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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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Welcome to Under Ground

ソウジ君が男の子に戻って三日程。

今私は藤色の光で満たされた部屋で一人、ちょっと歪なサングラスを掛けてソファーに寝そべっている。


それは長い余暇によって現れた一時の気の迷いが、長すぎた暇な時間のせいで行きすぎた結論として私の口から漏れた一言だった。


「leap the real」


目の前が急に真っ暗になり、赤、青、緑のウインドウを通り抜けて白い背景に色鮮やかな浮島が浮かぶ不思議な世界に変わる。


私は真っ白なプラスチックっぽいツルツルした円形のステージのような場所に立っている。


私の前にウインドウが開かれて、音声が流れる。


『ようこそ、仮想現実型総合コンテンツプラットフォーム"ヴェーラ"へ。ヴェーラはそのホームに今までにない大型オープンネットワークを採用していて、ヴェーラ単体で世界中の人と触れ合えるソーシャルネットワーキングサービスでもあるので注意してね』


私が辺りを見回すと、他にもウインドウを開いてる人や、他の浮島に向かって飛んでいく人、光って消える人など様々だった。


『基本的な操作説明を始めるよ?先ずはウインドウを引き出してね』


目の前に白い矢印で下に向かってガイドラインが現れるが、無視して前に触ったときの感覚で空中を弾いてウインドウを引き出す。


『おー!君は経験者だったんだね!じゃあ、次に行くよ!』


そろそろなぜ私がこうなったのか顛末をザックリと説明しよう。


こっちに来てかれこれもうじき四か月。

暇な時間がおそろしく多いこの世界、レンと顔を会わせたくないと言うことで暫くインしないとぼやいていたソウジ君に暫くデバイスを貸してくれるように頼んでみると…


「良いですよ!是非是非、むしろお願いします」


ちょっと食いぎみで怖いぐらいの勢いで了承してくれた。


「あ、オタクが布教モードだコレ」


レンは唐突に出てきてソウジ君の旋毛をつつく。


「でもさー、あんな使い古しをフウカ君に貸すの?」


「いや、アレでも毎日磨いてる!むしろ磨くから塗装が剥げてるんだ」


「どうせなら新型にしたら?ほら、今秋発売って言ってたでしょ?フォウルの後継機の」


「ヴェーラ…買いたかった。それだけが心残り」


「僕はや・さ・し・い!神様だから、もちろんソウジ君の分も買ったんだけど…コレを布教の為にフウカ君にプレゼントしちゃおう!」


「え…いや、ソウジ君に悪いし良いですよ…」


「いや、俺は旧型の愛機のフォウルがあるのでヴェーラはフウカさんが使ってください」


「うーん、ソウジ君が使うと思ってたから普通に女の子用買っちゃったんだよね…フウカ君が使うとますます普通になっちゃうんだよね…」


「おい!」


「あ、もちろん僕のは男性用だよ?」


「あ、ありがとう…ございます」


そのあと妙にそそくさとレンは帰っていった。


で、そのあと付属の説明書を読んでソウジ君に手伝って貰いながらセットアップを終わらせていざダイブした所だ。


ソウジ君とは向こうで落ち合う予定だ。


『なお、ヴェーラは有名タイトル複数とのアバター互換システムがあるのでヴェーラで作成したアバターをそのままゲームに、ゲームで作成したアバターをヴェーラに反映することができるので友達とゲームに参加したり、ゲーム間の移動がスムーズにできるよ』


