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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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蒼、ボイコット

で、雪の日の翌日。


アリシアの局所的な雪はすっかり止んで、寒空に唯一の温かみとして太陽が浮かんでいる。


そんなアリシアの事は露知らないエネシスの町並みは白く染まることもなければ霜すら降りず、南国の冬を思わせる陽気が海底洞窟をリフォームして作られたドックにまで伝わってくる程に穏やかだった。


「経過報告に来ました。ホントはもう少し籠って作業したいんですが…今日を逃すとまた暫く籠ることになりそうなので、早めに来ました」


私は杖を背負い、魔法の構成を考えて書きなぐったメモを軽く整理した報告書とレンに書かせた簡単なイメージ図と設計図を小脇に抱えてしぶしぶここに足を運んだ。


「魔導機関砲は順調?」


ミゼリアさんはここの技術者が私の出した試作品を元に改めて作った、量産型魔導原動機と設計図を見比べて居た。


「ソウジ君にも手伝って貰って現状なので前回の魔導原動機に比べるとなかなか難産ですが、魔法に関しては現在射手と意思の定義に成功し基本となる弾とそれを補助する魔法について構成を練りコストパフォーマンスの向上に努めています」


「まあ、大方順調と言うことですね…技術者の皆さんが寂しがってたよ?チーフが全然来ないから」


ミゼリアさんは魔導原動機の設計図を作業台に乗せて私の報告書をパラパラと見る


「いや、私は技術者って言うより魔法が好きなだけで、そんな大したものではないので…」


「んー、ダメ。さっぱりわかんない。この元になってるメモの転記の所なんて私にはさっぱり理解できないわ。私さ、やっぱりエネシスの領主だから船には詳しいんだけどフウカちゃんのメモ書き読んでも何がどうしてこう繋がるのか全く理解できないんだよね。だから私に取ってはフウカちゃんも凄い人の一人で、立派の技術者だよ?」


「買い被りすぎですよ。頼りたくないやつの助言を受けないとここまで漕ぎ着けられなかったですし…」


脳内で今は、こっちの提出用とは別で私の発想で作ることになったスマートな方の携帯主砲の構想を練っているだろう神が言う


『いやいや照れるな~確かに僕は凄いけど、僕の"おかげ"だなんて~あはははー』


誰もそこまで言ってないし、黙れ神


「へぇ、フウカちゃんと同等に魔法の話をできる人が居るのか~是非とも紹介して欲しいな~」


「お断りです。アレと仕事するぐらいなら私はこの仕事を下りますよ」


「ふふ、それは困るから紹介はしなくていいよ?それで、水晶球の方はどう?上手くいきそう?」


「まあ、魔法の構築さえできれば入れ込むだけです。呪文について私以外に唱えられるかはやってみないことにはわかりません。ご存知だと思いますが、魔法の挙動には未だに解明されていない側面が多分に存在しますので」


「まあ、そっち方面の技術者の皆が上手く習得してくれれば大量生産も夢じゃないしね。そう言えば、さっきソウジ君に主砲制作班への協力をお願いしたよ。彼が組み立てたっていう魔導回路は新技術が過ぎて技術者達も試行錯誤してやっとコレを作り上げてくれた所だよ。けど、やっぱり時間がなくてね」


ミゼリアさんは魔導原動機を撫でながら言う


「時間…予定より早いですね」


『北の動きが予想より早い、積雪があるにも関わらず平原の拠点に資材を移送しているという報告が入っています。境界の平原を突破されれば、狙われるのは最も境界に近いゴルーゾ、そしてゴルーゾから王都は目と鼻の先ですからね』


ブロードさんが音もなく物陰から出てくる


「当然、我々も易々と王都まで攻め込まれる訳にはいかないため、相応の兵力を平原の際に展開する事になりました。このまま加熱すれば戦端が開かれるのも時間の問題ですね」


「で、海軍も帝国への牽制を掛けるのが必須な現状あんまり時間を掛けてられないのよ。で、とりあえず戦艦の完成を急ぐわ。フウカちゃんには魔法の構築とその伝授を急いで欲しいの、とりあえず魔法の構築が完了したら早急に私に教えて頂戴ね?」


「それと、もう一件。できればフウカさんたちにも戦場にいらしてもらいたいんです」


「それは兵力としてですか?」


「瞬撃の隼の移動速度と汎用性を生かして支援物資の輸送や負傷者の護送を担って頂きたい」


「それはケイトとの相談次第ですね。戦争の早期終結は私も願うところですので協力は惜しみませんが…あくまでも私の得意分野は大雑把な広域殲滅ですので」


私は自分の力を持ってすれば今すぐにでもここら一帯の国を武力で統一できる気がしたが、一度口を閉じることにした。


▼△▼△▼△


一方で、ソウジの方はと言うと…


「よう、兄ちゃん。俺は魔導原動機のピストン部分を担当してたストル、一緒に頑張ろうな!」


ストルがソウジの背中を叩く


「僕は燃焼窯の担当のタリスです。あなたが魔導原動機の設計を手伝ったっていうソウジ君ですか、意外と…若いんですね」


タリスは高身長故に少し屈んでソウジを見てそう言った。


「あ、自分は魔力投入口と魔力回路を主に鋳金しました。鋳金技師のフェイと言います。早速なんですけど、ここの操作パネルなんですけど周りって金属である必要があるんですか?」


フェイは早速設計図を鉛筆で指差して言う。


「はい、皆さん…ヨロシクオネガイシマス。で、そこは木製でも良いんですけど、木製だと水晶球を埋め込んだり、回路を彫ったり埋めたりするのに不便だから、加工のしやすい金属を採用してます。ホントは樹脂製が良いんですけどね」


