異世界大晦日
作者:「作中暦で大晦日ですね」
レン:「作中暦で8月半ばからスタートして外では早くも四年半、ついに大晦日だね長かったね~春は遠いね~」
ゲイル君が来て色々あったその翌朝…
「暮れましておめでとう。今年は一年ありがとね」
ケイトが変なこと言ってました。
「暮れまして?」
私は聞き返しつつソウジ君の方を見る。
そっちも似たような感じだった。
「え?暮れましてですか?」
「ええ、くれおめことありでしょ?」
突然のここまで約4ヵ月エリアスで過ごしてきて久々のカルチャーショックだった。
「いや、初耳ですよ」
「そんな…確かに古い習わしでは、一年の終わりの日には無事一年を乗り切った事を祝う意味で暮れましておめでとうって言う習慣を異世界人が持ってきたって伝えられてるのになぜ…まさか、昔すぎてそっちでは既に消滅している?」
ソウジ君がレンみたいな笑みを浮かべて私に向けて口元に人差し指を立てる。
「そうかもしれませんね。少なくとも暮れましてなんてフレーズは聞いたことないかな…ソウジ君は?」
「ないですね…」
「そっかー、始めて二人と同じ文化を共有できると思ったんだけどな~」
「まあまあ、郷に入れば郷に従えってやつです。私たちもやりましょう、ソウジ君」
「良いですね、色んな人に挨拶しに行きましょうか。とりあえず、暮れましておめでとうございますケイトさん」
「暮れましておめでとう、今年はありがとうございます」
「なんか初めてにしては様になってるわね…」
「そうですか?気のせいではないですか?」
私はソウジ君の方を見る
「やっぱり先ずはアリシアの中ですよね」
「そうですね。先ずは…やっぱり領主の館じゃないですか?日頃お世話になってますし」
「まあ、そうね。道中誰かと会えるかも知れないしね」
「あ、ソウジ君!」
「は、はい。突然改まってなんですか?」
「今夜、すき焼きでホームパーティーしましょう!」
「すき焼きですか、良いですね!…い、良いんですか?最近あんまり働いてないですよ?」
「年末と言えばすき焼き、鍋、年越蕎麦ですよね?」
「あ、はい。わかりました、ただし…肉の調達は任せていいですか?」
「ノープロブレム!そう言うと思って既に冷蔵庫に放り込んであります」
「あ、準備済みなんですか…」
「料理はできない私ですが…肉を斬るのは機会があって何度もやってるので、私なりのやり方でですがスライスまではやっときましたので、後で確認してください」
「ねぇ、すきやきってなに!」
「肉を割り下と絡めて炒め煮にした料理の事ですよ」
「ワリシタ?炒め煮?」
「まあまあ、食べれば分かりますよ~そんなことより領主の館ですよ」
そんなこんなで…
「暮れましておめでとうございまーす!」
私は隣の部屋のドアを開ける感覚で魔法陣を開いた。
繋がった空間は領主の館の中の玄関付近にぽっかりと繋がる。
「ね、ねぇ!コレじゃ道中誰にも会えないじゃない!」
「まあまあ、知り合いに全員会いに行くのでチンタラ歩いてたら日が暮れちゃいますよ」
「そうですよ、ケイトさん!ダラダラやってるとあっという間に次回に続いちゃうんですよ。ここは作者のタイムリミットも考慮してチャキチャキ済ませないと!」
「いや、お主…それは◆◇◆◇◆◇が入ってから言った方が良かっただろう…」
そんなこんなで、若干掃除中のメイドに驚かれた…が、次の瞬間にはまあ仕方ないよねみたいな目で見られた。
で、早朝なので豪勢に朝食の席にいたヴィンスの所に顔を出した。
「暮れましておめでとうございます、今年はありがとうございました!」
「んんっ…なぁ?フウカ君、どうせ顔を見せに来たなら顔だけじゃなくて全身出してくれんか?」
「お義父さん、それはアレですか?処女権的な、俺の女にならないか的な、オジさん可愛い庶民にイタズラしちゃうぞ、みたいなヤツですか?」
事実私は朝食の席に魔法陣で空間を繋いで顔だけだしていた。
「違わい!それに、その気色どう見ても部屋の前まで来てるんじゃろ…いっそ入ってきなさい」
「あ、ちょっと代わりますね」
「え、代わるって…もう、皆入ってくればいいじゃん…」
次に魔法陣から顔を出したのはケイト
「お父さん、暮れましておめでと。一応、今年はありがと。来年来るかはわかんないけど、私は元気よー」
