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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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男は船、女は港、フウカは?

作者:「なんとか今日中には書けた…」

レン:「そんなに書きにくかったの?」

作者:「レズシーン久々で…でも、楽しかったから良しにして欲しいな~」

ジン:「違うだろ?まず始めに『遅刻してすみませんでした』だろ?」

作者:「は、はい。遅刻してすみませんでした…」

レン:「ついにジン君の圧力に屈したね!」

作者:「ちがわい!」

私はこの時、転生してというか人生初なレベルでイライラしていた。


使えない魔法研究室に、無意味な研究開発に、週一でドックまで足を運ばなきゃいけない現状、当たり前の事を当たり前に言うソウジ君に、当たり前の事をわざとらしく無暗に誉める神。


私は、思う通りに進まなくなった状況が不安で、他人に引っ張られるのが腹立たしくて、とにかく不安定だったんだ。


――そして、魔法の本質が願いを叶えると言うことを完全に忘れていた――


私は無意識に発動した転移の光に呑まれて、空間を飛び越えた。

無意識だからもちろん行き先なんか想定してない。


「ヤバイ、ヤバイ、壁とか障害物の中は勘弁して~」


そして間もなく転移の光が晴れると圧倒的な浮遊感を内臓に感じる。

まあ、はい…上空に出たみたいです。

天気は雪でかなり薄暗くて視界も悪い。

見渡せばエネシスの海も、山脈もアリシアや、ケルビン近郊のクレーターも見えず、あるのはずっと広がる白い雪原と遠くに点のように見える光だけ。


「ははは…あははははっ、壁じゃなくて良かったぁ…」


私はついた息が白く凍って流されるのを見て、自分が落ちている事を思い出した。


地面が近づくに連れて点のように見えた光が何か判るようになる。


それは少し豪奢な馬車だった。

馬車に吊るしたカンテラの光が見えていたようだ。


私はやっと魔法を練り上げて背中に翼を造り上げる。

羽はいつもよりも濃くハッキリとしていてうっすら白く輝いていて、天使のようだった。


「認識の違いでここまで魔法が変化しちゃうのか…」


私はただリンやエルさんみたいな翼を想像しただけなんだけど…


「いや、イメージがそのまま反映されたのかな」


だとしたらなんで光るんだろ…疾風の翼が光ってたから認識に影響が出てるのかな?


