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ウインド─第一章、改稿作業予定─  作者: 水無月 蒼次
作者の手抜きの閑話編
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ソウジ 奔走

そして俺はケイトさんと一緒に領主の館に向かっていた。

移動手段は風の翼ではなく、特別に警備兵の詰め所から借りてきた馬だ。


ケイトさんは俺に合わせて速度を落としつつ、正拳突きで倒れた金髪君ことセイを縛り上げた上で後ろに載せている。


その他になぜ俺が馬に乗れているかとかも説明するとしたら一重にゲームのおかげとしか言いようがないんだよね。

いっそのこと向こうからグリちゃんを呼び寄せた方が速いし安定するけど、今回はケイトさんと警備兵の皆さんのご厚意があるからそれはしていない。

 

「もうすぐ着くから頑張って」

 

「馬がっ言うことっ聞かないっ」


「ソウジ君も馬ぐらい乗れた方がいいわよ」

 

「アシストなしで乗るのは初めてなんです」

 

「まあ、これを気に練習したらいいでしょ」

 

そうして馬に翻弄されつつアリシアの中央、この町で一番大きな建物である領主の館に着く。

 

到着して直ぐにあっという間に建物の中の一室に通された。

  

「あのケイトさん、俺、すごい場違い感です。緊張でガチガチに」

 

「気にしない気にしない、今回私たちは嫡男を連れ戻した恩人だからね」

 

「ケイトさん、俺、帰っていいですか?」

 

「ダメよ。どういう経緯で回収したのかと、今回のことに誰が関係したかとかも聞かなきゃだし」


「え~と、誰も関わってないし、関わった人間ももう居ないので帰りますね」

 

「もう居ない?」

 

「仲間割れで全滅しましたよ、気になるなら朱雀通りの裏路地の広がってる所を調べてみて下さい。どうせ肉片しか出て来ませんが」


「あーセイが無事で良かった良かった、今回はありがとなケイト。ん?誰だお前」

 

そこに入ってきたのは金髪碧眼のおっさん。

 

「私から紹介するわ、瞬撃の隼の期待の新人ソウジ君よ」

 

「どうも初めましてソウジです」


「わしはアリシアの領主のヴィンスだ。ケイト、お前もようやく男に手を出すようになったか、うむうむ孫はいつ頃を予定しとるんだ?早いに越したことはないが」

 

「お父さん?ソウジ君はただのパーティーメンバーよ?」

 

「ただのって言うのが気になりますがそうですね。自分とケイトさんの間にそういった関係は欠片もありませんのでご安心下さい」

 

「なんだ、ただのパーティーメンバーか…」

 

「そういえばフウカ君はどうした?」

 

「フウカは別件があってね」

 

「そうなのか」

 

「自分は帰るのでお二人は親子水入らずのお話をお楽しみ下さい。ではケイトさん、先に戻ってますね」

 

「まあ、そう言わずに」

 

ヴィンスがそう言うとドアの脇に立っていた兵士が出口を塞いだ。

 

「俺から話すことなんてありませんよ?」

 

「なんも言わんでいいから、そこにおってくれ」

 

一瞬、ほんの一瞬だがケイトさんの目から感情が消えたように見えた。 

 

「わかりました」

 

そしてアリシア親子の話は俺という緩衝材を挟んだ上で続けられた。

 

それが終わって帰ってくるとスマホに着信が入る。

 

『ちょっと手伝って フウカ』

 

と表示されており。

俺は壱なる門を越えた

 

「何の用だろう…」

 

と考えながら荒野に降り立つと少し離れた所に球体が飛来してきて、空中で爆発して消滅した。

 

「あっぶな…」

 

上空に白い点が見える。

大きさ的にリンだろうと思われる。

 

俺は風の翼でそこまで昇ろうとするが水晶球がない。

 

「あっ貸したんだった」

 

昇るのを止めて、メールで呼ぶことにする。

 

よく考えたら、中世ヨーロッパ風の異世界でスマホ触ってVRゲームしてってしてる俺は損しているんじゃないだろうか…

もっと色々冒険したり旅したりしてもいいのかもしれないな。

 

等と考えてる間にフウカさん達が降りてきた。

 

「呼び出しちゃってごめんね」

 

「いえ、ちょうど帰ってきた所だったのでいいですよ」

 

「どこか行ってきたの?」

 

「ちょっとお使いを頼まれて」

 

「だとしたら悪いんだけど、コレを今朝の月光の竹林亭の届けてくれるかな」


「コレ何の紙ですか?」

 

「ソフィアさんの休暇届けです」

 

「月光の竹林亭って何処ですか?」

 

「通り出て左行って…というかソフィアさんを連れていった方が簡単だと思うので、ソフィアさん一緒に行ってきて下さい」

 

「えっ!?私っですか」

 

「大丈夫ですよ、ソウジ君が送り迎えしてくれるから。それとソウジ君、終わったら今より30分ぐらい前の私に届けたことを伝えといて」

 

「えっ?今のフウカさんじゃダメなんですか?」

 

「30分前にソウジ君が私に報告しに来たから辻褄合わせといて」


「わかりました。じゃあソフィアさん行きましょうか」

 

『我、空間を繰る者、我が資格の下に此の地と彼の地を繋ぎたまえ ゲート』

 

フウカさんの前に藤色の魔法陣が出現する。

 

「ここと月光の竹林亭を繋ぐ通路を開けました」

 

「じゃあソフィアさん行きますよ」

 

俺はソフィアさんの手を引いて魔法陣の向こう側に踏み出した。


世界が藤色の閃光に包まれ

次の瞬間、俺たちは建物の中に居た。


「ここは?」

 

「私の部屋ですね」

 

「じゃあ初めてだけど跳んでみますか」

 

「はっはじめてなんですか!?」


「そうですけどなにか?『我、時を繰る者、我が名の下に我らを過ぎ去りし時へと送りたまえ タイムリープ』


詠唱を終えると俺とソフィアさんの周りの魔力が銀色に輝きだして繭のように俺たちを包んだんだと思う。


そして銀色の繭が消えると外は日が沈んでおり、東の空が青くなってきていた。

 

「朝ですね」

 

「さっさとコレを出してきてしまいましょう」

 

「そうですね」

 

俺たちは抜き足差し足で廊下を移動してソフィアさん曰く支配人の仕事部屋の机に休暇届けを二人分置いてきた。


「さてと帰りますか」

 

「そうですね。って言うか帰れるんですか?」

 

「やるだけやってみましょうよ。このままでもどうせ帰れないんだし」

 

「そうですね。お願いします」

 

『我、時を繰る者、我が名の下に我らを我らの正しき時へと還したまえ タイムリープ』


銀色の繭が俺らを包み込み、繭が消えると外は明るくなっており日が真上に昇っていた。


「戻ってこれた?」


「そうらしいですね」


「良かった…じゃあとりあえず着替えてから戻ります」


「そうですか、俺はちょっと前のフウカさんに報告しに行くので水晶球を返して貰ってもいいですか?」

 

「あっそうでしたね。ありがとうございました」

 

「ではよい休日を」


俺はその場を後にして、壱なる門に戻りタイムリープを使用してフウカさんに報告して、元の時間の自分の部屋に戻ってきた。

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