Ende
「坂道を見ると無性に走りたくなってくるんだよね僕」
彼女の声は元気がよく僕の耳にはとても耳障りだった。まさに自由奔放で、いつも気ままに過ごす彼女は、何にも縛られていないんだろう。そう思わせる人だった。
僕は元気な彼女が鬱陶しくて
「坂道なんてただ面倒なだけだ。登れば体力は持ってかれる。降れば足腰にくるだけ。しかもここの坂なんて登った所で住宅街に出るだけで何もない」
そう吐き捨てて目の前の坂を通り過ぎていった。
「わからないかなぁー、なんて言うかねびゅーんってここを駆け上がったらなんだか爽快な気がするんだよね」
そう言って、彼女は腕を横に広げて僕の周りを一周した。銀色のきれいな髪は僕を囲むようになびいて少しシャンプーの香りがした。
いつも家で本ばかり読んでいる僕にはそんな『爽快』という気持ちは無縁だ。理解しようとも思わないし理解したいとも思わない。
彼女と僕の関係は、ただの幼馴染。いつもつれまわしに来る鬱陶しい幼馴染。
その日は彼女が天気がいいからと僕を外に引っ張りだして公園に行く途中だった。
そして、その日が彼女にとって16年と三ヶ月の人生の幕を下ろす日になった。
死因は、昔から患っていた心疾患だったらしい。
公園に着くと彼女は元気に走り回りそのまま転んだと思ったら動きが止まった。
助けて、も何も言う暇もなく心臓が停止して動けなくなったらしい。僕は転んだ彼女に、大丈夫かと手を貸しに行った時には返事もしなくなっていた。
いつも元気すぎるほどに元気な彼女が動かなくなったのだ、当然異変にすぐに気づいて助けを呼んだが救急車が来る時間の遅さにどうしようもなかった。
時間が経過する。
遅い。
遅い。
遅い。
救急車が来たときに僕が発した言葉は
「お前ら遅すぎるぞ!何してたんだ!」
今思い返せば、自分がなぜこんなに救急隊に対して怒っていたのわからない。ただただ、彼女が死んでしまうことが悲しかったのかもしれない。
そのまま、僕は冷たく動かない彼女の腕を握りしめて、救急車で連れて行かれ彼女の死を受け入れることになった。
もう鬱陶しい彼女は居ない。それが僕には一番の絶望だったらしい。
前回に間違えて短編で投稿したという黒歴史を持っているがきにせず投稿!
プロローグですねはい
まずは、あまり分からなくても気にしないでください。いや、気にしないで興味もなくなってもらっても困りますがね・・・