フット インザ ドア
作者:「予約投稿やめようかな…」
ジン:「それはなぜ?」
作者:「なんか予約しない方がアクセスが多い気がする」
ジン:「気のせいじゃないか?」
ソウジと向かい合うソファーに深く腰かけて手紙に目を通すケイトの顔は過去最悪なレベルで怒っている訳ではなかった。
「グレイスおじ様からお呼び立てだなんて珍しいわね」
「普通はただの冒険者にお目通りが叶う人ではないですよ」
「うん、でもね?まず一つ言っておくけど、私は断固としてフウカを前線に出すような真似はさせないわよ?」
しかし怒ってないかと言えば嘘で実際はかなり不機嫌だった。
「まあ、そう言うと思ってましたよ…」
「そんなことを命じようものなら私はグレイスおじ様との縁を切って、城の謁見の間の巨大ステンドグラスをぶち破って逃げるわ。もう大脱走、国外逃亡よ!」
「また大胆な事を…家はどうするんです?」
「ギルド金貨ならたんまりあるし逃げた先で家なり部屋なり買えば良いわよ。敵対してる北とかダルカスとかなんなら帝国とか逃げる先はあるわ。まあ、一番馴染みやすそうなのはやっぱり北ね。この前間者と一戦交えた帝国は論外として、ダルカスは純人排斥の強い国だから良い目では見られないだろうし…で今の南ゼレゼスが手を出せない規模の国ってなると北が一番考えるに易いかな」
「なるほど…まぁ、王様の出方次第ですね。俺とフウカさんが居ればとりあえずそこらの人間に捕まることもないですし、国家でも帝国でもござれって感じですよ」
「いざとなったら頼りにしてるわよ?」
「ええ、一宿一飯の恩は犬も忘れないってね。まあ、俺はどちらかと言えば猫ですが、普段お世話になってる分働かないとですね」
ソウジは刀を立てる。
「一宿一パーツね…その論で行くと私は何十パンの恩はあっても何十宿はなさそうね」
「そう言えばケイトさん、フウカさんがイイコイイコして欲しいってボヤいてましたよ」
「そうねぇ…」
「良いですよ。検討は俺が進めときますから」
「じゃあ、今日はフウカの部屋で寝るから。ソウジ君、盗み見とかしたら許さないからね?」
「ハイハイ、わかりましたので早く行ってあげてください」
「じゃあ、お願いね?」
ケイトはそそくさと談話室から出ていった。
リンちゃんや涼も既に眠っていて、窓の外には冷涼を讃える月が浮かぶのみ。
「なあ、王は俺達を前線に配備したがると思うか?」
話しかけた先には誰もいない。
「そうだな…それはまずないだろう。お前らは貴重な才能を世間に認められた状態だ。それをみすみす前線で刹那的に消費するとは考えづらい。むしろ最大限に利用して保持したまま終戦を迎えようとするだろうな」
声の主はここ最近あまり見なかった黒い神だった。
「だよなーってなると、国中の街はなくとも主要都市と前線を繋ぐ相転移門の設置と防壁の時間停止かな?それに魔術指南とか水晶球での魔法の提供ってとこか」
「だろうな、だが前線に相転移門を設置するような事はないだろうな。恐らく、前線と王都の間の護送なんかを押し付けられるだろうな」
ジンは喋りながら、窓枠に寄り掛かる
「ソウジ、今回の戦争はそこそこ危険な物になる。お前は生きなきゃいけない、いざとなれば介入もやむなしだが、それは避けたい」
「ふーん、神の建前ってやつか?」
「そんなとこだ。あ、そうだ…ソウジ、手を出せ」
「は?」
「良いから手を出せ」
「珍しく強引だな…」
ソウジは戸惑いつつ手を出す。
ジンはスーツの内側から細長い棒を取り出す
「頭を使うには糖分が要るだろ?」
それは黒い猫…の飴細工だった。
「またリアルだなコレ…食べるのもったいないな」
