吹雪始めはサラサラと
作者:「遅くなりましたが更新です!」
レン:「遅いよ…」
ジン:「遅刻だな」
作者:「それがさ?ずいぶん前に19:00更新に戻すって言ってたの忘れてて実は今までのあんなときやそんなときも遅刻ではなかったのかもな~って」
ジン:「あぁっ!!確かに言ってた!けど、変えたなら忘れるなよ…」
家に衝撃が走った。
もちろん比喩だ。
俺の魔法でガチガチに固まって今となっては斬っても撃ってもどこも傷つかない家が震えるなんてあり得ない。
だから衝撃が走ったのは俺とケイトさんの体なのだろう。
談話室はここ最近類を見ないレベルで散らかっており、家具が纏めて芸術的なまでにコンパクトに積み上げられ、代わりにレンが出したと思われる黒板が壁際に陣取り、前の机より無骨で無機質な、理科室の作業机が部屋の中央に鎮座している。
レンは黒板を教鞭で叩きつつ話し、フウカさんは
「やっぱりタンクに魔力を詰め込んで小分けに消費できるのがベストですね」
黒板にチョークを走らせながらレンの向かいに立っていた。
「地味になるけどね!僕はやっぱり、全魔力を一気に消費できる機構も欲しいと思うよ?」
「まあ、派手ですけど…そのあと困るでしょ」
「まあね…魔力を無限に大気中から抽出できる機構とかあれば、欠片とか使わなくて良いんだけどね…」
「抽出は出来てもそこまでの量が入手できません。魔石を燃やして得られる量もたかが知れてます」
「そうなんだよね…門はどう?」
「汎用性に欠けます」
「注文が多いな~なんで態々下界にある素材で作らなきゃだめなのさ」
「単純に、量産する予定があるからですよ!」
「面倒だな…」
それを俺とケイトさんは談話室の入り口で見ている。
「いつからこんな感じなの?」
「十分前ぐらいに俺の所に主砲について相談に来てからですね」
「あんなに仲良かったっけ?」
「あの二人、いつも啀み合ってるけど別に仲が悪い訳ではないと思いますよ?なんと言うか、だからこその信頼と言いますか」
「私にはよくわかんないわ。それでソウジ君、掃除は終わったの?」
「一通りはですけどね?元の状態には戻ってるので、大方期待には添えたと思います」
「ふーん、ソウジ君はアレ、何をやってるかわかるの?」
再びフウカとレンに目を向けると
「使用する魔法はミスリル製のコントロールパネルで制御、魔力をタンクから吸い上げて、魔法を砲身で発動、発射します」
「いいけど、タンクはミスリル製なの?だとしたら強度に難があるかもだけど…」
「そこは外側に硬度が高くて、魔力透過が小さい鉄をコーティングします!」
「なるほどね、それで魔力の流出を防ごうってことかちょっと粗いけどやってみよっか」
「ん?」
「僕は物作りの神様だよ?このぐらいの物手を動かすまでもなく作れるんだよ。上手く行くか思考実験するより、実際に作って試した方が早いよ」
私がイメージしたそれとは若干異なるけど似たような造りの大砲が理科室の机を押し潰してそこに現れる。
「あーあ、もうぐちゃぐちゃ…」
「そこはご愛嬌、それに今からもっと無茶苦茶になるよ?ここのタンクは内側をミスリル、外側を封魔鉄鋼で覆ってある。これにフウカ君特製魔水晶を入れると…」
たった一個、魔水晶が放り込まれた途端、タンクが丸く膨らみ、爆ぜた。
千切れ飛んだ封魔鉄鋼とミスリルが部屋に散乱したバラバラになった金属片が床の至るところに散らばっている。
「は、爆ぜた…」
「そうだよ。魔力伝導率が高いミスリルから直接、魔力絶縁体とも言える封魔鉄鋼に魔力が流れ込むと二つの間に共に斥力が生まれて、中にたまった魔力のエネルギーでバーン!ってなっちゃうんだよね~フウカ君なら考え付いたでしょ」
