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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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双子の華

「チッ、俺にしては拉致り方が手荒すぎやしないか…まだ、殴られた所痛むし…」


ソウジは氷の作業場にわざわざ用意した檜の床で伸びている。


「こんなことなら、ベッド用意しとくんだった…」


『檜の床サイコー、これならベッドなしでも寝れそうw』とかって、作り終えたままのテンションで口走った自分が憎い。


そんな事を考えつつソウジはなんとか這いつくばって色取り取りの瓶が入った棚まで来る。


「えーっと、打撲に効く回復薬は…確かこの辺に」


ソウジは棚から一本の緑の瓶を取り中身を飲み干す。


「ホント、なんで眠らせる薬があるのに殴って気絶させるかな…我ながらもうちょっと理性的になって欲しいもんだよ」


「え?君が理性的?悪いけど僕には理性的な君は想像がつかないや」


「お前、それは酷くないか?」


いつの間にか檜の床の上にレンが居る。


「ん?ちゃんと靴は脱いだよ?」


レンはちゃっかりスリッパに履き替えていた。


「でも珍しいね?君が自分に対して暴力なんて」


「ああ、もしかしたら手持ちの眠り薬に問題でもあったのかも…ちょっと、見直してみようか」


「ん?君、アレじゃなかったの?フウカ君のお手伝いじゃなかったっけ?」


「は?」


「あ、そっか。君、さっきまでここで寝てて話し合いに参加してたのは未来の君だもんね。知らなくて当然か」


「は?俺がなんかやったのか?」


「ん?単純にフウカ君の研究に手を貸す話をしてただけだよ」


「そう言えば、そんなことも言ったような気がするな。うーん、なんかどうも思いっきり後頭部を殴られたみたいで記憶が曖昧になってる」


「うん、僕見てたもん。瞬間的に加速して腹部に一発ねじ込んでから、背後から鞘で後頭部を殴りつけてたね。で君をトランクに詰めてお持ち帰りってね」


レンは態々刀を用意して動きをその場で再現している。


「まあいい、まずはフウカさんの方だな」


「そうだね、僕は気になることがあるから、これでお暇するよ」


そう言い残して、レンは消える。

俺も急いで本を開く。


「でも、なんでこう…まあ、いいか…」


俺は急ぎフウカさんを探すことになった。


▼△▼△▼△▼△


「で?その依頼って言うのは?」


ケイトは一人で(アリアも一緒にだから正確には一人じゃない)ギルドに来ていた。


「えーっとですね」


アリアはギルドの奥に入っていって、一枚の紙を持って出てくる。


「ケイトさんもよく知ってるパーティーですよ?」


「よく知ってるって言っても、私けっこー顔広いし…どこのパーティーなの?…ん、なんか判った気がする。ちょうど最近、戦場の華に新人が入ったって話を聞いたわ」


「はい、その通りです。では、流れで詳細の説明をしますね」


「ええ、始めて」


「明日、予定されている依頼は茸集めです。近隣の林で茸を集めて来て頂きます」


「そう言うのは本来、本職の人がやるもんじゃないの?」


鬼人の森のような強力な魔物の群生地であったりする場合はその限りではないが、今回のような普通の林だったり森だったりならその付近に住む人間だったり、林の管理を行う人間だったりと地形を知りつくしそれを本業とするような人間が行う作業なのだが…


「えー、ケイトさんが留守にしている間に付近でコボルトの群れが発見されまして…掃討作戦にて大方は排除しましたが群れの一部が逃走してしまい、それなりの数が件の林に潜伏していて危険とのことで管理人の方からコボルトの討伐と取り頃の茸の回収を依頼されてます」


