ぐ前に居る。
時刻はまだ10時だ。
「成功しました。はぁ、もっと簡単かつ分かりやすいイメージがあればいいんですけどね…」
そして私達は、元の給湯室の隣の部屋に転移する。
「お、帰ってきたわね」
その部屋では相変わらずケイトとリンが待っていた。
相変わらずと言っても私達がバイトに取り掛かってから約5分後の話なのだが…
「なんかこうして皆でタイムリープするのは初めてじゃないですか?」
「あ、そう言えばそうですね。いつもはソウジ君が一人で何周も何周もしてますもんね」
「いや、そんなに毎日何周もしてる訳じゃないですよ。夜中に1から2時間繰り返して趣味の時間を確保してますけど…」
「知ってますよ。それに、そのときは私も一緒に居るじゃないですか。精神的に…」
そんな私とソウジ君の間にケイトが割って入ってくる。
「ハイハイ、時間がないから次行くわよ!次はケルビンよ!」
「ケルビンですか…私はあんまり縁がないです」
「まあ、約二週間一緒に旅した仲ですし一応行きますか」
「ええ、まあレリックが居るかはわからないけどね…」
「レリック?」
「フウカは会ったことないわね…ダンジョンの時に一緒に旅したのよ」
「まあまあ、会った方が早いと言うことで…」
「わかりました…正確な位置はわかんないし、直接転移したら怒られるかも知れないので正門前に出ますからね?」
で、早速転移。
「ケルビン、来るのは久々です…ホントに」
「お母さん、嘘ついてませんか?確かこの前こたつ用の熱源を探してた時に」
「アレはケルビン近郊のクレーターであってケルビンではないので、ノーカウントです」
私はリンの発言を訂正する。
やらかした自覚はあるし、バレなければ犯罪ではないが罪悪感はあるのだ。
「ほら、行くわよ~このあとはエネシスに王都にって回るんだから」
「はーい」
そんなこんなで私達はケルビン入りした。
で、ソウジ君に連れられてケルビンの町中を移動する。
「久々ですね~一ヶ月ぶりぐらいですか?」
「そうね~フウカは三ヶ月ぶりかしら?」
「そのぐらいですね。こうして路地裏を通るのも久々です」
「そんなことを言ってる間に到着です」
ソウジ君は古書店の扉を開けて一言。
「暮れましておめでとー、今年はありがとー、いきなりだけどレリック居る?」
「暮れましておめでとう、ソウジ君にケイトさん。早速ですがレリックなら二週間ほど前にお父さんに連れられて探索に行ったきりですね」
「暮れましておめでと、エレナ。じゃあ今日は一人なの?」
「今日はと言うか…かれこれ半月ぐらいずっと一人ですよ?別にいつもこうなので寂しくはありませんが…」
エレナと呼ばれた少女は視線を左斜め下に向けてそう言った。
「そっかーじゃあ、もしかして今日も一人なの?」
「そうなりますね。裏家業の人間としては年末年始寂しく過しても全くおかしくはないんですが」
自嘲的な言葉を追うようにソウジ君の視線が私に向けられる。
「なんですか?アリアさんの時の意趣返しですか?」
「いや、単に年末パーティーに招待できないかと思って…それに、確か例の相転移門の設置依頼の中にケルビンもありましたよね?」
「うぅ…ケルビン領主とは、会いたくないです…」
「ここに一個起きましょうよ」
「ソウジ君…正気ですか?そもそも私、エレナさんとは殆ど面識がないんですよ?」
周りから冷たい目を向けられている
・・・・なぜ?
「ホントに面識ないんですか?」
「あー、そう言えばあのときら暗がりだったし、そのあと失神ポーション被ってたから…おぼえがなくても仕方ないかも?」
「エレナはフウカさんと面識は?」
「話したことはないです。前に助けられた時に警備兵の詰所で寝てるのを見たことがある程度です。情報は色々入ってるので知ってますよ?有名人ですよね。ケルビンの平野を吹き飛ばして、ワイバーン惨殺とか、海竜をハメ殺しとか、鯨を担いで持ってきたとか、アリシアで女を侍らせてるとか、他にも島を吹き飛ばしたとか山をぶっ壊したとか、根も葉もない噂ばかりですけどね」
「因みにフウカさん心当たりは?」
「いや、なんのことやらサッパリですね!山を壊した覚えなんてないですよ」
「山ね、エネシスの町を山の裾野と表現するならあながち間違いでもないんじゃない?」
「いや、あれに関しては私はあくまでも守った側なので譲りませんよ?断固として私は山を壊してません」
「まあ、いいわよ。エレナ、今日の夜年末パーティーなの。あなたも来なさい?」
「え、今からアリシアまで戻るんですか?」
「エレナ、廊下の突き当たり借りますね。フウカさん、そこにお願いします」
「ソウジ君、勝手にやって良いんですか?それとどこに繋げますか?」
「そうですね…とりあえず家の客間でどうですか?今は使ってる人も居ませんし」
「一先ずはそれでいいですね。ソウジ君案内してください」
そして私はソウジ君の指示のままに相転移門の魔法陣を設置した。
