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半壊 全滅 後片付け

夢。

そう、これは夢だ。


真っ暗な夢、この夢を見るといつも真っ暗な空間に私が居て、暗い周りより更に暗い闇が呟きながら追ってくる。

掠れたノイズ混じりの声で私に呼び掛けながら追ってくる。


だって─あなたは─私の─………─だから


肝心の私が何なのかはいつも聞き取れない。


そこだけは見えない、それが見えたらこの闇が晴れるかもしれないけど私にそれは見えない。


見えない何かが邪魔をする。


ひたひた、ひたひた、闇が追ってくる。


もう慣れた。


『あはは、こんなにズタボロになって可哀想に』


その声はいつもと違ってハッキリした声、それも可哀想なんて微塵も思っていないと思われる明るい声で呟いた。


「なに?いつものやる?あなたは~私のー半身だから~♪って?」


「え?そんなアッサリ…」


「何?私はずーっと前から言ってるのよ?あなたは私の半身だからって、なのに声が届かないんだもんね。まあ、それもこれも情報に制限が掛かってたからなんだけどさ」


闇が一斉に晴れて来る。


不思議な感覚だ

さっきと打って変わって真っ白な水平面に立っている、空は青い。なのに透明な霧の中に居るような感じ。


そこに居た闇は白衣の女性に変わっていた。

白衣の下はパンツスーツで如何にも研究者って感じだ。

髪型とか顔つきとか背丈とかどことなく私に似ている気がする。


「驚いた?これが私達の深層心理が視覚化した世界。あなたの物であり私の物であり、彼女達の物でもある」


「え?彼女達?」


「そう、この魂は二人の元の所持者の魂と四人の魄がくっついて安定した状態なの。で今の魂の所持者はあなたで、あなたは歪な魂が安定しようと作り出した人格。」


「えーっと…それって…え…」


「まあ、いっぺんに言われても理解が追い付かないと言うか思考にロックが掛かるよね。リミッターを付けたの私だし…」


「…リミッター?」


「そう情報処理制限とも言うんだけど、まあ人が知りすぎない様にって事で用意した心理的反発の事なんだけど。これの有無によってその人の行動パターンが大きく変化するからシミュレートには必須なんだよね♪」


「シミュレート?なんの…」


「あら、起きる時間みたいよ?アリアちゃんが呼んでるよ?ほら行かないと、さ!」


「まっ待って!せめて名前を!!」


私?私はーアイちゃんって呼んで欲しいかな♪


「いや!そんな適当な!」


「フウカさん、大丈夫ですか?」


そこにはアイちゃんではなくアリアさんが居た。そこは深層心理の世界ではなく間借りしているディーダラスさんの家の客間だった。


「はっ!そうでした!!街は大丈夫ですか!?」


「何が起きたのか未だに解りませんが…突如襲った光の弾丸の雨のせいで街は半壊です。ギルドの方で怪我人の手当てと犠牲者の捜索を行っていますが…非常に高威力の魔法だったのか船が全滅、ギルドの建物も被弾して被害は甚大。正直、打つ手なしって感じです」


「はぁ…やっぱり私じゃ弱いですね…守りきるつもりだったのに守りきれなかった。もっとできることはあったはずなのに…拒絶されることを恐れてしなかった…こうなることは予想できてたのに…」


今ごろになって出来たことが次々と浮かんでくる。


悔しい


「フウカさん、何を言って…」


「ははは…ダメだ…ソウジ君とかケイトならこう言うとき笑って動けるんだろうけど私には無理ですね…」


「何をしてきたんですか?」


「敵の狙いは私でした…私と門。私がここに来なければこんな事には成らなかったんですよ…私は応戦しました。がまんまと敵の策に嵌まって負けました。その後はたぶんジンがどうにかしたんだと思うけど…」