「なるほどね…数は?」


「20~30程度と聞いています」


「まあ、以前の彼女たちならいざ知らずとも今の彼女たちなら指導員含めてちょうどいい依頼ね。堅実な一手って感じだしユリがランの代わりをしてるのかな」


「はい、手続きに来たのはユリさんでしたよ」


「まあ、ツバキはこんな段取り染みた計画は立てないだろうしね。で明日はいつ頃出立なの?」


「明朝鐘六つ頃だそうです」


「うんうん、まあなんとでもなるでしょ」


「たぶんそろそろ、今日の依頼を受けに戦場の華の皆さんが来る予定なのでもう少しお待ち下さい」


「え?わかるの?」


「いえ、昨日の内にこの時間帯の巡回警備の依頼を予約されてたので、取り置きしてるんです」


「それって良いの?」


「ギルドの規則でこう言う日に何度も発注される依頼の受注は予定時刻の二時間前からしか受け付けられないようになってるんです。あまり先の方まで受注者を入れて万が一があった場合を考えての規則です」


「なるほどね、で逆に入らない場合もあるから確約が出来そうなら受け付けの裁量次第で依頼書の斡旋をしてると」


「そう言うことです。特に巡回警備の依頼は賃金が安く、リスクが低く、外に出ない依頼なので特に安くなってしまって受けて下さる冒険者さんは少ないので、それを考慮してある程度なら予約を許可してるんです」


