女性生活一週間目
だらだらと初冬の日は上り、下り、また上って下ってを5回ほど繰り返した。
ソウジは相変わらずミーナのままで、数日前からピンクのフリルマシマシのエプロン(曰く新妻のエプロンらしい)で料理するようになった。
ぶっちゃけ、開き直っていた。
「これはこれで楽しいな~」
フウカから幾つか禁則事項を設けられては居るがミーナは女性生活を楽しんでいた。
最近は頻繁に街に出て、セイとお茶して帰ってくるのが日課になっている。
曰く、セイのガールフレンズに見せ付けるんだそうだ。
セイなら禁則事項の一つ合体禁止に触れる事はまずないだろうし、湯屋への立ち入り禁止、逆ナン禁止とかも引っ掛からないんだろう。
「それで、今日も可愛い服でお出掛けするの?」
ミーナは黒いブラウスに苔緑のスカート、ヒールのあるブーツで、上からいつものコートを羽織る、そして刀は差していない。
獣耳があるので頭には帽子ではなく水晶球を加工して作ったと思われる耳飾り、完全に勝負服と思われる格好でミーナは朝食のパンに手を伸ばす。
「ねぇ、私もついてっちゃダメ?」
「ダメです、セイが緊張するでしょ」
「私もケーキ食べたい…」
「お土産に買ってきますから」
「紅茶もぉ!」
「はいはい、じゃあリンちゃん?涼と重雪をコキ使っていいから家の事お願いね?」
『はーい』
緑の魔法陣が天井に開いてリンちゃんが煙と一緒に降りてくる。
「ソウジさん、またデートですかぁ?」
「そうだよ?」
「男同士の愛を否定するつもりはないけど、なんか思うこととかないんですか?」
「リンちゃん、一つ断っておくけど今は女だから、ね?」
「それでいいなら別に良いですけど、グレイさんのテキストには同性愛は不毛だって書いてありましたよ~」
「リンちゃん、最近辛辣だね」
「…男の癖に憎たらしいな…とか…居候が家事放棄したら存在価値なくないですか?…とかなんて事は微塵も思ってないから大丈夫ですよ!」
なんか例えを言うときのリンちゃんの目がハイライトが消えてて怖かったのはここだけの話
「う、うん。じゃあ行ってきます…」
こうしてミーナはデートに出かける。
「今日は白虎通りの方で甘味所だな」
ミーナはロングブーツの踵を鳴らして領主の館へ向かう。
領主の館の前で待ち合わせしてその日の方角に向かう。
それがここ数日の日課だった。
「セイくーん!おはよー」
JKモードのミーナのテンションは高い。
ミーナの方が若干背が高いからミーナはセイの頭をポンポン撫でる。
「寄るな!触るな!悪ノリが過ぎるぞ」
セイはミーナを引き剥がす。
「今は女でもお前男だろ!!やってて恥ずかしくないのか…」
「今は女だし、いつ戻るかもわかんないんだから楽しまなきゃだろ…」
「いや、それでももう少し恥じらいを持て!これから女として生きる可能性があるなら淑女としての振る舞いを身に付けられるように努力しろよ…なんのために付き合ってやってると思ってるんだ」
そう、ソウジが早く女性生活に馴染んで立派な淑女としてもやっていけるように手伝う。そういう意味のあるデートなのだ。
「?行きづらい恋仲向け喫茶に気兼ねなく入るためだろ?」
「それもあるが…って、ない!お前の淑女修行だろうが!」
「私さ?これ以上の淑女ってわかんないんだけど他にいい見本がセイくんの彼女でいないの?」
「僕の彼女って…違うぞ?彼女たちは決して彼女とか恋仲とかではなくて茶飲み友達だ!僕は他に好きな人が居るから…」
「へぇ?好きな人居るんだ~その人なら見本になると思うな~紹介してよ?」
「しない!それに思い返して見れば手本になりそうなのはお前の周囲に二人居るだろ」
「二人?」
思い返して見る。
リンちゃんはまだ勉強中だ、テキストを借りれば恐らく超一流の立ち居振る舞いが身に付くだろうが、セイがそれをしるはずがない。
ケイトさんはセイの姉で一流の貴族だったが、今は冒険者。
確かに優雅ではあるが…割りとお転婆と呼ばれる類いだ。