扉が急に開かれる


『こっちは忙しいのにいつまでもメソメソと…さっさと外を見て来いってんだ。なんで態々重症の傷を治してやったと思ってる?』


そこには血塗れのジンが居た。


「あ!さっきの人!!」


「知っての通り俺はレンと違って忙しいんだ。お前がそんなじゃ次にフードが来たらもう終わりだろうな。何度も言うが俺は忙しい、そう何度も守ってやれはしないからな?」


「そうですよね…あなたらしいです」


「ふん!お前、変な勘違いをしているな?自分が平凡だと思っているな?」


「え?そこは普通『特別だと思ってるな?』じゃないですか?」


「言っておくが、この世界でもお前ほどの変人は数える程しかいないからな?もしもお前が居なかったら、奴等は直接門の所持者を襲撃しただろうな。あの攻撃から解るだろうがアイツらは人間を人間だと思っていない。当然、付近の人間は一重に殲滅したな。そう考えればお前と言う的があったお陰で俺らは裏で敵の勢力の集中するポイントを絞って迎撃できた。裏を掻いた別働隊も居たが、虚弱性で誘い込んで今頃こっちのアカウントごと監禁されて絞られてる頃だな」


「あのどういう事ですか?」


「要約すればフウカ、お前は囮にされたんだ。そしてその役目を全うした、結果的にこの惨事だがお前がいなければ世界各地でこのレベルの惨事が起こって居た。当然アリシアも無事では済まなかっただろうな王都も他国もな。マクロに見ればお前は多くの命を救えている、それにこの街の被害も最小限に留まった。あそこでお前が庇っていなければ更地になってだろうな」


「更地って…」


「別に自分を責めるなとは言わない、お前の事だ責めるなと言ったら余計に自責するんだろ?だから言う、守った事を誇れ。そしてまだ守れる命があるだろ?それを守るのか見殺しにするのかはお前の自由だが…後悔はするな?お前がグズつくと場の空気が一気に悪くなるからな」


ジンは窓から出ていく。


「あれ、励ましてるつもりなのかな?」


「さあ、たぶんそうなんでしょうけど…不器用ですね…」


「ジンらしいです。傷もジンが治してくれたらしいし、外見てきます」


「私もついてきますよ?確り看とけってさっきの人に言われてるので」


できる事をする、今までとなんら変わりない。


外へ出るが、その光景は息を飲む物だった。


「酷い…」


もはや廃墟群と呼んだ方が良さそうなレベルだった。


「船さえあれば復興は進むので、今はギルド手動で山に材料を取りに、ミゼリア様を中心に住民の救出と炊き出しを行っているはずです」


「では私は…私にできることをします」


木材の調達を手伝う?しかし船に関する知識がない。

消火活動は粗方終わってるし…

救助を手伝う?魔法では逆に傷つけてしまうかも…

物資の調達、でも伝がない。


「アリアさん、ミゼリアさんに会えますか?」


「ミゼリア様は今は忙しいかと」


「私だと少し弱いんです。お…ヴィンスさんとミゼリアさんは旧知の仲だと聞いています。協力を仰げれば冬までに住居ぐらいはどうにかできるかと」


「でも、物資の供給には距離が離れすぎてます」


「でもここには私が居ます。ですが、非常にリスクの伴う行為です。なので一時的な物とします、それが街の為にも私の為にも最善です。とりあえずここで無闇に口に出して混乱を広めたくはないので」


