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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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ケルビンから来た姉御肌

「それで、最近はどうなんだい?大道芸の腕は上がったかい?」


久しぶりに会ったアデルさんはなんと言うか、久しぶりにあったおばちゃんに近いテンションで私に接していた。


「いや、大道芸はやってないんですけどね」


「やってみたら良いんだよ。顔も綺麗だし、才能もあるからやってみたら結構直ぐに上達するだろうに」


「大道芸…こう言うのならいつもやってますけどね」


私は空間魔法で僅かに空間を跳んでみせる。


「ソウジ君もこう言うのできるよね?」


「そうですね」


ソウジ君もまた水晶球を撫でて瞬間移動する。


「流石ね、ケイトに似て変なのばっかり集まってるわ」


「そうですか?類友なんでしょうね」


「マジか~俺も変なのの仲間入りか…」


いや、一番変な人がそう言うとは思わなかった。


「でも大道芸か~それっぽいことはあんまりできないですよ?」


ソウジ君は顎に手を当てて少し考えると。

思い付いたように手を叩く。


「これならできますよ?」


刀が数本の短剣に変わり、宙を舞う。


「ナイフジャグリング~」


八本あったナイフは次第に本数を減らして行き、最後には一本になった。


「手品ですよ」


「嘘ですね、それは神器の能力でただ本数を減らしただけですよね?」


「バレてましたか…じゃあ…忍法、分身の術!」


ソウジ君は二人に増える。


「どっちが本物でしょうか?」


「どっちも本物ですね」


「ダメですか?」


「ソウジ君、それはズルですよ」


「はーい、じゃあ単純なマジックで…」


すっと手を出して親指を掴む。


「ぬぅっ、きひぃっ、見てて下さいよ?一生に一度の奇術を見せますから…くっふぅんんっ!」


そしてソウジ君は親指を引き抜いた。


「えぇ…」


こんだけ勿体つけてやる手品がソレ?

私は引っ掛からない、というかこんなのに引っ掛かるのは幼稚園まで…


「ちょっとあんた!そんなの手品でも何でもないただの力業じゃないか!ちょっと傷口見せてみな、すぐこのぐらいの傷なんて治るから」


アデルさんはガッツリ引っ掛かっていた。


「あの、騙しといてすいませんが…コレ、手品なんですよ」


ソウジは隠していた親指を出してピコピコして見せる。


「おおっ、あっははは…すっかり騙されたよ!あんた上手いね!あはは、心配して損したわ」


「なんかバカウケした…俺、大道芸人でもやってけるかもしれない」


「ソウジ君、大道芸人よりも料理人のが儲かると思うわよ?」


ケイトは後ろから追い付いてきて私にマグカップに入ったスープを手渡しながら言う。


「それもそうですね。俺、料理もできるんでした。あ、料理で思い出した…ちょっと買い忘れを思い出したので先に戻ってて下さい」


ソウジ君の足下にぬるっと涼さんが湧いて出る。


「おい、確りしてくれよジョニー。魚を忘れたらダメだろ~」


「やっぱ、鮮魚だよな!」


涼さんもソウジ君に毒され始めているのか、最近悪ノリと冗談が増えた気がする。


ソウジはミニ体の涼さんの上に立って、まるでサーフィン(ちょっと虐待)みたいな感じで坂を下っていった。


「あれ、どうなんですかね?」


「さあ?でも二人がそれで良いならそれで良いんじゃない?アレを人に数えて良いかは謎だけどさ」


なんだかんだで説明が疎かになっていましたが…

復旧工事中で物資の流入のが圧倒的に多いと言うことで、仮説と言うことでエネシスの相転移門は坂の頂上、北の門のすぐ側に固定されている。


「でもなんで坂の頂上なんだろうね。コレじゃエネシス側のが使いづらいだろうに…」


それもそうなんですよね…

アリシアとエネシスを行ったり来たりしている私達には非常にわかりみの深い事象だった。


しかし、勝手に港の側に門を作ったりしたらおそらく怒られるから私はそれをやらない。


(アデルさんが居なければ家まで転移しちゃうんだけどな…)


ただズルはしていた。


門は作らずに私の魔法で直接移動する事がしばしばあった。


戦闘もない、仕事をする必要もない、瞬撃の隼では、私がアッシー、ソウジ君がメッシー、ケイトが貢くんみたいな役割になってしまっていた。


そして程なく相転移門に着く。


それは余った石材でなんとなく門の形を作って中に藤色の魔法陣で固定した空間の穴があるだけだ。


「へぇ、そう言えばなんで相転移門なんだい?別に普通に転移門でいいとあたしは思うんだけどね」


そう別に正確性なんて求められてないから転移門でも良かったんだけど…

空間に穴を開けて繋いだ事で転移すると向こう側から空気が変わりに転移してくるのだ。

双方公的に同じ体積が移動すると言うことで相転移門という名前にした。

別に転移門でも良いんだけど、敢えて!相転移門にしたんです!


