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【詩集】拙くも進もうとする試み

群れ

作者: につき

孤独に痛む足は

左側に


帰りたがって疼く膝は

右側に


流れ込む美しい歌声にも慣れてしまった

この電車の端の座席に座って溜め息をつくのはわたしだけではない


昨日の精悍な若者

一昨日の上品な老婦人

一年ほどまえの勝気な子ども


この座席をやっとの思いで立って降りていくのは


今夜のわたし

昨日の青い目のすらりとした若者

明後日の紗々を纏ったアジアの若い女

数年後の酔っぱらった作業着の男


失われた群れをなつかしむバッファローは動物園の檻の中

外れることを許されない渡り鳥の群れの一羽

巨大な紡錘形を成す魚の群れの中心の一匹


わたしたちはこの電車の中で群れを成す

分かり合おうともせず寂しくて堪らないから


昨日も

今日も

明日も

群れのリーダーは運転手

目的地まで連れていく役目だ




 *


 仕事の帰り道ですから、脚が痛かったのです。そして、いつも聞いている女性ボーカリストの曲もなんだか慣れてしまったのです。この詩には、様々な人が出てきます。実際に目にした人々がモデルになっています。動物たちの群れは、生存のために集まっているのですが、わたしたちもなにか生存のために群れている様に思うのです。ひと時でも同じ空間と時間を共有することを、群れの一員であるという表現で現わしました。分かり合おうとするほど触れ合ってもいないのに、意外な程の近さに寂しさを感じてしまう。昨日と今日と明日を繋ぐ生存のための営みに、公共交通機関が意外な程深く関わっているなと、思ったのでした。



読んで頂いてありがとうございます。

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