エネシス到着
作者:「はー、もうすぐ冬が来るよ」
レン:「一周遅れてね?」
作者:「四章かー、四章もフウカ君は無双してるし、量産型はゲームしてるし、三章とあんまし変わらないんだよね~レン君の出番が少ないぐらい」
レン:「ん?僕の出番がなんて?」
作者:「グレヴロの手伝いして、新規のヤツ書いて、受験も…大変だな~」
まだ日も昇らぬ頃
南の山脈の北側で
白いコートに身を包んだ少女はむくりと起き上がり二回三回と瞬きをして、周りを見回してから向き直る。
「おはようございます」
「フウカさん、まだ寝てていいですよ?」
「夜が明けるまでまだ少し時間がありますので、アリアさんも少し休んでください」
正直眠気はない。
「ではお言葉に甘えて…」
私は毛布に包まって横になる。
『君が単独で野宿は珍しいね、って言うか初めてだよね?』
男性の声がした
「単独ではありません」
『あー、一般の人をカウントしてなかったよ。でもさ~やっぱり二人と離れると寂しかったりするの?』
「あなたに話すようなことではありません」
『いやーね?あの真性のボッチ気質のソウジ君がべったりじゃない?そんなに何かあるのか不思議でさ』
「単に適度に仕事があって、衣食住が充実してる環境が気に入ってるだけでは?」
『うーん、僕にはそう見えないな~二人に依存してる様に見えるんだよね』
「まあ、私達はある種の共依存で成り立ってるような物ですしね」
『まあ、そうなんだけどね?』
「まだ、何かありますか?」
『え~とね~、そこの人起きてるよ』
『まあ、聞かれても差し支えない話しかしてないので良いですが』
『じゃあ僕は行くよ。杖の修理頑張ってね』
『毎回唐突ですね』
聞こえてきた声は普段聞いているフウカさんの声とは少し違った。
不満の中に哀しみと親しみが混在している気がした。
きっと彼を糸口にすればフウカさんの経歴も解るそんな気がした。
だけど同時に踏み込んではいけないという恐怖も覚えた。
まるで人智を越えた領域の様な気がして、少しフウカさんが遠く感じられた。
瞼の裏が明るくなって目を開けてみる。
夜明けだ。
私はコレを機に起きることにした。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「では今日は山を越えて、行けそうなら…いえ必ずエネシスまで行きます」
「それは昨日よりペースを上げると言うことですか?」
「そうとも言えますし、そうでないとも言えます」
「はあ」
「そうですね、今日はコレを使います」
フウカの手の上に小さめの藤色の魔法陣が2枚浮かび上がる。
「見てて下さいね?」
フウカは片方の魔法陣に手を入れると手はスッと魔法陣の向こうに入り込んで、もう片方の魔法陣から手が出てきた
「もっと距離を話しても行けますよ」
フウカは魔法陣の手が出てる方をそこに残してその場から少し離れる。
「間に障害物があっても」
魔法陣同士の直線上にトランクを入れるが手は未だに出ているすると手が引っ込んで魔法陣が大きくなって、フウカが顔を出した。
「コレを使って距離を短縮します」
フウカは魔法陣の縁を抑えて魔法陣から出てきた。
「驚きましたか?」
「ええ、とても」
前に調べていた時に『藤色の光を発する魔法を使うことができる』ことは上がっていた。
そしてそれが希少な空間魔法の体系であることもギルドという組織の情報網の前では容易く調べることができた。
だが、空間魔法体系の魔法は先程言ったとおり希少なのである。
まず言って、『空間』『時間』『死霊』『神聖』などという実態が定かでない物に影響するなんて殆ど神の御業と言って差し支えない。
そんな魔法を使える人間も当然数少ない。
そして現在、それらの属性の定型詠唱は更に希少だ。
一部、時間と死霊は禁術として残っていたりするが暴走するどころかまともに起動もできないような魔法ばかりだ。
神聖魔法は適正さえあれば教会に入ることで習得できるから定型詠唱は少なくないが、空間魔法は特に希少なのだ。
古代の遺物の中にアイテムボックスと呼ばれる物がある。
中の空間を極限まで歪めて内容量を増やしたただの箱だが…
それでも金貨数千万枚から数十億枚で取引される。
