ドア・インザ・フェイス
作者:「一日遅れで更新します」
レン:「良い度胸だね」
作者:「来週も頑張れたらいいな♪」
建設工事は作るものが決まったらコンマ五秒で終了し、私とソウジ君は改めてミゼリアの元を訪れていた。
目的はもちろん報酬の受領と事後報告だ。
「ミゼリアさん、その後はどうですか?」
「一応は順調よ?今日はどうしたの?瞬撃の隼の子が私の所を訪れるときは大概交渉目的だって言うのはわかってるから、今度は私に何を売りつけるつもり?」
ミゼリアは先日ソウジに嵌められて拡張パネルの内部構造についての技術を得損ねてから、若干警戒していた。
「別に売りつけようだなんて、思ってませんよ?俺としては買っていただかなくても構いませんし♪」
ソウジ君はニコニコ笑ってそう言った。
「可愛いげのない子っ…でもフウカちゃんが来たってことは大きな事をするつもりよね?」
「別に今さら何かするなんてことはないですよ。今日は、報酬の話をしに来ました」
私はミゼリアさんをじっと見つめて笑う。
ミゼリアさんは少し戸惑うように私を見る
「別に法外な額の金貨なんて要求しませんよ?ただ欲しい物があるんですよ」
「何が欲しいのかしら?ソウジ君?」
「いや、何分俺はしがない貧乏人だもんで別荘って憧れるんですよ。南の海に別荘なんて最高だと思うんですよ、でそこでお舟遊びですよ。航路なんて無視して動かせたら楽しそうだと思いませんか?」
「何が言いたいの?」
「わかんない人だなぁ…俺が欲しいのは海ですよ。エネシス南方、外海に位置する無人島から沿岸20海里を下さい」
「却下ね。海は皆の物だもの、独占なんて許されないわよ?第一、そんなに広い範囲を所有して何をするつもりよ?国でも建てるつもり?」
「そんなことしても面倒なだけじゃないですか。俺らはしがない貧乏人ですよ?ただお舟で遊びたかっただけですよ」
ソウジ君はおどけて見せる。
ミゼリアさんの視線は険しい物に変わる。
「はぁ…どうせ、断ったらこの前みたいな嫌味を仕掛けて来るんでしょ?」
「それはどうでしょうね?そう言うことをすると手厳しいお仕置きを据えてくれる人がすぐ後ろに居るのでわかりませんよ?」
ソウジ君はニコニコ笑って要る。
「ソウジ君、そのぐらいにしないとゲンコツですよ?」
「あ、ハイ」
「まあ、私達がした仕事は精々基本設計とか開発程度なので20海里は言い過ぎですよね~」
「わかってくれたかしら?」
「ええ、もちろんですよ。私はこれからもゼレゼスとは仲良くしたいと思ってますから」
私は指先で神具が作り出す藤色の羽根をクルクル回して弄ぶ。
私が持つ藤色の光がどんな物かを知っているミゼリアさんは笑顔をを貫く。
「そうね、確かにそう言われると私もゼレゼスの海浜領主として仲良くするために多少は報酬を奮発するべきに思えるわね5海里でどう?小さい街なら入るぐらいの広さよ?」
「私達、結構あれ作るの大変だったんですよ?主砲とか、稼働実験で結構ケイトに怒られたりしたんですよ?17海里ぐらいでどうですか?」
「ボート遊びするだけならエネシスの港ぐらいの広さがあれば十分じゃないかと思うのよ。6海里ぐらいでどう?」
ミゼリアさんは献身的な顔をしている。
「正直に白状すると、魔道原動機・χを搭載した魔道高速艇で遊びたいんですよ。16海里」
「なにその魔道原動機・改って…」
「改じゃなくてχですよ?私とソウジ君が共同で考案、能力を惜しみ無く利用して熱効率を最高に仕上げた夢のエンジンですよ。詳しい数字とかは気にしたことないのでよくわかりませんが、ソレを2基乗っけた高速艇で遊びたいんですよ」
「それを4基家に回してくれるかしら?そしたら10海里までなら工面するわ」
「良いですよ、10海里で手を打ちましょう。あ、忘れないうちにサインを」
私は懐から来る前に用意しておいた契約書を取り出す。
「誰か適当に…あ、お茶おかわり下さい」
執務室の入り口からティーセットの乗った台車を押して使用人が入ってくる。
「執事さん、これを声に出して読み上げて貰えますか?」
「私でございますか?」
「えぇ、ミゼリア様によく聞こえるようにお願いします」
