汝とあやつと天雨丸と
作者:「今回はケルビン側のみです」
レン:「笑い要素少な目です」
ジン:「アレは笑い要素に含まれないのか?」
作者:「アレはおふざけです」
ラジェルと別れて一時間程
「あれは大きいですね」
「そうね、まあもっと大きいのを見たことあるからそんなに驚かないけどね」
「あ、例のアトラスですね?すごく大きかったって聞きましたよ」
「そうね、あんな大きさの生き物と出会うことなんて一生に一度あるかないかでしょうね」
が、思い出して欲しい
あの大きな白い鳥を…
◇◆◇◆◇◆◇◆
エル:「ワシか?」
作者:「そうだよ」
エル:「ワシ、130mも無いぞ?」
レン:「だいたい身長100mちょいで翼を広げた時の幅が200mちょいでしょ?」
エル:「ん?違うぞ。身長は50mぐらいで翼を広げた時の幅が100ちょいだぞ」
誠治:「え?そうだったの?気づかなかった…」
作者:「ピーーッ!退場ーー!!即刻お引き取り下さい!」
誠治:『え!?ちょっ!ぬああッ!!』
ガチャーン!
作者:「ふう、主人公禁制です」
ジン:「あれはもう主人公じゃないだろうに…」
作者:「あ、つい癖で…誠治くん、ごめんねーー!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺たちの目の前に居るのは身長10mちょいの一つ目の巨人だ。
名前は何て言ったかな…
「確か、サイコロステーキみたいな名前でしたよね?」
「サイクロプスよ。あの一つ目は破壊の魔眼って言って、見るだけで相手に衝撃波を送る危険な物よ。まさかこんななにもない部屋でアレの相手をすることになるなんてね…」
「そうですね、確かにここでは分が悪いですね」
「こんな時にフウカが居ればアレぐらい瞬殺できるのに…」
むふふふ、私の魔法陣ならあんな目ん玉は一瞬で真っ二つですよ
フウカさんの声が聞こえた気がした。
ホントにフウカさんが居ればこのダンジョンぐらい今ごろ攻略し終えてるだろうに…
「じゃあ、俺が行きますよ。ケイトさん、俺がドアを開けたら同時に光魔法の目眩ましを中に放り込んでください。奴が目を瞑ってる間に眼球を潰してきます」
「いけるの?」
「もしも扉が破られた時はなんとか自衛してください」
ケイトさんは黙って詠唱準備に取りかかる
「わかりました、ここは私のゴーレムを出しましょう」
エレナは本を開くと、魔法陣が書かれたページに触れてインクに魔力を流していく。
その魔力は光の筋となってインクの上を這って、魔法陣となる。
エレナはそれをどうやってかわからないが持ち上げて床に移す。
一瞬にして魔法陣はさっきまでの十数倍に拡大、いや展開されて魔法陣から人形が浮き出る?涌き出る?せり上がる?そんな感じでヌルッと出てきた。
まるでフウカさんが空間魔法で遠くの物を呼び出した時のように…
「擬似的に再現された空間魔法です。実際はゴーレムの設計図を魔法陣にして、魔法を発動する事でその場に在るマテリアルを設定されたゴーレムの形に整形しているだけですが…」
「なんかSFによく出てくるテレポーテーションに近い感じですね…」
「えすえふ?てれぽー…すいません流石に私でもわかりません」
「まあ、いいや。気にしなくていいですよ。さて、ケイトさんいけますか?」
『光よ汝集まりて、輝きによって全てを照らし、全ての陰りを掻き消して、全てを白く塗り潰せ ホワイトアウト』
ケイトさんの持つ杖の先に光子が集まって球体のような形を取る、この状態でも正直目を細めて開けてるのがやっとだ、いったいどれだけの魔力を流し込んだのやら…
俺は意を決して扉を開け放ちタイムコントロールの準備をする。
ケイトさんの杖の先から球体が撃ち出されて、それは一直線にサイクロプスの眼球に向かう。
そして光る、眩く、文字通り部屋の中の景色を掻き消す勢いで急速に大きくなりながらよりいっそう光った。
その光は咄嗟に後ろを向いて目を瞑った俺の視界さえも真っ白に染め上げた。
お陰でタイムコントロールを使い損なった。
そして少し光が収まった所でなんとかタイムコントロールを使用して、サイクロプスを見る。
