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時は満つ

作者:「今回から火曜1800更新にします!」

レン:「はてその心は!?」

作者:「いや謎かけじゃないから」

レン:「やっぱりか~」

作者:「解ってるならなんでやるかな…それで時々休載します。休載するときはコミコの作家の皆さんみたいに閑話で繋いだり、前もってTwitterとか活動報告とかで告知するのでお願いします」

レン:「でその心は?」

作家:「だからなんで謎かけ?」

で這々の体…実際に這ってはいないがなんとかディーダラスの家まで戻ってきた訳で


「先生、試験の結果はいかがですか?」


リンはキラキラした目でグレイを見つめる。

あれもグレイの入れ知恵なのだろう。


「まあ当然…」


「とうぜん?」


「不合格ですね」


グレイは顔色一つ変えずにそう言い放った。


「え…」


リンの顔が固まる


「不合格ですか?私には理由が解りかねるので理由の説明を」


「そうですね…リン、羽飾りを触ってごらん?」


「へ?コレ?」


リンが羽飾りに触れると羽飾りは二つに切れて散る


「羽が…」


「さっきの攻撃に当てられたのかな」


「周囲の空気を魔力で圧縮して極薄の刃物を作って周囲の物を無差別に斬りつけた。その発想は良いですが、制御が甘かったんですね。羽を何枚か切りましたよね?」


「うん…バレてたんだ」


「私は試験官です、そんな減点対象を見逃す訳がありません。自分の攻撃で自分が傷つくなど言語道断ですよ?それはフウカさんにも言えることですよ」


「へ?何の事ですか?」


「手を出して下さい、治療しますから」


「こっちもバレてましたか…縄が以外と食い込んでたので、でもこの程度ならほっといても治ります。心配ないですよ」


私は左手首を握る。


じんわりと傷が痛む


ほんの数ミリ深く手首を切っただけ、動脈には達してないからそこまで血も出ていない。


「変な意地張ってないでさっさと見せる。ケイトさんは気にしないかもしれませんが、ソウジ殿は気づきますよ?当然リスカ痕だと疑うでしょうね」


「会ってない筈なのに」


「ソウジ殿とはそれなりの付き合いなので」


「あ、お母さん血の臭いがする」


「リン、気づくのが遅いですよ」


「そうじゃなくて、もっと濃い、血の臭いがする」


「濃い?」


ふと視界が狭まる。


前にも感じたことのある感覚がシナプスを駆け巡り、心臓が早鐘の様に鳴る。


この感情はなんだろうか


理論、理屈、考察、経験、知識


それら全てを画一した感情が思考を支配する。


『時は満ち、器は満たされる…だって貴女は』


開け放たれた部屋の入り口に黒い影が居た。


前にも見たことがある影が、前に壱なる門で聞いた声で喋っている。


レンやジンのような黒装束ではなく純粋な闇。


識別できない何か。


それは小声でかつハッキリと声を発する。


「だって貴女は…」


それはユラユラと部屋に入ってくる。


いつの間にかリン達が居なくなっている。


いや、そもそも自分がどこに居るのか…


立っているのか座っているのかも解らなくなる。


「…貴女は私の――だから」


私の?ナニ?


