妖魔将アルベル
「ぐぎゃあああ!!」
「何っ!?」
稲妻の先には、太い枝の上に立つ漆黒の獣がいた。肩から生えた触手、額から突き出した銀の角が強力な魔物であることを思い起こさせる。
魔物は枝を飛び降りると、リカーム達を庇うように横に立った。
「ナイスなタイミングです」
「本当はアルベルに叩き込みたかったんだがな」
シェーラは目を丸くして、傍らにいる魔物と老執事を見比べていた。
「……嘘だろ」
瀕死の妖魔に剣を突き立てながら、ダインは呆れたような声を出した。
当然だ。人間の言葉を喋る魔物も初めてなら、それと仲よく話す人間も初めて見たのだから。
「ほう…何かと思えばお前はあの時の雷獣か。私に仲間を殺されて復讐を狙っていたというわけか」
アルベルがカノンの神経を逆撫でるように笑みを浮かべる。部下が倒されたこともたいして気にしていないようだ。
ジャアアアッ!!
牙を剥き出し、いつでも跳びかかれる体勢をとるカノン。バチッと二本の触手の間で火花が飛び散った。
その怒りに呼応するかのように、リカームが一歩前に出る。
数年前、アルベルはこの強力な魔物を隷属させようとした。しかし、その力と高い知能のため呪縛することが出来ず、腹いせにカノンの兄弟を皆殺しにしていた。
「ダイン。御嬢様を頼みます」
「ああ…」
大回りしてリカーム達の方へと駆け寄ったダインは、シェーラを連れて後ろへ退がる。
それを確認したリカームが、アルベルと正面から向かい合う。
「アルベル殿。御嬢様を連れ去る前に私達の相手をしてもらいましょうか」
「ふん…よかろう。いい加減、目障りな執事と思っていた所だ。今ここで殺してくれる」
その言葉を聞くや、老執事は手にしていた細長い包みを剥ぎ取った。
中から現われたのは黒っぽい鞘に幾何学的な模様を彫り込んだ剣―――そう、これは壁に掛けてあったゼノケリウスの剣だった。
不屈の精神と最高ランクの実力を兼ね備えていなければ、決して反応しない魔剣。いや、人々には聖剣として敬われている。
「ほう…ゼノケリウスの剣か。そんな剣を持ち出してまでシェーラ嬢を守りたいのは分かるが、執事殿には荷が勝ち過ぎる。それとも、あまりの恐怖に錯乱したのかな?」
ゼノケリウスを見ても眉一つ動かさない。
アルベルの馬鹿にしきった物言いも無視して、リカームは剣を抜いて刀身を見る。
三百年も前に作られたとは思えない光沢があった。現代でも魔剣として重宝される所以だ。だが、ゼノケリウスの剣が力を発揮するとき、刀身が眩く輝くという。伽話で語られるほど有名だ。
リカームは剣をまた鞘に納めた。
そして、剣を横にして真正面に構える。
力の限りに吠えた。
「うおおおおお!!」
突如あげた老執事の咆哮に、周りの空気までもが一変した。
ゼノケリウスへと強靭な錬気が流れ込んでいく。
「な、何なんだこの爺さんは!?」
ダインは、ざわざわと泡立つ鳥肌の原因が、目の前の老人であることに驚愕していた。幾度となく修羅場を潜ってきたからこそ判る。この老人が自分よりも強いことを。
隣にいる少女を見ると、祈るような眼差しで老執事を見つめている。老執事の無事だけを一心に祈っているのだろう。
リカームの脳裏には、シェーラに会ってからの数々の日々が蘇っていた。
経験の足らない自分が起こす失敗の数々を、主は小さな苦笑で流してくれた。こんな自分に信頼を寄せ、遣り甲斐のある仕事を任せてくれた。常に老人として気遣ってくれ、孫娘のように労わってくれた。少し心苦しくもあった。
万感の想いを込めて、浮かび上がる絶対的確信があった。
