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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
作者の手抜きの閑話編
114/260

激闘のデュエル大会

その一文はある昼下がりに、ジッシーズ・グレイヴロードの攻略サイトの掲示板に書き込まれた。

 

レン:「なんかシリアスな雰囲気」

 

作者:「黙っててくれるかな」

 

『本日午後3時より、下記のマップの地点にてデュエル大会を開きます。賞品は新しい多段ヒット剣「トリニティーシュレッダー」攻略最先端での使用に耐えうるように作成しました。皆さんこぞってご参加ください。青髪の野良猫』


そして午後3時

ベイグル近郊の草原のど真ん中に人が集まっていた。

 

俺はその人々の真ん中に拡声器を片手に立っていた。

  

『はい、皆さんよく集まってくれました。青髪の野良猫の創設者にして店主のソウジ・k・ミナヅキです。ざっと30人ぐらいかな?まだまだ増えると思うのでサクサク行きましょう。』


今も遠くから走ってくる人影があとをたたない。 

 

『俺が今持ってる剣が今回の賞品のトリニティーシュレッダーですよ。大会とは名ばかりでデュエルで俺に勝った人にこの剣を贈呈するつもりなんですが、ちょっと数が増えすぎてしまいましたね。と言うことでトーナメント形式で行きましょうか』

 

その場に居る全員の前にウインドウが出現する。

『トリニティーシュレッダー争奪デュエル大会 トーナメント戦に参加しますか?・Yes ・No 』

と表記されている筈だ。

Yesを選択したのは半分ってところだ。

そして自動的に二つのグループに選り分けられる。

結局、全部で16人しか参加しなかったがまあよしとする。


16人がAグループBグループに選り分けられてトーナメント表が作成された。

システムが自動で動いて、平原をある程度の広さに区切って障壁で囲んだだけのフィールドが幾つも形成される。


そして参加者がフィールドに転移する。


『トリニティーシュレッダー争奪デュエル大会の開催を宣言します』

 

その一言と同時に全てのフィールドでカウントダウンがスタートした。

 

そこからは勝手に事が進んでいき、時間が経つにつれてフィールドの数も減っていき、残り二つになった。Aグループ、Bグループの勝者同士の戦いだ。


Aグループの勝者は片手剣使いで攻略最前線で見かけた気がする男性だ。

Bグループの勝者はシミター使いで初めて見る顔の女性だ(まあ、中身が女性かどうかはわかんないけどな)

 

片や汎用性に長ける片手剣使い、片やトリッキーな動きで翻弄するシミター使い、そうなると必然的に動きが遅くなる片手剣使いが受けに転じる訳で


片手剣使いは盾を的確に動かしてシミターの剣撃を防ぎ、隙あらばカウンターを狙うが、シミター使いは流れるような動作でシミターを休みなく振るい続け男に剣を振らせる間を与えないようにする。


純粋な剣士と剣士のぶつかり合いがしばらく続いた。

片手剣使いもシミター使いもどちらもスタミナの限界が近いようで息が上がっている。

 

スキルを使用する間もないのに魔法詠唱をする余裕などなく、金属同士がぶつかり合う音が響き続ける。

 

先に行動に出たのは片手剣使いの男だった。

片手剣使いの男はシミターが盾に当たるのと同時にシールドバッシュを発動させてシミター共々シミター使いを弾き飛ばす。


シミター使いは地面を滑って後退した。


男はそのままの勢いで片手剣のスキルを使用して斬りかかる


片手剣の刀身が青く光る。

シミター使いのシミターの刀身が赤く輝きシミター使いはシミターによる切り上げの体勢にはいる


既に跳躍した片手剣使いは少しも速度を落とさずにシミター使いに向かって渾身の突きを放つ。


シミター使いの攻撃が早いか片手剣使いの攻撃が速いか、早まった方が負ける。

 

速い方が負けると言う珍しい戦いになった。

 

そして互いが互いの間合いに入ったのは同時にだった。

 

赤と青が激突して火花が散る。


シミターがぶつかって軌道がそれた片手剣はシミター使いの頭の横を通過し、シミターは男の体に掠りもせずに男の前を通過した。


シミターが再び赤く輝き、片手剣使いに振り下ろされた。

シミターは赤い輝跡を男に残した。

 

男のHPバーは黄色くなり、空中にGAME SETの文字が浮かぶ。


男はあり得ないとでも言いたげな顔だったが、笑みを浮かべて女性に手を差し出した。

そして二人は握手をしてトーナメント決勝戦はシミター使いの女性の勝利で幕を閉じた。

 

「さてと、俺も本気だすかな」

 

「ほんとに?じゃあ僕も本気だすかな」

 

いつの間にか俺のとなりには赤い髪の男が座っていた。 

 

「お前は参加してないだろ」

 

「別に、一番強ければいいんでしょ?ねえねえ、シミター使いのアリエッタさんソウジ君への挑戦権とこの伝説の武器カリバーンを賭けてデュエルしない?」

 