「かしこまりました。研究開発への協力における報酬について 契約書。
ゼレゼス海浜領主(以下「甲」)と瞬撃の隼(以下「乙」)は表題について次の通り契約する。
条件1、乙は甲及び南ゼレゼス王国に対し、開発・提供された「魔導原動機」及び「魔導機関砲」に使用された技術に関して模倣及び利用する事についてライセンスを永続的に認める。
条件2、これに対して甲は乙にエネシスの南方約60kmに位置する無人島とその沿岸10海里を瞬撃の隼の所有地及び所有領域とし、領域内での治外法権を容認する。
条件3、本契約は本書面への書名捺印が行われた時点で効力を持ち、効果は書面の消滅を持って終了とする。
この契約を証するため、甲乙双方は署名捺印の上、甲乙及び南ゼレゼス王国はそれぞれこの書面を保有するものとする」
ミゼリアさんは額に手を当てる
「フウカちゃん、図ったわね?」
「えぇ、想定通りの着地点です。でも悪い話じゃないでしょう?」
ミゼリアさんは少し考えると口を開く。
「まあね?ほら、サインしたわよ。でもあなた達、私がこれにサインして物を受け取ってすぐに紙を破るとは思わなかったの?」
「思ったからこそのその紙ですよ」
私は一枚を手に取る。
「少し前の実験で時間を止めた物は、非常に高い硬度を持つのはわかっていました。しかし、紙は時間を止めても字が書ける事がつい最近発覚したのでそのまま利用する事にしました」
紙は完全に硬質な板のように立ち、カタンと音を立てて机の上に落ちる。
「効果は書面の消滅をもって終了とするって俺が考えたんですよ?なかなか良い文句ですよね」
「はぁ、ホント…食えないわね。まあ、それはお互い様なのかもね」
ミゼリアさんは机の引き出しを開けると金の箔押しの成された封書を取り出す。
「嫌な予感がするんですが…」
「ええ、きっとケイトちゃんなら受け取らずに窓から飛び出して逃げるでしょうね。でも、フウカちゃんはそんな大胆な事はしないでしょ?」
差し出されたそれを受け取る。
その封筒の封蝋には割りと見たことある紋章が押されていた。
「何ですか?この豪華な封筒。俺、やっぱりしがない貧乏人だからわからんのですわ」
「これは、グレイスさんの城にあった紋章…詰まるところ王家から封書、勅命って所ですか」
「そう、正確には召喚礼状よ?私宛じゃなくて瞬撃の隼宛てね」
「でも、なぜ?」
「ここ数ヶ月を思い返してみたらどう?フウカちゃんは海竜討伐の時にロック鳥を従えて事実上の旗頭となり、紫の水晶を一面に生やす新しい魔法を編み出した。その後の復興支援でも大きな功績を残した。そして今回は戦艦の砲と動力を開発した」
「フウカさん、確かに派手ですね」
「ここ数ヶ月の派手な功績の数々を鑑みれば、アトラスのせいとして処理されていたケルビンでの出来事、パーティーでの成果としてギルドに報告されたワイバーン討伐依頼の件から広範囲を殲滅する魔法を得意とする事は把握されてるでしょうね」
「つまり、空間魔法と時魔法についても知られていると…」
「と言うか、フウカちゃん。自分で相転移門を作ったでしょ?アレ、制限なく皆に解放してるから陛下の目の物が通っててもおかしくないのよ」
「あ、面倒な事になりましたね」
私は慌てて召喚礼状を開く。
そこには美麗な字で要約すれば『明日、王宮へ参られたし』とあった。
「ソウジ君、めんどくさい事になりそうです」
「みたいですね…戦争、面倒な事にならなければ良いんですけど」
私はソウジ君を引っ張って一度帰宅する事にした。
「はぁ、ケイトになんて言ったものか…」
そして自宅手前で私はため息をついた。
「普通に王さまに呼ばれましたって言えばいいんじゃないですか?」
ソウジ君はあっさりとそう言いきった。
前回、お義父さんの依頼で王都ゼレゼスに向かったときの事を知らないからだ。
「そうだけど…ケイトは面倒事、特に貴族絡みは嫌がるし…怒るかな?」
「いや別に怒らないと思いますよ?フウカさんなら仕方ないってため息で許してくれますよ」
最近、私は単独行動ばかりでケイトと一緒に居ることが少ないし、その結果コレだし。久々に怒らせちゃうのかな?
