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チューインガム

作者: グリフィス

イライラする。

なんのやる気も湧かない。

何に対して苛立っているのかも分からない。

何がしたいかもわからない。


部屋の窓から空をボーッと見上げる。

取り敢えず、気を晴らそう。

晴れる?

晴れたときがあっただろうか?

...考えるだけ無駄か。


適当にモヤモヤとしたものをかき消そうと、真っ黒に塗りたくられた粒ガムを適当に口に放った。

数も適当すぎたか、口の中がヒリヒリとする。

水...あ、逆効果だ。危ね。

ジッと口の中で踊る辛さと闘っているわけにもいかず、適当に歩こうかなとふと思った。

やることなすこと行き合ったりばったり。別にやりたいこともないしね。


履き慣れた靴の靴紐を結び、玄関の戸を開ける。

お天道様がやけに眩しい。張り切ってやがる。

目的地もなく、適当にブラブラと散歩する。

ふとわきに目をやると、畑があった。家庭菜園のものだろうか。

キャベツの葉の裏に、白い蝶がとまっている。

なんとなくジッと見つめていると、ふらふらと飛び立った。

目で蝶々を追っていく。

道路をはさんで、畑の向こう側へ飛んでいく。

車が横切る。

蝶々はヒラヒラと飛んで...いや、舞って落ちた。

蝶々が轢かれて死ぬ瞬間を見たのだと気づくのにどれだけ時間がたったのだろうか。

口の中の刺激物を思い出し、気がついた。

嫌なものを見てしまったな、と気分が沈んだ。

気晴らしどころか、胸糞悪いもの見ちゃったな。

見るのも辛いボロきれのような死骸から視線を反らした。

さっきまで蝶々がいたキャベツの葉をボーッと眺めた。

本当にさっきまで生きていたのにな...としょうもない感傷に浸っていた。

何かが視界に入った気がした。

目を凝らして葉を見ると、蝶の卵があった。

先ほどの蝶々の卵であった。

彼女が生きていた証なのだ、とふと思った。

いつの間にかガムの辛みは消え、口の中には何の面白味もないゴムが転がっていた。


取り敢えず何かしたいと思った。

散歩を始める前の行き合ったりばったりの何かとは違う気がした。

取り敢えず...家に帰って、課題でも片付けるかな。

気分は晴れたしな。

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