さてとそろそろジシーズにログインしよう


『じゃあ、最後に初回購入特典のリアルアバターをプレゼントするよ~』


唐突にウインドウが開かれ、そこには「Welcome to UnderGround for Huka-kun,by ren」とあり…


「あの神は、いつも余計な事をする!」


私は光エフェクトで変化していつも通り普通の自分になるのを肌で感じた。


▼△▼△▼△▼△


で、なんとかアバターを作った物に切り替えた私は改めてウインドウからジッシーズを選択した。


『ようこそジッシーズオンラインへ。説明が必要な方はチュートリアルエリアを、不要な方はゲームを始めるを選択してください』


私は迷わずゲームを始めるを選択した。


『ではあなたのスタート地点を選んでください』


私は迷う事なく唯一知っている名前を選んだ。


空中科学都市ベイグル


ジッシーズオンラインの世界でも有数のホームエリアであり、錬結晶持ちの重要拠点。

なにより知り合いが多く居る地域でソウジ君の拠点があるのもここらしい。


そしてソウジ君が後で落ち合うならベイグルが解りやすくて他の街に移動するにも楽で良いとオススメしていた事もあり迷う事はなかった。


私は目の前に現れた紫色のゾーンに立ち、転移する。

一瞬で景色が超都会的、いや近未来的に変化する。


「わぁ…なんかこういう感じ久々な気がする。実際は初めてなのに不思議だな~」


『あ、それ私の記憶です!私の拠点があったのもここなので!』


なんと夢唯さんもプレイヤーだった。


「とりあえず、ソウジ君と合流する為に言われてた場所を探しますか…ウーマブル広場だっけ?」


『そんな感じだったと思うよ?あたし、そう言うの興味ないから覚えてなくてさ…やっぱりリアルに体動かすのが楽しいって言うの?まあ、今の生活も嫌いじゃないけどね!』


瑠美はあまりゲームには乗り気じゃないらしい


『ウーマブル広場ならこの道を真っ直ぐ行ったところだったと思いますよ?』


夢唯さんナビがあるから私は迷っている素振りを一切見せずに都会的な町並みを歩いていく。


「そう言えば名前とかアバターとか変えたけど、ソウジ君わかるかな?」


『暗号とか決めとけば良かったね~』


今の私はピンクのショートヘアーで服は初期装備、名前はアウラにした。

夢唯さん曰く、アウラはギリシャ語で風を意味するらしい、フウカ→風香→アウラって感じで決めた。


髪をピンクにした理由は特にないけど、カルミちゃんの髪が存外綺麗で魅力的だったってのが大きな理由だ。


『ダメならリアルアバターに切り替えてもいいでしょー見れば一発だろうし』


私はそれも良いかな~と思いつつ町並みを見ながら歩く。


色取り取りの小瓶を並べた露店、色々な素材を並べた露店、色彩豊かな瓶を並べて売る店、剣を並べ立てる露店、未来的な銃を並べて叩き売る行商スタイルの人…


なんて物騒な通りだ…


『フウカ?思い返してみて?アリシアのギルド近辺の通り沿いも似たようなもんじゃない?』


いや、アリシアの場合はコレに+で大衆食堂と飲み屋ができる。その裏には娼館とかね?


『いえ、アリシアのような飲食等を目的とした娯楽施設の類いは居住区や商業区の中でも奥まった方に集中しています。ゲームとしてそこまで重要ではないからでしょうね』


ふーん、そっかー


私は夢唯と瑠美の会話を聞きながら歩き続ける。

すると…


『うぉっ、引っ手繰りだー!!』


程々に凝った装飾の短剣を盗んだと思われる男が驚異的な速度で走り抜けていった。


「お、速いね」


『ねぇ、もっとなんかないの?』


『まあ、直ぐに衛兵に捕まりますよ。短剣を盗られたあの人は御愁傷様ですね。そもそも高いものを目につく所に装備するのが間違いですよ。この世界にはジェネレートって言うスムーズに戦闘に移行するために武器を召喚する仕組みがあるんだから活用すべきですね』


「この、逃がさないぞぉ!僕の目が黒い内は白昼堂々の犯罪は許さない!!」


それを後から来た少年も驚異的な速度で走って追い掛けていった。

ちらっとしか見えなかったが見覚えのある顔だった気がする。


「助けますか…」


『いいね!熱い展開!』


『さっきの少年に任せましょうよ』


(夢唯さん、ナビゲートできますか?)


『えー、ひったくりの逃走経路なんて知らないよ~』


(人気のないとこまでで結構ですよ)


