白フード 再来 終結
作者:「今回で白フードは一旦終結です」
ソウ:「これは結局何の意味があったんだ?」
作者:「えーっとねー……」
ソウ:「ないんかい!」
作者:「守秘義務がありまして」
ソウ:「嘘だ~」
繭から出てきたフウカのコートは真っ黒に染まり、瞳が薄緑に変化している。
「やっぱりフウカには荷が重すぎましたか…まあ、あなたたちには悪いお知らせでしょうね。私がお相手を勤める事になるんですからね。システムコール:アカウント認証、クイックアクセス:アカウントコードを強制認証」
『認証を承認。アカウントコードを認証、アドミニストレータアカウントを確認しました。WSSはシステム管理モードへ以降に当たり外部との接続を中断します』
空から声が降ってきて、門は輝きを失う。
「コール:X5000Y5000Z5000内のアカウントを全て抽出、世界間移動管理局所属アカウントを選択、ログを消去、パラメーターをリセット、ログアウト権限を凍結」
アイーシャは空に向かって更に呟く。
空は
『認証しました』
と一言だけ話すと、音もなく、元からそこには何もいないかの様に白フードはピクリとも動かなくなる。
「貴方達をそのまま永遠の闇に沈める事もできますが、貴方達には苦しんで頂く事にしました。まあ、この子がこんなになったんですから当然の報いですね」
「ぐっ、聞いてないぞ…対象の転生者?笑わせる、お前は転生者どころか人ですらないじゃないか!」
「あら、優先度の高いのが混ざってたみたいですね。良いでしょう少しお話しましょうか。私も二つ名があったんですよ?千年以上前の話ですが、その頃は秩序の調律者なんて呼ばれたりしましたね。さて、ついでにこの魂も調律しますか。コール:管理者権限よりSEAの利用権限を付与」
『警告:SEAの利用は魄を利用するため使用後の記憶障害が予想されます』
「いいからいいから、付与しちゃって」
『認証しました。SEA:pⅣの利用権限を付与します』
「ふぅー、SEAをマニュアルで発動。出力0.003%、利用する魄の部位を選択」
『メモリロック部位が含まれます』
「いいよ無視して使って?」
『了解しました』
「あはっ、キタァーそうそう、この絶望感と緊張感と解放感。なによりこの万能感サイコウ…」
ふっ
彼女は一瞬で姿を消す、いや超光速で移動する。
「なぁっ!?」
白フードの指揮官が気づいた時には既に仲間の半分が破裂して肉片に変化していた。
「皆、ゲンコツ一発ずつで許してあげることにしたんだけどやっぱり調整が難しいわ、コツンってやったら原型も留めなかったわ」
「お前はなんなんだ…」
「うーん、体は神造人間。アカウントは管理者、魂は人と神が混ざってるわ」
「お前、アイーシャ・ゼス・タルタロス主任研究員なんだろ?」
「うーん、半分ね?もう半分は転生者のフウカ・アリシアちゃんよ?あ、まだアリシア名乗るって決めてないんだっけ…」
「俺はどうなるんだ?」
「うーん、そうね~永遠とも言える一瞬を闇で過ごして身体異常が検出されて無理やりログアウトさせられるでしょうね」
「そうか…外部との接続は断たれたけど直に回復するから」
「そうか…」
「私にアカウントデリートされなければの話だけどね!」
アイーシャは鎌を振り下ろした。
鎌は肉も骨も筋も内側に着ていた鎧も無視して真っ二つにした。
切り裂かれた肉体はその衝撃で散り散りになる。
血と肉が花弁の様に舞い、海に散る。
「ふー、流石に限界かな?」
「アイーシャさん!生きていたなんて聞いてないですよ!」
「ジン君、今の私はアカウントと魄が損傷しているからリアルの体は植物状態…私達にはそんなに珍しい話でもないけどさ。まあ、生きているとは言えないかな…今もフウカちゃんの体と魂と魄を借りてなんとか損傷を補完して騙し騙し表に出ているに過ぎないからね…」