「ちょっと?フウカ?そんなにショック受けないで…」


「あぁ、アレ、白っこいのが名前つけたのかい?あんた意外と大胆だねぇ~」


「いや、別に転移門でも相転移門でも正直なんでもいいんですけどね…転移門…今度改名するように申請しようかな…」


◆◇◆◇◆◇


作者:「フウカは予想以上に真面目です」


ジン:「いや、マジメか!」


レンは小さい太った鹿のようで鹿じゃない動物を掲げる


ジン:「いや、それはマメジカ!」


◆◇◆◇◆◇


そして私達は相転移門を通ってアリシアに戻ってきた。


「うおっ、これは凄いね!ホントにアリシア、それも領主の館の真ん前に出ちまったよ」


「ふぅ、やっぱりエネシスのが暖かいわ」


ケイトは腰のポーチから上着を出して羽織る。


「ご苦労様でーす。寒いのに大変ですね」


で、私は相転移門の警備をしている警備兵に挨拶する。


「いや、向こうは知りませんがこっちではここより暖かい街頭巡回はないので、人気の職場ですよ。向こうが暖かいもんでこの周りだけ他よりもちょっと暖かいんでさ」


逆に言えば向こうからすればこの周りだけ寒い事になり好まれない職場ということになる。


「やっぱり、中継点儲けて温度を遮断すべきですね…エネシスの復興工事が終わったら取り合ってみますね」


「ありがとうございます!ん?それってここ暖かくなくなるんですか!?」


「ここも含めて屋内に入れた方が防犯状いい気がして」


「それは確かに…まあ、春には異動だし頑張って下さい」


私は軽く会釈をしてその場を後にする。


「にしても便利になったね。私の頃なんて魔導街道で十分便利だと思ってたのに相転移門とか言うので瞬間移動する時代だもんねぇ」


「まあ、相転移門はフウカがいないと実現不可能だけどね」


ケイトは誇らしげに言う。

がしかし、この世で唯一私の代わりに相転移門を作ってくれるものがあるのだ。


「そうでもないですよ?水晶球に記録して用法通りに使えば誰でも作れますし、問題があるとすればその水晶球を作るには技術が必要ってだけで…」


まあそう言うのを勝手に作られると困るから警備兵が四六時中警備してるんだけどさ


「そうそう、せっかくアリシアに来たからもう一つの野暮用を済ませるよ。ランとツバキって子ら…姓はケルビンか今はもうアリシアかもだけど知らないかい?前に冒険者してた頃の教え子なんだ。ケイト、顔の広いあんたなら知ってるんじゃないかと思ってね」


「そりゃツバキ達とは同業だし仲は良いけど…会ったときに何があっても平静で居てくださいね?」


私は内心で

(えーー!!あのときの話をまた蒸し返すんですか!?止めましょうよ…だってまたユリさんとツバキさんの間で辞める続ける論争始まりますよ!)

と叫んでいた。

無論、現実のお口はチャックだ。


「俺、ランって人には会ったことないですが…ツバキさんって言えば戦場の華のブロードソードの人ですよね?」


間の悪いタイミングで間の悪い男が帰ってきた。背に大量の鮮魚の入った篭を背負って…


少し遅れたが私はソウジ君の口を塞ぐ。


「いいよフウカ…隠さなくても大丈夫。ランは運がありませんでした」


「そうかい、冒険者は仕事柄時としてそう言うことが起こりうる。どんなに才能に溢れていても、魔法が使えても避けられない瞬間がある。ランもツバキも冒険者ならそのぐらいは覚悟の上だろうさ」


凄く嫌な予感がしたが、私達はアデルを連れて戦場の華のパーティーハウスを訪れる事になった。


▼△▼△▼△▼△


そして予想外はそこらじゅうに転がってる訳で…


「あれ、ユリじゃないかい」


声を上げたのは勿論アデルさん。

どうやらユリさんとも知り合いだったらしい。

世間は結構狭いみたいですね。


「アデル姉様!?いつアリシアに?」


ユリの方もどうやら旧知の仲らしい。

そう言えばユリさんもケルビンで戦場の華に拾われたって言ってたっけ?