「っは!?あの影!」


起き上がるとそこは借りてる部屋だった。


「気分はどうですか?リンは眠ってしまいました」


部屋に明かりはなく、窓からの月明かりが唯一の光源になっている。


グレイは机に備え付けられた椅子に座って机越しにこっちを見ている。


「はぁ…大丈夫です、少し悪夢を見ただけです」


「そうですか?それは本当に夢ですか?」


「夢じゃなかったらなんなんですか?」


「フウカさん、私は貴女の事をずっと見てきました、貴女が杖を手に取った瞬間からずっと」


「グレイさん?」


「一度だけ、貴女が別人の様に変わった所を見たことがあります」


「それはどういう…」


「雰囲気、オーラ、話し方、体の動かし方まで丸っきり別人の様になった所を見ました。その時貴女が発した言葉を覚えてますか?」


「何時の事ですか?」


「月光の竹林亭で働いて倒れた時ですよ」


「なんか言いましたっけ?」


さっぱり心当たりがない。


「半身、表、時間、短い、これらのワードに覚えは?」


「無いですね」


「となるとソウジ殿の策とやらは失敗したのかしら…」


「あの、何を知ってるんですか?」


「あのときの別人フウカさんが出たんですよ」


「へ?」


「まあ、そう長い時間では無かったしノイローゼ的な感じでしたが」


▲▽▲▽▲▽▲▽


話は五時間程戻る


「濃い?」


パタタッ


手首から血が溢れだし、床を濡らす。


「ほら傷が開いてしまいました、早く手を出して下さい」


『闇よ私を癒せ』


部屋の中の影から黒い光が寄り集まって手首の傷を覆う。


床に落ちた血が蠢き、元に戻っていき、光が消えると傷も消えていた。


「今回は少し長く表に出ていられそうね」


フウカは髪紐を外して髪を下ろす


「お母さん?─じゃないかも…」


「お母さんには少し引っ込んで貰ったけど安心して?眠ってるだけだから」


「貴女は誰ですか?」


「旧知の友に対して誰ですかって酷いじゃない、グレイ?」


「では聞きたい事だけ聞きます。半身、と言う言葉を知ってますか?」


「えぇ、もちろんですよ?」


「その意味は?」


「文字通り、私の半分、半分の代用品、レンの失敗作よ」


「失敗作?」


「私は全てを知ってますので、当然あの手帳に記された全貌も、レンが押し進める計画もその意図も、全てです」


「何故?」


「理由を説明している時間はないので要点だけ教えましょう。あと二日です。手帳によればあと1日と14時間35分で世界の秩序と調和を掲げた神によりここは戦火に包まれる」


「なるほど、時間は残り少ないと言うことですね?」


「しかし、手帳の予定よりも彼女は力を蓄えられていない。もう片方は恐らく十二分。しかし、フウカは今回の敵との相性が悪い。同じ分野で特権を持つ相手に何処まで粘れるか、粘っても決定打に欠ける」


「要するに第三段階の覚醒を求めているんですね」


「別に方法は問いませんよ。この場を斬り抜けられるだけの力を備えてくれるなら私はどうでもいい。別に貴女が力を貸しても、逃げてもいい」


「ただ残り時間は…僅か…有効に……使いなさい………」


グレイは倒れたフウカに駆け寄るリンを見る。


(ふ~む、リンの教導には時間が少なすぎた。まだ十分ではないし…この年で神具の呪縛に巻き込むのは酷よね…)


ホントならあと二年、もっと言えば十年かけてリンを導きたかった想いがある。


リンにはそれだけの潜在能力があるとグレイは踏んでいて、それをここ数日で最高効率で伸ばしていた。


それは自分が長くない事を予知した結果導かれた結論であり、かつてソウジによって進言された通りの結果でもあった。


(でも遺せる限りを残しましょうか…明日の夜までにアレを書き上げましょう)


「はぁ…戻りました~もう現場検証とか付き合わされて大変だったんですからね?よく解ってないのに魔法痕の説明とか迫られるし、チンピラの人相書きとか書かされて…ってなんか神妙な雰囲気ですね」


「まぁ、ちょっとありまして…でも気にしなくて大丈夫ですよ。単なる電池切れですので」


「デンチ?」


「そうでした…せっかくもらったのに、羽壊しちゃってごめんなさい」


「いや、いいよ。また買ってあげれるからね」


カイは特に気にする事なくそう言い笑って横たわるフウカを担ぐ


「寝かせとけばいいんですか?」


「はい、すいませんが紙を頂いても良いですか」


「紙ですか…」


「結構枚数欲しいです。急ぎで一筆執る事になりました」


「えっとどのぐらいの枚数ですか?」


「とりあえず100枚ぐらいお願いします」


「フウカさんを寝かせてから探してみましょう。たぶん地下にあるので」


「ありがとうございます」


▲▽▲▽▲▽▲▽


「流石カイさんですね…ちゃんとできるじゃないですか」


月は高く煌々と照らしている。


「そこ食いつくんですか?それより半身の話でしょ」


「半身ね~いや驚きましたよ?まさか自分が多重人格者だったなんて考えもしなかったので」


「いや、たぶんそう言う事じゃないかと…」


「それよりそんな枚数の紙で何書いてるんですか?」


テーブルの上には複数個のペンとインク瓶、100枚じゃ効かない枚数の紙の山がある。


「テキストです。リンの教導の為にあるといいと思いましたので」


「まあ、そうでしょうけど…よく見えますね?」


「蛍雪之功って言うじゃないですか」


グレイの目は猫の様に緑色に光る。


「蛍雪之功って言うか単に猫みたいに夜目が効くだけじゃないですか」


「グリフォンですから」


「あれ?グリフォンって鷲の頭じゃありませんでしたか?」


「ブラックグリフォンですので、基本夜行性です。多少夜目が効くようになってるんですよ」


「でも夜目が効く動物は色覚が弱いと聞きますが大丈夫なんですか?」


「いや、基本は鷲なので視力と色覚は強いですよ?目に反射板のような役割をする器官がついていて、それで増幅したり、ちょっと瞳孔が大きかったりするんですよ。なので夜目は多少です、素のときは…」


「あ、術で補正掛けてるんですね」


「そう言うことです。暗視の術です」


「そう言えば、術って魔法と違うんですよね?」


「魔法は言葉によって魔力にお願いして起こす奇跡ですが、術の大部分は理論です。論理的な式で意思の力を増幅して結果を引き出す科学なんですよ」


「ふむ、これは術ではなく詠唱なしの魔法ですし」


私は掌で藤色の魔方陣を回して見せる


「でもある意味上を行ってるような物ですので、すぐ習得できると思いますよ」


「術が使える人って見たことないですね」


「まあ、私達魔物と違ってそもそもが意思を外に伝達できない種ですからね。さ、フウカさんは休んで下さい。先程倒れた切っ掛けも恐らく疲れですから下準備は全部私にまかせて、回復に努めて下さい」