「じゃあ…残りの魂魄を集めれば元に戻れるんですか?」
「うん、まあ理論上はそのはずだけど、それには癒着した魂魄の切り離しが必要だから宿主は死ぬわ」
それはとりあえずフウカが死ぬ事を意味していた。
「俺は貴方を助けたい。例え何を犠牲にしたとしても」
「もうレンは…動いている…フウカは…その───だから」
「アイーシャさん!?」
「フウカちゃんを私の──を見捨てないで……」
彼女の手から鎌が滑り落ち、闇となって霧散する、それと同時にコートも白く戻る。
そして、風の翼も霞んで消え意識のない体は落下運動を始める。
「おっと…」
ジンはそれを抱き止める。
「切り傷こそ少ないが、重症だな…肋骨が三本、鎖骨が一本、背骨もちょっとおかしいな…まあ、多少はこっちで直すか」
そして、抱えたまま姿を消す。
消すと一時的に視界は闇に染まり、次の瞬間には海の上ではなく確りした木目の床の上に降り立つ。
「ふぅ…ここがお前の借家か…まあ、いい。システムコール:応急回復」
ジンは抱えていたフウカをベッドに寝かせる。
『承認できません』
「現場特権、対象は転生者だ」
『現場特権申請を確認、対象のコードを照合、転生者を確認。要求を履行します』
「さっさとしろ…」
フウカを白い光が淡く覆う。
『肋骨三本、鎖骨一本、脊椎四ヶ所、その他数ヶ所の骨折、打撲、炎症箇所より世界間移動管理局のアカウントによる改編の痕跡を確認しました。修復しますか?』
「修復しろ、それと今のログをバックアップしろ」
『了解しました』
「まあ、一通りの処理はこっちでしてやる。後は自分で治せ、時間をかけてな」
ジンはそう呟くとドアから出る。
『土足ですまないが家主は居るか?』
『だっ誰!?』
『名乗る程の者じゃない、上にここの居候を寝かしといた。傷はあらかた治したが、体力と魔力の回復にしばらく時間がかかるはずだ、面倒を掛けるが看てやってくれ』
『フウカさん、何して来たんですか?』
『まあ、色々人には言えない事情があってな。俺はコレで失礼する』
『まあ、後で本人に聞くから良いですけど…って良くない!いったいどこの誰なんですか!!どっから入ったんですか!!』
アリアが叫ぶが既にそこにジンの姿はなかった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「ちょっと遅れてきてみれば、完全に嵌めてるね?」
俺は未だに白く濁った球体の中から出ようともがく白フードをなぶり続けていた。
「役者も揃ったし、血祭り始めるか!よろこべ糞虫共!白濁空間から解放してやるよ」
白濁ってつけるだけで汚ならしく聞こえる。
「君、悪趣味な時間の稼ぎ方したね?」
パキンッ
俺の指パッチンで時間の流れが元に戻され霧が弾けて中に内包されていた白フードが飛び出してくる。
『散々蹴飛ばしてくれたなクソガキィ!』
「おー怖い怖い、おっかなくて首を落としたくなっちゃうよ」
叫んだ白フードの首が飛ぶ。
「俺の速度に付いてこれるかな?」
完全にズルだ。
そもそも時間の概念が通用しない俺には速度の概念ももはや無いに等しい。
「君、もうそこまでの使いこなしてるの!?」
「さっきコイツらをなぶってる間に感覚制御を練習したら、力の効率的な使い方に気づいた。それだけの話だ」
「君、前から思ってたけど理論と技術の実現性が高いよね…というか僕要らなくない?」
「ああ、まあ出てきたやつを瞬時に確認して殺すだけだからな、こんな簡単なもぐら叩きはないぞ?」
喋っている最中にもソウジは度々瞬間的に時間を操作して次々と飛び出した白フードを始末している。
『認証を承認。アカウントコードを認証、アドミニストレータアカウントを確認しました。WSSはシステム管理モードへ以降に当たり外部との接続を中断します』