「我が忠誠、聖騎士にも劣らず!!」
リカームの手から剣へと、確固とした意志が流れ込んだ。
「ふっ…馬鹿が。忠誠心だけで剣が発動するものか。聖騎士レベルの実力を持たぬ限り決して…」
妖魔の声は途中で途切れた。
剣と鞘の間に一筋の光芒を目にして。
その光は、玄関から飛び出したアルカイド達も目の当たりにしていた。
「え…何故、聖剣が?……リカーム……お前…一体何者だ…」
呆けたようにその光を見つめるアルカイドは、呆然とした顔で呟いた。
「リ、リカーム…」
シェーラも驚愕に目を見開いていた。
まさか、あのリカームが聖剣を発動させるなんて…。
鞘から現われた刀身は、伝説の通り眩い輝きを放っていた。陽の光のように直視出来ないものではなく、刀身の形もはっきりと分かる。それなのに、昼間でも眩く感じるのだ。
これにはさしものアルベルも動揺を隠せなかった。
「な…何故だ。貴様のような老いぼれが聖騎士の実力を有しているはずが…まさか!」
何に気付いたのか、アルベルが風を圧縮した球を作り出しリカームへと投げつける。
迫る圧縮球を聖剣が切り裂いていた。
ブバアアアッ!
空気の奔流がリカームを包み込んだ。風の圧縮球は聖剣に裂かれ力を減衰させたものの、余波で起こる風の刃が老紳士に小さな傷を無数につけた。
「リカームーっ!」
駆け寄ろうとするシェーラをダインが制する。
風が止み、リカームの顔を見つめていた妖魔が含み笑いを洩らした。
「ほう…なるほど。執事殿、もうそろそろ本当の顔を見せてもらえないかな?」
「!?」
リカームは口元に手をやって愕然とした。
先程の風で付髭がなくなっていた。それだけではない。後ろに撫で付けていた白髪が前に垂れ、裂けた頬の中から別の若々しい肌が露出していた。
シェーラはリカームの横顔に見入っていた。
リカームが変装していたことにも驚いたが、彼女には今のリカームが誰かに似ているのが非常に気になったのだ。
「……ここまで…ですね」
リカームは大きな溜息を吐き出すと、顔に残った人工皮膚を剥がしていった。皺がめりめりと剥ぎ取られ、次々と血行のよい肌が露出していく。
そうして現れた顔は、シェーラの見知った憧れの人物だった。
「シ…シオン様っ!?」
「あ、あれがリカーム!?」
「まさか!?」
「夢見てるわけじゃ…ないよね?」
屋敷の入口に立っていたアルカイドや使用人達も驚きの声をあげる。
目の前で温厚な老執事が聖剣を発動させ、いきなり二十代の青年に様変わりしたのだ。現実についていけなくなっても不思議はない。
「これでこの御屋敷にはいられなくなりました。しかし……アルベル!貴様だけは必ず倒す!!」
リカームとカノンが激しい気迫とともに、アルベルへと突進した。
「喰らえ!」
バチバチ…ズドオンッ!
雷鞭を宿したカノンが雷撃を放つ。
しかし、アルベルは魔力による壁を作ってこれを弾き返した。
すかさず、リカームが壁に斬りつける。青い半透明の壁は聖剣の力で消滅し、リカームがさらに踏み込んだ。
ドボオウウッ!
迫ったリカームへとアルベルが衝撃波を放つ。
雑魚妖魔など比較にならない威力だった。
咄嗟にゼノケリウスで衝撃波を斬り裂いたリカームも、余波を完全に殺すことが出来ず吹っ飛ばされてしまう。数度転がりすぐさま起き上がったリカームだが、たった一度の衝撃波であちこちに傷を負わされていた。
「ふん。いかに聖剣とて盾にはならぬ。鎧も着ていないその体で私の攻撃をいつまで我慢出来るかな?」
「俺を忘れてるぜ!」
カノンがアルベルの背後から稲妻を放つ。
バチッバリバリ、ズドンッ!
