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ケルビン 到着

作者:「世間ではソウジ君のような冴えない男をモブメンと読んだり呼ばなかったり…」


レン:「君はモブメンですらないよね?」


作者:「そうだね顔、性格、体格、その他諸々の諸条件を考慮すると下の中だね」


レン:「魔法使いコース直行?」


作者:「yes」


ケイトとソウジはあのあと合流して、昼を回って夕方にケルビンに到着した。

 

「今日は適当に宿を取って寝る。予算ないから相部屋ね」

 

「宿、どこにします?」

 

「面倒だからギルドで聞いちゃおうか…」

 

ソウジは道行く人を呼び止める 

 

「すいません。自分、ケルビン初めてで今夜の宿を探してるのですが何処かお勧めのお店はありますか?」

 

「俺は生まれも育ちもケルビンだから宿は使ったことないが、聞いたところによるとここからちょっと行ったところの渡り鳥の止り木って宿が安くて良いらしいな」


「どうもありがとう」


「じゃあそこにしましょうか」


二人はそうと決まると脇目も振らずに歩いた。


理由?この時間はチェックインの競争が激しいからだ。


別にソウジのトランクで寝るなんて芸当も可能だがケイト的にはなるべく避けたかった。


単にソウジが毛布一枚しかトランクに放り込んで無いことを知っているからだが。


そしてなんとか宿に着いた。


「まだ部屋空いてますか?」


「お客様ラッキーですね。最後の一部屋だったんですよ(ウェーイ、カップル客万歳。しかも美女とそこそこイケメン)」


「あ、相部屋でも大丈夫ですよね?」


「まあ、大丈夫ですね。流石に同じ部屋で寝るのは緊張しますが、まあ…居候させてもらってるし…」


(え?もしかしなくてもモブメンじゃなくてヒモメン!?)


ソウ:「ちゃんとパーティーメンバーとして働いてるじゃん!家事こなしてるんだよ?食費も入れてるよ(レン金貨だけど…)」


「まあ、別にソウジ君が突然狼になっても直ぐに雌犬にできるしね」


(めっ雌犬!?この二人、そういう関係!?)


「防音魔法はサービスしておきますね…」


「ありがとうございます、これ前金です滞在期間は未定なのでとりあえずそれだけ払って置きますね残りはチェックアウトの際に改めてと言うことで」


「はい、解りました。朝食と夕食はサービスとなっております。右手の食堂で受けとれます、是非ご利用下さい」


「わかりました、聞いてみる物ですね聞いてなかったらまだ外を彷徨ってたでしょうね」


「でも高そうな宿ね」


「そうなんですか?こっちで宿に泊まるのは初めてで相場がまだ解らないのでなんとも言えませんが」


「月光の竹林亭まではいかないけど確りした建物だし…朝食夕食付きだし…まあ金貨75枚ぐらいまでは覚悟したがいい気がするわね」


「そう言えば金貨以下の硬貨を見た覚えがないんですが?」


「うーん、昔はあったんだけどね」


「今はないんですか?」


「ギルドの本部が金を大量に生産する方法を編み出してから全部金貨に代わったわね」


「何故金の価値を下げるような事をしたんでしょう?」


「そうね、私が思うにギルドという組織の重要性を世に知らしめたかったんじゃないかな?それまではただ魔物を討伐してその素材を取り扱う業者だった組織がお金を作り始めた、そしてそれが主に民間に流されたならギルドの民間への癒着も進むってモノでしょ?それにギルドには国境が関係ないのは知ってるよね?」


「はい」


「それならギルドのお金を全支部で取り扱うようにすればそれだけで共通通過が作れるし、共通通過が作れたなら各国の土地を買って歓楽街を経営したり、迷宮を管理したり、金融業をしたりって色々な事業に手を出しやすくなるでしょ?そうなってくれば次にやるのは他の通貨の排除でしょ?それもギルドの影響力なら容易いでしょ?そうして確りした土台と立派な屋台骨を作った、それが金の独占よりも利益が出るって上層部は判断したんだと思うわ」


