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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第2話 俺の名は?

 君たちは、アイドルの応援でもしているのかと疑いたくもなるくらいに長い少佐コールが、やっとのことで鳴り止んでくれた後の事。


 静寂にまで落ち着いてくれた部屋の中では、各々がモニターに視線を戻して仕事に戻っていく。

 これは通常業務をしているのだろう。黙り始めたんだから、仕事でいいんだ。


 俺はこの時がチャンスだと言わんばかりに、一人で黙々と頭をフル回転させた。

 緊急事態なんだ。

 急いで情報を得ないと、それに皆の視線がないのなら、俺はいつも通りになれる。

 緊張しなくて済む。



 それでまずだ・・・。


 『俺って、誰になったの!?』


 この感想に尽きる。俺は坂巻新じゃない気がする。

 頭の基礎は新的な思考をしているけど、体が新じゃないんだわ。

 すげえ動きやすいんだよ。今ならチー牛おじさんに楽勝で勝てそうな気がする。


 『それと、少佐だけ呼ばれてるけど。この人の名前は? 俺じゃないんだから、いったい誰になってるんだ?』


 これが俺の最初の目標だ。

 転生して最初の目標が、自分の名前を知る。

 なんともまあ小さな目標であろうか。

 でも、これが何よりも重要だ。

 転移ではない事が今までの状況で分かる。

 だから、俺は、転生をしたんだと思う。

 誰かになったって事だ。


 ということは、この人たちと知り合いの形で話が進まないといけない。

 そうだよ。俺はとんでもないスタートで行こうとしているわけよ。

 俺自体がこの人たちと知り合いじゃないのに、俺は皆と知り合いな感じで話さないといけないんだわ。ムズイ。すげえムズイ状況だ。


 あのさ。転生って、普通なら赤ちゃんスタートだよな。

 それか。神様が登場して、神様が今後の説明をするのが通常だと思うんだ。

 そうなるとさ。そのどっちだとしても、名前というものは、必ず教えてもらえるはず。

 親からだろうが、神からだろうがね。

 そこだけは最初に知る事が出来るはずなんだよ。どんなアニメや漫画でも、そこだけは最初に教えてくれるはずなんだよね。


 なのにだ。

 この状況。俺の名がまったくわからん!


 皆、俺の事を呼ぶのに、少佐って呼ぶんだ。

 これじゃあ、どうやって自分の名前を知る?

 この軍服にもネームがないしさ。

 ○○少佐!

 って、誰か俺の事を呼んでよ。

 誰もが、少佐!

 って呼ぶからさ。

 結局、肝心の名前が分からないじゃん!


 こんな転生ってあるの?

 自分の名前を知るために必死になる転生ってあるの?

 神様の設定がおかしくないか!!!

 宇宙に設定したのだって、おかしくないか!!!

 転生先としてSFはね・・・。

 ちょっと苦しいんでNGでお願いします。

 ファンタジーでお願いしますよ。

 チェンジで。神様、頼みます!


 ・・・・・。

 

 『ああ、もう。名前が分からない事だけは、神様が絶対に悪いよ! ここで人間関係失敗しても俺は悪くないからね。だから、こんな所、知ったこっちゃない・・・・って言いたいけど、言えないな。投げやりになっちゃ駄目だ。どうせここで生きるしかないんだ。だったら、どうにもこうにも、この世界の人とうまく付き合わないと。だから、自分の名前を知らないんじゃ、第二の人生も始まりようがない。不便極まりないのよ』

 

 俺。少佐って名前じゃないよね。

 少佐君って名前じゃないよね。

 そんな奴いたら可哀想だよ。そんなんいたら、この人の親、何考えてんだよって話になるよね。

 

 ねえ。誰か。俺の名前を呼んでよ。

 少佐だけじゃなくてさ。

 自分の名前を知らないで、誰かと会話するってすげえムズイから。

 それに誰も名前を呼んでもらえない状況もすげえムズイから。

 あのさ。今から戦争が起こるらしいんだけどさ。

 それよりもさ。

 名前を知るという難題があるんですけども。

 もう戦争よりもさ。

 それが緊急事態になってる事が、俺はすげえムカつくんですけども!