とりあえず私は地面に降りることにする。


降りるに連れて、馬車やその周りの景色がハッキリとしてくる。


馬車は遠かったからわからなかったが、こっちに向かってきていた。その後ろに雪に紛れて白いモヤみたいなのが張り付いて飛んでいる。


それらは近づくに連れて速くなっていく。


『あ、速くなってる訳じゃないよ?』


『え、違うの?』


『うん、遠くに居ると視界の中での移動する距離が遠近法による目の錯覚で短く見えるから、見かけ上は遅く見えるんだよ』


「……よくわかんないけど、助けとこうかな」


私は魔力を練って弓を作る、イメージはいつもの疾風の弓だが弓と言うからには実体を伴った物を思い浮かべてしまうのもまた事実。


周囲の魔力が寄り集まって私の手の中に弓を形成していく。

荒く結晶化した弓が余分な結晶を削って滑らかに整形されていく。


あっと言う間に魔水晶の弓は蒼穹を思わせる青みがかった幻想的な弦のない弓へと変質する。


『へー、フウカちゃんはこう言うの好みなんだ~』


「別に好みって訳じゃないですよ。ただ、イメージがこれだっただけですよ」


弓に矢を番えるイメージで魔力を練る。

正確には重ね合わせの分子を、イメージで練る。

イメージはいつもの疾風の矢――


――ではなく、モヤを纏めて凍らせる冷気の爆発と氷結で纏めて仕留める。


そして弓を引く。

弦のない弓から魔力が解れて、捩れて、湖代って、矢を成していく。


実際どうなるかは私にもまだわからない。

もしかしたらあまりの威力で馬車が横転したり、街道が吹き飛ぶかもしれない。


しかし、私はそれを特に考えることもなく射た。


▼△▼△▼△


馬車はスピードを上げての風花の舞う中を東に向かって駆けていた。


「急いでくれ、街道が凍ってこんなところで立ち往生してたら戦争が始まってしまう」


僕こと、ハルト・エレスティスは特殊な処理で一定範囲内の塵を弾く障壁を張った馬車を走らせていた。


障壁が地面に落ちた氷の欠片と舞ってくる雪と砂塵を弾いて、馬車はガタガタ、馬はパコパコ石畳を踏んで進む。


後ろには、魔力を感知して降りてきた雪のエレメント達が追いかけてきている。


何か彼らの気に障るような事をしただろうか、恐らくたまたま出会ってしまった、たまたま降りてきた所を撥ね飛ばしてしまったとかそう言う理由だろう。


彼らの肉体は全てが何らかの物質でできていて、脳や筋肉を構成する部位は存在しない。

僅かに魔力を宿した塊がゴーレムの核のように機能することで肉体を構築・維持している。


倒し方は簡単だ、なんらかの方法で核のような物の魔力を散らしたり使用できない状態にすればいい。


問題は、小さなエレメントの核はもっと小さくて人間の目では到底判別できない事。


そしてもう一つ、魔力を馬車の仕掛けに使ってしまっていて、ここで後ろのエレメントの群れを吹き飛ばせるような魔法を使えば、このあと仕掛けを維持できるかわからない事。


仕掛けが失われれば最悪この北ゼレゼス最南端の山脈の麓で凍え死にするかもしれない。


しかし、このままエレメントを引き連れて境界の平原手前の野営地に突っ込む訳にもいかない。


戦争を止める上ではそれも良いかもしれないが、血が流れては元も子もない。


僕は軍部の妨害を極力避けるために供は最小限の御者一人に絞って他は連れずに来ている。

最低限の武器はあるが、僕一人ではせいぜいオーガ一体が関の山。魔法を使えばもっと持つだろうが、それも今は叶わない。


そして僕はどうせどちらか選ばなきゃいけないなら僕一人で済む方を選ぼうと僕は馬車の窓から身を乗り出し屋根に登る。


この馬車と荷物を捨てれば馬と御者は野営地まで確実に辿り着ける。


最悪、念のために僕が道半ばに朽ちても事を成せるように書状を御者には持たせてある。


足手まといは斬り捨てて、確実に事を成す。

それこそ、戦場における最も合理的な判断だ。


兄さんなら確実にそうするだろう、僕をこっちに向かわせたのも着々と準備を進める軍部の妨害をさせて、少しでも民衆への被害を軽くするための策を弄する時間を稼ぐ為だ。


そうして僕は兄さんの出来損ないの弟として今戦場へ向かっている。

しかし、それもここまでのようだ。


兄さんの作った印象操作も自然相手には通用しない。


僕は運がなかった、ただそれだけだ。


僕は後ろを焼き尽くす為に懐に隠して来た短杖を構える。


しかし、事は僕が詠唱を始めるより速く動いた。


それは青みがかった矢のような物だ、矢にしては特殊な材質を思わせる輝きを秘めたそれが後ろのエレメント達のすぐ前に落ちた。


そこからは現実とは思えないような爆風と冷気が街道を含めた後方のエレメントや塵全てを巻き込んで吹き荒れて、白くきらめく冷気が晴れるとそこには完全に凍結した塊が鎮座していた。


矢の元を探して見上げると――そこには天使が居た。


黒い髪に白い衣装を身に纏い、雪のように白く光を反射する翼を背負った天使が、槍を手にそこに居た。


「まるで、天使だ…」


僕はそのお姿に見とれてしまった。

エレメントが消えて、冷気が収まり自然と雲が切れて光が差してくる。


その姿は神話に伝わる女神に等しく、僕の血筋の祖先とされる方にそっくりであった。


彼の天使は光が差すと同時に目映い光を放つと共に姿を消してしまった。


そして、神のご加護があってか僕はそのあとは何事もなく無事野営地にたどり着くことができた。

そして僕は兵士の全員に三日の余暇を与えると言う兄の指示を果たすことになる。


そして、ついでに兵士に僕は現れた神様の事を伝えようと思う。

戦場に舞い降りて、戦争を止めようとした僕を救った天使のような方の事を。


▼△▼△▼△


矢を射た直後、私は馬車の上に立つ人からの視線に気がついた。


声は聞き取れなかったが、アイーシャさんの知識にあった読唇術によって唇を読むと、「まるで、天使だ」と言っていた。


『フウカ、やっぱり天使だと思われてるみたいよ?』


『この翼ならそう思われて当然ですよ』


「天使て…私はどうするべきですかね?あの人を引き続き助けるべきですか?」


『んー、そうね。たぶん面倒な事になるから、ちょうど雲も切れてきたし薄明光線に紛れて転移しちゃいましょ』


「じゃあ、そうします」


もう、色々いっぱいいっぱいだし…帰ろ

帰ってケイトの所行こ…なんか色々話を聞いて欲しい…


そう思って転移を起動させた。


結果私は談話室の空中ケイトの目の前に転移してしまった。


「ふ、フウカ!?」


床に降りるより先にケイトを抱き締める。


「な、なになに、どうしたの?フウカから飛びついてくるなんて珍しい…」


「色々あったんだよ…ミゼリアさんの所の魔法研究者は使えないし、ソウジ君にはいじめられるし、転移は暴発するし、転移した先で天使と勘違いされるし、もうめちゃくちゃ…」