フウカさんは確かに確りしてるし礼儀作法って点で言えば確かにフォーマルだが、元は普通の女子高生だ。
所作も細かく見直せば割りとラジカルだ。
それでもなぜ貴族や王族と会えるかと言えば、一重に敬意が感じられるからだろう。
そしてソフィアさんのマナーは叩き上げのビジネスマナー。
アリアさんはギルドの受付嬢のマニュアル通り。
戦場の華の面々は論外だ。
「全員から教えを乞えばそこそこの出来になりそうだな」
「ほら、今日は白虎通りの方だろ?」
「そうだな!」
「おい、戻ってるぞ…」
「そ、そうですね…行きましょう!」
「こらこら、ほら手ぇ」
「手?」
「そのブーツ歩きにくそうだから手貸してやるよ…」
「くくっ、らしくねぇー」
「おい、笑うな!これもお前のためだからやってるんだ!」
「悪い悪い、ありがたく存じます」
ミーナとセイは手を繋いで歩いていく。
「こうして歩いてるとホントに恋人みたいだよね」
「別にそういうつもりはない…第一お前男だろ?男が男に恋とかおかしいだろ!」
「そうかそうか、セイくんは純粋なピュアピュアくんなんだね~」
「なんで笑う!?僕、なんかおかしいか?」
「いや、必死になってるのが可愛いからさ(ハムスターみたいで)」
セイとミーナは周囲の視線を集めつつ目的の甘味所、平たく言ってケーキ屋さんに入る。
「ここのケーキが評判だって織物屋のサリナちゃんが言ってた」
「でた、セイの彼女"達"…」
「良いじゃないか、お陰で僕らは評判のケーキにありつけるんだ」
セイは先んじてドアハンドルを握り開ける。
「お前も少しは紳士的な対応が身に付いてきたな」
「僕は元々できるんだよ」
「一応、貴族だもんな」
「歴とした貴族だよ!」
ミーナはスタスタ中に入る。
と言うのもいつまでもセイにドアを任せていると急に閉まるかもしれないから
「いらっしゃいませ!」
ん!?
なんとこのピンク色でレースとフリル過多なメルヘンなお店の御店主はオーガ顔負けの筋肉盛盛、ガッツ大盛り、おまけに光り輝くスキンヘッドがチャームポイントのオッサンだった。
だが別に珍しくもないのでミーナは店主に僅かに微笑みを向けて喫茶スペースに腰かける
「おい、注文は!?」
ミーナは微笑んで返す。
「お心のままに…じゃあ、この店で一番美味しいケーキを二つ」
「かしこまりました!」
御店主はガテン系な見た目だがその動作は丁寧で、見た目とのギャップが凄かった。
こう、職人的な趣のある人っていうのかな?
ただ、クリームで装飾を整えるその姿はケーキ職人というよりは…
「左官屋さん?」
だった。
籠手が似合う感じだ。
「にしてもお客さんがいませんね」
「ふっ、貸し切ったからな」
「貸し切った!?」
セイはキメ顔で言うが、ミーナの心情的には…
(たかがデートぐらいで大袈裟な…)
って感じだ。
「だから遠慮なく食べて良いぞ?全部買ったからさ」
更に財力アピールを続けてしまう辺りセイもまだまだ未熟なのだろう。
「そ、そう?私の為に態々ありがとう」
戸惑うミーナに対してセイは満足気な笑みを浮かべて向かいでしきりにフォークを弄るのだった。
▼△▼△▼△▼△
「えっと…今日はどんなご用でしょうか?」
アリアはカウンター越しにケイトとリンと話している。
時間は昼前、働く冒険者は皆出払ってギルドの広間はガランとしており、泥のように眠る酔っぱらいはゴロンとしている。
「アリアさんのおっぱいの秘密を教えて下さい」
「えっと…え?こ、コレの秘密ですか?」
アリアさんははち切れんばかりのそれを両手で持ち上げる。
「そうです、どうやったらそんなに大きくなるんですか?」
リンはきっととても画期的な秘密があるのだろうというキラキラした目でアリアを見つめる。
「ねぇ、アリア。この幼気な疑問に答えてあげて?」
「リンね?ケイトさんみたいにストーンってなるのやなんだ…アリアさんみたいな素敵な女性になるにはどうしたらいいの?」
(す、ストーンって…そんな事言って大丈夫なのかな)