しかし、これもあの魔力の壁にはば阻まれた。
「無駄なことを」
アルベルは侮蔑の笑みを浮かべて、右腕を大きく振った。
風が渦を巻き、巨大な竜巻となってカノンを呑み込んだ。激しい風に翻弄され上空へと巻き上げられていく。竜巻の頂上を錐揉みしながら飛び出したカノンは、意識もないのかそのまま地面に激突した。
「カノンッ!」
友のもとへ駆け寄るリカーム。
アルベルが倒れた雷獣にとどめを刺すべく、衝撃波を放つ。
「おおおっ!!」
ザンッ!
間一髪、衝撃波は聖剣によって斬り裂かれた。左右後方で地面が大きく陥没する。
カノンを庇って立つリカームに、アルベルの容赦ない衝撃波が再度襲いかかる。聖剣を前にして有りったけの気を注ぎ込むリカーム。
裂かれた衝撃波は左右の地面を深く穿ち、壮絶な爪跡を残して行った。
「いつまで耐えられるかな」
ドウッ!ドウッ!ドウッ!
衝撃波の連続攻撃は止まらなかった。
「ぐっ…!」
防戦一方のリカームは、踏ん張ったまま後退し二本の轍を伸ばしてゆく。 少なからず衝撃の余波をその身に受けて弱っていくリカームに比例して、聖剣の光さえも衰えてきていた。
「はははーっ!貴様も先代の聖騎士達と同じくバラバラにしてやるぞ」
アルベルがこれまで以上の衝撃波を放とうとしたとき、その軌道に何かが飛び込んで来た。
目の前に現われた者は、白いドレスに身を包んでいた。
「!?!」
咄嗟に軌道を変え、衝撃波はシェーラのすぐ横を通り過ぎて行った。
両手を拡げた少女は気丈に妖魔を睨み付けていた。
「御嬢様!」
リカームの叫びに、少女は首だけを後ろへと向ける。
シェーラと視線が重なった途端、リカームはカノンを置いて飛び出していた。一年も一緒にいたのだ。主の考えくらいすぐに分かる。
リカームの友達は殺させない…と。
だが、横から飛び出したリカームを見逃すアルベルではない。
大きく弧を描いて迫るリカームに、無数の風の刃を放つ。威力は衝撃波と比べるべくもないが、数が尋常でない。足を止めたリカームは、これを光の弱くなった聖剣で辛うじて打ち消していた。
そんな中、リカームの口角が上がる。
考えていたのはシェーラのことだった。万が一怪我でもしたら…いや、あの主のことだ、これ以上自分のために誰かが傷つくのなら死んでも構わないとでも思ったのだろう。
(本当に…守り甲斐のある方です)
ゼノケリウスが再度、輝きを取り戻していた。
シェーラはまだ両手を拡げて立っていた。後ろを見ずに囁く。
「魔物さん、大丈夫ですか?」
「……ああ、お前の御蔭だ。もう力を抜いていいぞ」
思ったよりも後ろの方から声が聞こえてきた。
「それじゃ、お言葉に甘えて」
そう言った途端、シェーラは腰が抜けたかのようにぺたんと座り込んでしまった。やはり、かなり無理をしていたようだ。
そして、それに合わせ走り込んできたカノンが、シェーラの背後から渾身の跳躍をした。妖魔はリカームの相手でカノンのことを失念している。
全く、カノンに気付いてなかった。
アルベルの頭上を飛び越えたカノンは、背後から敵の腕を触手で絡め取った。
「何っ!」
「これなら防げまい?!」
バリバリバリバリ!
「ぐあああああ!!」
触手から流れた電撃に絶叫をあげるアルベル。
そこへ、とどめを刺そうとリカームが突進した。
「うおおおおお!」
「ぬがあああ!妖魔将をなめるなああっ!!」
ドオグアアン!