「ここしばらく休暇で外界に出ててな?そこでの戦利品と言うか収得物と言うか、まあ、要するに土産だ」
ジンは懐から袋を取り出す
「こっちは招き猫の飴だ。徳用で一袋136円だったからつい爆買いしてしまった…」
「べっこう飴…」
「それとフウカにはコレを渡しといてくれ」
「〇正バターサンド…甘味ばっかだな」
「と言うと思ってザラメ煎餅なんかも買ってきた。あとケイト用には茶葉とかだな。リンちゃんにはマカロンにした、肉とどっちにするかで迷ったけどな」
ジンはどこにしまっていたのか懐からいくつもいくつも紙袋を取り出す。
「ちなみになんで俺には飴なんだ?」
「猫、好きだろ?」
「そう言うことか~、まあ猫は好きだけどさ」
「それじゃあ、俺は仕事に戻る。ソウジ、死ぬなよ」
ジンはふっと笑って消える。
「なんだあれ、変なジン…」
◆◇◆◇◆◇
作者:「そう言えばジン君って最近本編出てなかったよね」
レン:「最後に出たのいつだろう」
ジン:「アデルが居たときだから…」
作者:「量産型が女体化週間初日ぐらいの頃だから30話ぐらい前だね」
レン:「毎週更新(けっこう休む)だから半年以上前だね」
作者:「お久しぶりー、お土産は?」
ジン:「いや、こっちは出てただろ!」
レン:「ジン君おかえりー、貢ぎ物は?」
ジン:「糞神が…」
◆◇◆◇◆◇
▼△▼△▼△
で、翌日の昼過ぎ。
「ねぇ、王さまの所行くって言ってなかった?」
赤い方の神が食堂で言う。
「ええ、行きますよ?ですが、今日中とは書いてありましたけど何時にとか書かれてなかったので、お昼食べてからで良いかと」
「ソウジ君、フウカ君にマナーを教えてあげてよ!」
「んー、俺は王様に良いように使われるのは真っ平だもんで、別に間違ったことはしてないからフウカさんに賛成ですよ」
「ケイトちゃーん、良いの?あんな感じで」
「良いのよ、おじ様にも良いように扱える犬じゃないって理解してもらわなきゃね?」
「どうなっても知らないよ?僕の子孫は他の人間より優先度も高いだろうから、魔法が聞きづらかったりしても僕は責任取らないからね」
一同に沈黙が漂う。
「…ん?子孫って言った?」
「うん、そう。僕の直系に当たるんだと思うよ」
「神って子孫残すんですね」
「どんぐらい前なのかちょっとわかんないけどさ。ずっと昔にこの辺に二つの国があったの、僕は飛び出した奥さんを探してて、偶然その片方のお姫様を助ける事になったんだよ。で、まあ宛もなかったからそのお姫様を助けつつ奥さんを探してたの」
「なるほど」
「でちょうどそのお姫様が今で言う北ゼレゼスの辺りにあった国と戦争をするって話で、僕はそこに協力することにしたの。で色々あって戦争はなし崩しに引き分けに終わるんだ。そして、そのすぐあと姫には父のいないゼレと言うミドルネームを持つ男の子が、敵国の王子には母のいないゼスのミドルネームを持つ女の子が産まれて、その子達が数十年がたって婚姻を結ぶことで二つの国は一つになりましたとさ」
「それがゼレゼス王国だと?」
「そ、僕が味方した方の国が現南ゼレゼス側にあった国、奥さんが味方したのが北ゼレゼス側にあった国だよ!」
「でもなんでゼレゼス?」
「ほらほら、僕のミドルネームがさ」
「いや、知りませんよ」
「あれ、知らない?僕、最初に名乗ったつもりだったわ。僕の本名はレン・ゼレ・グングニル、で奥さんのミドルネームはゼス」
「なるほどそれでゼレゼス…ってつまりあんたらが作った国ですか…」
「子孫がだよ?子孫が」
「でもつまり、世界を統べる二柱の血統がそこに集約してるってことだろ?」
