第三話:冬から春へ〜矛盾〜
高校一年生ー冬から春ー
彼女に一目惚れしてから早くも一年が過ぎようとしていた。
この一年で直接的に行動することは僕には出来ず、彼女を見ることは一週間に一回あるかないかだったが、それでも1日1日、一秒刻まれる毎に僕の頭に彼女が刻まれていったのは事実だった…。そんなに好きなのになにも行動出来ずに過ぎ去っていく時間は僕にはとって、ある意味幸せでもあったし辛くもあった。
「このまま忘れてくれれば…」
などと常に念頭に置いて冷めた目で彼女を見るようにしても、僕の目に映る彼女はなぜか可愛く、周りの女子より輝いて見えた。僕は恋をすると盲目になってしまうのか、お世辞にも美人とも可愛いいとも言えない彼女でさえとても魅力的だった。
忘れたいと思ってみても忘れられないのならむしろ嫌な部分を見つけて見限るつもりだった。僕は熱しやすく冷めやすい人間だということを理解していたので、友達から情報を経て悪口や、彼女のよくない性格を知ったりと、事は順調に進んだようだった。
いつからなのだろう…
僕が相手の醜い部分などをひっくるめて好きになることが出来たのは。
なによりも恋愛に向かないと思っていた自分の理想主義的恋愛観念から外れた恋愛は初めてだった。
冷めるつもりで知った彼女のコト、こんなにも僕を縛るとは思わなかった。
友達から情報をもらうのには代価がいるのは当たり前で、友達は僕が彼女のことを好いているのを知った。友達は僕に彼女の名前は藤崎明恵だということを皮切りに、中学の出身とか彼氏がいないとか余計なことに偶然見てしまった下着の色まで教えてくれた。僕はとりあえず殴って、二人で笑った。
日々積もる気持ちと距離感、そね二つに挟まれて僕は幸せだった。誰も傷つかなくていい恋愛、僕の理想の恋愛のはずだった。
はずなのに、積もる気持ちはやがて僕を蝕み、気付けば一番犠牲になっていたのは僕だったことに気付いた。
忘れたいのに忘れられない。嫌いになりたいのに嫌いになれない。伝えたくないのに、伝えたい。
一年生が終わる頃には矛盾の塊となって幸せな恋愛は徐々に苦痛になっていった……
こうして僕の高校一年生は矛盾だけを残して過ぎ去っていった…。
高校二年生ー初日ー
玄関ホールの四組のメンバーを記した名簿に、僕の名前
「伊藤 圭」
と下の方に彼女の名前
「藤崎明恵」
があった…
回想が長くなりましたが、次回の話からだいぶ普通の会話とか出てくるので、堅っくるしい〜と思われた方もご期待ください。あ、あとご一読いただいたらぜひ感想ください!待ってます。批判とかでも大丈夫です。