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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
南北東で戦だそうです。
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俺とお前は親友だぁ?

作者:「遅刻してすみませんでした」

レン:「スクリュープロペラの話はなんとかなったの?」

作者:「なんとなくどうにかなりました」

「で?矢文にはなんて書いてあるんですか?」


ソウジは捕虜二人を交えて矢文の事を調べていた。


で、こっちの言語に不慣れなソウジに代わって男の方の捕虜のセルジオが代わって読む。


「ふむふむ、なんかとんでもない仕事だったみたいだな。中身はこの辺りの地域の言葉で書いてあるな…そのまま読むからな?」


「おう、読め読め」


「えーっと、『おい、転生者。お前らは前線には来るな。繰り返す、お前らは前線には来るな、来れば容赦はしない。猫の悪魔アルベリク』……っておい!これ、公文書じゃないのか?」


「あ?アルベリクって誰だよ。猫の悪魔…?」


ソウジの脳裏に浮かんだのは壱なる門の時に白フードを消し去った謎の男だ。


「アルベリクって言ったらそりゃ帝国の恐怖の象徴。虐殺皇帝の異名を大陸中で轟かせ、落とした国は両手を悠に超え、落とした首も数知れない現上皇陛下だろ」


「あー、そう言えばアイツがアル君とか読んでたな…アルベリクって名前だったのか」


「しっ!そんなの聞かれたら殺されるぞ?」


「は?」


「俺は帝国軍に反旗を翻した奴らがどんな末路を追うのかを軍に入ったときに確りと見せつけられた。全ての国に帝国陛下の代理人の執政官って役人が配置されてて、反逆者を憲兵とか軍人に捉えさせて集め、月に何度か軍の新入りだったり、町の市民の前で処刑するんだ」


「はー、恐怖政治な訳か」


「そんな生ぬるい物じゃない!執政官は憲兵の最高戦力でもある。その能力は単騎で一個中隊を殲滅した事もあると聞く化け物だ」


「まあ、アルベリク上皇陛下は神殺しだからな。やっぱり見劣りするな」


「ふん、ここも戦争で占領されれば嫌でも見ることになるさ」


「ねぇ、そこの男二人も少しは手伝いなさいよ!」


女の方の捕虜ミースはケイトに連れられてキッチンで夕飯の準備を手伝わされていた。


「あ、俺?俺はとりあえず一仕事終わった所なんだけど?」


俺の今日の仕事は家の修理


不運な事件から割れた窓と空いた壁の穴を塞ぐだけだ。


どっちも時間を戻して固定するだけの簡単な作業だ。


「ねー、まだフウカ帰ってこないからソウジ君、ちょっと見てきて?」


「えー、エネシス領主の館までですか?」


「うん、別に私が行っても良いんだよ?台所代わってくれるなら」


「うーん、たまにはケイトさんの手料理も食べたいし…いってきます。リンも一緒に…」


『ソウジさん!早く行きますよ!』


「まあ、行くよね…」


斯くしてソウジとリンは西の空が朱に染まる頃の街に繰り出した訳で…


「そうそう、この前またカイさんのおさんぽしたんだけど…ソウジ君ってどんな人?って聞かれました」


「えー、なんて答えたの?」


「えーっと…ぶあいそーで…えーっとこわくて…でもごはんおいしい人ってこたえました!」


「えー、俺、無愛想で怖いの?」


「ちょっとだけ…いっつも一人で居て何考えてるのかわかんない感じがして…」


「あー、思い当たる節があるし…もっとイメージアップ図らないとな♪」


「ソウジさんはなんで仲間になったの?」


「ん?俺はちょっと前にフウカさんに拾って貰ったからなし崩し的にね」


「どくりつ?したいとか思わないの?」


「あー、独り立ちね?うーん、別に今の生活も嫌じゃない、むしろ快適だし…皆いい人だし別に思わないかな。リンちゃんはどうなの?やっぱり早く大人になりたい?」


「うーん、解んない…大人にはなりたいけどお母さんと離れるのはイヤ…おじさんは別にいいかな」


「まあ、リンちゃんは恋人?番鳥?まあそう言う関係の相手を作るのが難しいだろうからね(DNAとかの問題で…)」


「グレイさんの本には恋をするのに種族の差は関係ないって書いてあったよ?」


「うーん、こっちではそうなのかな…」


思い返して見るがこの世界でも獣人を見たことはまだない。


ケイトさん曰く、ゼレゼスは根っからの亜人迫害主義だから数は極端に少ないらしいけど…


そもそも亜人が産まれるプロセスも良く解らないからなんとも言えない。


「あ、でもエルフは居たし可能性は無くはないのかな?」


「うん、こーとーしゅぞくはその遺伝子を変える事ができて、たしゅぞくかんでも子供がのこせるって書いてありました」


「あー、その変身の術とかが典型なのかな?」


「ううん、もっと難しい術なんだけど魂のある部分をかいへんしてすてーたすのしゅぞくをへんこうするとなんとかかんとかで子供が作れるようになるって」


「へっへー…なんか思いの外生々しい内容で驚いた…」


「ねーねー、ソウジさんは相手を探さないの?」


「俺?俺はいいよ。そう言うのはめんどくさいし…たぶん俺と一生を共にしたいとか考える物好きはいないから」


「えー、誰か気になる人とかいないの?」


「うん、この世界にはいないんだ」


「そうなんだ…ソウジさん顔も悪くないからすぐいい人見つかると思うけど…」


あれ?リンちゃん、この1ヶ月弱で成長しすぎじゃない?こんなおませさんだったっけ?