『だったら、そこ左、突き当たり右とか?』


そこはわかりやすくゴミ捨て場だった。


私はウインドウを開きアバターをリアルに切り替える。


来る前に色々試してわかったけど、このアバターはリアルの自分の能力まで再現するみたいで、まるでこっちの世界に自分の体で来たみたい。


そして私は上空に転移して、ひったくりを探す。通り沿いをとんでもない速度で走る人が二人いるから先ず間違いない。

もうすぐさっき通った転移門広場にそっくりの別の広場に出る。


「じゃあさっさと済ませてソウジ君と合流しようかな」


『どうするつもり?』


「アレの目の前に転移して、そこから先はキャットファイトで」


『アタシの十八番だ!拳と拳のがなり合いだー』


で、私はパッと転移しつつコンバートする。

ついでに瑠美と交代する


「じゃあ、とりあえず。足を止めようかな」


私は走ってきた男の胸ぐらと袖を掴んで引き倒し、蹴りあげて、掴んだ袖を支点にして180°回転。


物凄い勢いで走ってきた男は勢いそのままに地面に打ち下ろされる。


さらに目を回して無抵抗の男に対してガッチリと脇固めを極める。


「あぎゃぎゃぎゃっ待った待った、ホントに極まってるからぁ!」


男は地面をバシバシ叩いてもがくが、瑠美はさらに男の背中に体重を掛けつつ、更に腕を締める。


「そうかな?決まるときは持っとこうガッチリ…」


ゴリュッ


「ぃぎっ───」


痛みからか静かに声にならない悲鳴を漏らす男に対して私は…


「んー、まあ盗品も返してもらったし私的にはこの辺で許してあげてもいいかなって感じかな。早いとこ合流しなきゃだしね」


『そこの人!そのまま押さえてて下さい』


「じゃ、短剣はちゃんと持ち主に返しなね?私は人を探さなきゃだからさ。さてとソウジ君はどこに居るかな…」


と言うことで私は短剣を近くに放り捨てて、ソウジ君と合流すべく後ろを振り返る


「はい、ここですよ?」


すぐ後ろに居た。

凄い自然な感じで普通に居た。


「うわって追ってきたんですか?」


「見事な巴投げでしたね」


「バッチリ初めから見てたんですね。見てたなら手伝ってくれたら良いのに」


「いえ、ここでのああいういざこざはあの少年に任せとけば良いので態々介入することもないので」


「だったらそれを先に言っといて下さいよ」


「言ったら面白くないでしょ?さ、先ずは肩慣らし程度に戦闘してみましょう」


「肩慣らし程度にね?」


で、私はソウジ君に連れられて初めての転移門を通った。

で、抜けた先の左手の森がどうやら目的地らしい。


「一応ダンジョンとか特殊なエリアはありますけど基本はオープンワールドだから敵の探し方とかはいつも通りです。一応エリア境界もありますけど、それはここから馬で二日ぐらいかかる距離なので50kmぐらい先です。とりあえずは気にしなくて大丈夫です」


「そっか、じゃあやることはいつも通りだね!索敵、強襲、殲滅!私は殲滅は得意です、もう力一杯吹き飛ばしたいです」


「ただフウカさん、ある程度レベルが上がる前にあまりリアルの力を持ち込むと面倒な事になるかもしれないのでレベルでカモフラージュできるようになるまでは控えめで…」


「まあ、先ずはコツコツレベルを上げます。コツコツ何かをするのって楽しいですし」


「で、とりあえず今のフウカさんが持てる槍は…このぐらいかな?」


ソウジ君はストレージから一本の槍を取り出す。


「この世界の身の丈にあった装備も向こうと同じで筋力値、ようは重量です。重ければ持ち上げられても振るえなければ攻撃になりませんからね」


「なるほどね~どのぐらいの重量かな~」


私は差し出された槍を掴む。

仮想とは思えないズッシリとした重みが手に乗る。


「おおっ普段から持ってるアレと比べて遜色ない重量感」


「それはステータスが低いからですよ」


「う、地味に心に来る一言。これだから玄人は」


「じゃあ俺はここからは師範システムを採用していきますね」


「師範システム?」


「レベルとステータスをパーティーメンバーの最低値+15の基礎値に制限して、俺の獲得経験値分をパーティーメンバーに譲渡できるシステムです。最低値が上がれば俺のステータスも自動的に向上していくっ事で」


「なるほど、じゃあ早く足を引っ張らなくて良くなれるように頑張りますね」


「はい、期待してますよ」


で、私はズンズン森の中に入る。


「敵ってこの辺だと何が出ますか?」


「この辺だとイエロ・ホーネットとかウッド・ゴーストとかパラライズ・アントとか…まあ、雑魚ばかりですよ。隣の森には猪系のモンスターがたくさん湧いてNM…あぁ、中ボスとか小ボスみたいなのも居るんですけどね」


