趣味の領域で順調に
作者:「今回もなんとか更新しましたよ!」
そんなこんなで、主砲制作は段々と瞬撃の隼の手から離れていき…
フウカの出勤日も週4日から週1日顔出すだけに変化するのには二週間で十分だった。
「はい、ではさっさと作業場を整えて、本命の作成に入りましょうか」
フウカの姿はエネシス近海の島にあった。
「ハイハイ、どんどん作るよ。僕は、コンクリートの準備するよ!」
レンは取り出したコンクリート粉末を水と混ぜ合わせる。
「重雪、どんどん均せ!涼も休むなー」
『お主もな!』
涼と重雪は歩き回って地面を均していき、それを横目にソウジが平らになった地面の時間を止めていく。
巨大化した重雪が大雑把に平らに均して、そのあとを涼がペタペタ細かい所を均していく。
ソウジはその後ろから平らになった地面をひたすら固める。
私はと言えば、作業場の間取りを空間魔法の魔法陣で作っている。
そこには既に魔法陣で形作られた四角い建物が出来上がっている。
「あとは実体を持たせるだけです」
「でもなんで南の海に作業場作ってるの?家でやれば良くない?」
「それはですね…ケイトに怒られたからです」
話はほんの数十分前に遡る。
▼△▼△▼△
私はやることがなくなったのでソウジ君とレンと共に二階談話室で自分達の趣味としての主砲、未来的主砲の制作作業に取り組んでいた。
「どうせなら制御パネルも簡略化したいですよね…」
「そうだね、ミスリル鋼線作る?」
「鋼線ってどうやって作るんだ?」
「そういえばどうやって作るんだろうね~引っ張って伸ばすんじゃない?」
「そんな適当な…」
「適当な事でも理想形になるのが重要だよ。他に何か必要?」
レンは手に金属線を伸ばして縒ったケーブルを創る。
「当然、要る物は五万とあります。とりあえずは砲身を携帯するに当たって軽量化の必要があるので、軽くて頑丈な素材が必要です」
レンはテーブルの上からメモ紙を取り、ソウジ君を捕まえました。
「はい、軽くて頑丈な素材」
「あ、そうですね」
「あ、でも防水性能は低いかもね。硬いとは言え水は染み込みそうだし…」
ソウジ君は徐に紙を摘まみ取る
「ふむ、氷と同じ要領でやれば…『水よ、滴れ』
ソウジ君の手から、湧水のように僅かに水が流れ始める。
それは、手を伝って摘まんだ紙に染みていく。
そして、水が染みた紙は部分的にふやける。
そしてソウジ君は左のポケットから水晶球を取り出し、迸る銀の光を紙に当てていく。
「こうやって先に水を染み込ませてから時間を止めれば水が染み込む余地がないから、水を防げるんじゃないかと思って」
ソウジ君は時間の止まった紙の上に改めて水を垂らす。
それはふやけた紙の上をスルスルと滑っていき、ふやけてない部分に当たってそこに吸い込まれた。
「こんな感じですね」
「おー、ソウジ君賢い!」
「いいねいいね、後は組み立てるだけじゃん。フウカ君は魔法、急いでね?」
レンはソウジの肩に手を置いて言う。
「なんか癪ですけど、やりますよ!あ、ソウジ君!」
「へ?」
「うん、時間が止まってても水は染み込むんだよね?なら、この家は頑丈ではあるけど水漏れには弱いんじゃないかな?」
「?あっ!?」
ソウジ君の右手から止めどなく水が湧いて床に零れている。
それは既に程々大きな水溜まりを作っており、手からチョロチョロと水道から出るぐらいの感じで水が滴り落ちていた。
「いや、止めればなんとか」
ソウジ君は急いで右手に持った水晶球で水溜まりを止めて回収するが、遅かった。
『ちょっと、涼さん!また水遊びしたでしょ!!』
ケイトの怒声が階段を震わせて響く。
「わ、我のせいなのか!?」
「あちゃー…やっちゃったね?どうするのフウカ君?」
「とりあえず、水漏れした一階の片付けをしないと」
そうこう言ってる間にケイトが入ってくる。
「ねぇ、談話室で水遊びしたのは誰!」
ケイトの視線がとりあえずと手から溢れる水をバケツで受けてるソウジ君に止まる。
「いや、これには事情がありまして…」
「どんな事情かしら?」
「えーと、時魔法の防水性について実験です。フウカさん、助けて下さい!」
「ソウジ君、そうやってすぐフウカに頼るの私は感心しないわよ?」
「いやだって、今回の件はフウカさん主導の研究ですし」
「そうですね…確かに私主導の研究ではあるし、ソウジ君も良かれと思って試してくれた事なんですけど…独断専行だし」
「確かにソウジ君、無断でやったよね?」
レンはソウジ君の頬をつつく。
「そ、そんな殺生なー」
ソウジ君を見てから、ケイトの方を見る
「ケイト、ごめんなさい。次からちゃんと準備してやるようにさせるから、今回は許して?」
ケイトは小さく息をつく。
「そうね…」
ケイトの心境は複雑だった。
正直に言えば、ぶっちゃけフウカに謝られた時点、いやソウジが一言謝ったとしても二つ返事で許して良いと思っている。
実際、水漏れした一階に滴ったのはほんの数滴で、テーブルの上だったからフキンで拭いて既に片付いている。
ソウジもこれ以上事態が広がらないように水を抑える策を既に取っていて、特別言わなくても良いように思えていた。
しかし、ソウジは既に何度か屋内での水魔法使用で調度を破壊したり、家を氷漬けにしたり、一言で言えば前科があった。