「何世代も重ねて血は薄まってる筈だけどね。そもそも半分半分がスタートだしね」
「"血は"?と言うことは概念優先度はその限りではないとでも言いたげですね」
「うん、概念優先度も僕らから遠ざかるに従って下がるけど、完全には下がらないんじゃないかな?例え薄れても過去は残るって事だよ」
「へー、まあどうでも良いですよ。私達は別に戦争しに行く訳じゃないんで」
「う、うん。そうなると良いね…」
そして程なく私達は王都に降り立った。
「さすがは国の中枢。やっぱり都会的ですよね~」
「まあ、王都だしね」
「へぇ、こんな感じか~観光するには良くても、住むには詰まんなそうな街ですね」
「まあ、王都だからね」
私達は王城に向かう魔法で動く路面電車みたいなののチケットを三枚買ってくる。
「さてとこの魔導路面機関車なる乗り物の乗り心地はどうでしょうね~」
「ま、馬車よりはいいんじゃない?」
ケイトは言うより先に最後尾の乗り口の手摺を掴んで飛び乗った。
「ケイト、そう言えばドレスコードとかってありましたっけ?」
私も軽く跳んで飛び乗る。
少しふらついた所をケイトが手を掴んでくれた。
「んー、あるにはあるけど…私達冒険者よ?そんな事気にするのもめんどくさいし、ささっと仕事の説明さえ終わらせてくれればそれで良いからこのまま行きましょ」
「ソウジ君、早着替えとか、そこら辺の分子から服を作り出す変身的な魔法ってできないかな?」
「そんな事言われましてもね…と言うか魔法ならフウカさんが考えてくださいよ」
ソウジ君は少しだけ羽を使って羽ばたいて屋根に掴まってから乗り口に着地する。
「うーん、まあ思いついたら使いますね」
「気にしなくていいと思うけどね…」
そうしてバタバタと人が乗り降りしつつ路面電車は王都の街の中を徒歩よりは速く、飛行よりは遅い速度で走る。
人も乗ったり降りたりが激しく、私達も段々と奥へ追いやられ、路面電車も段々と街の中心にある王城へと進む。
「にしても上品な人が多いですね」
「王都だからね」
「冒険者が少ないようにも見えます。この辺は魔物が少ないんですかね?」
「ええ、アリシア周辺とは違って近辺に開拓されていない森もなければ魔力の溜まりやすい洞窟なんかも人の管理下にあるからね。魔物が出てもそこまで大きな事にはなりにくいのよ」
「そうなんですね~」
「ほら、着きましたよ。観光はさっさと済ませてそのあとにしましょう」
「ハイハイ、晩御飯はこっちで食べていきましょ?皆呼んでさ」
「俺も楽ができて嬉しいですよ」
一行は緊張感は皆無の平常運転で城内へと進む。
入り口で召喚令状を見せれば、スムーズに中まで通してくれて、さらに案内までしてくれる手厚さだった。
「でも広いですね。さすがは大国」
「まあ、こんなに広くても使い道に困るでしょうけどね」
私はそんな二人の会話を聞きつつ、交渉をいかに進めるかを思案していた。
相手は顔見知りとは言えどあくまでも国王。そう易々と嵌められる相手ではないのは明白だった。
「陛下がお待ちです、お入り下さい」
案内人を受け持ってくれた兵士はそそくさと下がっていった。
「うん、ドア インザ フットで行くことにしましょうか 」
「ん?何の事?」
「あ、なるほど…フウカさん、足下見てますよね…」
ソウジ君はどうやらわかったようだ。
「では、失礼します。召喚令状を拝読し参上しました、冒険者パーティー瞬撃の隼です」
私は最低限の礼儀を意識して部屋に入る
「突然の呼びつけに応えてくれて嬉しく思う。ささ、座りなさい」
「じゃあ遠慮なく座ります」
こうして私達の謁見は始まる。
グレイスさんは少し間をとって話始める。