さっそく茂みから角の生えた兎が飛び出してくる。


それは私の脇腹を狙っての体当たりだったが…直線それも突きで槍に勝負を挑むとはなんとも間抜けな敵だ。


兎の角が私に届く前に槍が兎の腸を抉った。


兎は血を流し地面を跳ねて、僅かに悶えると全身から血を炸裂させてポリゴンと共に消える。


「出血エフェクト大袈裟すぎですよ」


「今のはホーンラットですね」


「ラット?どう見てもラビットでは?」


「尻尾がラットなんですよまた出ると思いますし、次の時に確認してみては?」


「そうですね」


「アレがイエロホーネットですよ」


ちょっと先の木の間に体長1mそこそこの巨大バチが見えた。


「ああいうの現実だったらめっちゃ危ないですよね~」


「いや、大きいぶん狙いが付けやすくて良いと俺は思いますけど…ねっ!」


ソウジ君は足下に落ちてた兎の角を拾って投げつけた。


それは回転しながら飛んでってイエロホーネットのバタバタ動く左翼を撃ち抜いた。


左の羽がポリゴンとなって砕け散り、黄色い蜂は無様に地面に落ちた。


ソウジ君は動じることなく近づいてって、手に持った片手剣で蜂の頭、胸、腹を切り分け、蜂は絶命した。


「ほらね?あ、また居ましたよ」


「私もっ!」


私は槍を投げつける。


真っ直ぐ飛んでった槍は蜂の頭に当たり、弾かれて蜂のすぐ足元に落ちる。


「えぇ!」


「距離が離れる程威力が減衰するんですよ」


「そう言う事は早く言ってください。剣借りますよ」


「その剣は!」


私はソウジ君の腰から剣を鞘ごと剥いで抜く。


「重っ…でも重いなら、重いなりに!」


ジャンプして迫る蜂の頭になんとか剣を打ち下ろし、頭を割る。


そしてまだ息があるのか地面で起き上がろうともがく蜂の胸に振り上げた片手剣を振り下ろす。


バリッ


そんな音を立てて片手剣は蜂の胸に沈み込み、血が噴き出し、ポリゴンと血を散らせて消える。


「はぁ、血生臭くなっちゃいました…」


「あはは、その内慣れますよ。町に戻ったら湯屋ですね」


「湯屋?ゲームなのに?」


「ゲームなのにです」


やけにリアルなゲームだけど楽しいから良しにする。

こんな風に血塗れになっても何の罪悪感とか後悔を覚えないのはゲームだからこそだしね。


私は次の獲物を求めて藪の中を見渡す。

至るところから生命の痕跡が感じられる。

この森は獲物に満ちている、もうしばらくはノンストップで狩れそうだ。


▼△▼△▼△▼△


でと、私は狩りまくった。


最初はフィッシング…(投擲とかで一匹ずつ呼び寄せて倒す戦法)、次第に強襲もできるようになり、段々と魔法攻撃も身につけていき…


レベルは高くはないが9まで上がった。

ソウジ君曰く「個別に上がりますが、基礎レベルキャップが100なので9/100をほんの三時間少々で得たと思えば成長は早い方ですよ」とのこと。


「あと1レベ上げたら、あと1レベだけ上げたら帰りますから!」


「さっき今日は9までって言ってたじゃないですか。あんまり根詰めすぎても良くないですよ?」


「あとちょっとで上がりそうなので」


ウィンドウを開けば残り必要経験値は50ちょい…いつの間にか必要経験値は1000を超えていたがコツコツが楽しくて苦にもならなかった。


「木霊、見つけた!」


それは枯れ枝や木葉が固まったような感じの塊で、なかには黒い影のような生き物が居る。


そいつが木葉や枯れ枝を操って攻撃してくる。


枯れ葉や枯れ枝は柄で弾き、本体はバッティングフォームで打ち砕けば問題ない。

通りすぎ様に振り抜かれた槍の柄はガラクタの塊を粉砕、ポリゴンに還す。


「ふぅ、あと四匹狩りたいな」


『そこの人退いて!ってか逃げて!!』


私よりは装備の整った二人組が走って来る。

片方は剣士もう片方は弓士っぽかった。

見れば装備はボロボロ、HPもギリギリだった。


そして直ぐ背後の木々が吹き飛ぶ。


『エリア越えても追って来たぁ!』


そこには木々を頭突きで薙ぎ倒して進む体高3mの巨大猪だった。


「あれはデュアルホーン・ボア。隣のエリアの小ボスです。デュアルホーンと言いながら鼻から突き出てる角は実は上顎を貫通した牙なので面白いですよね」


「面白いですけど、それより先にあるでしょ!」


「勝てるかどうかなら勝てますよ?」


「じゃあ、勝ちますよ」


「残りHPは半分、先ずはあの二人を回復、そのあと俺が前に出てアレの足止めをするので後方から魔法で迎撃、魔力が尽きかけたら近接戦です」