ソウジはガチガチに緊張していた。


「おう、そうそうここのなんだ?リピーター?って所なんだが、もう少し金属を節約出来ねぇか?このままじゃ嵩張りそうだろ?」


「あの、この砲塔部分の金属の接合部分なんですけど、強度をあげるために外側を金属板で覆うとかすると良いと思うんですけど、どうですか?」


「えっとそこは特別ギミックはなかったはず…砲塔は俺の設計じゃないからよくわかんないけど、魔法陣がそこから外に向かって貫通する可能性が捨てきれないので今はなんとも…」


「じゃあとりあえず砲塔は後回しにして、制御板から取りかかるだな。あ、砲身内部のこの螺旋の溝は必要なのか?」


「えっと、確かそれはライフリングって言って、摩擦力の差で弾に回転を付けて真っ直ぐ飛びやすいようにする細工で魔法を構成する魔力も粒子だからライフリングの意味はある」


「でも、打ち出すのは魔法だろ?」


「通常弾頭も装填可能にするのもあって必要らしい。それにあると錐揉みにならないから届かせるのに使う魔力の節約効果も見込める」


「なるほどな、コレを彫るのも骨が折れそうだな」


「特別に道具を作る班にも人を割こう。兄ちゃんは制御板の方を手伝ってくれ。おい、二班は俺と螺旋彫りの道具作りだー!」


紹介した他にもワラワラ居る技師達がワラワラと作業を始める。


ソウジはなんとか邪魔にならないように皆に合わせて頑張ろうと努力しました。


◆◇◆◇◆◇


ソウ:「やったんですよ、必死にぃ!!」


ジン:「どっかで聞いたことある気がするな」


作者:「わかるわかる、集団行動とかクラス別行動とかってキツいよね…」


ジン:「わかるってそっちかよ!」


作者:「足引っ張ったり、やり方の違いで余計な波風立てないようにとか考え始めると段々上手くいかなくなってくるんだよ」


ソウ:「わかる、ホントそれ」


レン:「・・・、・・・・・ん?そんな事考えたこともなかった。周りが合わせる物だと思ってるから」


ジン:「お前、その合わせてる周りがどう思ってるか考えたことあるか?」


レン:「んー、ない!」


ジン:「だろうな!」


◆◇◆◇◆◇


そして一時間後


「あー…もう無理。あの空間耐えられない…あははは…」


ソウジはドックの海蝕洞の入り口近くでぷらぷらしてた。


アシストに回ろうとして色々やったがまず作業の仕方や道具なんかが皆バラバラというか知ってるものがなく、知識はあっても皆とやり方が異なるから足を引っ張る一方で役に立てず居づらくなって逃げてきた次第…


「ああ、その通りだよ!鬱陶しいなお前はぁ!」


レンは体育座りで海を眺めるソウジの肩に手を乗せる。


「まあ、君は元々そんなにコミュ力高くない陰キャだからね」


「そうだよ!俺はフウカさんと違ってリアルであんなに大勢に囲まれて期待されたのは初めてなんだよ…」


「期待されるのはツラいよね~僕もそう思うよ。皆、無責任に言ってあとは知らん振りだしね~」


「あー、手伝いにきて足引っ張るとか笑えないわ…ホンっトにさ…」


「僕は嗤うよ?あはははっ、めんどくさいことに首を突っ込むからそういうことになるんだよぉーだ!ははははっ」


「お前、ホント…クズだよな…」


「そうかな?そうかもね、でもバカを見てるのは僕じゃなくて君で僕はそれを眺めて笑ってる。正直者が損するのが世の中だよ」


「そうかもな、お前に比べれば俺は生粋のお人好しかもな」


「言えてるー!そもそも、なんで戦争なんかに首突っ込んでるのさ?」


「そりゃ、フウカさんが首を突っ込んでるから…」


「君は自由だよ。最初こそ慣れるまでの間の宿のためにフウカ君を紹介したけど君はもう一人で生きられる。君はもうフウカ君に縛られる必要はないよ」


レンはいつの間にか手に持ってた鎖を塵に変えて海に撒く


「そうかもな、それでも俺は今の生活が気に入ってるんだ。どこに居ようと俺の自由だろ?」


「うん、勿論だよ。でも以外だな~ソウジ君が仕事をボイコットとは…」


「ボイコット?ちげぇよ、これはサボタージュだよ。こうしてサボる事で作業の効率を上げ…なぁ、俺…前にもこの話をお前としたっけ?」


レンは一瞬驚いた顔をするといつもの惚けた顔に戻る


「さぁ?どうだろうね…もしかしたらしたかもね?」


「そうか…そう言えばお前はやけにフウカさんに固執するよな」


「そうかな?僕は君らの安全で健やかな余生を近くで見守ってるだけだよ?」


「…ま、そう言うよな。さてと、嫌だけど仕事だしやらなきゃな」


「あ、そうそう。ソウジ君、ボイコットは不買運動の事で作業を完全に停止させたりするのはストライキって言うんだよ?」


「だから、俺がやってたのはサボタージュだよ。それに、そのセリフそのままそっくり返してやる!」


「あははは手厳しいな~」


レンは(ノ∀`)タハーとジェスチャーする。


「まあ、お仕事頑張ってね~」


そうして俺は仕事に戻り、また一時間後元の位置に戻るのだった。


「君もまた学習しないね~」


レンは┐(-。ー;)┌と態度で示す。


「やっぱり集団行動はムリ。ついてけん…」


「フウカ君もだけど…君は特に他人と一緒に仕事をするのをなるべく避けた方が良いと思うよ?」


「ホント、そうかもな…」


そうして時間はゆるゆると冬の雲と一緒に確実に流れていった。

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