「そかそか、ケイト…お前、ちゃんと朝飯食べてるか?紅茶ばっかり飲んでないだろうな?」
「あ、お父さん!代わるね」
「いや、そのシステムあくまで通すのか?」
「あ、どうも…えっと…はじめましてではないですね…セイ君とは仲良くさせて貰ってます」
「ソウジ君か、どうもセイがいつも迷惑をかけてるみたいですまないな。今後とも仲良くしてやってくれ」
「あ、そうそう。自分、ペット飼い始めたんですよ!コレがまたなかなか気持ち悪いんで一回お義父さんにも見せておこうと思ってたんですよ」
「う、うん。君にお義父さんって呼ばれるとケイトを嫁にやったような気分になるからその、呼び方どうにかならんか?領主殿とか…」
「あ、領主殿は他の人と被るんで却下です。でコイツがペットの涼です!」
魔法陣から頭の一つが出る
「小型の竜か悪くない趣味じゃないか。気を付けて飼いなさい」
「ども、はじめまして…我、九頭竜の涼と申します。ソウジの契約魔獣してます。以後お見知りおきを…」
「喋った…いや、竜だしな…」
「頭九つですが今後ともソウジをお願いいたします」
涼が全ての頭を穴から出して頭を下げる。
(うわっ、気持ち悪…なかなかってか相当気持ち悪い類いだよソウジ君)
「あと、最近はセイ君とはカレカノごっこさせて貰いました」
「かれかの?」
「あー、許嫁ごっこみたいな?」
「ぐふっ…(あれぇ?おかしい、セイはノーマルだったよな…なんで男の子と許嫁になろうとしてるんだ)」
『お義父さん!大丈夫ですか!?』
「ぐはぁっ!気安く"お義父さん"と呼ぶな」
『じゃあ次回からはちゃんとヴィンス様って呼びますね』
「え、フウカ君?いや、良いんだけどさ…」
『ソウジ君、ご挨拶は終わったでしょう?代わってください』
「あ、はい。というかコレいっそ向こう側に行った方が楽ですよ…」
(それ最初の方に私が言ったよ)
『仕方ないですね…』
部屋の入口のドアが音を立てて開く。
一番に入ってきたのは白いコートの幼女だった。
「はじめまして、リンって言います。フウカお母さんとケイト…お母さん、とミーナ…ソウジさんとレンさんとかに教えて貰って一流を目指してます。これからよろしくお願いします、お義父さん」
「リン、上手に言えたわね!」
ケイトはリンの頭をなでなでする。
「恥ずかしいです、ケイト…お母さん」
(な、なんだとぉっ!ってことは孫なのか?孫にカウントしていいのか?と言うかどうやって作った!?と言うかちょっと大きすぎない?)
ヴィンスの脳内は混迷を極めていた。
(ナターシャ、孫ができました)
「ヴィンス様、ヴィンス様、私の娘のリンです。元の種族はロック鳥で私が親代わりをしています」
(ロック鳥?あ、あー、なるほどなるほど)
「なんだ、実子かと思った…まあ、義理でも孫は孫だなリンちゃん。私はヴィンス、気軽におじいちゃんって呼んでくれ」
「お祖父さん!」
「うん、元気でいいね。おじいちゃんだよ?」
「お祖父さん!」
「そか、まあそれでもいいよ?グランパでもいいんだけど?」
「お祖父さん!」
「ヴィンス様、まだ結婚してません」
「そうだっけ?もう、フウカ君を養子にしたつもりだったから…いつでも家に帰ってきていいからね」
「ありがとうございます」
▲▽▲▽▲▽
この数ヵ月でヴィンス様に何があったのかわからないがスッカリおじいちゃんになっていた。
私たちはラルフさんとチャーリーさんとメイドの皆さん、騎士の皆さんに暮れましておめでとうをして館を後にした。
そして次に寄ったのが、ギルドです。
「なんか久しぶりだわ~」
「ケイトさんは行かなさ過ぎですよ」
「いい?冬はね、お金使ってノンビリ羽を休めるのが冒険者流よ。雪の中で遭難でもしたら目も当てられないからね」
冬だからか人は少ない。
「いや、コレはただ冬だからって言うより、年末だから人が居ないの間違いだと思いますよ」
「あ…ケイトさん…お久しぶりです。暮れまして…おめでとうございます」
並ぶ人もいなければ対応する受付スタッフも疎らなカウンターの前に立つと、アリアさんは遠い目をしてました…
「暮れましておめでとう、年末まで仕事なの?」
「はい、色々ありまして…相転移門でいつでも実家に帰れるんだから年末ぐらい譲れと言われて…一日、カウンター勤務を言い渡されまして…」