「おじさんが言ってたけど、雛鳥の成長は大人の思ってる数倍早いんだって」


「あれ?もしかして読んだ?」


「えへへ、ごめんなさい」


リンはわかりやすく肩を落とす


「あ!お前!久しぶりだな」


雑踏の向こうから金髪のイケメンが手を振りながら走ってくる、だが気を付けろアイツの頭は残念賞だ。


「誰?」


「あれはセイ、貴族の残念賞だよ」


「最近見ないからてっきり死んだかと…おい、抜け駆けしやがって!誰と作った!?姉さんか?」


「は?良く見ろよ。どう見ても生後何ヵ月にも見えないし俺にも似てないだろ」


「確かに、じゃあ…子守りの依頼でも受けたか」


「この子はリンちゃん。フウカさんの子供だ」


「じゃあ姉さんの子…ではないか」


「そう言えばお父さんって誰なんだろ…」


「ん?お父さん?あー、確かに迷うな…姉さんが父役なのかな?」


「おい、残念賞ちょい」


「は?」


俺は残念賞の耳元で囁く


「リンちゃんは養子だ、諸事情あってな?実の両親は…」


「は?いや、そりゃそうなんだろうけどさ…それを彼女は?」


「さあな」


「おい、お前!このオタンコナス!そう言う時こそ男気見せろよ」


「は?俺はそもそも単なる居候だぞ?そんな奴が父親代りなんてバカな話があるか。しかも俺はまだ16だぞ?」


「へ?お前まだ16だったの?俺のが年上じゃん」


「くすっくすっ、ダメ面白すぎる…二人ともこそこそ喋ってた筈なのに丸聞こえだよ」


リンはお腹を抱えて笑っている。


「ほら、お前がでかい声だすもんで聞かれたぞ?」


「いや、俺?それを言うなら残念賞、お前だろ」


「ほら二人とも早く行くよ!」


リンはスタスタと歩いていってしまう。


俺はセイの襟を掴んでついていく。


△▼△▼△▼△▼


「だから、ここはこう言う形にした方が効率が良いんですよ!」


「いや、大きい方が良いに決まってる」


報酬の話を追えてミゼリアさんと別れた私たちはディーダラスさんの居るスクリューエンジン研究室を訪れていた。

作業台の上には三メートル程の大きさのスクリューエンジンの羽が置かれている。


「いえ、羽の直径の分は羽の枚数でカバーできます」


「って言うがよーこれ一枚作るのもスゲー大変なんだぞ?」


「大きいと海底とかに擦って損傷したら終わりじゃないですか!もっと小型のスクリューを羽を沢山つけて羽一枚に掛かる負荷を軽減した方が安心ですよ!」


「だがよ?スクリュー2基にしたらそれだけで羽の枚数は倍だぞ?皆どう思う?」


研究室の方々は賛否両論のようだ。


「そこのあなた、これの3分の1のサイズの羽を3枚作るのとこれ1枚作るのどっちが楽ですか?」


私は研究室の隅で鋼を打っていた人を指差す


「え?僕?」


「そうです」


「うーん、そうですね…確かに3分の1ならここの炉ほど巨大じゃなくても十分加熱できるし、少人数で作成可能だから生産効率は上がるんじゃないでしょうか?」


「そうです、でもしももっと小さい炉でも作れるなら、他の工場に作成依頼を出すこともできます。軍艦の大量生産も視野にいれて行きましょう」


「ウッス、チーフ!!」


研究室の皆さんは口々に意見を口にしながら早速作業に取り掛かる


「あの、なんで私はチーフって呼ばれてるんですか?」


私は入り口で立ってるブロードさんに目を向ける。


「さぁ?でも、フウカさんに任せた方が成功しそうな気もするんですよね…」


「いやでも、魔導発動機の方が楽しそうなんですけど…」


「あ、そうそう。お子さんいらしてましたよ?今は上で使用人がお菓子渡して対応してます」


「じゃあ、そっち行きますね」


「じゃあ案内しますよ」


私達は早足で地下ドックを抜けて地上へ上がる。

そして間もなく応接室に戻ってきた。


「遅かったわね。ほらリンちゃん、お母さん来たよ」


応接室にはなかなか見ない面子が揃っていた。


ソファに腰かけるミゼリアさんと餌付けされてるリンが一番に目に入る。


で次にその向かい側、私から見て手前側で行儀よく座る金髪と黒髪が目に入る。


「あ、フウカさん。遅いからケイトさんが心配してましたよ?」


黒髪はもちろんソウジ君


「ぐぇっブロード…なんでお前も一緒なんだよ…」


悪態を付くのはケイトの弟さんの…えーっと…そうセイさんだ。


「セイ、なんでか…そうだな、作戦終了後の休暇で一時帰宅しているとでも言っておこう。軍役中の私は部屋住みの貴様と比べて幾分忙しいからな。なんでと言うのも頷けよう」


「はあ、お二人はお知り合いですか?」


「自分がケイトさんの元婚約者だったのもあって交流があったんですよ。でもセイ、は目があった瞬間から敵意剥き出しで、今でもこうして懐かれてる訳でして」


「懐いてねえよ!」


「なるほど懐かれてますね」


「はい、その気持ち凄く解ります」


ソウジ君は頷く。


「おい!お前、俺のことをそんな風に思ってたのか!?友達だと思ってたのにぃ!」


「ん?トモダチ?待て待て、俺と?残念賞が?」


「ちょソウジ君、流石に直に残念賞は酷いんじゃ…」


「いや、セイには相応の愛称だと自分は思いますよ」


それは愛称って言うより悪口って言うんじゃ


「それが愛称だと?」


やっぱり流石に怒るよね…


「やっぱりこの毒舌には愛があるからな。俺とお前は親友だ!」


わっ!凄いポジティブ!


「いや、セイにも同年代の友人ができたようで安心したよ。これで自分も軍役に集中できる」


そう言うブロードの顔はかなり満足そうだった。

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