「じゃあソウジ君はあの二人の回復を、私はその間の足止めをします」


私はこっちに走ってくる二人の横を通り抜ける。


『おい、初心者やめとけ!』


猪の横を通り抜ける途中で前足の膝関節の裏側を槍で打って足を止めさせる、要するに膝かっくんだ。


猪も走るには足を動かさなきゃならない、ではその前足が走ってる途中で勝手に居れて地面に着いたらどうなるか…


猪は地面で顎を打ち数メートルを滑り、モタモタと立ち上がる。


「さてと、私が相手ですよ」


私は槍でチマチマ突いたり切ったりしながら、猪の攻撃を避ける。


突き上げが来たから頭を抑えて跳び乗り、眼球に槍を捩じ込み、破壊する。


『ヴっヴキィィィッ!』


限りなく豚に近い断末魔が響く。


『アウラさん!スイッチ』


「はーい」


私は槍を引き抜き、猪から飛び降り様に牙を思いっきり槍で殴って怯ませてか着地する。


ソウジ君は緑の光を纏った片手剣での突きを猪の胸部、鳩尾のちょうど骨のない位置に打ち込む。


「エアロサーキュレーション!」


胸部が刻まれて血肉が花びらのように散る。


「雷よ煌めけ ライトニング」


『水よ穿て レイン』


『凍てつけ フリーズ』


『穿て穿て穿て ブリッツ』


目の前で炸裂した雷光、皮膚を貫く勢いで降り注ぐ雨粒、それを凍てつかせんと放たれる冷気と殺意を持って放たれた火花。


それらはやたらと猪を穿つ。


残念ながら私のMPは現実と違ってからっきしだから最初のライトニングの次を撃つと尽きてしまうから


「ソウジ君!」


「はい!」


ソウジ君は片手剣の切り上げで顎を穿ち、怯ませる。


「風よ、汝は針、汝は刃、汝は飛翔の翼たれ!スラスト」


槍に緑色の光が集まり、それを無遠慮に投擲する。

槍は見事にさっきソウジ君が抉った傷口の辺りを破壊しながら、血肉の中に埋まっていき、石突きまで確り埋まり、血肉とポリゴンとを炸裂させて死に絶える。


後にはドロドロになった槍と血塗れの四人が残るのみだ。


「はぁ、ゲームなのに殺した後の帰り血の処理をしなきゃいけないなんて…」


「まあ、いいじゃないですか。レベルは上がったでしょ?」


「上がったけどさ…」


「助かったよ、君達は随分手慣れてるみたいだね」


「いえいえ、私達もレベリングの一環ですから」


「いやー、俺らもついこの前始めたばっかりでさ…この辺の雑魚で馴れてきたから次のエリアいけるかと思って足を伸ばしてみたんだけど難しいもんだな」


剣士の男は肩を落とす。


「うーん、二人とも動きは悪くないからあと一人タンクかヒーラーをこなせる人を探すといいと思いますよ。この辺のエリアには初心者が多いから、人手不足でパテ募集してる人も多いだろうし探してみるといいよ」


「アドバイスありがとう。えっとソウジさん」


「また機会があったら一緒にやろう」


「はい、えーと…レミリオさん、ニールさん!」


「あ、二人もこのあと町に戻るなら一緒にどうかな?僕ら魔力すっからかんで危ないからさ、アウラさんたちも疲れたでしょ?」


「ソウジ君どうしますか?」


「じゃあご一緒させてもらいましょう。人数は多い方がいいですから」


私達はボチボチ歩いてベイグルに戻る。

帰り道でもモンスターも湧くし、プレイヤーも入ってくる。


みんな和気あいあいって感じでいい感じだった。


▼△▼△▼△▼△


「ふんふん♪お散歩お散歩♪」


レイラッタは上機嫌だった。

理由は今日はお店が休みで天気が良いからだ。


一人で居るときは誰かを気にする必要もなく、失言とかを気にする事もないから自然と気分も声のトーンも上がる。


「リアルじゃお散歩なんてできないからね~♪」


レイはただ散歩に来たわけでもない。

この先のエリアに追加の鉄鉱石を拾いに行くのだ。


『じゃあご一緒させてもらおいましょう。人数は多い方がいいですから』


『なんでもいいです。私は早くお風呂入りたい…』


『あー、それわかる。血でドロドロ、ペタペタするのやだよね』


『ホントです!ソウジ君、急ぎますよ!早くしないと服が血液凝固でカピカピになっちゃいます』


『わかりました!わかりましたから!あんまり走ると危ないですよ!』


ソウジさん?あのピンクの人は…誰?


レイは若干気にしつつも森の奥へと歩んでいった。

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