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第十章 裁かれる者たち

 捜査は収束した。


 山本 雄一郎は、殺人罪で逮捕された。


 深見 修は、死体遺棄ないし保護責任者遺棄の疑いで任意同行を求められ、その後、法廷の判断を待つことになった。


 矢ヶ部の行動は結局、偶然の一致だった。彼女は山路の死を知らず、ただ心配して確認に来た。


 神野は無実だったが、薬品管理の問題を問われ、病院内での調査を受けることになった。




 美佐男は、事件の翌月、東京のある喫茶店で森岡 里恵と向き合った。


「山本さんが……」と森岡は言った。「あの穏やかな人が……」


「人間の憎しみは、見た目ではわからない」と美佐男は言った。


「三十年間、抱えていたんですね」


「そうだ」


 森岡はコーヒーカップを両手で包んだ。


「山路さんは、確かに問題のある人だった。でも……」


「殺されるべき人間はいない」と美佐男は言った。「それだけは変わらない」


 森岡は頷いた。


 窓の外では、師走の東京が騒がしく動いていた。


 美佐男は立ち上がり、コートを羽織った。


 捜査一課に戻る仕事が、今日も待っていた。




 神保 美佐男は、エレベーターのボタンを押しながら、ぼんやりと考えた。


 三十年前の株の話。その恨みが、三十年後に人を殺した。


 憎しみは時効にならない。


 ドアが開き、美佐男は乗り込んだ。


 扉が閉まる直前、彼は思った。


 俺たちは、閉じた輪の中にいたのかもしれない。大学時代から続く、見えない鎖の輪の中に。


 そしてその輪は、今夜、ひとつの死によって断ち切られた。


 しかし、それで本当に終わったのだろうか——。







登場人物一覧


神保 美佐男(52歳):警視庁捜査一課警部補。主人公。

山路 洋介(54歳):不動産会社経営。被害者。

佐藤 邦彦(51歳):大手商社部長。

神野 克巳(53歳):総合病院副院長。医師。

元山 達雄(50歳):フリーランスITエンジニア。

山本 雄一郎(52歳):地方銀行支店長。犯人。

深見 修(51歳):小説家。密室の仕掛け人。

森岡 里恵(53歳):公立高校教頭。

矢ヶ部 奈津子(50歳):証券会社ファンドマネージャー。


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