「さて、ではまずは現状について説明しよう。諸君のエネシスでの活躍は聞き及んでいる。特に新兵器を提供してくれた点やエネシスの復興に注力してくれた事、感謝の限りだ」
「私共はできることをしたまで、それにキチンと報酬も頂いてますのでお礼には及びませんよ」
「そうか。我が国が現在、境界の平原での北との戦争。そして帝国の不意討ちへの対策を講じているのは知っての通りだろう。こうして呼び立てたのもその戦争への準備と戦勝に協力して欲しいからだ」
ケイトはすっと手を挙げる
「おじ様、いえ陛下。…私達は冒険者です、兵士とは違って仕事を選ぶ権利があります。その点をご承知下さい」
いつもの相手を惹き付ける声色ではなく、交渉で相手を撥ね付ける時の声でそう言った。
「そうだな、先ずは内容だな。諸君には諸君の能力を活かして戦勝に協力して貰いたい。相転移門の国中への配備や主要都市の防壁の強化が主だな。なに、私の口から直に前線に赴くように言うことはないよ。どのみちギルドには前線へ赴く義勇兵の召集を既に依頼している。気のある者ならそれで済むだろう」
「そうですか、では私共も安心しました」
ケイトが一息ついて威圧感を緩めた
ケイトの肩が下りて気が緩んだのかグレイスさんが前のめりに出てくる。
「で、どうだ?やってくれるか?」
では、私のターンです。
「陛下、重要な話がまだですよ?報酬について話を詰める必要がありますよ」
「そうだな、こういう依頼は報酬をあらかじめ決めておかなくてはな。後々、達成報酬で揉めてはお互い損だ」
「ええ、私共はコレを生業としてますから、後で依頼者から『この程度の仕事には高すぎる』なんて言われたりしたら大変ですからね?」
「しかし、私は国王だ。後でも先でも必要なだけ支払う用意がある」
「そうですよね!だって国王陛下ですもんね」
「おう、それで何が欲しいのだ?土地でも金貨でもなんなりと言ってみよ」
そう、その言葉が聞きたかったんです。
「まず欲しいのは以後の安寧です」
「と言うと?」
「戦後、私達の能力が理由で色々な組織と揉めるのは嫌なんですよ。北や帝国や他の国家や反社会勢力や地方領主にゴチャゴチャ言われるのはできれば避けたい所ですから」
「なるほど、その為に国王の威を借りたいと」
「はい、情報統制などでなるべく私達の功績が明るみにでないようにして貰いたい」
「ふむ、冒険者なら目立った功績を残した方が以後の仕事に役立つだろうに…」
「私達は冒険者は冒険者でも極力冒険したくない冒険者なのでそんな多用されるような立ち位置はやりたい人にやらせてあげてください」
「しかし、それでは生活が苦しくはないか?私の庇護下、正確には王立師団に入れば収入も約束できるぞ?」
「そうですね。私達パーティーいえ正確には私個人が冒険者としてかなり稼いでてお金には困ってないのはご存知でしょう?」
「それと言うのはエネシス近海での海竜退治の報酬の50万枚の事か。しかし、いずれはその金も費えるだろう?」
「国王陛下、お気遣い感謝いたします。しかし私にとってお金は海から容易に獲れる物なんですよ。海原には無数にシーサーペントが生息していて日に何十隻もの船を襲います。それの護衛をすれば、私はいくらでも稼げるんですよ海は広く恵みに溢れて居ますので」
「そうか、金貨は要らぬと申すか…では、そうだな。戦争が終結したとき国交船の護衛を優先的に依頼する事にしよう」
「ええ、ありがとうございます。しかし」
「もちろん仕事を選ぶ権利が諸君にはある。いつでも我が船に乗ってくれたまえ」
こうして私は換金不可能な報酬を取り付ける事に成功したのでした。