「ついさっき、エネシス経由でね!」


「てことは例の相転移門を使ったんですね?」


「ああ、また便利なもんが出来たよね。いや、お世辞抜きにアレは便利だよ。名前はよくわかんないけど…普及したら世界は変わると思うね」


「やっぱり今から改名の申請をしてきますか…」


「ちょっとフウカ…名前の事はそんなに考えすぎずに、ね?」


ケイトが宥めてくれるがケイトが思っている以上に事は重大なんですよ。

名前の良し悪しで製品の良し悪しが決まると言っても過言じゃないのだそれだけ重要な部分なのにぃ!


「あ、そうそう。彼女らがここまで案内してくれたんだ」


「瞬撃の隼も今日はお休みなんですか?」


ユリさんの純粋な疑問が良心に深く突き刺さる。

でも状況的にも「かれこれ何日もずっと休みなんです」なんて口が割けても…


「あはははは…面白いジョークですね。もう越冬の準備が終わったので冒険者は休業中です」


ソウジ君はさらっと言い放ってしまった。


ユリの顔に影が下りる。


「い、いやでも冒険者としてじゃない依頼を今受けてるので…そっちの方もあってあんまり街を空けられないんです」


「やっぱり凄いですね。ついこの前まで新人さんだったのにもう抜かれちゃってるし。ソウジ君もすっかり慣れちゃって」


いやいや、この慣れはマズイ慣れですから。


「いや、こっちで初めて冒険者になっただけで地元でも武人だったので、魔物の相手とかしてたんですよ」


嘘つけぇ!君の地元は超平和なジャパンでしょうが!


「そうだったんですね、元々強かったですもんね。ケイトさんの見る目があったって事ですね。立ち話もなんですし、積もる話もあると思うのでどうぞ」


私達はなし崩し的に居間?談話室?客間?なんかそんな感じの部屋に通された。


そして、入り口で少年とバッタリする。


ソウジ君より一回り小さい少年は円らな瞳で私達を一通り眺めるとそっと下がっていった。


「男の子を入れたんですか?」


「そうなります。以前よりもそう言うところで気を使わなくちゃいけなくなったのは確かです」


「あら、これは冒険者やってんのに乙女ねぇ。ケイト、あんたもああなるべきだったのに…乙女捨ててるわね」


「捨ててません。皆大事にしてます!」


ケイトは声を荒らげる


「その考えからおっさんなんだよ?」


アデルはひたすら笑いながら会話を回していく。


「まあ、何はともあれやっぱり男の子の友達がいた方が良いと思うから、仲良くしてあげてね?」


「だってソウジく…ん?」


さっきまですぐ後ろにいたソウジ君は居なくなっていた。


『うわぁって誰っ!?何で居るの!!いつから居たの!!』


隣の部屋から少年と思われる声が響いた。


『俺?俺はミナヅキ ソウジ…こっちの流儀で名乗るならぁ…ソウジ・アリシアになるのか?いつから居るの…コンマ何秒か前くらい?そっちこそ名前は?』


ついでに言えばソウジ君はそっちに押し掛けたようだ。


『僕はカルム。カルム・アリシア…』


『まあお互い女性ばっかりのパーティーじゃ臆病にもなるよな~』


いや、ほんともう君には感服しました…

よくそう次から次へと嘘が出ますね


「やっぱり上手くいきそうですね」


「さあ、どうでしょうね…っあ。すいませんちょっと口が滑りました。ははは…」


「珍しい、フウカさんが失言なんて…」


ユリさんが一番驚いていた。


「まあ…明日は雨ね」


「え?明日雨なんですか!?」


またもオーバーなのはユリさんだ。


「向こうでは珍しい事をすると次の日雨が降るって諺があるんだってさ。ソウジ君が言ってた」


「そうですね、じゃあ明日予定してた練習は今日のがいいですね」


「練習?また戦闘訓練?」


「そうです、実力を計るのも兼ねて総当たり戦をやろうかと」


ユリさんは作りかけと思われる表を取り出して予定を喋り始める。


私はこっそり空間魔法でソウジ君を隣の部屋から引っ張って来て、ユリさんの話に耳を傾けるのだった。

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