一話 俺は個性が欲しい
「悠生君は、何でもできるわねー。」
幼い頃、俺はそう言われ続けて育ってきた。
子供の頃はそれで良かった。
それだけで憧れられたし、何とかやってこれた。
でも、それも中学二年まで。
勉強の成績も、運動神経も平均クラスだと飽きられてしまう訳で。
「嵐山って、つまんねぇ奴だよな。普通すぎて。」
「悠生って、どこにでもいそうな奴だよな。」
と、言われるようになってしまった。
部活動ではレギュラーにはなれてもスタメンになれなくなった。
成績は受験シーズンになっても変わることなく。
でも何故か私立形山高校に受かってしまった俺は、
真ん中の成績で入学することになった。
「個性研究部」
普通過ぎる俺にとって「個性」があるのは羨ましい事である。できる事なら、個性が欲しい。…と思って入部を決めた。
強豪校としても有名な所では、レギュラーにすらなれないから…という運動部への諦めを少し感じていたからかもしれない。
「嵐山、本当にここだけにするのか?」
先生は入部届けを見て尋ねてきた。
「はい。…部員も多いみたいですし。」
「……そうか、そういう訳ではないのだが…。」
「そろそろいいですか?集会に遅れますから。」
何か言いたげな先生との会話を打ちきり、部室へと向かう。
このとき、先生の話を聞けば良かった…と後悔するのに時間はかからなかった。
初投稿で拙い文章ですが、宜しくお願いします。