10m近い巨人は巨大な一つ目を押さえてのたうち回っていた。
『ふむ、こやつ今ので失明したんじゃないか?』
天雨丸が珍しく俺に話しかけてきた
こいつもなんだかんだ言いつつも面倒見がいいって言うかお人好しって言うかなんだよな…
「さてと、そろそろ片付けるかな」
『汝、蒼次よ。このあと話がしたい、時間を作ってもらえるか?』
「ん?俺は操作はできるが作るのは無理だな」
『そういう意味ではない、真面目に聞け。私はそう長くないかもしれぬ、その前にお前と一度話しておきたいのだ』
「どうも時期外れのエイプリルフールって訳じゃなさそうだな」
『先ずは戦だ。ヤツの皮は厚く半端な武器では薄皮一枚剥くのも一苦労だろうが、私と汝ならヤツの頭蓋を割ってグラタンにするのもそう難しくはないだろう』
「巨人の脳みそのグラタンなんてごめん被るな、んな下手物よりもっといいもの食べようぜ」
『そうだな、今の私が物を口にする事ができないのが残念だ。お主の手料理を久方に味わいたかったのだがな…』
「まあ、先ずは切り抜けてからだな」
俺は一先ず斬撃を飛ばす。
それの時間をサイクロプスに触れるすんでのところで停める。
それを場所と向きを変えて何度も行う。
そうして数十本の斬撃(だいたい30本ぐらい)を用意した俺は時間の流れを元に戻す。
再び動き出した斬撃は殆ど同時に四方八方からサイクロプスを襲って、それぞれ貫通して部屋のなかをズタズタに切り裂いた。
同時に何十箇所も切り裂かれた頭部は空中でバラバラになって、床に散らばった。
上からの斬撃で真っ二つになった体はずれて倒れて中身をぶちまけた。
大量の血液と臓物が撒き散らされた事で部屋の中が一気に濃い血の臭いに包まれた。
そして、ソウジのコートもまた鮮血と濃い血の臭いに染められた。
「ふう、特式 同時多連斬、成功だな」
『昔のお前はもっと精度が高かったし別の名で呼んでおったな。収束多連斬と』
「ふむ、ありがとうな天雨丸」
『礼には及ばん、汝は私の名を呼んだからな。それより汝はもっと立ち位置に気を使うべきだ、毎回血塗れになっているではないか』
「そうだな…いくら洗えば落ちるって言ってもいちいち洗うのも手間だしな」
そして俺たちは床に沈み始めたサイクロプスの残骸を静かに見送った。
そして奥の部屋で階段を見つけた俺たちは階段部屋で一晩休憩することにした。
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夜更けにサイクロプスの居た部屋にて
「で、時間を作ってやったぞ?」
『済まないな、1000年前に汝が言っていた事を思い出したのだ。汝はここでケイトとエレナとレリックと共にダンジョンを攻略した末に汝の相棒と出会ったと言っておった。私の記憶が正しければ、私と汝が共に居られる時間は残りわずかの筈なのだ』
「何を言って…」
『そして私は汝に対して私を縛り続けるこの神具の事を話さねばならぬのだ』
「神具?いや、確かにこれはレンが寄越した支給品だが、そんな凄い物な訳が…あるな」
なんでも切れるをコンセプトに神に創られた刀だ。
その性能は今までの戦闘で俺が証明している。
神をも切り裂いた刀だ。
神具であってもなんら不思議ではない。
『汝が見てきた刀はまだ神具としては未熟な器だ。器は持ち主に宿る心気を吸って成熟する。心とは記憶だ、故に魄とも言えよう。神具は持ち主に宿った魄のエネルギーを吸って成熟し、その内に神に近しい存在を納めることで"神を納める器"即ち"神器"となる』
「でもこの刀には既にお前が入ってるだろ?」
『私は次なるモノが注がれるまでになんとか底面に残っていた残りカス、言わば残留思念なのだ。次なる神が注がれるまでの間永遠に器に宿り守護し続け、次なる神が注がれれば容易く消え失せるそんな存在なのだ』
「なんで神具なんかになったんだよ、もっと何かなかったのか?」
『ふっ、私も汝もあやつもまだ若かったのさ…それに私は望んでなったのだ。勝手になっておいてこんな事を頼むのは身勝手で我が儘だとは思うが…できることなら私をこの永遠の呪いから解放してあやつの所へ行かせて欲しく思う』
