リン 変身
作者「すいません、今回短いです」
一通りやることを終えた私はエルを目印にリン達と合流しようとしていた。
町中は練り歩いて解っていた通り、お祭り騒ぎの大混雑。
いつの間にか露店は出るは、食堂の野外席が出るはでかなり動きにくくなっている。
しかし、この場で飛んで目立つとかえって動きにくくなるのが目に見えているから私は人混みを掻き分けて歩いている。
「はあ、こうなってくるとお祭りも考え物ですね…」
どうも最近、ソウジ君からもっとちゃんと食べて寝ないととかってお母さんみたいな事を言われます。
けど、別に気にしてない訳じゃないんですよ?一区切りついたらちゃんと食事は摂りますし、睡眠も時間があるときはとるようにしてる。
ただ、研究とか開発とかが一区切り着くのがちょっと遅いだけです。
だから、比較的やることの少ないこの休暇の間は普通にご飯食べてお風呂入って寝てたじゃないですか?
まあ、エネシスに来てまだ十日も経たないんですけどね。考えてみれば十日で色々ありすぎだと思いますね。
このあとは暫くゆっくりできるかな?
どうせだし、お金使ってコッチに別荘でも買おうかな…いや、島を買う…うーん、ミゼリアさんにお願いして島を譲って貰おうかな…
うん、まあとりあえず暫くお休みですね。
ケイト達も終わってたらコッチに呼び寄せても良いかな?あー、でもそうなると本格的に拠点を用意しなきゃだし…まあ、応相談ですね。
そうして歩く内に私はエルの真下に到着した。
「ふぅ…疲れました」
話しにくいからエルを小さくしましょう。
私は空間魔法でエルを小さくして下まで下ろす。
「エルさん、楽しんでますか?」
「主!いきなり小さくされたら驚くじゃろ!」
「あれ?言葉覚えたんですか?」
「ん?だいぶ前にな?体が大きいと声量の調整が難しいからあまり喋らんが」
エルは身長2m程まで圧縮された体を慣らす様にもぞもぞ動きながら言った。
「ふう、それで?ワシに何の用じゃ?」
「色々片付いたから抜けて来たんですよ。リンはどこですか?」
「リンならグレイが連れてったぞ?折角の祭りだ、そっちはグレイに任せて遊ぼうぞ」
「まあ、そうですね。エルさんは魚介類大丈夫ですか?」
「ワシは基本雑食じゃ、好き嫌いはしない」
「じゃあ、手始めにイカ焼き行きましょう」
「そのチョイスはどうなんじゃ?」
「シーレッド焼きのがいいですか?ジャル飴なんてのもありますね。輸送費高いだろうに」
「ワシが言うのもなんだが異様な光景だな」
「そうですか?私は面白ければそれでいいと思うのでよくわかりませんが?」
「お主がそれでいいなら良いが…」
私達はどこか日本の縁日風なお祭り騒ぎを楽しみ、酒屋の飲み比べに飛び入り参加し、エルさんは見事に潰されました。
日も次第に傾いてきて、外灯に光が灯り、飲食店の露店に掛けられたランプに火が灯される。
「あはは、楽しかったです」
「!?主、悪いものでも食べたのか?イカか?イカがマズかったのか?」
「何をそんなに驚いてるんですか?私だって生きてます、笑うぐらいしますよ」
「何か変わったんじゃな」
「余裕って言ったらいいんですかね…この二ヶ月の間私には余裕がなかった。いや何て言うか、前世の記憶は無いんですが、知識として知ってる通りに忙しくしなきゃいけない気がしてて…でもこっちの世界は以外とやることなくて、できる事をこなし続けて忙しくして、たぶん安心したかったんだと思います。ケイトに拾って貰ってなければ私は森で力尽きてたかもしれない、それにケイトが居たから私は色々な人に出会って、仕事をして、今生きてられてるって思ってました。ケイトに依存してる状況が怖かった、ケイトに嫌われたら生きていけないと思って嫌われないように、必要とされるようにするのに必死だったんです」
「でも離れてみて解ったと…」
「はい、必死になる必要なんて無いんですね。もっと余裕を持って楽にしてた方が皆の表情が良かったので、ちょっと前までの私ってなんか気を張りすぎてて付き合いにくかったんじゃないですか?」
「まあな…」
「ですよね…私でもなんであんなに気を張ってたのかわかりませんよ。でも、今回自分らしくやってみたら上手く行ったんです。ギルドとかのやり方に順応した時よりも上手く行ったんです」
「それで気づいたのか、肩に力が入りすぎてた事に」
「まあ、ノアさんとアリアさんのおかげって言うのもありますけどね」
「まあ、あのノアとか言うエルフはいい手本ではあるな」
「ですよね?やっぱり形から入るのが良いと思ってちょっとだけ力抜いて見ることにしました。どうですか?」
私はコートを脱ぐ。
実は、今回の作戦でより自分らしく、力を抜いてやれる用にコートの下の服を少し変えてみたのだ。
「まあ、いいんじゃないか?それを、先ずワシに見せるのはどうかと思うがな?そう言うのは一番に見せるべき相手が居るだろ?」
