天才の憂鬱
作者:「昨日は突然の激しい頭痛によりまともに執筆できず更新を送らせる事態になり誠に申し訳ありませんでした」
レン:「体調不良だし、別に義務じゃないし、仕方ないよ~大丈夫大丈夫、多少の事で君に怒るほど読者の皆さんは狭量じゃないよ。だって君の駄文を読んでくれるんだよ?凄い忍耐だよ、だって二章とか特に酷いじゃん?誤字多いし字数少ないし展開遅いしね!」
作者:「あー、ホントに申し訳ありません」
俺は騙し騙しでなんとかグループの中で作業を進めていた。
作業を進める中で、技師達との程よい距離感を獲得した。
俺は一人、作業中の喧騒にも聞こえかねない"連絡・報告・指示"の嵐が気にならなくなる程度に離れた位置で、金色に近い粒が練り込まれた円形の金属板と同じく円形のミスリルの金属板を重ねて、縁を特殊な部品で固定する。
それを何個も何個も大量に作っていた。
俺は無心でひたすら目の前の円板二枚と部品をくっつける。
そう、世界は俺の一部で俺は世界の一部。
これはカートリッジの底面のパーツで俺はそれをただ組み立てるマッシーンだ。
誰かと協調する必要もなければ社会性などこれっぽちも必要ないのだ。
社会性が必要ないなら俺は最早無敵だ。
「えーと…ソウジ君、ここの構造ってコレであってますか?」
フェイはコントロールパネルの内側に入れるミスリルの線を持ってくる。
「だいたい合ってます」
「どこが違いますか?」
「えーと、ここの水晶球の台座の部分、脚が一本多いですが許容範囲です。上手く調整してください。砲身との接合部分は保護担当班と砲身担当班と上手く擦り合わせながら進めてください」
「あ、はい。またわからなかったら、聞きに来ます」
フェイは自分の作業台に戻っていった。
そして俺は引き続きカートリッジの作成を進める。パーツは鋳造班がガンガン作ってくれているから俺はそれをドンドン組み立てる。カートリッジも構造は単純で魔力凝縮の魔法陣を展開する底面から外に向けて魔力を取り入れる為の導線が伸びて、広く広がった外側の羽で魔力を吸収する。後は作った魔水晶を閉じ込める円筒形の容れ物がついて居るだけだ。
羽と導線と水晶球のついたパーツと、円筒形のパーツはセパレートできるようになっており、円筒形パーツを大量生産すれば使わない間にドンドン魔力を貯められるようになり、構造が複雑で一個作る毎にフウカさんの水晶球が必要な羽のあるパーツは数を制限することでコストカットする。
ただし羽の部分は大量に作っている。
理由はお察しの通り脆いから。
で、俺は今新たに筒状の部品を手に取り、半球のパーツを取り付け、さっき作った底面のパーツをバッコリつける。
ロケットとか弾丸のような形になったそれを作業台の下の木箱に並べて入れる。
箱はちょうど12個でいっぱいになって、その箱が俺の後ろに6個積み上がっている。
「ちょっと思いましたけど、俺、内職向いてるかも知れないです」
俺は再び底面を重ねて部品で固定する
「いや、そんなことは今更だと思いますよ。ソウジ君がチマチマした作業を延々と繰り返すのが得意なのはレベリングが趣味って辺りで解ります」
隣の作業台の主が居ないことを良いことに勝手に占領してカートリッジを組み立てる内職に勤しむフウカさんは物憂げだった。
「あの、フウカさん…ここに来てて大丈夫なんですか?」
俺は上と底を合体させて箱に入れる
「いいんです」
フウカさんは、底面を1枚、2枚、と作って作業台の右端に並べていく
「いや、魔法の方はいいんですか?ここの技術スタッフさんに引き継ぎがって」
フウカさんは無言で左側に半球と筒を合体させたパーツを並べていく。
「って、言ってましたよね?」
「ソウジ君こそチームで生産効率を向上させるのが仕事ですよね?」
「だからこうして、内職に勤しんでるんですよ。フウカさん…まあ、だいたい想像つきますけど…魔法の引き継ぎ、上手くいってないんですよね?」
フウカさんは右手と左手にパーツを持ってくっつけて、箱に入れる。
「そもそもですよ?あんな概念優先度の低い面子に私の魔法を自在に扱うなんて不可能なんですよ」
「は、はぁ」
「魔法は物理的現象よりも精神的認知により左右されるって言うのを全くといって良いほど理解しない」
▼△▼△▼△
話は二時間ほど遡る。
私は『魔導技術研究室…通称"魔研"』と書かれた区画の戸を叩いた。
「失礼します、ミゼリアさんの指示で試作の魔法の引き継ぎに来たフウカ・アリシアです、ここの責任者のベリオさんは居ますか?」
戸の向こう側はなんとも、"なんとも"な空間が広がっていた。
散乱する紙、壁に床に至るところに書かれた魔法陣とそれを計算しようとしたと思われる数式。