「ソウジ君、ソウジ君が家で水魔法でやらかしたのってこれで何度目かな?」
「我のやらかしも含めれば大きいのが3回、細かいのが10回以上だな」
「だよね?暫く室内での水魔法の使用は控えて貰おうかしら?」
ケイトは殺さんばかりの視線を向ける。
「は、はい…」
ソウジはバケツから右手を出して魔法陣を砕いた。
「ソウジ君、そう言う魔法陣は不用意に砕くとっ!」
「え、割っちゃダメなんですか!?」
「割ったらなんだって言うの?」
◆◇◆◇◆◇
ルミ:「割っちゃダメなのか?」
アイ:「ええ、魔法とは言っても仕組みがあるからね」
メイ:「仕組み?」
アイ:「ええ、魔法はイメージを実現するものだけど、どうやって動いてるのかをイメージした方が取り扱いは楽になるのよ。パソコンと一緒よ」
ルミ:「ぱそこん?」
アイ:「水を湧かせる魔法でも、『作った水をそのまま出す』魔法もあれば、さっきのソウジ君みたいに『作った水をちょっとずつ滴らせる』魔法もあるでしょ?」
ルミ:「確かに」
アイ:「一度に湧いた水が同じで、出る量が違うとき、その差分はどこにあると思う?」
ルミ:「んー、ん?わかんねっ」
メイ:「魔力の中にはないし、手の中の筈がないし…魔法を制御してる空間とか?」
アイ:「正解、魔法を制御してる空間にあるの。で魔法陣はストッパーの役割をしてる場合があるのよ」
メイ:「少量の水を一定に生産する事はないんですか?」
アイ:「そう言う風に設定すればできるけど…一回作る時の労力が多くても少なくても同じなら、一定の量をずっと作りながら出すより、一気に作ってちょっとずつ出す方が簡単でしょ?」
◆◇◆◇◆◇
脳内の魔法解説を聞き、私は一瞬の内に起こった事を整理する。魔法陣が割れると共に瞬時に大量の水が弾き出されるように出現して部屋が水浸しになった。
当然だが研究資料も、メモ書きも、その場に居た私達も、そしてケイトもびちゃびちゃになった。
場に沈黙が訪れる。
「なんか、すいませんでした…」
「いいわ、これは事故だものね…でも、一つだけ言っておく事があるわ。ちゃんと片付けなさい?それと、家の中で水魔法使うのは暫く禁止ね?わかった?」
ケイトはソウジ君の下顎に人差し指を突き立ててそう言うと、部屋から出ていってしまう。
「どうする?ケイトちゃんがあそこまで怒るとなると…ここで研究するのはちょっと難しいかもね」
レンは資料を次々箱に放り込んでいく。
「そうですね…『水よ集え』いっそ研究用の場所を別で用意しましょうか」
「それいいかもね。ソウジ君何してるの?片付けは」
「わかってる。『我が力より生まれし水よ、そのみを世界に溶け込ませ循環の内に合流せよ 気化』
水が浮かび上がり蒸発して消えていく。
「ソウジ君、魔法禁止…」
「あ…」
▼△▼△▼△
そうして私達は南の島に研究施設を建設することになったのだ。
「ってあなたその場に居たでしょ?」
「うん、これはアレだよ。回想に行くための振りってやつだよね」
レンはオールのような棒で生コンを混ぜ返す。
「それで?フウカ君、なんで態々一から作ってるの?僕が丸っとポンって出しても良いと思ったんだけどさ?どうせミゼリアちゃんには内緒なんでしょ?」
「内緒は内緒ですけどどのみち島を買い取りたい旨を伝える必要がありますし…別に一から作る理由もなかったですね…」
一同の視線と言うかジト目が私に集まる
「はい、撤収ーー!!片付けてー」
レンは生コンを消すと、用意していたいろいろな道具を片付ける。
私も急いで空間魔法を全部撤去する。
「ほらどいたどいた、家が建つよ~」
レンは手でどけどけとやると、こめかみに手を当てる。
「どんなのにしようか…」
「別に掘っ建て小屋で十分ですよ?」
「どうせだったら欲だそうよ?」
レンは紙とペンと机を創る
「うーん、向こうと繋げるのは良いとしてどう繋げようか?」
「無難な所では地下室ですよね」
「二階の廊下の突き当たりとかでも良いと思いますよ?」
「たぶん、今のフウカ君なら魔法陣って言う連絡通路なしに地繋ぎにもできるだろうし、地下室から外に出たらここの島って風にするのも手段だよ」
「どのみち作業用の建物は欲しいけど、安全上の問題から離れにしたいよな」
「じゃあ、その辺に扉だけ作っといてその枠に沿って空間に穴を空けましょうか。ほら、レン。創るのは貴方の仕事ですよ」
「あ、もうそう言う役割分担なのね。って…はっ!初めてフウカ君が僕の事を名前で呼んだ!!」
「何か問題でも?」
「あの口を開けばいつも悪態ばかり、僕の事は神か駄神か貴方としか呼ばなかったのに!僕は感激のあまり、海も割れそうだよ!」
ソウジがレンの頭をおもいっきり叩く
「イダッなにするのさ!」
「考えるな、ホントに割れたらどうする」
「大丈夫、大丈夫。僕は君と違って自分の力を確りとコントロールしてるから、君みたいに暴発とかはしないからさ!」
直後海がに水柱が立つ。
「暴発って言うとやっぱりこうだよね」
「したじゃないですか!」
「したね♪まぁまぁ、誰も犠牲にならなかったし良しとしようよ。じゃあ作るものをぱぱっと作っちゃうよ!」
こうして二人と一柱の建設は幕を下ろした。