「で?なんで今になってそんな事を言う?」
『いざ、消える瞬間が来たときには言えない気がしたのでな。そのときには伝えるべき一言だけを言うのがカッコいい消え方だと昔の汝は言っていた』
「…意思は固いんだな?」
『応、私はあやつの相棒だ。あやつの側以外に居るべき場所などない、そして汝の側に居るべきやつは他に居るのだ…だからお互いに居るべき相手と居るのが幸せだと私は思うのだ』
「そうか、でもその俺の相棒なるヤツが見つかるまではそこにずっと居て貰うからな?」
『ふっ、心配せずとも私はどこにも逃げぬ。この剣の持ち主はこれまでもこれからもあやつと汝だけだ。どこにも行かぬさ』
一人と一振りの夜は言の葉を重ねる度に更けていった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「ケイトさん、ソウジ君が剣と語ってますがアレは幻惑魔法にでも掛かっているのでしょうか?」
エレナはそっと扉を閉めながら言う。
「さあね、でもここ数日ずっとじゃない。特に悪影響もないみたいだし放っておいてもいいんじゃない?」
「そんなものか?」
「そんなものよ、あれレリック?今敬語外れてたわよ?」
「おっと、すいませんでした」
「別に気にしなくて良いわよ。むしろ敬語じゃないほうが私は好きかな。こう親近感湧くじゃない?」
「それ解ります!やっぱり仲間なら敬語はやめるべきだと思うんですよ」
「そうね、戦闘中に長々敬語で話されても邪魔だしね」
「じゃあ、俺はお二人には敬語を使わない方針でってことで?」
「そうね、レリックには索敵とか報告が多い役割をお願いしてるからその方が時間短縮になりそうだしね」
「そうですね、私もそれには賛成です。でもそれより気になるのはソウジ君ですよ。依頼人である私にすら敬語を外すようにしてるのに、仲間であるはずのケイトさんには絶対に敬語を使うんですよね」
「エレナに対して敬語を外すようにしてるのはたぶんエレナが外すように言ったからじゃないかな?たぶん依頼の延長だと思ってるわよ」
「なんと言いますか、依頼人に忠実というか真面目というか、ソウジ殿って変な人ですよね」
「確かにそうね。ソウジ君は確かに変わってるけど、悪い子じゃないのよね。ただ人との関わり方が下手なだけでさ…」
「人との関わり方ですか…それ私も身に付けたいんですがどうしたら身に付きますか?」
「そうね、確か友達をたくさん作ると良いって私の師匠は言ってたわね」
「ここにいる面子って皆友達少なそうだな」
「ん?私は友達いっぱい居るわよ?」
「あ、元貴族でしたね」
「貴族じゃなくてもいっぱい居るわ。冒険者始めてからそれなりに経つからね。生きてる友達もそうでない友達もね…」
「冒険者ならしょうがないですよ。皆、いつかは死ぬんですから」
「でも、私がもっと強ければ助かった友達も多くてさ…そういう友達が一人増える度に後悔するけどやっぱり友達はいっぱい居た方がいいと思うんだ」
「私も友達欲しいな…裏の人達は皆ピリピリしてるから、表のもっと明るい友達が欲しいな」
「なに言ってるの?もう友達でしょ?」
「ケイトさーん」
エレナが抱きついてケイトはにやつく
「はいはい、もうちょっと落ち着きなよ」
「じゃあ俺寝るんで、後はお二人でどうぞ俺の事は路傍の石かよっぱらいの死体とでも思ってて下さい」
レリックはのそのそと部屋の隅に行くと、毛布に包まって横になってしまった。
「どうしたんでしょうか…」
「単に眠くなったんでしょ?もう夜だろうから、私たちもそろそろ寝よ?次の戦いに備えてさ」
「そうですね、先ずはこのダンジョンを攻略ですね」
二人もまた、毛布を被って眠る。
そして一人と一振りもまた、場所は違えど眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
作者:「おっといけない、一人は眠ったんじゃなくてゲームしてるんだった」
ジン:「なんで最後の最後でそういうことを言うんだ…」
作者:「その方が面白いからだよ」
そうして時間は流れていく、次なる朝、次なる神との迎合の時へと向かって刻々と…