やたらと積み上げられた書物には背表紙と表紙と裏表紙を除いた全ての面に付箋紙と思われる紙が挟み込まれている。
そして幾つも棚や机の上や床に並べられた宝石や魔石や試験管のような容器に納められた数々の資料。
列挙した色々が混沌を織り成した、なんともな部屋であり、おそらくこの部屋を作り出したと思われる三人組の中から一人が立ち上がる。
「ご無沙汰しております、フウカ様。お話はミゼリア様から聞き及んでおります。此度のご尽力になんとお礼を述べたらいいか…ささ、少々散らかってますがどうぞ」
「少々ってレベルじゃない気がします」
しかし思い返してみると、自分も人の事を言えた義理ではないのを思いだしてそれ以上は口を閉ざした。
「え、まじ?、魔研に女の子が来たー!しかも可愛いー、魔術的奇跡だー」
書物の山が崩れてひょろっとした男性が露になる。
「彼は、デック。デック・シーゼリア、シーゼリアっていう北西にある街からミゼリアさんが連れてきた魔法研究者です」
「デックでーす。ねぇ君、俺が魔法を見せてあげようか?」
「デック、こちらはフウカ様。今回の魔導機関砲の設計者で、使用される魔法の開発者でもある。名前ぐらい聞いたことあるでしょう?」
「んー、知らないわ。じゃあフウカちゃん、これからよろしくね」
デックから手を差し出されたから一応握手しておく
「あ、はぁ、初めて女の子と、あぁあ握手したぁ!」
「デック、落ち着け。キモくなってるぞ」
「はっ!ごめんごめん、今のは忘れて?」
「魔研は見ての通り魔法バカの集まりだから、多少は多目に見てほしい」
「まあ、良いですよ。そこまでの人は珍しいですけど、喜ばれて嫌な気はしないので…」
私は手をコートでさっと拭った。
「デック、ケイジを起こせ」
「えー、また俺っすか?たまにはリーダー起こして下さいよ」
と言いながら渋々、デックは足元の本を拾い上げると、それを資料の山に無造作に落とす。
当然、山を構成する色々がぶつかって色々な音がする。
「うあぁーっ!何てことするんだ、この色ボケ野郎!!」
「お前がいつも眠りこけてるから起こしただけだ」
「だからって資料に当たることないじゃないか!」
「じゃなきゃお前は起きないだろうが!」
「いや、起きるよ!あ、どうも。普通に起きるよ!僕かて、いつも眠りこけてる訳じゃないやい!」
デックはケイジと呼ばれた少しふっくらした男性の頭をはたいた。
「イテッ、叩く事ないだろ!」
「そうですよ、デック。暴力はいけません、何事も魔法で解決するのが魔研ですよ」
「いーや、その前に自己紹介しろ。彼女がミゼリアさんの言ってた開発者のフウカちゃんだってさ」
「あ、えー、はじめまして…僕はケイジ・エネシス、です。よろしく…お願いしまsu…」
ケイジは尻切れとんぼな自己紹介を終えると俯いてしまった。
「こいつ人見知りするんだよ。おざなりな自己紹介でも許してやってほしいな」
こうして私は魔研の三人と知り合った。
で30分後
「フウカちゃん、これホントに合ってるの?俺ら三人、先ずまともに起動すらできないんだけど?」
大砲に組み込む予定の魔法を順に確認していた。
「おかしいな…一昨日私がやったときはちゃんと起動したんだけど…『汝は力、汝は罰、願いに答える力の根源よ、願い手の指し示すままに、彼の的を撃ち滅ぼせ マジキャノン』
イメージしたのは槍の形をした魔法が、遠くにある岩礁の一つを爆砕する光景だ。
魔法はイメージを見事に再現して槍、のような形を取り、岩礁を手前の海ごと蒸発させる。
「ひぇー、スゲー威力」
「おお、これはなかなか。これを皆が使えればとんでもない戦力ですね」
「でも、なんで僕らは使えなかったんだろ」
「おそらく、イメージの問題です」
「イメージと言うと想像ですか?」
「そうです。魔法は願いです、使用者のイメージと願いに応じて発動します。作る場合には、より明確でより強固な想像を必要とします」
「は、はぁ…それで」
「この魔法は高い汎用性を実現するために、挙動の殆どを定義していません。その定義されていない部分を補完する為に通常の魔法よりも明確な願いが必要となっています」
「フウカ様、言いにくいのですが…おそらくフウカ様がこの魔法を発動できたのはその類い希なる才能故です。魔法とは我々の体内の魔力が杖を介して外に伝播することで周囲の物質に影響する現象です。思考や想像が影響することはあり得ません。影響があるならば、一般に広く普及している定型詠唱の効果も人によって変化する事になります。しかし定型詠唱は誰が使ったとしても常に一定の効果を持ちますので、影響はないかと」
「定型詠唱がそうある理由はおそらく先入観が原因だと思います。例えばですね…簡単な魔法ですが、ミニファイアと言う魔法をご存知ですか?」
