愛するからこそ
それはふとした瞬間の呟き。
恐ろしく素直な呟きだった。
「この…うどん?だっけ?凄い食べづらいんだけど、どうやって食べるものなの?」
ツバキはケイトみたくフォークで巻き取ろうと四苦八苦しながら言った。
その視線は当然ソウジ君と私に向くわけで…
で、私達がそれぞれ右手に持っているのはフォークではなく…箸。
英語で言えばチョップスティックスだ。
「なにその棒、もしかして新しい食器とか?」
「あれは箸って言うんだって。フウカ達の居た東方の万能食器みたいよ?フォークとナイフを兼ねるんだとか」
ケイトは器用にうどんを巻き取って食べる。
「あぁ、顔立ちが似てると思ったら二人とも同郷だったのね…」
その通りなんです。
「箸ねぇ、私もソウジ君に貰ったけど…アレ、凄い難しいわよ?」
「というか、なんかあの辺マナー悪くない?」
ツバキの視線の先は私とソウジ君とレンとリンだ。カルチャーショックってやつでしょう。
そりゃ私達は麺類は啜る文化の人間なので当然すすりますよね。
「ああやって食べるとなんだっけな…空気と汁と麺を同時に吸い込んで、飲み込んだあとに香りが鼻を抜けるからより美味しく感じるんだっけな…より美味しく食べるために特化した食べ方なんだってソウジ君が言ってたけど…あれも難しいわよ?」
「やったことあるんですか?」
「あるわよ。ソウジ君ね、麺料理が好きらしくてよく作るのよ。それも美味しいからどうせならもっと美味しく食べたいじゃない?」
「それで、どうなったんですか?」
「うん、喉で引っ掛かって大変な事になったわ。あれ、ホントに難しいわよ?すぐ気管に汁が入るんだもの。箸、試してみる?」
ケイトはウエストポーチからケースに入った透明な箸を取り出す。
「こんな綺麗な物で食べてたんですか?」
「それ、ソウジ君が氷の時間を止めて作ってるからね。リンはなんだっけな…」
「箸先は指の第二関節までで食べるのが一番綺麗な食べ方ですよ、ケイトさん!」
いつの間にか空のお椀片手に持ったリンがすぐ目の前に居た。
「えっと…薬指と親指でしたの棒を挟んで人差し指と中指で上の棒を挟んで…これで、はさむようにして~あれっ全然思うように動かない…」
「お箸は上手に使えてこそ一流です!」
そう言うリンは左手に箸を持っている。
「リン、あなた左利きなの?」
「左利き?うーん、たぶん右利きです。ペンは右に持ちます」
「でも今箸は左に…」
「?右利きの人は左手で箸は持たないんですか?ソウジ君だって、刀は主に右ですが左にも持ちますよ?」
「リン、あなた両利きなのね?」
「両利き?なのかもしれませんね!リンはペンは右でも左でも持てます。一番得意なのは口に咥えて書くのですけど!」
「口で書くの!?」
「はい!リンは鳥なので細かいことをするのは翼よりも口のが得意です」
『リンちゃんを番にできる雄は幸せ者だね』
私は隣で皿うどんを啜るレンの脛を杖の装飾の尖った部分で攻める。
『ねぇ、僕が何をしたと言うのさ!』
『今、リンをイヤらしい目で見ました』
『君、ちょっと過保護だよ』
「あーあ、フウカも最近は確り過保護なお母さんが板についちゃってね。レンと他人には情け容赦なくってさ」
「あー、たくましくなりましたよね。少し寂しいですね」
「いや、それはそれで可愛いから私は全然良いんだけど」
「良いんですか…」
「ただね、ちょっと気を張りすぎてる節があってさ。まあ、あんまりリンに構えない内にリンがすくすく大きくなっちゃったのも大きいんだろうけどさ」
「なるほど…少しは息抜きして欲しいって事ですね」
「まあ、そんなところよ」
