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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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研究と日常

作者:「突然ですが!更新再開とド・ウ・ジ・に!更新日を木曜日の5時に変えまーす!」

レン:「・・・・・なぜに?」

作者:「理由は今日が大安だからです!」

俺はフウカさんと合流して、エネシスの領主の館の地下の船着き場に来ている。


「へー、大きい船ですね。で俺が手伝うのはなんですか?」


「魔導発動機を作ります。確か時魔法で時間を止めた場合は熱伝導もしなくなりますよね?」


「はい、完全にその状態を維持しますよ?」


「なら蒸気機関のエネルギー効率を上昇させられますね」


「それは可能でしょうが、量産体制を取るのは難しいんじゃないですか?」


「まあ、そうですね…水晶球にして渡すと悪用される可能性が大ですしね…うーん…まあ、それは追々考えるとして」


「あはは、まあそうですね」


「魔力を使って回路を作りたいんです。で、ただ魔力を一定間隔で自動的に流す回路は私一人だと作れそうにないんですよ」


「一定間隔で自動的にですか…何せ魔力はソレ自体よく解ってないとんでもエネルギーですからね…そもそも、蒸気機関にソレって要りますか?」


◆◇◆◇◆◇


夢唯:「要りませんよ?」


レン:「そうなの?」


夢唯:「代わりに切り替え用の空気弁としてピストンバルブが必要です」


レン:「ねぇ、メイPはもしかしてアレ?リケ女?」


夢唯:「めっメイP?」


レン:「え?最近の若い子はあだ名にPとかDとか付けガチだって…作者が」


作者:「付けガチじゃない?」


夢唯:「いや、それ一部の陽キャラだけですよ?」


作者:「そうなんだ…」


◆◇◆◇◆◇


「じゃあ、蒸気機関の各部のパーツの時間を止めて見ましょうか」


「それじゃあ私は…ミスリル銀で回路を作る方法を失われた記憶に聞くために寝ますね」


「え?ちょっ…各部のパーツの切断をお願いしたかったんですけどね…」


ソウジ君の呟きを遠くに聞きつつ、私はいつもの白く広い精神世界に降り立つ。


「探してるのは私ですか?」


そこには夢唯が立っていた。


「夢唯さん、知恵を貸して下さい」


「嫌ですよ?」


夢唯は他に言うことは無いとでも言うように撥ね付けた。


「私は自分の死は認めましたが、貴女の事を信用した訳ではないので」


「どうしたら認めてくれますか?」


「貴女には信用に足る実績がありません、それに私が手を貸す理由もありません」


夢唯の態度は一貫している。


夢唯はその場に椅子を呼び出して、座って本を読み始める。


「ここは貴女の精神世界なのでここに居るのは一向に構いませんが、ここで油を売っているより自力で解き明かす努力をした方がいいと思いますよ」


うーん、解き明かす努力…

アレの分解は一先ずソウジ君に任せるとして…


「そうですね。ここでなら大規模な思考実験も可能な筈ですし…怪我もすぐに癒えるので不安定な蒸気機関の実験をしても大丈夫ですね」


必要な知識はある。

学んだ覚えのない知識が全て揃っていると告げている。


必要な物を緻密にイメージする。


「ボイラー、タンク、熱源、シリンダー、ピストン、ピストンバルブ、接続部パーツ、回転部…」


イメージが床から生えてくる。


生えてきた塊は作業台の上にのった蒸気機関に変わり、さっそく車輪が回り始める。


「でとここからです。熱源を水晶球に変更、魔力をそのまま燃焼反応に変換して…ボイラー室を密閉」


「みっ密閉!?そんなことして爆発したらどうするんですか!!」


「まあまあ、壊れてもすぐ元に戻るのがここの良いところですから」


着火、車輪が高速で回転し始め…ボイラー室が赤熱し始める。


そして赤熱したボイラー部が熔け出し、僅かな穴が開いた次の瞬間、ボイラー部が吹き飛んだ。


「あぁ!言わんこっちゃない!」


夢唯は本で顔を守って立ち上がった。


「密閉空間が高温で酸素が不足した所に外気が流れ込んだらバックドラフトと同じ原理で瞬間的に燃焼が激しくなって、水蒸気で体積が上昇するの!そんな赤熱したボイラーじゃ、その圧力に負けて破裂するに決まってるでしょ!バカなの?死にたいの!?」