 神様、あなたの不手際じゃないの。

 俺、かなり腹立ってますよ。

 

 「あの少佐。さっきから何をブツブツ独り言を? 珍しいですよね。少佐の独り言」

 「だから。俺ってさ・・・え!?」


 超絶美人が俺の肩を叩いてから、俺の顔を覗き込んできた。

 俺の目に美人の顔だけが映る。

 綺麗に整っているその顔は、黄金比率だろう。目、鼻、唇。その他諸々。

 もうモデルを越えて女神と言っても過言じゃない。ブロンドの髪もさらさらを通り越してスルスルだよ。触ったらもうスルスルに通り抜けて、もはや透明に近いだろ。

 一本一本の髪の毛が繊細に靡いているもん。髪の毛じゃないみたいだ。天女でしょ。


 俺の前世の近くにこんな人はいなかった。姉ちゃんは庶民的な人だし、母ちゃんは天然パーマの肝っ玉母さんだし、こんな美人はある意味で化け物だ。怪物級の美しさの人は、出来れば遠くで眺めるだけにしておきたい。


 「どうしました? 少佐?」

 「い、いえ。なんでもありませんので、心配せずとも」


 俺はサッと目を逸らした。


 「いえいえ。おかしいです。今のもいつもの少佐じゃないです。やっぱりお熱でもありませんか?」


 超絶美人さんは、俺に熱があるんじゃないかと疑い、その綺麗な手を俺のおでこに伸ばそうとした。

 母ちゃんと姉ちゃん以外に触られたことのない陰キャの俺は、このままだと単純にこの人に惚れてしまうのでサッと躱す。


 駄目だ。美人が俺を好きになるはずがない・・・。

 ってそういや俺の今の顔。

 どうなってるんだ。亮みたいなイケメンになってたりするのかな?


 「あれ? 少佐。お熱を測るだけですよ」

 「いえ。結構です・・・ちょっと離れてもらってもいいですか。顔が・・・距離が近いので・・・考え事したいので離れてください」

 「え。あ、はい。申し訳ありませんでした。下がります」


 今の会話が命令みたいになったらしく、超絶美人さんは敬礼して数歩後ろに下がった。

 美人過ぎる彼女を見たまま俺が物事を考えるのは、絶対に出来ないので、彼女に背を向けて考え始めた。




 俺は本当に誰なんだ。

 これを人から聞きだすには、高度な会話テクがないといけないぞ。

 さっきの会話だって、彼女は少佐って呼ぶ以外に俺を呼ばなかった。

 彼女にとっての俺は、何が何でも少佐なんだろう。

 ○○少佐さえ言ってくれないんだ。○○さんなんて、絶対に言わないだろう。

 


 うん。だから難しい。

 ここでいきなりさ。

 『ちょっと君、俺の名前を言ってくれない』

 なんて彼女に聞けるわけないわ。

 もしもだよ。こんな風に人に話を聞いたら、絶対に頭おかしい認定してくるよな。

 彼女の中では超変人として、一生その脳に刻まれることになる。

 それに俺の直属の部下っぽいから、今後話しにくくなるのは確定だよね。

 だから嫌だな。わざと馬鹿になって、彼女に聞くのもさ。


 俺がこんなに急いでいるのは、自分の名前さえ知っていれば、俺の情報を調べあげるのだって簡単になるからなんだよね。ここにはパソコンみたいな機械があるし、宇宙船が出来ているんだ。

 文明は、地球よりも上。確実に上だ!

 だから、俺の情報なんてさ。

 名前で検索すれば、トントントンと見つかるはずだよ。

 そこは現代日本よりも、性能がいいはずだ。


 よし。俺、頑張るぞ。名前、探してみる!

 

 と顔を叩いたところで、俺の目と鼻の先に、超絶美人さんが現れた。

 

 「え、な!? なに!?」


 その行動、意味不明だと一瞬脳が、機能停止した。

 なんとこの人。

 手で熱を測るんじゃなくて、おでことおでこをくっつけてきたのだ。


 「どれどれ。少佐・・・・お、お熱がどんどん上がってますよ。あれ・・・少佐。少佐ああああああ!!」

 「はらほれぇええええ」


 俺は目を回した。

 女性に触れたことのない俺には、刺激が強すぎる。

 おでことおでこでくっついて、熱を測るなんて、そんな高度な技から、自分の身も心も守る術を知らなかった。


 俺クラスのか弱い心臓では、ドキドキ触れ合いタイムに耐えられない。

 心臓が持ちません。あと二秒彼女の顔が俺の顔から離れなかったら、俺は二度目の死を遂げていました。


 俺はね。女性の柔らかい手の感触に対する抗体だってないの。触れられる免疫がないの。

 姉貴が触ってきたら大丈夫だけど、女性が触ってきたら風邪も引いちゃうわけ。

 だって彼女なし十七年なんだもん。仕方ないじゃん!