アルベルから全方位に向けて、放射状の衝撃波が放たれた。
護衛達を吹き飛ばした術だが、威力の方は比較にならない程強力だ。
激しい爆音の中、噴き上げられた土煙によって、アルベルやリカーム達の姿は完全に掻き消された。
もうもうとたちこめる土煙を不安気に見つめる人々。
一番近くにいたシェーラは、ダインが咄嗟に盾になってくれた御蔭で少し砂を被った程度だ。しかし、ダインがその場から離れさせようとしても、シェーラは頑として動こうとはしなかった。
やがて、一迅の風とともにゆっくりと土煙が晴れてゆく。最初に現われたのはカノンだった。触手は半分から千切れ、全身ぼろぼろで地に転がっている。意識があるのかさえ分からなかった。
その反対側ではリカームが半身を起こすところだった。こちらも全身傷だらけで、無惨に引き裂かれた服の下からは、決して少ないとは言えないほどの血が滲み出している。
そして、最後の希望であるゼノケリウスには、あの輝きが完全に消え去っていた。
その場の全員が絶望を感じ始めた時、とうとう爆心地の土煙が晴れた。そこには暗黒の魔翼を拡げた三本角の妖魔が悠然とそびえ立っていた。
しかし…
「ぐ、ぐううう…侮ったのは私の方か。これほどの深手を負ったのは…三百年ぶりだ…」
アルベルが胸を押さえて片膝をつく。
その手の下には、左の肩口から腹にかけて深い刀傷が刻まれていた。
それだけではない。先程のカノンの電撃で、内臓もかなりの損傷を受けている。ゼノケリウスをその身に受けた今ではそれらの再生にも時間がかかる。
聖剣から受けた傷が体を蝕んでいるのだ。
「くっ…侵蝕が速い!」
心臓まで侵食しようとする聖痕に魔力で抗いながら、アルベルは己のプライドをずたずたにしてくれた敵を睨みつけた。
半死半生の雷獣は立ち上がることも出来ないでいた。あのふざけた執事も立ってはいるがふらふらの状態だ。聖剣さえその力を失っている。
しかし……もう、この二人の力を侮ることは出来なかった。これまで計算外のことが起こり過ぎている。
「……くっ!この場は貴様等に勝ちを譲ってやる。だが…次に会う時は本当の姿で相手をさせていただく。私のプライドにかけてな!」
バサアッ!
闇の如き魔翼を羽ばたき、アルベルは大空へと舞い上がった。
いまだ人の姿を留めた妖魔は、西の方角へと小さくなっていく。リカームとカノンも、すぐには追いかけることなど出来なかった。
彼らもぼろぼろの状態だったのだから。
赤み始めた西の空に妖魔が完全に消え去った頃、戦っていた二人を除く全員が歓喜の声をあげた。皆、喜びを胸にシェーラとリカームのもとへと駆け寄ってくる。
アルベルの名こそ聞かなかったが、三本角の妖魔と言えば妖魔将と呼ばれるクラス、狙われれば絶対に守ることの不可能な存在なのだ。追い返しただけでも奇跡に近い。
だが、近づくにつれて歓喜の表情は戸惑いの表情へと変わっていった。元老執事の顔は髪こそ白いものの、精悍な青年にしか見えなかったのだから。
そして、シェーラもまたリカームの顔を見つめたまま顔を赤くしていた。
これが、いつもの老紳士ならその胸に飛び込んで感激を現していたかもしれない。しかし、目の前にいるのは同一人物だったとはいえ、密かに憧れていたシオン様だった。どうしても、恥じらいが先立ってしまう。
やがて、アルカイド達が背後までやって来た時、シェーラはやっと口を開く事が出来た。
「リカーム……あの…ありがとう」
「……当然の事をしたまでです」
また顔が熱くなり、少女は視線を下へと向けざるを得なかった。
その瞳に血に染まったシャツが映る。
「あっ、酷い怪我!早く手当てしなきゃ」