ケイトの手が私の背中を確り支えてくれるから私はケイトに体を預ける。


「弱気になってるフウカ、可愛い。いつも、可愛いけどいつも以上に尊い…ねぇ、今日はもう休んじゃお?」


ケイトの手があったかくて安心する。


「んー…はぁ、ちょっと休憩したらまた魔法の構築に取り掛かります…」


「働き者ね~そんなフウカが好きだけどさ。じゃあちょっとゆっくりしてて?ミルクティー淹れてくるから…」


ケイトの手が私の重心を安定させると離れる、私は少しだけ強くケイトを抱き寄せる。


「ケイト…もうちょっとだけ、こうしていたい。いいかな?」


「ウンウン、全然いいわよ!むしろ嬉しいし!」


私はちょっと久しぶりのケイトの温もりを堪能するのだった。


▼△▼△▼△


「それで?フウカちゃんはどこに行ったのかな?」


ミゼリアさんは内職を黙々と進めていたソウジの作業台の前に腕を組んで立っている。


「知りませんよ、転移先なんてわかりませんよ。涼がリンちゃんかエルさんと一緒に居れば聞き出せると思いますけど…涼は…」


ドックの一角を見るとちょっと気持ち悪い蒼い爬虫類がバチャバチャ泳いでいる。


『我はただの竜だから、人語とか、サッパリ、ワッカリマセーン。あー、海水しょっぱ』


バリバリ人語を喋る頭が九つの竜は海水から頭を出して喋りながら泳いでいた。


「あんな調子なんでわかりません。カートリッジの作成は順調に進んでますよ、23ダースなんで…えーっと276個できてますよ」


「フウカちゃんの魔法の引き継ぎの進捗とか聞いてる?」


「えーっと魔研の面々の概念優先度が低すぎてまともに使えないから嫌になるってぼやいてましたね、フウカさんは天才ですからね~凡人の苦労なんか理解できないんだと思いますよ」


ソウジはカートリッジを箱に詰める。


「困ったわね~早く仕上げなきゃいけないのに…因みにソウジ君は何してるの?」


「カートリッジを作る内職…ですかね」


「ねぇ、なんでアッチで皆と一緒に作らないの?」


「いや、それムリなんですよ。俺と皆じゃやり方とかプロセスとか違いすぎて一緒にやると効率悪いんですよ」


「いや、そこは上手く分担しなよ」


「いや、ホントマジでダメなんですってさっきも足引っ張りまくって、やっとの思いでこのポジション見つけ出してるんで」


「ほら、私が上手く指揮して纏め上げるから、指示通りに動きなさい。雇い主の命令よ!」


「い、イエス、マム!」


『おぉい!そっち平行にしとけよ?』

「よろしい、はい皆注目ぅ!!」

『うい!そっちこそ高さ合わせろよ?』

『おう!鋳型どこやったぁ!』

『あぁ?今そこで作ってんだろうが!ちゃんと見ろボケカス!』

『ボケカスは言い過ぎだろ!溶けた鉄でお前の胃の形の鉄を作ってやろうか?』

『騒いでねぇで仕事しろや!!鉄が冷めるだろうが!』


「ミゼリアさん?」


『あっちぃっ!鉄が跳ねたじゃねぇか!』

「皆、注目っ、注目ぅーっ!!」

『すまんすまん、火傷したなら冷やしてこいよ!』

『おい、慎重にな!ソウジさん!ここの回路ホントにこれで良いんですか!?』

『うるっせぇな、アドバイザーの所行って聞けや!』

『うるっせぇのはテメェだよ!仕事しろ!鉄が冷めるだろうが!アチィ内に叩きやがれ!』

「二段目の所間違ってるぞ!!回路持って来い!!」

『は、はいただいま!アドバイザー!』


「ミゼリアさん、声の出し方が良くないんだと思いますよ」


「え、私が悪いの?」


「まあ、たぶん大丈夫なんで、魔研の方掛け合ってきて貰えます?」


「う、うん…そうする…ことにするわ…(いや、絶対この空間が五月蝿すぎるのが悪いと思うんだけどな…)」


ドックの熱い昼下がりはミゼリア以外が男の店な熱いラーメン屋みたいなテンションで進んでいった。

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