「複雑な事情があるんですね、まあ金貨の下が無いにしても紙幣ぐらい有ってもいいのでは?」


「シヘイ?」


「あー、もしかして紙のお金は無いんですか?」


「紙がお金になるの?濡れたらふやけて、踏んだら破れて、燃やしたら跡形もなく消滅しちゃうのに?」


「うーん、魔物も居るし管理が難しいこの世界じゃまだ先になりそうですね」


「それにギルドで金貨1枚で100枚入る財布買えるわよ?」


「100枚しか入らないんですか?」


「100枚ちょうどまでしか入らないの」


「数える手間も省けるって事ですね」


「そう言うこと」


「とりあえず今日は晩ごはん食べて休むって事にして明日の朝に依頼主の所を訪ねるって感じですね?」


「そうね、今日はさっさと休みましょ。飛びっぱなしで疲れたわ」


「そうですね」


▲▽▲▽▲▽▲▽


翌朝


「ケイトさん、行きますよ」


「あの子ちょっと苦手なのよ…」


「へー、ケイトさんにも人の好き嫌いがあるんですね」


「まるで見境なしとでも言いたげね」


「でも、ケイトさんは人付き合い上手いですよね」


「まあ、元は貴族だからね。社交性とかも必要なのよ」


「俺も稼業の方で人付き合いとか第一印象とか求められてるので磨きたいんですけどね」


「なんか商売始めたの?」


「向こうでですが」


「例のげーむだっけ?」


「はい、調味料を作製もとい再現してそれを売りに出すことにしたんです」


「へぇ、どんな調味料なの?」


「醤油って言って豆とか魚から作る調味料です。アッサリめの味でいろんな料理に合うんですよ。まあ、こっちの世界で流行るかは微妙ですが…」


「今度それ使ってご飯作ってよ」


「いいですよ、普通は結構貴重ですが魔法のお陰で大量に生産出来てるので」


「でも、フウカもソウジ君も魔法の応用に没頭するのね。向こうの世界でそんなに魔法に人気があったの?」


「そうですね。基本的に科学しかない世界だったので、その分だけ幽霊とか魔法とかってファンタジーな要素に餓えてた気がします」


「ふぁんたじー?」


「幻想とか空想って意味です」


「要するに現実逃避ね。民衆がそんなになるってことはよっぽど酷い政治だったの?」


「いえ、そういう訳でもなかったと思いますよ。単に資本主義の波間でひたすら利潤を獲得し続けないと生きていけない社会に皆疲れていたんでしょうね。全員進学の時代を越えて大学は行かなければならない物って意識が進みすぎた結果、幼少期から確り勉強して、確り働かないと老後を生きられないみたいな風潮があって、皆そう信じ込んで、今を蔑ろにしていたんですね、俺もそんな世界が好きになれなくてゲーム無いに作られた仮想の世界に逃げた身ですから」


「難しいのね」


「あはは、もう関係ないですよ。現に俺はここエリアスで生きてます。封建制度の貴族主義のこの世界で、そして運よくゲームの中でも生きられてる。過去を悲観しない理由にはそれだけで十分だと思うんです。さっ、お仕事ですね」


いつのまにか二人は裏通りの古めかしい建物の前にいた。


窓から覗く限り人気のない古書店だ。


「じゃあ割りきって、行くわよ」


ソウジは扉を三回叩いてから扉を開いた。


『お待ちしてました、ケイト・アリシアさん奥へどうぞ』


薄ぐらい店の奥から幼い女性の声が響く。


二人は店の奥に入っていくするとカウンターバーの手前の床が落ちて階段になった。


『こちらです』


その階段を降りるとそこにはあまり広くない部屋があって、ソファーが二つと長机が一つだけ置かれていた。


「お久しぶりです、一ヶ月ぶりですね」


「まだ一ヶ月しか経ってないのね」


「そちらは?」


「こちらはソウジ君、家のパーティーの新入りよ」


「あー、彼が例の期待の新人さんですか。ちょっとだけ話が聞こえてきてますよ?例の新料理…いや古代料理の再現に成功した優秀な料理人ですよね」


「あー、そっちの件ですか…」


「まさか私が作る以外に再現される日が来るとは思いませんでしたよ。自己紹介が遅れましたね。エレナ・ケルビンです。この古書店を切り盛りしてます。こういう仕事柄だから名乗る事がなくて忘れちゃうんですよ」