 美人に触られたら死んじゃうんだってば。

 なんだったら、これで風邪・・・どころかインフルエンザまでいくね。間違いない。


 『バタン』


 倒れた俺の顔は、たぶん情けない顔であったと思う・・・。

 


 ◇


 俺はまた目が覚めた。

 悲しい事に女の人におでことおでこをくっつけてもらった。

 ご褒美タイムの発生で、熱も発生したのだ。

 

 すみません。

 恥ずかしいので誰にも言わないで。


 誰に宣言するわけでもないけども、姉貴にバレたらどんだけ笑われるか。

 なんて言ってももう遅い。

 あそこには何人も人がいたからさ。女の子に触れられて目を回した情けない少佐との噂が、次期にこの宇宙船内で広まるだろう。


 恥っ!


 まあ。もういいや。色々悩んでも仕方ない。もう過ぎたことだし、もう考えても無駄だから。いいや。切り替えよう。

 それにしても、あの人たちの少佐像ってどんなものなのだろうか。

 この先、俺がこのままの中身の坂巻新の性格でいくわけにもいかないだろうし、なんとしてでもこの人の名前を知って、自分を調べてその人っぽい感じでこの世界で生きていかないと駄目だろうからさ。なんとかして名前を・・・。



 ってかさ。普通の転生は、この人のなんらかの情報を最低限は知ってるよね。

 なんで俺の転生は名前すら知らない転生なんだよ。

 せめて赤ちゃんスタートにしてくんない。

 なんでいきなり成人スタートで、しかもだよ。少佐だよ。一兵卒でもないよ。

 下から這い上がってもないのに、凄い経歴だよな。

 あれ?

 少佐って凄い偉いよね。少佐って上から数えた方が早いよね?

 あれ、どうなんだろう。たしかそうだよね。結構偉いよな。 

 この艦の艦長ってさっきの女性は言ってたもんね。船一隻の管理を任されているだけでもかなり偉いはずだ。



 なんて、軍の階級にはあまり詳しくない俺は、ベッドに横になっていたらしい。目線の先が何もない白の天井だった。

 頭の後ろの感触にも枕があったから、仰向けに寝かしてくれたんだと思った。このまま寝ころんだまま考えるのもなんだから、起き上がって周りを確認した。


 「自分の部屋か? 医務室には見えないぞ」


 誰もいない小さめの部屋。

 ベッドと机と小さなクローゼット以外に何もない。

 これだったら、医務室ではないのが確定だ。

 医務室だったら、ベッドが複数あって仕切りとかがあるだろうから、ここは自室で休ませてくれたと考えてもいいだろう。

 熱くらいで倒れたから、大袈裟にしないでくれたとみていい。

 

 「これはチャンスだ。俺の部屋に来れただけでも儲けものだ。よし、名前を探すぞ」


 何もない10畳くらいの部屋で俺は自分の名を探した。自分の部屋だったら、どこかに自分の名前くらいあるはず。

 

 「あれ? そういえば・・・・俺って文字読めるの?」

 

 当然の疑問が湧いている中で、俺はパソコンのようなものを発見した。

 

 「ボタンボタン。裏にあった。ほい!」


 反応なし!


 「なんでじゃ。なんで反応しないんだ」

 

 コンセントがついてないのかと確認してみると、ちゃんとケーブルがついていた。

 でも、画面に何も映らない。

 真っ黒なままだった。


 「あれ? 高度な文明なはずなのに、PCを使えない? え、じゃあ。こっちは?」


 隣の電気スタンドのボタンを押してみた。


 『パチッ』


 電気スタンドは点灯する。目がチカチカするくらいの強烈な白光を出せるくらいに電気は通っているのだ。


 「電気、通ってんじゃん。じゃあ、このPCだけが駄目? え、まさかの故障? 運悪すぎだろ。俺さぁ!?」


 何回か試しで電源のボタンを入れても電源が入らなかった。

 このままできない事をやろうとしても時間の無駄なので、部屋の至る所を調べ上げた。

 その結果。

 わかった事はたったの一つ。そう。彼は!


 「ミニマリストだ。この部屋、何にもないよ!!! どうする。あるのはパンツ三枚! シャツ三枚。軍服三着。それにペンとノートしかねえ!!! やべえ人だぞ。なんにも・・・物がねえの。今までどうやって生活してたんだ?」


 全ての行動が無駄足に終わり。

 どっと疲れが出た俺は、机の前にある椅子に座った。


 「え? あ、あった・・これだ」


 机の上にネームプレートがあった。

 

 【アルトゥール・ライリューゲ・ドラガン】


 「これが俺の名前だ!?」

 

 転生して、自分が考えた目標を初達成した瞬間だった。

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