見ればケイトの笑みは引きつっていたが、子供の言うことと間違いではないから我慢している様だった。
「(あはは、やっぱり気にしてるのか…)特別にしたことは特にないですけど、冒険者だったので程々に筋力トレーニングはしてますよ?」
「他に何かないですか?こう…直接関わる感じのやつが知りたいんです。なんかないんですか?」
「直接関わる…どうしても、知りたいですか?」
「どうしても!ですぅ…」
「(仕方ないですね…まあリンちゃんのためだしね)じゃあ、ちょっと裏に来てください」
アリアはため息を付くとカウンターの出入り用のスイングドアを開ける。
「楽しみです!(これでリンもアリアさんみたいに…)」
「仕事中に悪いわね…(これを利用して私もフウカに釣り合うように…)」
そして通された先は女子更衣室だった。
「で、更衣室で何をするんですか?」
「するって言うか見せるの。この制服の秘密をね?ホントは秘密なのよ?でも、まあリンちゃんの為だからね。今回だけだよ?」
「はい!」
制服のブラウスの前ボタンを外すと跳ねるように胸が飛び出して来て、何かが落ちた。
それは半月状で肌色で、特殊な魔物の革にゲル状の物を冷た物だった。
「コレが秘密です、胸当てとの兼用のつけ胸です…」
さわってみると革はしっかりその形を維持するようになっているのかプヨプヨしてて若干固かった。
「コレを着けてるからいつもより若干ですけど胸が大きくなってます」
「なんだ…偽乳か…そうじゃなくてもっと体質的にどうにかすることはできないんですか?」
「やっぱり筋トレだと思いますよ?」
「筋トレか~、なんか前にもそんなこと聞いた気がするな~」
結局今日もおっぱいの秘密を知ることは叶いませんでした。
◆◇◆◇◆◇
ノア:「んー、13。目指せっ14…ナイスバデイ!15ぉ…」
作者:「ノアちゃん何してるの?」
ノア:「はぁ…はぁ…筋トレ…」
レン:「はい、プロテイン!」
ノア:「ありがと…で気になってたんだけど、君ら誰かな?」
作者:「我ら三人!」
レン:「人呼んで!」
ジン:「ん?俺か?」
レン:「ジン君!!乗ってきて!」
作者:「我ら三人!」
レン:「人呼んで!」
ジン:「なぁ、そんな戦隊物みたいな名前有ったか?」
作者:「だから、俺が『我ら三人!』レン君が『人呼んで!』って言ったらジン君が『後書きメンバーズ!』でしょ?」
ジン:「ダサい名前だな…」
レン:「ホントだよね!」
◆◇◆◇◆◇
▼△▼△▼△▼△
で、一方でホールケーキを一つまるごと食べたミーナはと言うと…
「美味しゅうございました」
とても嬉しそうだった。
まるで一つ願いが叶ったとでも言いたげな顔だ。
「うん、その顔を見れただけでも貸し切った甲斐があったよ」
セイは始終ミーナの食べる姿を見ていたよく食べる女の子は可愛いと聞くがホントだった。
「せっかく頂くのですからせめて嬉しそうに食べなきゃ失礼ですか…うっ、なんか痛い…」
ミーナは言い終える前に下腹を抱えて踞る。
「おい!お前ぇ!!ケーキになんか入れやがったな!?」
セイがムキムキ店主に掴み掛かって怒鳴る
「い、いえ。そんな事はございません!とにかく医者を呼んで参ります、店の物は使って良いのでお客様は彼女の介抱を!」
ムキムキ店主は店を出ると一目散に向かいの建物に入っていく。
「(医者って向かいに住んでるのかよ…)痛い…何て言うか今までに感じた事ない感じだ…」
「おい、ミーナ!ソウジ!確りしろ!寝るな!死ぬなぁ!!」
「死なねぇよ…死ぬほど痛いけどそれだけだ。コレはどこが痛いんだ?膀胱?」
そして医者が来て…
幾つか診察してから
「つかぬことを伺いますが、あなた最後に生理来たの何時ですか?」
「えっと…ないです」
「ちょっと失礼」
医者はパッとスカートを捲り、戻す。
「初潮ですね。おめでとうございます」
医者の一言が衝撃的だったが、それ以上に内蔵の訴える痛みが強いせいで祝福の言葉が死刑宣告にしか聞こえなかった。