「…じゃあ、三層構造です。間に鉄を入れてワンクッション起きます。そして魔力の流れを出口に向けて作ります」
「それはどうやって?」
「鉄にミスリルで回路を彫って、出口に向けて常に流れるようにします」
「出口に向かった分の魔力はどうするの?」
「一度出口から出て再びタンクに戻しましょう」
「じゃあやってみようか」
フウカはレンが出した鉄にミスリルを流し込むための溝を堀始めた。
「なんか楽しそうね」
「そうですね。俺も参加しようかな…ああいう作業は俺も得意なんで」
「え、ソウジ君もそっち行っちゃうの?」
「まあ、こうしていてもやることはないので」
「そう、じゃあフウカの事よろしくね?フウカ、熱中しだすと無茶するから」
「はい、ちゃんと見張っときますね!」
俺はごった返した談話室に踏み込む。
「フウカさん、彫金なら俺やりますよ?」
「ソウジ君もやりますか?主砲開発」
「はい、是非混ぜてください」
「ははーん、ソウジ君は向こうでも鍛治ばっかりだし、見てられなくなったんだね?」
「レン、そう言う事を言うとフウカさんのお仕置きを貰うことになるぞ?」
「お、お仕置きぃ!?なにその卑猥な言葉…ちょっと楽しみ」
「別にそのぐらい良いですよ?事実、彫金はちょっと難しいなと思ったので…」
「え、お仕置きなし?」
レンが首を傾げる。
「なしですよ?なんか変ですか?」
「ちょいソウジ君、昨日の晩御飯になんか変な薬とか盛ってないよね?」
「盛ってないはずだけど、フウカさんが仏になってる」
「別にいつも怒ってたりえげつないお仕置きをするわけじゃないですよ?」
「えげつないお仕置き…ってなに?」
「箱詰めですよ?空間魔法の箱に詰めて、何時間も放置するんです。布とか被せて外が見えないようにして何時間も、何時間もね?」
「それ、拷問じゃん…」
「本人は途中で気が狂ったのか出した途端泣き出しましたけどね」
「だって、魔力も魔法も使えない状態で、世界のどこでもない無人の荒野に、絶対出られない箱に詰められて周りの状況もわからないままに10時間近く放置されたんですよ?当の本人はヘラヘラ笑って『じゃあまたね』って忘れられたらどうしようってなりますよ!」
「ソウジ君、ヘラヘラは余計だったんじゃないかな?」
「へ?」
「じゃあもう少し真剣にお仕置きすることにしますね?」
「え!?」
気づけば俺は藤色の魔法陣の上に立っていた。
「冗談ですよ。まあ、その分彫金で頑張ってもらいますけどね」
「よ、良かった…彫金ぐらいならいくらでも頑張らせてもらいます」
◆◇◆◇◆◇
レン:「こうしてソウジ君はフウカ君の小遣いに去れていくのであった」
作者:「それ俺のセリフ!」
レン:「言ったもんガチだよ」
作者:「最近ちっさい獣を書きたい気分なんだよね」
レン:「エル君と涼君でも書いたら?」
作者:「エルさんはデカイし、涼君は以外とウネウネってしてて可愛いとは言いがたいだろ、やっぱり猫がいいよ!」
レン:「ぶれないね~」
◆◇◆◇◆◇
▼△▼△▼△
そして一方で、最近はソウジの持ち場みたいな扱いになってきてしまった台所に珍しく色々集まっていた。
「え、お夕飯作ってくれるの?」
「はい、リンもお料理できるんです!毎日、ソウジさんのご飯食べてますから!」
リンはどこで手に入れたのか赤いチェックのエプロンをつけて台所に仁王立ちしていた。
それを見たケイトの感想
「(うん、血は繋がってないけど流石はフウカの子。可愛い(ノ≧▽≦)ノ!)」
内心めちゃくちゃ盛り上がってた。
何がとは言わないけど、盛り上がってた。
と言うか盛ってた。
エルは羽をばたつかせて言う。
「いや、我はやめた方が良いと言ったんだ!やる前にソウジにレクチャーしてもらえと!しかしリンが聞かんくてな…」