いい加減、軟禁とかされちゃうのかな?
「もしかしたら勝手な行動をしないようにって首輪とか付けられちゃうかも…」
束縛されてきっとベッドに縛りつけられちゃうんだ。
「いや、ないでしょ。ケイトさんはフウカさんには激甘だからないですよ」
それから休みなく愛の巣を作るのかな?
私どうなっちゃうんだろ、トロトロになっちゃうのかな?
「あー私、調教されちゃうのかな…でも、………ちょっと良いかも」
「フウカさん、戻ってきて下さい。ケイトさんが大好きなのは判ったので、とりあえず説明に行きますよー」
「私、ケイトが犬飼いたいって言ったら喜んでケイトの犬になれるのにな~」
「ハイハイ、ケイトさんが恋しくておかしくなったのはわかりましたから。さっさと報告しますよ」
「そんな、チンチンだなんて恥ずかしいですよ…」
「フウカさん!戻ってきて下さーい。ペットプレイしたいならその旨をケイトさんに言ってみたら良いんですよ!」
ソウジ君に頭を叩かれた。
「痛い、痛いじゃないですか」
「落ち着いてください。まずはやることやりましょう」
「そうですね」
私達は談話室に入る。
「ただいま~」
「戻りましたよー」
私とソウジ君が一階の談話室に顔を出すとそこには
「お母さん、お帰りなさーい!」
リンと
「もう!僕を島に置き去りにするなんて酷いじゃないかー!」
レンしか居なかった。
「ケイトは?」
「ケイトさんは…えっと、ちょっと買い物に行きました」
「そう、ケイトちゃんはフウカ君の密かな願望を叶えるために出掛けたよ?良い尻尾を見つけて来るからって言ってた。僕が居るのに態々買いに行くなんて酔狂だよね」
レンはニヤニヤしながらそう言った。
「尻尾?」
「そう、フウカ君の尻尾。フウカ君もペットプレイがしたかったならちょっと前に渡した変身薬飲んでくれれば良いのに。それともワンちゃんになりたかった?」
「いや、別にそう言う訳じゃなくて。ケイトにいいこいいこされたかっただけです!」
ソウジ君とレンがじっとこっちを見てくる
「フウカ君、今日はもう寝たら?きっと疲れてるんだよ」
「後の事は俺やっとくんで休んでください。ケイトさんもその内帰ってくるんで、王様の事はまた明日現地で考えれば良いですし」
いつの間にか封筒をソウジ君が持っており、レンがニマニマ笑っている。
そしてなぜか優しく休むように言われた。
「いやでも、コレは早めに解決しないと面倒な事に…」
私がレンを横にずらすと、リンがじっと私の方を見ていた。
「お母さん」
「なに?」
リンは有無を言わさぬ雰囲気を出して言う。
「寝てて?」
「はい…じゃあ、何かあったら起こして下さいね?」
「うんうん、なんかあったら僕が起こしに行くと思うから、おやすみ!」
レンがリンの後ろにたって左手をリンの肩に乗せて、右手でそっち行けとジェスチャーしている。
「あ、リンに触らないで貰えます?」
「お母さん!」
「はい、じゃあおやすみなさい…」
私は渋々自室で少し眠る事にした。




