後始末します
作者:「すいません、いまいち筆が乗らないので短いですがご容赦ください」
「お義父さん!力を貸してください」
それは非常に唐突な話だった。
わしは唐突にやって来たフウカ君から今のエネシスの状況を聞いた。
その理由については何ヵ所かぼかされたが、面倒な事に巻き込まれているのは間違いない。
「エネシスへの援助は全く構わんが、ソレだけの重要な施設だ。野晒しと言う訳にも行くまい」
「どこか空いてる土地が無いですか?」
「そうじゃな…とりあえずこの館の前庭辺りを使うと良いだろ。警護もしやすいし、変な輩もそうそう入っては来れまい」
「ありがとうございます」
フウカはさっさと前庭に魔法陣を設置して、空間魔法で囲いを作り屋根を用意する。
「ミゼリアの説得の方は任せてくれ。だから代わりに頼まれてくれんか?」
「なんですか?無茶を聞いてもらっているので最大限協力しますが」
「うむ、今年の春頃になると思うが…おそらく均衡が崩れて戦争になる。こんなことを言うのは心苦しいが、力を貸して欲しい」
「戦争ですか…相手は北ですか」
「と帝国だな」
「もちろん力は貸しますが…嫌なものですね」
「そっちもあるからエネシスは春までに復興させよう。協力してくれ」
「では行きましょう。エネシスへ」
そこから話はトントン拍子だった。
ミゼリアはわしが協力する姿勢を見せたら直ぐに援助を受け入れた。
早急に港の一角に魔法陣を置き、フウカ君は場を固定していった。
フウカ君が言うにはギルドの力を借りて資材を集めるつもりらしい。
どうも思い詰めてるというよりは焦っているような印象を受けた。
何事もなければというのは今さらだが、これ以上がなければいいのだが…
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それから約一週間後
復興は急ピッチで進められて居り、拠点となるギルドの建物は既に全快して今まで以上のパフォーマンスを見せている。今はは家屋の修復と上下水道の復旧を最優先に復興が進められている。
私も運搬を手伝ったり、石材や木材の加工を手伝ったりと何かと忙しく働いていた。
「フウカさん、ちょっと働きすぎじゃないですか?」
私の隣にはカイさんがいる。
「私に構わず、カイさんは休んでください」
少しふらふらするがそんなことに構っていられる程暇じゃない
「完全な過労ですよ!」
「大丈夫です。コレ届け終えたら魔力回復の為に一度休むので」
私は切りかけの石材を指差す。
それは私の身長と同じぐらいの高さの立方体で、材質は砂岩に近い感じの岩だ。
コレを指定された大きに切り分けるのだ。
「ふぅ…せい!」
私の掛け声と同時に石材に複数枚の魔法陣が刺さり、無数に切り分ける。
それをそのまま空間魔法の箱に積めて、作業場へ持っていく。それが今、私にできること。
「えーっと、どこでしたっけ…港の東側でしたね…」
私はなんとか翼を作る。
「よし、…行ってきます」
「あっ、ちょっと待ってください」
「カイさんは休んでて下さい。私は私にできることをやります」
私は一先ず港の西の端っこ、船が爆発炎上して被害の大きかった区画を目指す。
大破した船は解体され、爆発の影響で燃えたり、倒れたりした倉庫や家屋はそのままになっている。
「ふぅ…まだまだ復興には時間がかかりそうですね」
地面に降りると割れたレンガが寂れた音を立てる。
今は倒壊した倉庫を撤去したり、家屋の修繕用の資材を運び込む為にガタガタに捲れた石畳の地面を直している。
私はその補修の為の石材を作ってきたのだ。
『おう、その辺に置いといてくれ』
作業をしているのは専門の業者だったり、警備兵だったり、倉庫の持ち主だったり、ギルドで依頼を受けた冒険者だったりする。
その内容は男性のが多いのは言うまでもない。
「じゃあまた、次できたら持ってきますね」
「ああ、これ次の図面。頼むな」