「なんだかんだ言ってもやっぱりケイトさんと居るのが一番気が抜けるんじゃないですか?一人の時に見かけるフウカちゃんよりも姫と一緒に居るときの方が雰囲気が柔らかいですし。もう少し自分に自信を持っても良いんじゃないですか?」
ケイトは私の方を見て、ツバキさんを見て、ソウジ君、ユリさんと順番に見てから自分の胸に手を当てる。
「そうなのかな?」
「いや、たぶんそこはそんなに関係ないかと」
▼△▼△▼△▼△
昼休憩はユルユルと流れていき、再びガラポンが回される。
「おお?おおっ!?これは縁の神様来たんじゃない?」
レンが出てきた玉を掲げる
「次はフウカ君とケイトちゃん!」
ついに来た。
来ることは分かっていたけど、いざ来ると緊張する。
周囲にも緊張が走る。
そもそもアリシア領主の娘であるケイトは当然の事ながら、その意中の人間でありながらエネシスでロック鳥を従えて海竜を討伐し参加者に金貨50万枚をばら蒔いたともあって私は注目の的になってしまっていた。
恐らく、収穫祭の時のアレコレとか、アトラス退治のアレコレとか、もっと前ではオーガの時のアレとかでそもそも実績は十分だったんだと思う。
沈黙の中にオーディエンスの昂りがピリピリとした空気感となって肌でわかる。
「じゃあケイト」
「手加減はしないわよ」
ケイトは短剣を逆手に構える
「はい、私はハンデ有りですが範囲の中で全力を尽くします『風よ、汝は翼となり、我が目となり、我に疾風の如く空を駆ける力を与えよ 疾風の加護』
『光よ、我が求むるは足、我が望は速さ、汝の速さを我に与えよ ライトニングファスト』
私の背には風の翼、ケイトの足には光りのブーツが形作られる。
風が光に移らぬように風が光を避けるか、光が風を貫くように光が風を穿つか。
私は加護で併発させた加速の効果でゆっくりとした一瞬の中を高速で迫ってくるケイトの斬撃を視認して槍で弾く。
するとケイトは一度下がる。
「ふぅ、やっぱり速いわね」
私の目から見てもケイトがあの魔法の効果を引き出しきれていないのは明白だった。
本当に光の速度で走れるようになる魔法であるなら私が視認できるはずがないのだ。
「まだ、負けないわよ」
「ええ、まだ始まったばかりです」
私は槍の矛先を根本まで地面に突き刺す。
そしてコートの懐から短剣を抜く。
「私も負けませんよ」
私は一気に距離をつめて短剣を振るう。
短剣の使い方は習っていないが瑠美さんの経験が使い方を教えてくれる。
ケイトの高速の突きを確り見てから処理する。
処理しつつ急所を狙うが、どういう訳か防がれる。
まるでそもそもどうくるかが解っているかと思うほど私の攻撃は先回りして防がれる。
何合も打ち合い、火花を散らせる。
私は少し大胆な策に出ることにする、ケイトに勝つにはやはりアレしかないような気がするのだ。
私は短剣を空中に残したまま、ケイトの顎に膝を入れ、胴を踏んで距離を取り槍を掴み、そして投げる。
風の翼の推進力に任せて再びケイトに接近する。
武器がないときの戦い方は瑠美さんに教わった。
相手の意表を突く方法は夢唯さんが考えてくれた。
そしてより正確に槍の軌道を制御する方法をアイーシャさんが教えてくれた。
突き手、肘鉄、ハイキック、どれも瑠美さんのお墨付きを貰った体術だ。
しかし全てがケイトによって相殺される。
「まさかフウカがこんなに近接戦闘も鍛えてたとは思わなかったわよ」
「ケイトこそ、まさかここまで強いとは思ってませんでしたよ」
そして時が満ちるケイトの背後数センチの所にさっき投げた槍が落ちてきて突き立つ。
戦いながら翼で拾った短剣を翼の推進力で飛ばす。
短剣は見事に弾かれる。