「大丈夫です、ここでは死にませんし怪我もしません。それに咄嗟に防御もしました。問題はボイラーの強度と耐熱性能ですね」


「温度調節用に冷却水を用意するしかないでしょ…」


「まあ、その辺は策があるし、やっぱり回路考えるかな…でも要は繋がれば良いんだし…」


私は薄く伸ばされた銀色の板を思い浮かべる。

イメージの中でそれは細長く加工され、何か硬質で魔力を通さない何かで覆われ、先端が皿の用に広がる。

この皿に魔石なり魔水晶なりを置いて、魔力を導線に流し込む感じの魔法を考える。


イメージは漏斗のような感じの魔法だ。


『我、求は引力、見えざる魔性の力の流れ。其は此に集いて、定められた道程の先に力を示せ 魔力導引』


魔法は成功したのかしてないのかわからないが、皿の部分に魔法陣が浮かんだ。


それを水晶球に取り付けたら炎が出たから成功なのだろう。


問題は、コレのスイッチのオンオフをどうするか…課題は山積みだ。


「よし、次ですね」


私は引き続き白い空間で作業を続けることにした。


▼△▼△▼△▼△


「分解ね~、まあフウカさんいなくても分解ぐらいできるけどさ…」


ソウジは刀と短剣で溶接箇所を切断していた。


「幸いな事にこのなんでも切れるとんでも刃物は、傷一つつかないし」


どんなものでも豆腐並み、固くてもクッキー程度に切り裂く刀だ。溶接箇所ぐらいなら押し当てるだけで切れる。


「そう言えばさぁ、俺ってば炎の魔法使えないんだけどこれはどうやって直すべきかな?」


「いつも通り氷で接着すれば良いんじゃないか?」


刀から姿を変えた涼は床でウネウネしている。


「お前、ウネウネするの好きだよな」


「首が多いから手持無沙汰でな…それにやらないと首が凝るんだよな~」


「なるほどな」


涼はウネウネしながら丸くなる。


「まあ、ミニ体は通常よりも首の負担が小さいから凝りもだいぶ楽なんだがな」


「九頭竜も大変なんだな」


「不便だぞ?むやみやたらに首は多いし、小回りは効かないし、常に濡れてないと鱗がひび割れるし、首は凝るし、歩くのキツいし…おまけに末端冷え性なんだ」


「(九頭竜なのに末端冷え性なのか…というか爬虫類って…)」


変温動物です。


「お主!いくらなんでも礼に欠けるだろ!我を蜥蜴かなんかみたいに見よってからに!我は由緒ある竜だぞ!九頭竜だぞ!それをそこらの尻尾の青い蜥蜴と一緒にするとは…」


「じゃあ、聞くけどさあ?水から上がったときの体温どのぐらいなんだ?」


「そりゃ、凍てつく程冷たいぞ!我は水を司る竜だからな!ほれ触れてみ?」


ソウジはペッタリしててすこし湿った涼のヒレに触れる。


「ほらの?ひんやりしてるだろ?」


「なんだろうな…」


ソウジは立ち上り、スタスタと船着き場を歩いて海に手を浸す。


「───同じ温度だな。うん、お前は冷血動物だな!」


「違う、これは末端冷え性だ!脇とかは暖かい筈だ」


「って言ってもな…」


ソウジは猛抗議をする涼の脇を掴んで抱える


「めっちゃ冷たいし…ちょっと濡れてるし…」


「すまん…」


「まあ気にするな。変温動物が悪い訳じゃない。恒温動物はその体温の維持の為にエネルギーが掛かるから、俺には変温動物のがありがたい」


「そうか、それは良かっ…良くない!我は変温動物ではなく末端冷え性だ!」


涼はあくまでも末端冷え性だと主張し続ける。


ソウジはそれを尻目に分解したエンジンを元に戻す作業を始めるのだった。


▼△▼△▼△▼△


で、その夜


「って事で、明日は戦場の華の指導員で1日いないから、フウカたちも頑張って?」


「指導員?」


ソウジ君はステーキを切りながら聞く。

セルジオとミースは外食らしく、今は不在だ。


「そう新人冒険者を対象としてベテランが報酬を貰って冒険者としての仕事の仕方とか生き残る術を教えるの。新しくできたパーティーだったり、新人が入った所で少し戦力に不安がある時なんかに使われる事が多いわ」