「何をするつもりですか?」


「繋げます、エネシスとアリシアを」


私はハッキリとそう言い切った。

それはこの場だけでなく、ミゼリアの前でもだ。


「えぇっと…ちょっと考える時間を頂けるかしら?」


ただ、ミゼリアの返答は芳しくなかった。


「さて、まあ解りきってた事です。お義父さんを引っ張って来た方が早そうですね」


「あの、フウカさん…ちょっと無理があるんじゃないですか?」


「まあまあ、ちょっと暫く留守にしますね」


「え?」


「できることをします。すぐ戻ります」


「あっはい、いや、何するつもりですか!?」


「先に向こうに話を通して来ます」


そう言い終えた所で私は杖を掲げる。


『我、空間を繰る者、其の切れ目は彼の地と此の地の間を省き、我が良しとするまでその地繋がりを維持せよ ゲート』


杖から放たれた藤色の光は目の前の空間に平面の歪みを作り、そこから膜に穴が開く様に穴が広がり成人男性が数人分程度の穴を作る。


向う側には大きな屋敷、アリシアの領主の館が見える。


「じゃあ、こっちのことはお願いします。夜までに戻らなかったら晩御飯はいいですので」


そして私は穴を抜ける。


「さて、私にしか出来ないことをしましょう」


私は館に向けて歩みを進めた。


▲▽▲▽▲▽▲▽


「ふぃー、あーあ…全身斑なく真っ赤になっちった」


湧いた魔物を残らず血祭りに挙げるのに体感時間で3時間ぐらい、リアル時間で2秒ちょい


「やく5000倍って所か…」


真っ赤に染まった大地で大小様々な肉塊に囲まれたソウジはこれだけ斬っても刃毀れ一つ見当たらない刀をぶら下げて肩で息をしている。


『流石に我も疲れた…』


「同意だ…もう魔力もない、気力もない、腹へった…」


『我も空腹だ…魔力~…魔力~…』


「さながら妖刀だな。なあ、斬った相手から魔力吸ったり出来ないのか?」


『そりゃ、開封で喰らえば吸収できるが…やたらなもんは喰いとうない…せめて新鮮な肉にしてくれ…魚がいいな…』


ソウジは当たりの肉の山から頭のない半魚人を引きずり出す。


『おいおい…まさか』


「魚だ」


『いや、それは流石にグロイだろ』


「うーん、肉は肉だし…お前食には拘らないみたいなこと言ってなかったっけ?第一頭開封」


『いや、それは食べなくても大丈夫って話であってどうせ食べるなら良いものが食べた、あぁー、よせぇ!』


涼の悲痛な叫びとは裏腹にその刀身を変化させて開かれた大顎は半魚人を丸呑みにして、咀嚼する。


『うぇっぷ…割りと美味だった』


「それは良かった。うん、ちょっと魔力回復したな」


『うむ、これをどうするかだな』


「全部固めて持って帰るか」


『マジか?』


「これで結構稼げるだろ?」


『まあ、相当額だろうが…』


「と言うかこれダンジョンだよな?」


『うむ、それはそうだろうな』


「ならコアがあるだろ?」


『さっきの騒乱で踏み潰されてなければな?』


「それ持って帰ろう」


『おい、正気か?』


「さ、そうと決まれば先ずは片付けだな」


ソウジは足下に転がる死骸を広い集めて山にする。


『そうそう、集めると所有権が移るから魔法のコストが下がるんだ』


「よし、食べるか」


『は?』


「いや、一匹ずつ食べてたら時間かかるだろ?だから一気に食べられるようにさ」


『いや、十分食っただろ?』


「ん?ノイズが酷くて聞き取れないな~」


バックンッ


有象無象の死体を一口で齧った大顎はミシシだったりグチャッだったり骨と肉を咀嚼する行為をして、すべてを魔力とそれ以外の塵に変える


『うっ口のなかカオスな味…この好き勝手やってからに!』


「・・・うん、確かにカオスな味だな。と言うか一重にマズイ」


『お主、よく平気で居られるな…』


「ん?まあ、生肉食べるのはこれが初めてじゃないし…これはお前とくっついてるからかな?やたらと魚肉が美味く感じるんだよな~」


『そうか感覚共有だからか…』


「なあ、これ魚だけ売らないどくか」


『そうだな』


「じゃあ、ちゃっちゃとこなして帰るか!」


『なら一仕事だな』


涼が元の大きさで現れる。


「やっぱお前デカイよな」


ソウジはトランクから雪人形を掴んで取り出す。


「重雪、お前も手伝え」


放り出された重雪はムクムク大きくなる


「さっ片付けするぞー、片っ端から死体を持ってきてくれ」


『仕方ないな』


重雪は親指を突き立てて返事する。


ソウジは二匹の力を借りてサクサク死体を集めていった。

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