あまりフウカに対して不信感や不快感が募っていないのは一重に忙しく働いている所を町の至るところで見ているからだろう。
でなければ、街を危機に陥れた張本人として槍玉に挙げられていてもおかしくなかった。
そう言う点ではフウカは文句なしに正しい行動を取っていた。
ただ、唯一抜けている点がある。
それが…
『お主!おい小娘!こんな所で倒れるな!だから寝ろとアレほど言っただろ!』
「せっかく転移門のデザイン案を任せて貰ったんです…確りした物作らないと…」
『そう言ってお前、もう三日寝てないぞ!』
「でもまだまだやること多いです…もうちょっとだけやることやったら…寝れますから」
『リン、お母さん見ておけ?ワシはちょっくら出掛けてくる』
『えー!おじさんだけ?まあ、いいけど~早く戻ってきてね~?』
「はぁ…リン、どんどん大人びてくるね」
『えへへ、リンは早くお母さんみたいになりたいな~』
そうなんだ…
「あ…なんだこれ…」
『お母さん、大丈夫?お母さん!?』
視界が歪んで霞んで黒く染まり、白くなって霧が晴れる。
「フウカちゃん、全然寝ないのね…おかげで会うのがご無沙汰になっちゃったじゃない」
「アイーシャさん?じゃあここは夢ですか?」
「ええ、そう言うことになるわ。フウカちゃんには二人が視える?」
「二人?」
「視えてないのね…まあ、もしかしたらまだロックが残ってるのかもしれないししょうがないか」
「アイーシャさん、私どうしたんですか?」
「ただの過労だから心配しないでいいよ。だから安心して休みなさい直にあなたの仲間も来るはずだから」
「アイーシャさん!まだ聞きたいことが…」
「今はゆっくり休みなさい」
私はそこではっきりした意識を完全に手放してしまった。
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一週間前
「ふぃー、流石に使い魔三体いれば片付けもあっという間だ」
「そらな、ほれコアを広いに行くんだろ?」
涼はダンジョンの入り口である大穴をヒレで指す。
「そうだった、まだ中に敵が居るかもだから皆気を付けろよ?特に銀次郎、こっちは運が悪ければただの一発で命を落とすからな?」
門経由で呼び出した銀次郎はいつもの麻袋を片手に敬礼する。
「んじゃ、行くか!」
俺は翼を展開して、先陣を切る。
ダンジョンの中は明かりが失われて完全な闇が空間を満たしていた。
「銀次郎、灯り頼む」
銀次郎の鉄仮面の目の所が光って前方を照らす。
「主か?これを仕込んだのは」
「いや、これは銀次郎が考えたんだぞ?」
「銀次郎、やめたければ止めてもいいんだぞ?」
銀次郎はヘッドライトを止める
「じゃあ涼、サーモグラフィー」
刀が音もなく銃に変化する。
「じゃあ、核回収まではノンストップで行こうか」
そして俺率いる使い魔軍団は順調にダンジョンを降りていく。
発砲音が1、2、3、4
それとほぼ同時に肉の弾ける音や骨が砕ける音や硬質なものが砕ける音が響く。
音や体温で察して襲ってきた敵には重雪が鉄拳制裁を下し、逃走した魔物には銀次郎が追撃をかけるか俺が狙撃する。
もはや完成され尽くした連携でずんずん潜って行く。
行ってみればそんなに大きなダンジョンでは なかったようで、たったの二層だけで、コアがあったと思われる祭壇にたどり着いた。
「祠?」
「だな、コアは…塵になっとるか…無駄足だったな」
ゴーレム二体も心なしか落胆しているような…
いや、やっぱりわからなかった。
「お?腹に振動が来る。これは例の財宝ってやつか?」
間もなく地面がボコボコと膨らみ、ドチャドチャと表現するのが相応しいような感じで主にゴミが吐き出される。
「ん?これは?」
俺はゴミの中から馴染みのある形状の短剣を引き抜く。
「ソードブレイカー?何故にこんな所で?」
そもそもこの世界ではソードブレイカーなんて武器は見たことがない。
「まあ、誰かが思い付いたんかね?」
俺は引き続きゴミあさりを続けるのだった。