『おい、あれってまさか!?』


『サイトで見たことある。カリバーンのシルエットにそっくり!』

 

『トリニティーシュレッダーとカリバーンを賭けて賭けデュエルかよ』

 

「退くに退けなくなっちゃったね」

 

シミター使いもといアリエッタの前にウインドウが出現し、アリエッタはYesを選択する。

 

「じゃあ始めようか」


レンは大剣の伝説武器グラムを手にする。

 

「はっはい…」

 

アリエッタは足が震えている。

カウントダウンがスタートする。

レンは大剣をまるで小枝を振り回すかのように弄ぶ。

 

0、GAME STARTの文字が浮かぶ

 

そして一瞬GAME STARTの文字がぶれたかと思うとアリエッタのHPが1ドットだけ残して消滅しており、GAME STARTがGAME SETになっていた。


「なんだつまんないの、もっと楽しませてくれると思ったのに」

 

アリエッタは地面に座り込んでしまい、体の表面には赤い筋が幾つもついていた。

 

『なんだよ今の』『化け物かよ』『何も見えなかった…』『チート使ったのか?』『でもこのゲーム、チート潰しだけは徹底してるし』『バグとか?』『バグだったら大問題だぞ』『でも正攻法でああなるまでステータスを上げるのは100年かかっても無理だろ』『△¥@℃£◇#△◎@≠∋∀⌒∀〒』『何言ってるかわかんねーよ』

 

「はい、これで僕が一番ね。じゃあソウジ君始めようか」


「まさかお前とやることになるとは思わなかったな」

 

「手は抜かないでね?」

 

「抜けるかよ」


フィールド転移して、俺はコンバートする。

 

「本気だね~」

 

「ここで本気出さなきゃ、どこで本気出すんだよ」

 

「さあね、僕は知らないよ」

 

俺は観客に聞こえないように、なるべく囁き声で詠唱を開始する 

 

『我、…を……者…』

 

「3、2、1、スタート~」

 

『…タイムフルブースト』

 

俺にとっての必殺技に等しい魔法を使用したことで俺のコートのポケットに入っている魔水晶が一気に消耗した。


そしてレンは500倍速の世界でも俺よりも少し速いぐらいの速度で動いていた。

 

レンの立っていた位置から空間が歪んで波紋のように広がっているのが解る。ソニックブームと言う奴だろう。


俺は自分の中の時間を更に加速させる。


自分の中の時間を加速させる、即ち自分の寿命を縮めていると同義だ。


俺は例え自分の命を消耗してもこの場でレンに勝ちたかった。

何故かと言われると解らないが、強いて言えばさっきのコイツとアリエッタさんのやり取りは酷すぎた。

別に正義漢を気取っている自覚はない。

正義漢ならゲームにリアルを持ち込まないし、リアルにゲームを引き込まないだろうから、俺は決して正義ではないただの薄汚いチーターだ。

 

レンは常人とは比べられない程の速度で俺に迫っていたが今の俺にはゆっくりに見えている。このままスキップしてレンをズタズタに出来るだろう。

 

だがそれをやるとレンは更に加速する。そしてポケットの魔水晶が切れるのがオチだろう。

 

レンの大剣が迫る

 

俺は大剣を躱して、レンを切りつける一回、二回、三回、四回、五回、六回

レンのHPは微々たる量だが減少した。

 

予想通りの固さだ。

鉄の壁でも切りつけてるような感覚だ。


「へえ~この速度についてくるんだ~」

 

レンは更に加速した。

 

「ちっまだ速くなるのか」

 

俺も更に時間の流れを加速させる。

 

『汝らは刃、我に磨かれし鋼なり。今その恩を返さんとここに来たれ 千刃招来』

 

「なにかな?その物騒な詠唱は─」

 

レンの言葉は魔法陣が幾つも展開される音と研ぎ澄まされた刃が風を切る音に掻き消された。


地面だけでなくありとあらゆる面に展開された魔法陣から俺が作った数百本いや千本余りの武器が出現する。


武器たちは障壁の内側を縦横無尽に飛び回り、レンを付け狙う。


「痛いっ痛いって刃物を人に向けちゃダメでしょ!?」


レンの後頭部にウォーハンマーが直撃する。 

 

「痛いな~『炎よ汝は壁なり、汝の熱をもって我に害なす全てを打ち払い、平穏をもたらせ ファイアウォール』 

 

レンを中心に炎の壁が出現し、それに触れた武器が赤くなって砕け散る。

 

そして、いかなる事があってもレンを攻撃するように命令された武器達は次々にレンに向かって飛んでいき、次々に炎の壁の餌食になった。

 

『炎よ、汝は熱、汝は大いなる太陽の欠片、その熱をもって全てを焼き尽くせ プロミネンス 』

 

『氷よ、汝は時をも凍てつかせる氷なり、我が前の空間を凍てつかせ氷の壁となり我が盾となれ アブソリュートシェル』

 