すると突然氷漬けの門が輝きを失う
「なんだ?」
レンは空中を眺めて、頷き笑みを浮かべる。
「やっとか…かなり時間が掛かったね」
「どうした?」
「あっちで外部との接続を切断したって、だからここに居るのを殲滅したら終わりだよ」
「了解」
「さてと、急ぐ必要が出てきたから僕も手伝うよ。補助結界作動」
辺りを六枚の壁が覆い、レンは八本の火柱を纏う。
そして纏った矢先、全て鎌の先端に収束させて太陽と呼べる程眩しい球体に変える。
「燃え尽きろ」
レンの鎌の一振りで打ち出された球体は霧の中に入り、霧を丸ごと焼き尽くす。
「ソウジ君が霧で範囲を選択してくれてたから使えた技だよ。さて、僕は次行こうかな?ソウジ君は街に戻ってなよ?」
レンはさっさと姿を消す。
「はー、やっぱ神具って凄いな。今まであんなに魔力の流れを掴むのに苦労したのに、こんなにあっさり手に取るように解るようになるなんてさ」
これが神具による身体能力の強化に当たるのだろう。
なんというか見えない手で魔力に直接触れているような感じだ。
『うむ、感覚の拡張だな』
「感覚の拡張?」
『神具の能力で概念優先度が上がった結果より高次の情報へのロックが解けたのだろう』
「高次の情報?」
『魔力の流れだとかシステム的な物だったり、普通の人間には知る由もないことだ』
「ふむ、じゃあフウカさんは覚醒前の時点でその高次の情報とやらを知覚していたわけだ」
『稀にそういう物もおる。大概が神の血縁だったり神と関わりのある人間だがな』
「まあ、そういう点では俺ら転生者は条件にばっちり合致するわけだ」
『だが、主らはちと違う気がするな。お主の中にお主でないと思われる者の記憶がある、アクセス制限が掛かっていて見ることはできんがな』
「は?」
『まあ、気にするな。稀にある事だ、輪廻転生の際に魄の一部が残ることがあるらしい』
「なら問題なさそうだな」
『応』
「あっちは大丈夫かな?」
『主の記憶にあったフウカさんか?』
「そうそう、まあフウカさんなら大丈夫か。まあ、これでやることも終わったし早いとこフウカさんに合流するか」
『レリックの件はどうするんじゃ?』
「あー、あれは…アレも大丈夫だろ。何せ心強い先生が居るんだからさ」
さて、覚悟を決めて怒られに行くとするか。
なんて言い訳した物か…うーん、白フードが一般人に見えないのが痛いな…
『まあ、いざとなったら金でどうにかしろ』
「はー、出費が痛いな。外でなんかわかりやすい問題起こすか」
『そんな都合よくできるのか?』
「さあな?だが俺は時間をかければ何でも実現できる例えば…」
ズズズズズズズズズズッ
「地鳴り?」
『この辺はダンジョンが多い、その拡張に伴う音だろう』
「なら良いが、明らかに下で何か蠢いてるぞ?」
『あぁ、ほんとだ』
「お、俺だ!」
地面で両手で手を振る俺が居た。
「ナイス俺、じゃあ言い訳作って帰るぞー」
俺は刀を抜いて急降下する。
下に貼見覚えのある魔物や見覚えのない魔物が犇めきあっている。
「こっちのがやりがいありそうだな!」
ざっと数えて、200以上。
要するにいっぱいだ。
そして足元にいた魔物の頭蓋を踏みつぶして、その周辺のをまとめて切り捨てる。
舞った血しぶきが乾いて黒く変色したコートを再び赤く染める。
「ふぅ、この手応えは仮想じゃ味わえないから精々楽しませてもらうよ」
『猟奇的だな』
「あー、たっのしっいなー」
レンのせいで地味な戦闘に終わったから不完全燃焼だ。
この不快感はこいつら相手に派手な戦闘して忘れよう。
その方がこいつらの最期も派手に飾れるし、俺のストレスも解消できて一石二鳥だ。
それにせっかく俺が用意してくれた第三ラウンドなんだ精々楽しませてもらおう。