「じゃあ、お言葉に甘えておやすみなさい」


私はグレイもやることが終われば休むと踏んでそのままベッドに横になり目を閉じた。


▲▽▲▽▲▽▲▽


私は朝の肌寒い冷気で目を覚まし、暫し毛布にくるまって周囲を確認する。


今は夜明けすぐ、グレイさんの姿はなく、机の上の紙の山も片付いている。


私は毛布から這い出て窓を開ける。


暖流とかのお陰で多少温かい気候とは言え、冬が近づけば相応に冷える。


窓から入ってくる空気は遅れながらもエネシスに秋の到来を知らせている


「アリシアはもっと冷えてるのかな?」


私は軽く身支度を整える


多少着替えて、コートを羽織るだけだ。

涼しいし髪は下ろしといていいか…


私は窓を閉めて部屋を出る。


まだ朝早いからカイさんも寝ているだろう。


静かに階段を下り、玄関から外へ出る。


遠くにカモメ?の鳴く声が聞こえる。


こうして見下ろす港町もそろそろ見慣れてきた。


恐らく魔法を動力に持つ船とか、漁から戻ってきて積み荷を下ろす光景とか、それを干物にする所とか、凄く日常って感じがして好きだ。


「ふう、多少準備をしておきますか…」


恐らく町の結界では耐えきれない。


もしもの為に町に絶対的な障壁を張る。


どれだけ持つか解らないけど無いよりマシだと思いたい。


私は恐らく来る神を対処するための準備を進めるべく早朝の町に繰り出した。


▲▽▲▽▲▽▲▽


「さてととりあえずは目の前の降りかかる火の粉を払い除けようかな」


レンはかなりの範囲で表面土壌の抉りとられた大地の上空に佇んでいる。


ケルビン上空


ちょっと前にフウカが吹き飛ばした跡


それは人が為すにはあまりにも大きく、圧倒的な存在感を今もなお保っている。


「こっちは良さそうだね、問題はどのぐらい南に流れるかだよね?」


「そうですね、誘導の方のプログラムは出来てるからそっちは誠治だけでどうにかなるはずですから」


レンの隣には青緑の長髪を揺らす女が居る


「ヒスイちゃんは誠治君のバックアップね?隠しエリアにも入ってくるかもだし」


「はい、ではその様に。先輩は?」


「僕?僕はここでフードを軽く捻るよ?」


「では南は…」


「ジン君が行くよ、それに僕の予想が正しければ尻尾を掴めるかもしれないし」


「尻尾?」


「まあまあ、気にしなくていいよ。こっちは僕の方で片付けとくから」


「わかりました」


ヒスイは軽くお辞儀をして姿を消す。


「さて、僕とソウジ君で相手をするからまあ五分も要らないかな?問題はフウカ君とジン君だね。向こうが圧倒的に火力不足だし、できれば出向いて欲しいんだけど?」


『ふんっ、なぜ俺がお守りまでしなきゃならん?』


レンのすぐ横に以前猫を従えて壱なる門で加勢した悪魔が現れる


「そこを頼むよアル君の分身君。それにアレをこの辺で叩き潰しとかなきゃマズイのは君達もでしょ?」


『俺は守る戦より攻める戦が得意だ。やるなら補給部隊を叩きに行く、守りはお前の仕事だろ?』


「まぁ、君がそう言うならしょうがないか…南には暫く耐えてもらう事にするよ」


『ふんっ、それぐらいも耐えられないならお前の計画とやらは端から破綻してたんだろ?』


「僕はフウカ君を懸念してる訳じゃないよ?行きすぎちゃった時の事を懸念してるんだ。彼女、はっきり言ってドSだから、たぶん深追いしちゃうんだよね」


『なら、なおのこと向こう側を俺が押さえるべきだな。まあ、そっちも確り殺れよ?』


「アカウント停止処分ぐらいで許してあげようよ…僕らはアカウントありきの存在だからアカウント停止だけでも即ちクビだからね?」


『そんなことは知らん。だがそのアカウントとやらは神の源と呼ぶに相応しいエネルギーを持つ、そこらの雑魚魂を何万、何億と喰らおうと届かぬ力がある。俺達はそれを喰って力を得る、それで相手がどうなろうと知ったことじゃない』


「酷いな~」


『悪魔だからな』


アルと呼ばれた悪魔は足下に青黒い歪みを作ると、苦笑しながら沈んでいった。


「さぁ、後は君を迎えに行くだけだね。17年間、僕の人生の中で一番長くて濃密な17年だったよ。でもそれももう終わる、だからもう少しだけ待っててね」


レンはその場にいない誰かに向けてそう呟いた。

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