紅炎が辺りに広がり、フィールド内を隈無く撫でた。

それだけで雑草は灰燼と化した。

氷の殻で防いでは居るものの、いつまで持つか解らない。

 

次の手が、レンを一撃で黙らせられるだけの力が必要だった。

 

魔水晶はまだそれなりにある。

 

杖と向こうの魔法とこっちの体…

俺は急いでスマホで時間を秒単位で見る。

これであとは耐えるだけになった。

レンを倒すのは、準備を整えてからでも遅くない。


さてとプロミネンスが終了し、壁も消滅したら決めに行きますか。

 

そしてプロミネンスが収まりファイアウォールも終わっていた。

 

『氷よ汝は無数の刺、その身をもって彼の者を貫け アイスニードル』


俺の周りに出現した数えるのもめんどくさくなる本数のそれは刺と言うにはあまりにも太く、どちらかと言うと杭に近かった。

それもまたレンに向かって飛んでいきグラムにより打ち払われた。

 

その直後俺はレンの目の前に居て、俺の手には二振りの刀が握られており、刀は両方とも刀身に黄色のエフェクトが発生している。

 

「ウエポンバッシュ」


これはシステムアシストにより相手を強制的にスタン状態にすることができる。

システムにより一時的にスタン状態になったレンは動きを止める。


そこに赤いエフェクトを纏った両の刀を振るい着実にダメージを与えていく。


「二式奥義 曼珠沙華」


レンの体の表面には幾つもの切り傷のエフェクトで彼岸花(ヒガンバナ)が描かれていた。

HPバーももう1/3を過ぎた。


「その剣さばきは見事だよ、でもね単純にパワー不足だね」

 

レンのグラムが俺を切りつける、

俺のHPも一気に1/3まで削られた。

これがレベル性RPGの長所であり短所でもある所だな。

レベル差次第で全てが決まってしまう。

だが、俺は負けるつもりはない


「さあ、そろそろ飽きてきたから終わらせようか」

 

「そうだな終わらせよう」

 

レンはグラムを振り上げる。

俺は刀を下げたままだ。


そろそろ予約の時間だ。


レンがグラムに赤いエフェクトが発生する。


するとレンの後ろに白いコートを着て抜身の日本刀を持った少年が現れて日本刀をレンの背中に突き刺した。


「やっぱりお前が作った物の性能は最高だな」

 

「ソウジ君、それはズルだよ…」

 

「本気を出すって言っただろ?」


HPバーがぐんぐん減っていき半分になって黄色くなり、もう一人のソウジは消えた。


GAME SETと空中に表示される


Winer:ソウジ・k・ミナヅキ

 

その表示を確認してからタイムフルブーストを解除する

 

「ズルしまくれば勝てるんだな…」

 

「君って以外と執念スゴいよね」

 

「お前は手加減してたよな」

 

「僕が本気出したら誰も勝てないからね」

 

『誰も勝てなかったな』『じゃあ賞品はどうなるんだよ。俺、後で優勝者から買い取るつもりだったのに』『最後の闘い凄かったな』『ろくに見えてないのによく言うよ』『あの剣の魔法とかスゲーかっこ良かった』『どうやったら彼処までAGI値が上がるのかな…』『装備じゃね?』『装備は難しいな』


「今回は俺に勝った人は居なかったけど、それだと次回が無くなりそうだから、これはアリエッタさんに進呈しようと思うんだけど、どうだろうか?」

 

『まあ主催者がそれでいいならいいんじゃないか?』

 

「あれ?僕は?」

 

「お前は必要ないだろ」

 

「まあね」

 

「アリエッタさん、出てきてくれます?」

 

「はっはい」

 

「あなたはトリニティーシュレッダー争奪デュエル大会トーナメント戦にて当初の成績を収めたのでこれを称し、賞品のトリニティーシュレッダーを進呈します」

 

ソウジは跪きトリニティーシュレッダーをアリエッタさんに進呈する。

 

突然の展開にアリエッタは戸惑っている。

 

「受け取っときなよ、青髪の装備は一部人間の間で法外な額で取り引きされるからね」

 

レンが囁いた。

確かに一部で法外な額で取り引きされてたりするけど別にヤバイ代物じゃないぞ 

 

「ありがとうございます」

 

自然と拍手が沸き起こった。

そうして第一回デュエル大会は幕を閉じた。

参加者達は蜘蛛の子を散らすように去っていき、俺もその場を後にした。

 

「ちょっとしたお祭りになっちゃったね」

 

「まあ、面白かったからいいだろ」

 

「まあいいか」


「んじゃ俺もそろそろ落ちる、俺との約束を果たさないとだからな」

 

「君、ホントにチーターだよね」

 

「チーターにしたのはお前だ」

 

「まあ、それもそうか、異世界生活を楽しんでね」

 

「楽しめる内に楽しんどくさ」

 

俺はログアウトした。

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