「ソウジ君、ここの店の事は他言無用ね?一見さんお断りだから」


「一見さんお断りではありませんよ?ただ商品のなかに少なからず盗品が混じってるので一般の方のご購入には大きすぎるリスクが伴うだけで。とりあえず掛けて下さい」


とりあえずソファーに腰掛けた


「では改めて依頼の説明をします」


「いいわよ」


「依頼の内容は護衛です。私が件のダンジョンでお父さんを探すのを手伝って下さい。魔物の素材に関しては好きにしてください。罠の解除等は私がやりますから、お二人には魔物の処理のみをお願いします。それで報酬ですが、ちょうどいい物が入っているので現物支給でもいいですか?」


「うーん、ちょっとお金が要りようなんだけど?」


「つい一週間程前に白紙の本、もっと正確に言えば『伍なる門』が手に入ったんですよ」


「出元は?」


「北の王立図書館から盗み出された物です。それだけにかなり値が張ったんですよ?」


「いつ頃?」


「一ヶ月ぐらい前ですね。何が起こったのか解らないんですが、本が急に浮き上がって白紙のページにページが浮かび上がったんですよ。これはホンモノと見て良いのでは?」


「世界って狭いですね」


「でも、あんな厄介な本二冊も持ってどうするの?」


「そうですね~完全に写本して国に売り付けるのはどうですか?三年ぐらい働かなくてよくなりそうですよ?」


「でも持ってかえったら暴走したりして…」


「今は俺が居るから大丈夫ですよ。いざとなったら時間止めて金庫に入れて火山とか海溝に捨てちゃえばいいですよ」


「でもソウジ君、お金がないと宿代払えないわよ?」


「うーん、レンに聞いてみるか…ちょっと失礼しますね」


俺はレンに電話を書ける


「もしもし?俺だ」


『ああ、ソウジ君。君からかけてくるなんて珍しいね』


「五番目を発見した」


『もしかして伍なる門見つけたの?』


「そう」


『回収できそう?』


「金が足らん、金さえどうにか出来れば回収は可能だ」


『お金は後で送るからとりあえず立て替えといて』


「それより継なる門に向こうの通貨とこっちの通貨の両替機を用意してくれないか?」


『えー、それやると君働かなくなるでしょ?』


「いや、場所はどうであれ働くぞ?」


『まあいずれは必要だし、置いとくよ。じゃあ伍なる門の回収よろしくね?ブツッツーーツーーツーー』


「切れた、まあお金の方は都合がついたので報酬はとりあえず伍なる門でお願いします。それを後で俺が買い取ると言うことでどうですか?」


「まあ、いいけど。伍なる門にどうしてそこまで固執するのか教えてくれない?」


「そうですね。レンに回収するように言われたのも少なからずありますが、第一面白いじゃないですか。開けると魔力を大量に吐き出す門ですよ?しかも無限と言うに差し支えない量の魔力を生産し続けられるコアがあって、それを守る珍しい魔物がいる。コレほどそそられるイベントはそうそうないので」


「まあ、いいわ。とにかくそういう事で」


「では、集合は明日の朝9:00頃で移動は徒歩ですね」


「捜索期間は?」


「往復二週間程を予定してます」


「なら部屋は引き払っちゃいましょう。で二週間分の食料は俺が用意します、移動手段はコレ使いませんか?」


俺は風の翼の水晶球を取り出す。


「でも数が足らないわ」


「俺の分をエレナさんが使って、俺はトランクに籠ってれば二つで済みます」


「それならエレナをトランクに入れて、ソウジ君の魔法も使った方が早いわね」


「それだと道がわかりませんよ?」


「なら私がトランクに入って、エレナが私の水晶球を使えばいいわね?」


「そうですね。コレは家のパーティーのもう一人が作った水晶球で『疾風の翼』っていう魔法が入っています。コレを使えば誰でも空を飛べてしまう優れものです」


「瞬撃の隼の特徴とも言うべき魔法ですね」


「下調べ済みですか」


「当たり前ですよ。片足裏社会に突っ込んでるような人間なら特にです」


「覚えておきます」


「表で生きる分には要らない知識よ。裏には裏のルールがあるから」


「表で頑張ります…」


「それがいいわよ」


そうして話は微妙な空気のなか終わり、その場で解散。

俺は食料の買い占めに向かった。

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