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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第4話 それで君の名は?

 【ガヤガヤガヤガヤ】


 船内の食堂は、学校の食堂と似ていた。

 入口からすでに美味しそうな匂いが充満していて、どんな料理が提供されているのかもわからなくても食欲を刺激してくる不思議空間だ。

 ここは世界が違っても同じらしい。

 人の会話もそこらかしこにあって、賑やかで雰囲気がいいんだ。

 何だか懐かしい気分にさせてくれる。

 今日も学校に通うはずだったんだけどな。

 なんて思いながら、俺は食堂の列に並んだ。


 「お兄ちゃん。あんたは何食べるの」

 「Aでお願いします」

 「はいよ! じゃあ、こっちね。A定食だよ。はいどうぞ!」


 気前のいい食堂のおばちゃんが、俺の前の男性に食事を渡した。あれも美味しそうだ。焼き魚かな? 

 宇宙にも魚ってあるんだな。ああ。そうか。冷凍してあるのか。

 とどうでもいい疑問を自分で解決した。


 「じゃあ、お次のお兄ちゃんは」


 おばちゃんは、注文を受ける際に、相手の顔を見ない。

 手を動かすことに集中するスタイルらしく、しかもその手際が良いタイプの人だ。

 俺の顔から下の制服の方を見てるから、このままA班のつもりでいこう。

 何食わぬ顔で、ここで飯を食おう!

 

 「オススメってありますか?」

 

 シンプルに聞いてみた。

 こう言う場所で、美味しいものを求める際は、おばちゃんが一番知っている。彼女に聞くに限るんだ。

 

 「今日もね。いつもと一緒。日替わり定食AとBの二種類さ。でも少し豪勢なんだよ。何でもね。少佐のおかげで先勝祝いらしいよ」


 あれが最初の会敵だったんだな。じゃあ、今は『偵察行動をしていた』で合ってるな。

 敵に最初に勝った。だから戦勝記念じゃなくて先勝記念か。


 「お兄ちゃん。先勝だけじゃなくてさ。次は戦勝祝いもしたいよね」

 「ええ、そうですね・・・それで、おばちゃん。オススメは?」


 ご飯茶碗を用意してるおばちゃんに、再び質問。

 話題を元に戻した。


 「あ。ごめんね。余計な話をしちまったね。えっと、今日は焼き魚定食か。とんかつ定食だね。どっちも美味しいから、好みで選びな」

 「う~~~ん。じゃあ、とんかつで」

 「はいよ」


 おばちゃんは威勢が良くて助かる。

 さっきの女性には緊張したけど、この人からは俺の母ちゃんの匂いがするから話しやすかった。


 「どう! 美味しそうでしょ。元気いっぱい食べるんだよ。あんた、細いからね。ご飯、サービスだよ」

 「え? ああ、どうも」


 食堂のおばちゃんのご飯の盛り付けは豪快過ぎる。

 異常な量だった。

 茶碗から塔が聳え立っている。

 ご飯の盛り具合は、もはや芸術だろう。

 俺は相撲取りにでもなるのか! 

 ってツッコミも出るくらいの量だ。

 

 俺が持っているトレイの上に、おばちゃんがとんかつ定食を置いた。

 その時に、おばちゃんは俺の顔を見て、ギョッとした。

 おばちゃんの目がガタガタに揺れる。


 「はいよ。全部食べなよ・・って、ええええ・・・しょ、少佐!?」


 おばちゃんの体も硬直し始めた。もしかして、食堂に少佐がいるのってまずいのか。

 しまった。アルトゥールさんはB班だったのか? 

 俺、失敗したか。

 いや。ここは勢いで乗り切っていこう。

 この艦で一番偉いんだと信じて、あたかもA班のつもりでいくわ。


 「ありがとう。おばちゃん!」 

 「え、ど・・・どどど。どういたしまして」


 一時停止しているおばちゃんに挨拶をして、俺は、空いている食卓テーブルを探す。

 なんとか上手い具合に切り抜けたぞ。

 A班として食事にありつけそうだ。


 

 ◇


 食堂は混んでいて、空いてる席が見つからない。ウロウロ歩いてる内に、ど真ん中の席が空いた。四人テーブルの席にトレイを置いて座る。

 そこから、すぐに手を合わせて挨拶を決めた。


 「いただきます!」

 

 俺がやっと見つけた席には、まだ空きがある。でもなぜか、ここに誰も相席してこない。

 食堂は結構密集状態だから、ここで食べようとするのが普通なのに。

 どうやら、俺の席の近くは嫌みたいだ。

 なんだか避けられているような気がする。

 あっちの席なんて、四分の四が埋まっているのにさ。俺の所は四分の一だよ。こっちくればいいのに。

 それにあそこに居る人たちもさ、こっちに座ればいいじゃん。

 あそこの席の人たちが食べ終わるのを待つみたいだ。

 近くで立っているくらいなら、俺の向かいにでも座ればいいのに。

 

 って俺が上司だからか、こっちに来ないのか?