「ええ、家庭などでよく使われる火種の魔法ですね。呪文さえ知っていれば誰もが使えます。だいたいが親指の爪ぐらいの大きさの火が空中に灯り、灯す先へと飛びますね」
「私が先入観を排除して唱えればこうなります『炎よ、彼の者に微かに爪を立てろ ミニファイア』」
私の指先に灯った炎は何度かその体をくねらせると鋭利な猛禽類の爪のような形を取る。
そして、火のついていない開いたままのオイルランプの中に入っていき芯に爪を立てると爆発的に燃え上がり、その余熱でランプは煌々と光り始めた。
「となります。そうイメージしたからこうなりました。おそらく皆さんはこの魔法を知るときに絵や実践を見ているのではないですか?」
「た、確かに。教わったときはギルドの教室で先生が使って見せてくれました。そのときはポッてついて飛んでって静かに蝋燭に灯る感じでした」
「さっきの魔法も恐らくは同じです。さっきの私の魔法をイメージしてもう一度詠唱してみてください」
「良いけど、俺ら天才じゃないからたぶん上手くいかないぜ?」
デックはぶつぶつ言いながらも集中する
『汝は力、汝は罰、願いに答える力の根源よ、願い手の指し示すままに、彼の的を撃ち滅ぼせ マジキャノン』
デックの杖から放出された魔力は一度棒状になるとへなへなと飛んでいき、海面に触れるか否かと言うところで霧散してしまった。
「ほら、やっぱりできっこないですよ」
「いや、ほらさっきと違ってちゃんと形にはなったし、練習すれば使えるかも?」
「では、もう少し練習してみます。フウカ様は念のためもう少し簡単な魔法をお願いします」
と言う事で私はもっとイメージしやすい呪文になるように約一時間頭をひねり、三人は約一時間練習したがまともな成果は得られなかった。
私は岩場に腰を下ろして壁にもたれ掛かり、意識を精神世界に飛ばしている。
「フウカ、彼らができない理由は一重に概念優先度の差が原因でしょう」
「概念優先度?なんですかそれ?」
「そうですね…世界における立場のような物ですね。これが高いほど世界の中で多くの権限が扱えるようになります」
「なるほど、パソコンとかで言う閲覧者とか管理者とか編集者の機能制限みたいな物ですか」
「ええ、そのイメージであってます。フウカ、あなたの立場は転生者です。最優先で世界から守られる立場ですのでそこそこ概念優先度は高くなっています。しかし彼らはこの世界の住人で人間です。当然、母数も多いため優先度も低くなっているのです」
「つまり、私には許されるからと言って彼らにも許されるとは限らないと?」
「はい、まあ魔法については練習と表現の工夫次第では上達はしますけどね。それでも魄からの伝わり方はフウカに比べれば鈍くなるでしょうね」
「ならもっと明確なイメージが必要ですね」
「(この子意外と脳筋だわ)」
そして、意識を戻すと
「だからやっぱり無理なんですよ!科学的にも理論的にも!」
「ごめん、フウカちゃん。これ以上は付き合いきれないよ」
「私らにできなくてフウカ様にできる理由を探ればできるようになる糸口は見えるかもしれませんが…時間が押しているで別の魔法を考えましょう」
三人は再び魔研の部屋に籠り始めた。
取り残された私はとりあえずやることもないからソウジ君の所を見に行くことにした。
▼△▼△▼△
「だから、私がさっさと言って帝国だか北だかを消し飛ばせばそもそもこんな回りくどい兵器開発は必要ないんですよ!」
「あははは、フウカさんの周りの人って優秀な人が多いですからね。ウスノロにイライラするのはわかりますけど、そういう人を育てないとそのうち優秀な人はいなくなっちゃいますよ」
俺は12個目のカートリッジを箱に入れるて背後の箱の山に積み重ねた。
フウカさんは無言で立ち上がると、12個入った箱をそのままにくるっと向きを変えて、歩いていく。
そっちは魔研の研究室のある方…ではなく出口の方だ。
「え、どこ行くんですか?」
「帰るんですよ」
「魔研の三人に教えなくて良いんですか?」
「良・い・ん・です!」
フウカさんは怒気の籠った声で言うと、藤色の光を収束させて姿を消した。
「うわ~、珍しい…あのまるで神仏のように温厚なフウカ君が怒ってたよ?ソウジ君、何したの?」
レンが前触れもなく湧く
「いや、ちょっと話を聞いてただけだけど」
「どうせ、フウカ君の頑張りを否定するような余計なこと言ったんでしょ?あーあ、僕は暫く姿を眩ますよ。ソウジ君、ほとぼりが冷めたら電話して?」
レンは自分の言いたいことだけ言い終えるとさっさと姿を消す。
俺は内心で大変な事をしでかしてしまったのかもしれないと思った。
恐らく、今俺の顔は空よりも青いだろう。