「まあ、でしょうね。でも流石にこの時間だと人いないわね」


ギルドの一階、受付と酒場が一緒くたになった広間は朝とは打って変わって閑散としていた。


「まあ、微妙な時間ですしね」


そろそろ鐘10個、まあ所謂10時頃だしね。


「じゃあ、適当に待たせてもらうわね」


ケイトはつかつかと歩いていって酒場のカウンターの真ん中の席に座る。

10時から飲んでる客はやはり少ない。

朝には遅く、お昼には早い。

こんな時間から飲み食いするのは相当裕福で酔狂な人間ぐらいだ。


まあ、こんな時間まで飲み潰れてる死屍累々は割りと転がってるが…


「あ、なんかお肉持ってきて」


そしてかなりザックリした注文をする。


だが、冒険者がよく来る酒場では割りと当たり前の事だった。


そもそも識字率が低い、学もない、どっちかって言うと荒くれ者の多い仕事だ。

形式ばった注文が苦手な者も少なくない。


だからこう言う所では『鶏肉適当に』とか『肉焼いたやつ』とか『酒!』『エール!』『ホットワインちょーだい』とかって分かりやすいオーダーが多い。


ケイトは単純にそういう環境に適応したのだ。


「姫さんよ、こんな時間からこんなとこで酒かい?」


「ん?肉だけよ?待ち人してるの」


「へー、いつものお付きはどうしたんだ?」


「二人なら仕事よ。エネシスで指名依頼だってさ」


「へー、それで一人寂しく酒場で肉かい?そらーさぞかししょっぱい肉になるんだろうな」


「香草が足らないならって塩でごまかすのはやめてよね」


「へへっ、やっぱり姫さんには敵わねぇわ」


酒場を取り仕切る、元冒険者の男は肉を焼きながら酒をグラスに波波と注ぐ。


「あ、酒は今は要らないわよ?酒じゃなくて果実水か、なければお茶持ってきて」


「はいはい、にしても酒飲み女王が飲まないって事は仕事か?」


「そんな所よ」


内心、男はこんな時間から?と疑問に思っていたが、そういう依頼もない訳じゃない。

貴族への剣術指南なんかの依頼は遅い時間からの事がある。

その辺は依頼人次第だからなんとも言えない所なのだ。


「だが姫さんのパーティーが珍しく長続きしてるな、最短だと何日だったっけ?」


「三時間よ」


「そうだったな…まあ、ようやく身を固められるのかもな」


「端からそのつもりよ」


「ほい肉と果実水な」


男がカウンターテーブルに並べた肉と果実水を前に、しばし話を続けるのだった。


▼△▼△▼△▼△


そうして数十分の時間が流れると、ついに待っていた瞬間が来た。


「あ、ケイトさん。こんな時間に一人ですか?」


さっそく酒場に歩いてきたのはユリだ。


「そうなの、フウカとソウジ君はエネシスで依頼だってさ」


「そうなんですか、珍しいですね。あ、紹介します。新しく入ったパーティーメンバーのカルミとカルムです」


ユリが紹介したのは、ソウジ君と同い年ぐらいかもう少し下の姉弟だった。


「姉のカルミ・アリシアです。こっちが弟の」


「カルム・アリシアです。ケイトさんのお話は先輩方から常々聞いております」


「ケイト・アリシアよ。元貴族だけど今は一冒険者だから気にしなくて良いからね。それよりユリ、そんなに私の自慢したの?」


「いえ、ちょっと経緯を説明しただけで…」


「あ、ツバキさんでしょ?」


なんとなく酒場で群がって話してると一人受付を終えたツバキが入ってくる。


「ん?私がなんですか?」


「なんでもないわよ?でも、また可愛い子入れたわね。カルム君とか苛めたくなっちゃうぐらい可愛いし…」


カルムは危険を察知したのかカルミの後ろに隠れる。

そして、ユリがケイトの肩をガッシリ掴む。


「ケイトさん、やめてくださいね?やっとの事で来た新しい人です、あんまりおいたが過ぎると…フウカさんに告げ口しますよ?」


「ジョークよジョーク、ありふれたオバサンジョークよ。だから別に変な意味で苛めたりはしないから安心して」


カルムはカルミの後ろから顔を出す。


「でも、訓練では話が別よ」


「へ?」


ユリは急に目を白黒させ始める。


「そう、私もさっき聞いた。ギルドが指導員としてケイトさんを斡旋してくれたんだってさ…カルミ、なかなかキツイ訓練になりそうよ?ケイトさんは腕は確かだけど、戦闘に関しては人外だからね」


「って事はフウカさん達も来るんですか?」


「来ないわよ?フウカ達は別件って言ったでしょ?それに二人も連れてきたら、過剰戦力で訓練にならないでしょ。なんせ冒険者としてはまだまだだけど、戦闘と研究だけは一級品の二人だからね」


ツバキは"ほっ"と息をついた。


「えっと、瞬撃の隼ってそんなに凄いパーティーなんですか?」


カルミが疑問を口に出す。

いや、背後のカルムの言葉を代弁していた。


「ちょっと前までは普通に無名だったわよ?何時ぐらいだったかな…あ、こないだワイバーンの群れを殲滅した辺りから急に有名になっちゃってね」


思い返してみても、ワイバーンの殲滅依頼の時は私達って言うよりほぼほぼフウカが一人で殲滅していたように思える。

が一先ず気にしない。


「いや、そもそもケイトさんはアリシアでもトップクラスの冒険者の一人でしたし」


ツバキはケイトをべた褒めする。


「いや、でも普通よ?フ・ツ・ウ!だってまだランクCだしね」


「まあ、こうなったのにはフウカさんの魔法も大きいと聞きますが…そもそも、フウカさんと生身で渡り合えるのが凄いですからね」


ユリは仲がいいからかフウカを褒める。

生身で渡り合うのは割と簡単だと思う。

フウカは完全な魔法使いだから、近接戦はそこまで強くないし…

また今度、実力把握のために模擬戦をやってみるのも良いかもしれない。


「まあ、明日は一緒に行くからよろしくね。あと心配しなくても指導員として行くからには、みっちり教えるから安心して良いわよ」


ツバキとユリは心なしか楽しそうで、カルミの目はやる気に満ちている。

唯一カルムだけが恐怖を全身で物語っていた。

作者:「と言うことで、暫く休載します。その間にストック増やして、文章表現の課題解決を目指します」

レン:「あっそ」

作者:「何その無関心…傷つくな~と言うことで、詳しい話はまた再開する手前でお知らせします!」

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