「あー、それは…御愁傷様です」
「年末で皆さんお休みされてるので、カウンターに居ても酒場の騒乱が遠くに聞こえるばかり…辛いです」
「あははは…なんかすいません…」
「なにより、皆さんのホームパーティーにお邪魔できそうになくなりました…それが残念で…」
ギルドの営業時間は夜の九時まで、普通の家なら八時にはパーティーもお開きだ。
「フウカさん勝手にそんなこと約束してたんですか…」
「すき焼き、実は楽しみにしてたんですけど、またの機会にお願いします…」
「ソウジ君、ソウジ君の料理を楽しみにしてくれてる美女が時間の為に泣く泣く、ホントに泣きながら料理を諦めようとしてますよ~」
「ソウジ君、なんか言うことあるんじゃないかしら?」
「ケイトさんもフウカさんも最近、俺と時魔法の扱い雑ですね!アリアさん、ギルドの終了時刻にその辺に居るので声を掛けてください。家のホームパーティーにご案内しますよ。時間なんてちょちょっと遡れば良いんですよ」
「ソウジ君ありがとー」
アリアさんがソウジ君をぎゅっと抱き寄せる。
「うわぁっ、アリアさん!?当たってます大きめの胸が確り当たってます」
年頃男子には刺激が強すぎるんじゃなかろうか…
「そう言えば誓約違反じゃない?」
「まあ、男の子の時に何をしようと構いませんよ」
ソウジ君の目は遠くの壁を見つめ始める。
ソウジ君の顔こそ見えないが、涼が九つの頭を赤くしているからどんな顔をしてるのかは割りと直ぐわかる。
「アリアは大きいからね…」
「じゃあアリアさん、お仕事頑張って下さい」
「ソウジ君、アリアのお仕事の邪魔したらフウカの拳骨だからねー」
私達はギルドを後にして月光の竹林亭に向かった
夏によく通った道のりを歩いてではなく、魔法でパッと行く。
「暮れましておめでとうございますー!」
大サービスでメイド服に着替えた私はソフィアさんの居る給湯室に転移する
「えっ、フウカさん!?わわわっ私に何か」
ソフィアさんは突然の事に驚き、駆け寄ろうと踏み出し、目が確りと私を見てその直後止まる。
目が泳いで逡巡していることがよくわかる。
そして手に持っていたマグカップが手から溢れる。
「あはは…わかりました。そうですよね、せっかくの年の瀬…私なんかじゃなくてケイトさんと過ごすに決まってますよね…あははは…私なんかなんでもないただの使用人ですし…フウカさんと仲良くなりたいなんて不相応でしたね…」
私は目の前で暗い顔してマグカップを拾うソフィアさんの手を取る。
「そんな事ないですよ?それにただ一年のお礼を言いに来たなら態々メイド服なんて着ませんよ~?細やかですがホームパーティーのお誘いに来たんです」
「でも私仕事が…終わってから少しだけ楽しんだってバチは当たりませんよ。年の瀬です、数人だけ一日36時間でも神様も文句言わないですよ。だよねミーナ?」
給湯室の壁に空いた穴からミーナが顔を出す。
「別に時間操作は構いませんけど、なんで私までメイド服なんですか!?」
「ミーナは今日一日月光の竹林亭の臨時スタッフだからだよ?私が決めました、ミーナ…そうですねお仕事ちゃんとやったら今晩は誰とイチャイチャしてきても合体してきても私は目を瞑りましょう。誰とでもです、私の所に来たとしても目を瞑ります。どうですか?」
「あ、フウカさんは怖すぎて手が出せないです。拳骨怖いんでいいです、それにそんな事したらケイトさんに俺のぶなしめじを粉微塵にされそうなんで…」
「そうよそうよ!フウカに手を出すのはソウジ君でも許さないわよ?フウカは今晩は私と一緒に寝るから邪魔させないわ」
「違います!今晩はリンがお母さんと寝るってお約束でしたよケイトさん!」
「むぅ、リンには勝てないわ。リンも一緒に寝るのはどう?」
「昨日はリン我慢しました。独占権の話だったので雑魚寝は認めません」
「頑なね…ミーナ、今晩私と寝ない?男の子でも良いわよ?気持ちよくしてあげるから」
「お断りします。後日フウカさんから拳骨を貰ったり、仲間内で気まずくなるようなことはごめんです」
「そう言えばいつの間に変身したの?」
「まあまあ、詳しくは横っちょに置いといてください」
「さ、お昼時の手伝いで軽く小銭稼いで牛肉の追加を買いましょうか」
そして私はソウジ君を道連れに久々のバイトに勤しみました。




