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北のケルビン、南のエネシス

「うーん…どうしたものかしら」

 

「すいません、でも念のため杖を修理もしくは使用可能な代用品を用意する必要があるので」

 

フウカは自分の手の中の短杖に魔力を流し、詠唱の準備を整える。

すると杖の表面に薄く紫の結晶が生えて、杖ごと砕け散った。

 

「フウカさんのソレ前より酷くなってますね」

 

「そうなんですよ。原因はわかりませんが…」

 

「じゃあとりあえずフウカさんは杖の修理を最優先で動いてもらって、俺とケイトさんでケルビンの方を片付けるって風でどうですか?」

 

「出来ればソウジ君にはフウカが無茶しないように見張ってて欲しいんだけど」

 

「それでもいいんですが…それだと連絡手段がなくなりますし、そちらの戦力不足が少し心配です」

 

「確かにね…」


「誰か、レン以外でフウカさんとエネシスに行ける人が居ればいいんですが」

 

「え?呼んだ?」

 

「呼んでない、というか杖直せ!できるんだろ?制作者!」

 

「できるけど、今はそこまで時間が無いからさ。僕、創るのは得意だよ?でもその杖創るのに結構時間掛かったし、直すとなるとその倍は時間が掛かると見て…二年かな?ちょっと無理だね。形整えて、内側に魔力充填の限界値の高い芯を入れたら後は杖の中の魔力密度を結晶化しない程度に高めてそれを安定化するだけなんだけど…まず言って僕のモチベーションが上がらない事には『形整える』のも三年ぐらい掛かるから」

 

「じゃあその魔力充填の限界値の高い芯とやらは創れないのか?」

 

「創れるけど、エル君の羽根とかでいいんだよ?」

 

「そういえばあの杖には何が芯として入ってるんだ?」

 

「実は何も入ってないんだ…」

 

「は?」

 

「僕が想像して「物凄く魔力伝導率の高い杖」ってコンセプトで僕が創造したんだ。ソレ自体が中の芯の役割りを果たすから、細かな魔法指示も出せる魔法の杖を目指しました」

 

レンはまだ喋る

  

「あの頃の僕的にはかなり満足のいく代物だったんだけど、最近はもっと強い夢の道具が作れないか?って考え始めたんだ。だって千年も前に作った物が未だに最高傑作だなんてどんな生産職だよ!ってなるしね。てことで僕は夢の道具製作に全力を注ぐから、皆もがんばってね」

 

レンは唐突に姿を消した。

 

「じゃあ、やっぱりフウカさんは杖の方を、俺はケイトさんとケルビンの方を片付けてきますね」

 

「こっちも早く終わったらそっちに合流します」

 

「じゃあとりあえず、ギルドの方に一言言ってきましょうか」

 

「そうですね、念のためアリアさんにも話しておきましょう」

 

「そういえば最近忘れてましたが、壱なる門はどうします?」

 

「そうですねー、ケイトがいいなら私が持って行くんですが」

 

「壱なる門なら別に構わないわ」

 

「以外とあっさり」

 

「もうアレはただの本じゃないし、私が持ってても宝の持腐れだからね」


そして、程なくギルドに着た訳で

 

「奇遇ですね。私も冬になると帰れなくなるので今の内に帰省することにしまして、三日後にエネシスに発つんです」

 

アリアはいつもよりテンション高めだ

 

「それでいつもよりちょっとテンション高めなんですね」

 

「て、てんしょん?」

 

「あー、機嫌がいいって事ですよ」

 

「語彙が少なくてすいません」

 

「いえいえお気になさらず、方言を使ってしまった俺の失敗です」

 

「因みにどちらの方言なんですか?」

 

「日本って言う国の若者言葉ですよ」

 

「聞いたことがありませんね。余程辺境の国なんでしょうね」

 

「はい、ここから凄く距離がありますからね」

 

「話を戻しまして、つまりケイトさんとソウジさんはケルビンで個人の依頼を受ける、フウカさんは杖の修理を依頼するためにエネシスに行くと言うことですね?」

 

「そうです」

 

「留守中の家の管理等はどうするおつもりで?」

 

「そこは問題ありません。万全の準備を施すので」

 

フウカは掌の上に藤色の魔法陣を発生させて見せる

 

「空間魔法ですか?実際に見るのは初めてです。私の知識が正しければ定型詠唱でも習得が難しい筈ですが」

 

「一重にフウカの才能よ」

 

「確かにそれなら留守中の管理を依頼する等の事は必要ありませんね」

 

「アリアさん、一つお願いがあるのですが」

 

「はい、なんですか?」

 

「私と一緒にエネシスに行ってくれませんか?」

 

「ちょっとフウカ!?」

 

「やっぱり土地勘のある人と行った方が心強いですし」

 

「ケイトさん抑えて抑えて」

 

「大丈夫よ、でも私もあの辺は何度も行ったことあるから土地勘はあるわよ?」

 

「ケイトはケルビンの依頼を優先して下さい」

 

「うん、そうね…」

 

「私としては寧ろありがたいぐらいで、やっぱり一人だと絡まれ易いので」


「まあ、この世界のチンピラは絵に描いたようなチンピラが多いしね」

 

「そうなの?ワンパターンな感じは解るけど」

 

「では出発は三日後で?アリアさんはどうやってエネシスまで行くつもりですか?」

 

「連結馬車で行くつもりでしたよ?」

 

「その馬車の予約は取り消せますか?」

 

「まだ乗車券買ってないので大丈夫ですよ」

 

「では三日後、なるべく暖かい格好をしてきてください。連結馬車のように絡まれる事なく数倍早くエネシスに辿り着ける方法で行きましょう」

 

「そんな方法が存在するんですか?」

 

「今から詳しい話をしましょう」

 

私はポケットから水晶球を取り出して掌で弄びながら話し始めた。

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