エルはいつもはウネつかせている首を閂のように真っ直ぐ伸ばして言う。
「いや我は違うぞ?偶々通りかかったら、リンちゃんがなんかしてたから見に来ただけで、別に冷蔵庫漁ろうとか、ワインの盗み飲みだとか、小魚とピーナッツの確認だとか、別にそう言う理由じゃないぞ?」
重雪は冷蔵庫の上の段で寝そべって手を振っている。
「そう言えばケイトは料理できたな」
「リンちゃんに料理を教えて欲しいって言うの?言っておくけど私の料理は野戦仕込みよ?」
涼は緊張を解きちょっとウネつく
「(野戦仕込み…貴族なのに?貴族だからこそか?海鮮のが好きなんだが…)」
「まあ、 また後日ソウジに習うにしてもある程度できる方が楽だろうしな」
「お願いします!」
「わかった、良いわよ?どのみち夕飯も作らなきゃだしね。一緒に作ろっか」
「はい、お願いします!」
リンちゃんは肩まである髪を揺らして頭を下げる。
「じゃあやる前に、髪を結ぼっか」
「髪?」
「料理するときは火を使うから、綺麗な髪の毛が焦げたりしたら大変でしょ?」
ケイトはポケットから髪紐を取り出す手早く結ぶ。
「髪短いのに髪紐は持ってるんだな」
「昔は長かったのよ、それにこうして持ってたから、リンちゃんの髪を纏められたんだから。役には立つわよ、さっ始めましょうか」
「ケイトさんはエプロンはつけないんですか?」
「そうね…私の場合はあんまりつけないわね。外で料理することのが多いから、エプロンとか持ってないことが多いからね」
「そうなんですか…どうせなら着けたらどうですか?テキストにも女の子のエプロン姿は相手を喜ばす事ができるって書いてありました!」
「そうかな?」
「お母さん、ケイトさんのエプロン見たいかも~」
「(あー、リンちゃん可愛い、食べちゃいたい…)じゃあ、せっかくだし着けようかな。ちょっと待ってね?エプロンは確か下にしまったはず」
ケイトはパタパタと地下室に向かった。
リンちゃんは、涼を掴み上げて九つの頭の全てをじっと見つめる
「わ、我は食べても、美味しくない…ぞ?」
「涼さんの変化、見たことないな~」
「我、変化はホントに苦手なんだ…勘弁してー」
「見たことないからな~どうなっちゃうの?」
「んー、わかりやすく言うとソウジを例にして説明すると人型にはなるが、頭が九つに…」
しばらくの沈黙の後にリンが口を開く
「そっか、じゃあダメだね」
「うむ、手伝えなくて済まないな」
◆◇◆◇◆◇
ソウ:「なんで俺で例えたんだよ!」
作者:「分かりやすいようにだよ」
ソウ:「いや、普通に頭が九つになるって言えば良いだろ…」
作者:「可愛いは正義だよ」
ソウ:「涼は可愛い系ってよりクリーチャー系だろ!」
涼:(我、手持無沙汰だと首がウネっちゃうんだよ)
作者:「確かにな」
◆◇◆◇◆◇
リンちゃんは涼の胴を両手で確り掴んでそのまま見つめ続ける。
「な、なんだ?我は煮ても良い出汁は出ない…はずだぞ?」
「涼さんも手伝えるよね?」
「ん!?」
「別に人型じゃないと料理できない訳じゃないでしょ?」
「…つまり?」
「涼さんもたまにはソウジさんに恩返しするべきだと思う」
「まあ、確かに…それなら重雪もだろう?」
「重雪さんはいつも冷蔵庫で役に立ってますもんね?」
開けっ放しの冷蔵庫から雪だるまが突き立った親指を出す。
「ほら、やりますよ」
リンは涼を調理台の上に下ろす
「エプロンあったよー!」
ケイトは深緑の簡素なエプロンを着けて戻ってきた。
「どうしたの?」
僅かに変な空気が流れる。
(あーあ、これはなんと言うかまた似合わない訳じゃないが…)
(良くも悪くも普通だな、コレ)
(むむむ…ビシッ〔親指を突き立てる〕)
「なんでもないですよ♪」
リンにこやかに笑って誤魔化すのだった。