「私達は使いませんでしたね」


「まあ、ある意味個別指導みたいな物でしょ?指導員の資格を持つ私と二人っきりだったんだからさ」


ケイトが指導員の資格を持っていたなんて初耳だ。


「まあ、こっちもさっさとアレを組み上げて、報酬の船を改造しなきゃですからね」


ソウジ君は切り分けた肉を足下でウネウネする涼に放る。


涼は九つの頭の内の一つで器用にキャッチする。


「主、我は主からの魔力を糧にして生きとるからできれば自分で食って力を付けて欲しいんだが?」


「お前も食っとけ、俺がぶっ倒れたらそのときはお前が頑張るんだからな」


ソウジ君は切った肉を口に運ぶ


「ねぇ、さっき船って言った?報酬が船なの?」


「はい、この前の海竜討伐戦とそのあとの復興への協力とか諸々合算して、話し合いの結果小さいけど凄い船を頂く事になりました」


「船なんて何に使うのよ。私達には翼があるでしょ?」


「ない人を運ぶときに苦労した覚えがあるので、それにこのトランクに入れておけば場所もとりませんし」


意識のない人とかさ…


「まあ、フウカがそれでいいなら別に良いけどさ。そもそも海竜の時のはフウカの報酬だしね」


「言っておきますけど、50万枚も金貨で持ってたらかさばって仕方ないですよ?」


「カサバル?」


「邪魔になるとか場所をとるって意味です。まあ、お金が邪魔になるって言うのも贅沢な悩みですけどね。野菜も食えよ」


ソウジはパセリっぽい野菜を涼に投げる。

涼はそれを丸呑みにする。


「いや、我は食べてもなんにもならんのだが…」


そう言いながらも食べる辺り愛嬌があるのだが…


「で、エルはなぜミニ体に?」


なぜかエルは私の傍らで丸くなっていた。


「リンが『コレは乙女の秘密だからおじさんはどっか行ってて!』ってワシを追い出して…行く宛がないからここに来たまで」


「小娘程度に追い出されるとは空の支配者も落ちた物だな」


涼は冷ややかな目を向けている。


「なんとでも言え、子を育てた事のないヤツはどうとでも言えるだろ」


エルは無視して丸くなる。


「あの、なんでそんなに仲が悪いんですか?」


「なんでだろうな?ワシは別に気にしてないんだが、どうもいつも目の敵にされる…」


「たしかグレイさんとも仲悪かったですよね」


「なんでだろうな?大概、いきなり喧嘩腰で来るからこっちも売り言葉に買い言葉にならざるを得ないんだよな」


エルはやれやれって感じだ。


「それを聞くと確かに、エルと涼の初対面の時に先に煽ったのは涼だったわね」


─主よ、今日のランチは焼き鳥にするのか?─

確かにエルが喧嘩腰と捉えても無理はなかった。


「確かにランチ焼き鳥は…ん??なんで?なんで居なかった筈の私が鮮明に場所を記憶してるの?」


「フウカさん、落ち着いて下さい。神具の所有者と守護獣はその契約で僅かに感覚とか記憶とか命を共有してるんですよ。なので時折相手の記憶を覗き見てしまうことがあるんですよ。だよな?涼?」


「流石に我が主だ。その通り人間は術に精通してないから自身の制御が甘い、故にふとした瞬間に見れてしまうのだ」


涼は補則説明を終える。


「うむ、ちょっと気が抜けておった。すまん」


エルは申し訳なさそうだ。


「まあ、見える記憶が一つ増えたところで今更なんですけどね」


私は既に二人の記憶を一部とは言え覗けるようになっている、今更エルの記憶が増えたところでさして変化はない。


「ねぇ、それよりリンは放っといて大丈夫なの?」


場に沈黙が訪れる。


「そうだった。それを頼もうと思ってたんだ。フウカ、お主ちょっと見てきてくれんか?」


エルが突然起き上がる。


「まあ、確かにちょっと心配ですね。私ちょっと見てきますね?」


「じゃあ、デザートは食べずに待っとくね」


私は席を立ち、空間魔法でリンのいる場所へと繋がる穴を作る。


「すぐ戻ります」


私は藤色の魔法陣を超えて荒野、というかリンの家に降り立った。

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