そしてソレだけでも一財産作れてしまうほど高価な魔法がそう易々と世に出る訳もなく、そんな研究資料の殆ど無い魔法を定型詠唱にできる訳もなく、そんな魔法で歪めるに留まらずに空間を切断して更に繋ぎ会わせるという高等な事をその場でやって見せられたのだ驚かない訳がない。
「では行きましょう」
フウカさんは詠唱なしで風の翼を作り出す。
私も水晶球で翼を作る
「今日はこのまま行きますが、危なくなったら言ってください」
「はい」
『我、空間を繰る資格を持つ。我が意思に沿いて空間を切り開き此方と彼方を、彼方とさらに彼方と繋ぎたまえ 転移ポータル』
街道の脇に大きな藤色の魔法陣が現れる。
更に少し離れた位置に藤色の魔法陣が見える、視認できるギリギリの所にも魔法陣がある。
「繋がりました。随時追加していくのでドンドン行きますよ」
フウカはそういうと滑るように魔法陣を超えていった。
私も後に続く。
そして30分程移動すると徐々に地面が傾斜になり始めた。
更に十五分移動すると、雪が降り始めた。
「アリアさん、大丈夫ですか?」
「さっさと抜けちゃいましょう。流石に寒いです」
『風よ、汝、我が友を絹のように包みて風雨から守り、温もりを授けよ エアロベール』
緑色に輝く風が私に纏わりついて、触れた雪を片っ端から砕いて地面に散らせる。
そしてほぼ同時にフウカの杖から紫の結晶が生えて、内から生えた結晶に押し広げられるようにして杖が砕け散った。
「やっぱり代替品じゃ使い物になりませんね」
「すいません、私の為に杖が壊れちゃったみたいで」
「いいですよ。私の杖が直れば代替品はもうお役御免で使うこともないので」
「でも不思議な壊れ方でしたね」
「杖の芯に許容量を超えた魔力を流すと余剰分は木の方に流れてしまい、行く先の無い魔力が寄り集まって魔力水晶が形成されると今みたいに水晶がに魔力が集まって杖を内から破壊してしまうんですよ」
「聞いたことありませんね。珍しい現象ではありそうですね」
「そう多くは無いでしょうね」
私は地面に落ちた水晶を一欠片ポケットにしまってから魔法陣を潜った。
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そうして更に何十枚もの魔法陣を潜ること二時間ほどで私達は山を下りた。
「アレがエネシスですか?」
「そうです、海浜都市エネシス。この国で一番大きな貿易港でもあります」
「でも山のすぐ側にあるんですね」
「海浜領は三つの領地の中で一番小さいですからね。でも貿易港が集中してて、この周りの海が含まれるので領域としては一番広いんですよ?」
「なら海の魚とかにも期待できそうですね」
「港町なんですから当たり前じゃないですか」
「予定よりだいぶ早く着けたので、少し時間に余裕もできました。初めての道があったにしてはよくやった方ですよね?」
「問題は無いですね」
「まあ次回からはもっとスムーズに来れるのでよしにしますか。手続きして、宿と例の錬金術師を…探さないとですね」
「錬金術師ですか。エネシスは貿易港で他国からの玄関口にもなっているので錬金術師という情報だけで探すのは難しいかもしれませんよ?」
「幸いドルクスさんからその方宛ての手紙を預かってきたので名前で探せば大丈夫ですよね?」
「名前が解ってるなら割りと見つけやすいと思いますよ」
フウカさんはコートのポケットから手紙を取り出す。
「えーと…ん?でいだら…ぼっちかな?ドルクスさん、見た目豪快で仕事まめまめしいけど、字は豪快だから読めない」
「大体検討着きましたが見せて貰っても?」
「はい」
私はフウカさんから封蝋の押されていない羊皮紙の手紙を受けとる。
「えーと?これはまた読みにくい字ですね。ああやっぱりディーダラスですね。実家です」
「ならこれで一つやることがなくなりました。いや世間は狭いですね」
「そうですね、お互い三大都市に住んでいるのもあると思いますが」
「それもそうですね。一期一会って正しくこういうことを指すんでしょうね」
「イチゴイチエ?って何ですか?」
「一つ一つの出会いを大切にするって意味の言葉だったと思います。私も正直記憶があやふやなので正確ではありませんが」
「そうでえすね、狭い世間だからこそ必要なことですね」
そして私たちは 手続きを行う為に門の前の行列に並んだ。