「だって信用できて、見せても差し支えないのってエルさんぐらいしか居ないじゃないですか?」
「まあ、それもそうか…さっそろそろリン達も戻る頃じゃろ、帰ろうぞ」
私はコートの前を閉じずに夕暮れの町をアリアさんの家に向かってエルと一緒に飛んだ。
「戻りました~」
「お、戦果は上々だってな」
「ディーダラスさんはお祭り行きましたか?」
「ん?俺か?俺はああいうのは苦手でな」
「そうなんですか…」
「それより杖の調子はどうだった?」
「完璧です、結晶化の兆候も見られませんでしたし、いつも以上に楽に
魔法を制御できました」
「なら、いいんだ。ただ、まだ改良できる気がするんだ。もう暫く俺に杖を預けないか?」
「是非お願いします、ただ数日以内にまた使う用事が来るはずなのであんまり大がかりな改造はしないでくださいね?」
「まあ、任しとけ。楽しくなってきたぞー」
「そう言えばグレイさん見てませんか?」
「ん?見てないぞ?なにせさっきまで寝てたもんで」
「そうですか、アリアさんとカイさんは?」
「アリア達は祭りだろ?」
「じゃあ、ちょっと外見てきますね」
「おう、俺はまた籠るから何かあったら下まで来てくれ」
私は外に出て裏庭でエルと話す。
「のう、そろそろワシを元に戻してくれんか?」
「そうですね、そろそろ日も暮れますからね」
私は藤色の魔方陣を展開してエルを大きくする。
「まあ、直に戻ってくるか…主はもう神具の説明は受けたよな?」
「まあ、一応は」
「グレイはあくまでも神具の守り手、いずれは去らねばならぬ者だ」
「それは私が新たな神具の契約獣と契約した時でしょう?なぜ、それをいま?」
「そう遠くないからだ。だから、今の内に覚悟を決めておけ」
「でも、グレイさんが居なくなったらリンが」
「だが、止むを得ない時が来る。それはグレイもわかっていいる、だからワシにお主をリンから遠ざけるように頼んだのだ。リンとの時間を増やして、成長を促す時間を増やすのにお主が居ると返って邪魔になると考えたのだろうな」
「邪魔?」
「親離れも大人になるには重要って事だ」
それから、数分としない内にグレイは戻ってきた。
「ただいま、ご心配をお掛けしましたがなんとか形にはなりましたよ。ね、リン?」
「お母さんただいまー」
グレイの後ろから白髪の小さい女の子が出てくる。
知らない子にお母さんと呼ばれたらどう対応するのが正解なんでしょうか?
「リン、人化の術を解いてからでないとお母さん解りませんよ?」
「そうだった…」
そう言って女の子はくるっと女の子から巨鳥に変わる
「別に回らなくても姿は変えられるけど回った方が見た目がいいって先生が言ってたからね」
「いつの間にそんな術を?」
「私が仕込む前に既に大方の基礎は出来てましたよ。私はあくまでほんの手助けをしただけですので」
「他にもねー変化の術とか、透明化とか、チャームとか幻影とか色々覚えたんだ」
「リンは天才ですよ。そこの大きいだけのよりも遥かに高い潜在能力を持ってます。でもリン?才能を驕ってはいけませんよ?一流の道は常に上へと上がっていきます、それに追い付くにはそれ以上の速度で上るしかないのですから」
「はい、先生。リン、頑張ります」
「はい、元気でよろしい。さ、リンはおじさんとお家に戻ってもう休みなさい」
「えー、お母さんとお話したいな…」
「そうですね…じゃあ、特別にいいですよ?」
「やった」
「ただし九時には寝なさいね?寝不足は美容にも健康にもよくありませんからね」
「はーい、ねぇお母さん?今日は一緒に寝ても良いかな?」
「せ、先生?」
「まあ、新しくなったリンの家を見て貰ういい機会ですからね」
「お母さんの部屋も作ったんだよー?三匹で」
「へー、エルさんも手伝ったんですか?」
「リン、三匹じゃなくて一匹と一羽と一柱ですよ」
「うぇ、あの駄神が手を加えたんですか?」
「それは秘密です。まあ、今日くらいは一緒にいてあげて下さい。親離れも重要ですが、それ以上に親といられる時間も重要なのです」
「じゃあ、今晩はお邪魔しようかな」
「やったー、リン、色々家事も習ってるんだー。お料理はまださせてくれないけど、お掃除とかも好きだよ」
「先生、この短期間でどれだけ詰め込んだんですか?」
「ちゃんと彼女のキャパシティーを考慮しているので大丈夫ですよ」
私は頭を捻ったが結局なにも言わない事にした。
『ただいまー、フウカさん、戻ってますか?』
どうやら、二人も戻ってきたらしい。
「じゃあ、リンもおいで?二人に紹介しなきゃ」
そう言えばディーダラスさんにも紹介しなきゃいけないな…
「うん、アリアお姉ちゃんは優しくてね、お菓子いっぱいくれるんだー、お肉とか」
「リン?食べ過ぎはよくないですよ?」
「解ってる」
リンは玄関へと駆けていった。
また、ややこしい事になるなと思いながら私も玄関へ急いいだ。