私が宙を舞う短剣を認識したとき私の背後には既にケイトが居て、首筋に冷たさが走る。
「ごめんね?愛してるわ。でも愛してるからこそ負けられないの。愛する物に守られるより守りたいからね」
「そうですね、次は負けませんからね」
私はしばらくケイトに守られてみたいとも思い、背中に感じる温かさを堪能した。
▼△▼△▼△▼△
「ねぇ、フウカ君っていつからあんな武闘派なの?前は持っとこう…魔法少女風じゃなかった?」
「さぁ?始めてあったときも槍は使ってたし、短剣と素手は始めて見たけどな~」
俺とレンはのほほんと試合観戦だ。
他の面々は速すぎてついていけてないのが殆どのようだが、俺は目を加速させて、レンは実力で見ることができる。
「お母さん、最近身体鍛えるって言って、腕立て伏せしてた」
リンもどうやら見えてるらしい。
「専門でなくても自衛ぐらいできる程度の実力は欲しいんだって」
「実力ならもう十分ありそうだけどね。ソウジ君も注意した方がいいかもよ?」
「うーん、そもそも俺如きがケイトさんやフウカさんに勝つなんて到底あり得ないと思うんだよね」
「お母さんはハンデなければ強いよ?」
「うん、それは知ってるよ」
「でもソウジ君も凄いかも。色々できるし~ご飯が美味しいもん!」
なんでだろうな~
こういう元気系な子は通常の三倍可愛く見える。
別に関係はないけどあっちの世界のアオイさんとかロリ体型だよな~
それが悪いってことは全くなくてむしろ良いんだけどさ…あれ?
「俺ってロリコンなのかな…」
「ソウジ君、それは犯罪だよ?犯罪だからね?」
「犯罪?」
「リンちゃんすごーい。もう犯罪なんて言葉覚えてるんだね」
「リンはもう子供じゃないのでそれぐらい知っています!えっとコロンビアですよね?」
「リンちゃん、時々古いネタを知ってるよね」
「えー、コロンビアじゃないの?」
「コロンビアはガッツポーズだよ」
ソウジとレンは程々にリンで和みつつ戦闘の方をみる。
「へぇ、槍をあんな風に使えるんだ~普通にスゴいな」
「あ、決まったね。なんだかんだケイトちゃんも強いんだよねフウカ君がハンデありなのもあるけどさ」
レンはすっと立ち上りガラポンに手を掛ける。
「じゃあ次の一戦の準備しよっか!君もフウカ君たちに負けないように頑張りなよ?次は君を引くから」
ないない、ブラフだな。
「リンも準備した方がいいと思うよ?ソウジ君、そろそろ来そうだし」
いや、まさかな…
「縁の神様、縁の神様、パンパカパーン。そうです!僕が今日から縁結びの神様です!」
レンはカッと目を見開き勢いよくガラポンを回した。
カランッ
地面に転がった玉には確りとソウジ-フウカと刻まれていた。
「マジかよ…」
俺が現実を受け入れられず遠くをみると
「マジだよ?」
リンちゃんが視界の中に入ってきて、俺の目を覗き込む。
「流石は僕!今日だけ縁結びの神様だわ!アハハハ、楽しいよ!!」
レンの高笑いが耳障りだが、とりあえずリンちゃんはやっぱり可愛いって事でいいよね?
◆◇◆◇◆◇
レン:「僕は、やっぱり~ソウジ君はロリコンだと思うな!」
ジン:「そうか?どっちかって言うと動物好きだろ?」
作者:「いや、動物じゃなくて猫が素晴らしいんであって!」
レン:「いや君の話じゃなくて…でもソウジ君ってあっちの世界だとアオイちゃんと仲良い設定でしょ?」
ジン:「そうなのか?」
作者:「まあ、確かに一時ソウジ×アオイ説が先生との間で立ったのは事実だけどそれももうかなり前だし…ね?」
ジン:「まあ、そうだな」
レン:「うん」
一同:「とりあえずロリコンって事で良いんじゃないかな♪」
◆◇◆◇◆◇