だが、シェーラのその言葉に、リカームは首を横に振ることで応えた。訝しむ主達の前で一歩引いて深々と頭を下げる。
「申し訳ございません、旦那様、御嬢様方、それに屋敷の皆さん。いままであなた方を騙しておりました。
私の本名はリカーム=エルシオンといいます。以前の職業は冒険者で、年齢もまだ二十三歳の若輩者です。私の個人的趣味で皆様に大変失礼なことをしてしまいました。
許されることではありませんが、心よりお詫び致します」
「リカーム=エルシオンって言ったらあの凄腕の…」
ダインが呻くように呟いた。
この名はその筋では知らぬ者はないほど有名だった。その剣の腕もさることながら、倒した魔物を殺さず説得して逃がしてしまうという変わり者として有名だったのだが。
ダインも一度会ってみたいとは思っていたが、まさかこんなところで老執事に化けているとは思いも寄らなかった。
「私はこのまま奴を追って行きます。この剣は用が済み次第お返し致します。もう、二度と会うこともないと思いますが…お達者で」
別れの言葉を残し、リカームは背を向けるとすたすたと遠ざかって行く。
横たわっていた魔物も、血が止まったのかむくりと起き上がる。
「そ…そんな…」
シェーラは焦った。このままでは二度とリカームに会えなくなってしまう。隣のメリーナも泣きそうになっている。たぶん、自分も同じ顔をしているはずだ。
父を振り返る。アルカイドは当然のように頷いた。
シェーラの顔がぱあっと輝いた。
「リカームっ!」
その言葉にぴたっと立ち止まったリカームはゆっくりと振り返る。
「何でしょうか?シェーラ御嬢様…」
「あの妖魔を追いかけるって言ってたけど、どこにいるか知ってるの?たぶんファラード家の屋敷にはもういないだろうし、痕跡も残ってるとは思えないわ」
「えっ?いや…その…それなら見つかるまで探します」
「あら、それなら私はどうなってもいいの?あなたがいない間に襲われたら誰も抵抗しようがないわ。護衛はあの通りだし、その剣を使えるのはあなただけなんだもの」
「そ…そういえば…」
たらたらと脂汗を流し、立ち尽くすリカーム。どうやらその場のノリで出た決断だったらしい。
「ねえ、皆は?」
シェーラが後ろの使用人達に尋ねた。
「そ、そりゃあ、リカームさんがいてくれれば僕達は安心です」とアクラ。
「年は違ってもリカームさんに変わりないだ」とダイモ。
「御嬢様の命の恩人であるし、これまでのことはチャラにしておきましょう」とハタル。
「リカームさんが若かったなんて嬉しいっ。私の理想の男性だったのよ」
「ずるいわ、レーラ。私だってそうなんだから」
「わ、私も…」
とメイドの面々。
他の人達もリカームが残ることに大賛成だった。
「リカーム~っ、戻って来てえええ!!」
メリーナの叫びがリカームの胸に突き刺さる。走ってきたメリーナがリカームの胸に飛び込んだ。
「…っていうことだから戻って来て。リカーム」
いつものように微笑むシェーラ。
外堀を埋められ、最善の道へと誘導してくれる。百戦錬磨の会頭補佐の前では抵抗も難しい。
「……畏まりました」
しばし沈黙し答えた。
沈黙の間、何を考えていたのか。それとも嬉し涙を堪えていたのだろうか。姉妹二人に手を引かれ、リカームは嬉しいやら恥ずかしいやらという顔で屋敷に入っていった。
「さ、魔物の旦那も中に入ってくれ。あんたは俺の命の恩人だからな。傷の手当てをさせてもらうぜ」
ダインが魔物に向けて、人懐っこい笑みを浮かべた。
「やれやれ…」
友に置いてけぼりを喰らったカノンは、しょうがないな…とでも言いたげに屋敷へと歩みを向けた。