 え。もしかして、アルトゥールさんって、皆にとって近寄りがたい嫌な上司だったのかな。

 どうしよう。この人って人当たりが悪かったのか。

 皆からの信頼がないのかもしれないぞ。パワハラ上司だったか。

 

 まあいいや。俺はまず自分の腹を満たさねば。

 俺は割り箸を割って、カツを持ち上げた。


 「うめえ!? なんでか知らんけど。ソースもあるわ。これって、日本食だよな。和食だよな」

 

 これは衝撃的だった。

 異世界に来て日本料理が食べられるなんて思わない。青天の霹靂すぎて、今の俺は何兆分の一の奇跡に出会っているだろう。

 これだけは神に感謝しておこう。


 「おお。漬物もあるわ。すげえ。キャベツも、とんかつも。完璧だ。日本の料理そのものだ・・・しかも、めっちゃうめえぞ。おいおいおいおい。こんな料理。ただで食えるって幸せじゃね」


 俺の箸が止まるわけがない。

 一度も休まずにおかずとご飯を行ったり来たりする。

 だって、箸でも切れそうなくらいに柔らかいとんかつ。どうやって、これを切ったんだってくらいに細い千切りのキャベツ。それと日本の心のお米とお味噌汁だぞ。

 これが不味いわけがない。

 美味すぎる料理だ。止められねえ。おばちゃんがすげえよ。

 どの世界線でも最強はおばちゃんなのだと証明された。


 

 食事が完璧だと、心の中が感動で一杯となっていた所。

 俺に、緊急事態が発生した。

 それは・・・。


 「あれ少佐。こちら、初めてじゃないですか。食堂でご飯を食べるなんて、今までありましたっけ?」


 ご飯をかきこんでいる時に話しかけられたので、俺はテーブルにご飯を噴火させてしまう。


 「ぶはあああああ」


 ああ。もったいない。飛び散ったご飯たちよ。すまない。

 お米を作ってくれた百姓の方々、重ねて申し訳ない。

 

 「ああ。ああ。もったいないですよ。少佐。何やってるんですか。食べ物を粗末にしてはいけませんよ。ほらほら」


 超絶美人が、布巾を持ってきた。俺が噴出した物を全て処理している。

 衝撃が凄すぎた俺は、その行動に対する反応が遅れていた。

 彼女がテーブルをだいぶ拭いてくれた後。


 「ごほごほごほ・・・す・・・すまない。むせてしまった」


 これなら誤魔化せるはずだと、なんとなく少佐っぽい言い方で話した。情けない姿だけど・・・。


 「大丈夫ですか。ほら、ほっぺにもご飯を食べさせてますよ。少佐」


 彼女は俺のほっぺについたご飯粒を取ってくれた。

 クソ美人にそれをやられると、陰キャの俺では心がおかしくなる。体の芯にまで響く。凄い技だ。男をメロメロの骨抜きにする。魔性の攻撃だろ。もはやこれは誘惑に近いだろ!

 とんでもないサキュバスだったんだよ。この人!!

 実は俺、ファンタジーの世界に来ていたんだ!?

 って思いたいくらい、夢でもいいから良い思いがしたい。


 効果抜群攻撃によって、俺の頭はショート寸前に・・・なっている場合じゃない。

 何とかして会話に持ち込まないと、少佐らしくいかないと駄目だ。


 「いや、すまない。今朝ね・・・頭を強く打ってしまったようでね。所々で記憶がないんだよ。はははは」


 そんな奴いるか! それに誰が信じるんだ。この言い訳。

 口に出してから後悔した。


 「え!? 少佐。それは大変です。今すぐ医務室にいきましょう。診てもらいましょう」


 し、信じたぁ!? 

 純粋だよこの子。顔も綺麗なのに、心も綺麗だよ。

 どうしよう。この後の展開!?

 嘘ついているから、心苦しい。


 「いやいや。それには及ばない。あ、そうだ。ところで、君。名前なんだっけ?」

 「え!? それすらもお忘れになられて・・・少佐。まずい状況じゃ・・・」

 「いや。大丈夫だ。君の名前は?」

 「え。はい。私はカタリナですよ。少佐、本当に大丈夫ですか!?」


 とにかく強引に聞き出した。

 もうこの人さ。強引な言い訳でも信じてくれそうな人だから、ここは押し切ろう。


 「ああ、大丈夫だ。まさかだよ。さすがに君の名前までは忘れない。君がカタリナ君だってことくらいはね。夜に人が眠るくらいに当然に知ってるんだ。いや、朝に人が起きるくらいに知ってるんだよ」

 

 何言ってんだ俺?

 自分でも訳が分かってない。


 「まあ、私が知りたかったのは、姓の方だよ。頭を強く打ってしまって、そこだけ、ぽっかり忘れてしまったのだよ。ハハハハ」


 どんな頭の打ち方だよ。そこだけ記憶を失うって、都合が良すぎだわ。

 なんて自分にツッコミを入れていたが。


 「そうでしたか。私は、カタリナ・アルバ・サンチェスですよ。少佐。本当に大丈夫ですか。お具合がまだ・・・」


 超絶美人は、心配そうな顔をしてくれている。

 この人。めっちゃいい人です。どうしましょう。

 意図的に騙してる感じが続いて心苦しい。でも、ここは彼女のその優しい心を利用して上手く立ち回っていかねばならない。仕方ないんだ。許してくれ。


 「大丈夫だ。カタリナ君。心配しなくてもいいぞ」

 「本当ですか。ご無理をされてるんじゃ。初めての旗艦ですし。初の大型遠征ですし」


 彼女の顔が心配マックスの顔になった。眉毛が下がったのにクソ綺麗。

 女神降臨です。なんとなく、後光が差している気がする。


 「それに少佐はいつもなら中尉と言ってくれるんですけど」

 「ああ。そうだったね。でも今後は、カタリナ君でも慣れてくれ」

 「え。あ・・・はい・・お願いします」


 カタリナさんの顔がポッと赤くなった。


 「ん?」


 何がお願いしますなんだ。役職じゃなくても、名前で呼んでもいいよって事でいいんだよな。

 まあいいや。

 とりあえず、目の前の超絶美人が、カタリナさんという名前なのが分かったぞ。

 これでようやく会話の糸口はゲットした。

 名前さえ分かれば、この人を頼りにすればいいんだ。


 こうして、俺は初の食堂で重要データを集めることが出来たのだ。

 結果は良好。

 美味しい料理も食べられて俺は満足して自室に帰った。


 

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