「じゃあ、エレナさん。また後で会いましょう」
「エレナ、パーティーには知らない人も沢山来るけど楽しんでね!」
「因みに今日のメインはすきやきですよ。期待しといてください」
「あ、いつ頃行けば良いですか?」
私達は答える前に転移してしまった。
「七時過ぎぐらいにぃ…ってもうエネシス来ちゃったか」
「やっちゃいましたね。まあ、時間になったら呼びに行けば良いですよ。どうせ客間から直ぐなんですから」
「フウカはあれだよね、自分がどれだけ凄いことしてるかを全く理解してないよね。平然とあんなところに機密の相転移門を置いてきちゃうんだもんね」
「減るもんじゃないですし。確かにあれは一種の戦略兵器ですが、私からすれば幾らでも複製できる代物ですからね」
「それもそうね。さ、次はどこにするの?」
「やっぱり身分の高い順にミゼリアさんのところからだと思ったので直接ここに飛んだんですよ?」
そこはミゼリアの屋敷の崖下の磯だった。
「フウカさん、どうせなら玄関からお邪魔しましょうよ?ドックからじゃなくて」
「そうですか?じゃあ玄関に」
私は再び転移する。
「ミゼリアさーん。お邪魔しまーす」
「勝手に入るにしてもせめてノックしましょうよ…」
「まあまあ、そんなこと言っても仕方ないですよ。さ、行きますよ?」
そんな感じで私は執務室まで勝手に入った。
「あの、最近どんどん私に対して遠慮がなくなってませんか?」
「暮れましておめでとうございます。今日は年末の挨拶だけですからすぐ帰りますよ」
「ご無沙汰しております。ミゼリアおば様、暮れましておめでとうございます」
「ケイト、おば様とは呼ばない約束でしょう?」
「そうでしたね。ミゼリア様」
「暮れましておめでとうございます、ミゼリア様。来年もよろしくお願いします」
「ソウジ君?大人をからかうのも程ほどにしなさい。次はないからね?」
「そんなご冗談がお好きなんですから。さ、あんまりお邪魔しても悪いですし退散しましょうか」
「ではミゼリアさん、よいお年をー」
「ミゼリア様、年明けにまた来ます」
「え、ホントに挨拶だけで帰るの!?お茶とか飲んでかないの!?」
『結構でーす』
▽▲▽▲▽▲
そしてアリアの実家にて…
「あ、フウカさん。皆さんお揃いで…あ、暮れましておめでとうございます。今年はありがとうございました」
カイに出迎えられた。
「カイさん、暮れましておめでとうございます」
「カイ、暮れましておめでとう」
「カイ…前回はミーナの姿だったからなんか気恥ずかしいな…暮れましておめでとう…」
「ソウジ、そんなに気にしなくていいよ。俺もソウジの事は女の子だと思ってないからさ。親父も今日は家に居るので、ゆっくりしてってください」
「じゃあ挨拶だけ…」
「実はこのあと年末のホームパーティーなのよ。だからゆっくりするなら夜家にいらっしゃい?」
「あ、カイ。確かカイは料理できるよな?」
「できるけどなに?ソウジもできるだろ?」
「いや、ホームパーティーの件でちょっと相談が…」
そんなこんなで私達は今に上がりました。
「ディーダラスさん、暮れましておめでとうございます」
「お、暮れましておめでとう。皆、お揃いで、挨拶回りかい?」
「はい、ミゼリアさんの所には行ってきたので次はノアさんの所に行きます」
「そうかそうか、寒いから暖かくして、この魔具を持ってくといい。魔力を使って温かくなる」
私達はそれぞれにそれなりに光る温かいランタンを受け取って、その場を後にして、ノアさんに挨拶した。
◇◆◇◆◇◆
ノア:「ねぇ、僕の扱い雑じゃない?」
作者:「雑じゃないよ~割愛だよ?」
レン:「作者~そんなこと言って良いの?チッパイファンも居るかもよ?」
ノア:「ちっチッパイって酷いですよ!あるもん!ちゃんとふっくらしてるもん!チッパくないから!」
作者:「チッパい」
ノア:「そんな新しい形容詞みたいに言わないでよ!」
◆◇◆◇◆◇
「ノアさんノアさん、因みに手軽に豊胸手術できるって言ったら飛びつきます?」
私はノアさんの目をじっと見る。
「・・・・しない。だって恐いし」
「ですよね」
「だってフウカちゃんの言う豊胸手術ってあれでしょ?胸に空間魔法でなんか入れて膨らますってことでしょ?」
「はい、そうですよ」
「やっぱり」
ノアさんはため息をついて胸を撫で下ろす。その角度はほぼ直角だ。
すかさずソウジ君が口を開く。
「あ、じゃあノアさん!倍速で成長できる方法があるんですけどどうですか?」
「倍速で!?いや、ソウジ君の言う方法って純粋に倍速で生きるとか一日を二周するとかでしょ?」
「そうですよ?」
「嫌だよ?それって倍速で寿命を消費するってことでしょ?」
「ノアちゃんさぁ、世の中そんなお手軽に成長できる手段なんてないわよ。無理をしたらなにかを失うのが必定よ」
ケイトの一言にノアさんはじっとケイトの顔を見る。
「そうだね…」
ノアさんは少し落ち込んでしまった。




