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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第22話 デルタアングル宙域戦裏 優秀な配下たち

 会議が終わった直後の移動の出来事。


 「スタン。奴は?」

 「博士ですか」


 聞いてきた人物の名を言わないのに、スタンには分かった。

 以心伝心はここでも役に立つ。


 「うむ」

 

 エデルが、満足そうな顔で頷いた。


 「博士は研究室にいます。例の物は完成させたと言ってました」

 「変人め。だったら、なぜこちらに来ない? 私に会いに来て、報告しろと言っていただろうに」

 「最後まで実験をしたいと、博士は細かい部分の調整をしたいようですよ」

 「そんな事は部下にでもやらせるべきだ」


 大元が出来たのなら会いに来い。

 エデルの考えの方が普通であるのは珍しい。


 「仕方あるまい。奴に会いに行く。スタン。連絡を入れろ」

 「はい」


 二人は、研究室へと向かった。



 ◇


 「アズマ!」

 

 研究室に入るや否やエデルは怒り出す。

 名前を呼ぶ声に力強さがあった。


 「ん? おお、これはこれは、赤き猛獣殿」

 

 相手が怒っているのも気にしない。

 淡々とした白衣の男性の名は、『ナルビット・アズマ』

 帝国で閑職にある研究室にいた人物だ。

 実力を認めたエデルによって、彼専属の研究員となった。


 「なぜ、私に報告せん」

 「しましたぞ」

 

 『文書で!』が抜けている。

 博士は、謎の液体をビンに詰めていた。

 

 「していない。会いに来なければしていないと同じだ」

 「それは・・・面倒でありますな」


 間がある事で、更に面倒そうに思う。


 「はぁ」


 さすがの癇癪持ちのエデルでも、こうも正直に言われたら、怒りようがない。

 呆れてため息をついた。


 「それで、アズマ。例のが完成したのか」

 「ええ。そうですぞ」


 ここで博士は、初めてエデルの顔を見た。

 今まで振り向かずに話していたのである。


 「これですぞ。これが、散布されれば、音声を傍受できるのですぞ」

 「ん? その液体か?」

 「はい。これは通信網をキャッチする力を持っていて、映像までは無理ですが、音声と文字ならば、実験は成功してるのですな。うんうん」


 独り言みたいに話して、最後に頷く。

 博士は変わっているのである。


 「文字もか」


 最初の情報では音声だけと聞いていたエデルは、思った以上の成果を得ていると満足した。


 「はい。ただ文字の場合は、正確性に欠けていてですな。受信機の方の情報で、文字化けしてしまいますぞ」

 「じゃあ、使えんではないか」

 「ええ。でも、音声は確実性がありますぞ」

 「そうか。アズマ。今、使えるか?」

 「今? ここでですか?」

 「いいや、次の戦だ」

 「ほう。戦ですか」


 戦いに使用する為と聞いていたから、それほど驚きはない。

 アズマは変わらず淡々としていた。


 「今度、デルタアングル宙域から敵が来る。その際に使用したい。出来るか」

 「・・・・どのような形で? 規模は?」

 

 最初から出来ないとは言わない。

 それがエデルが、博士を気に入っている部分である。


 「そうだな。一気に全体を聞くというのは、技術的よりも、こちら側に無理が生じるだろう」


 その液体を散布して、全体の音声を傍受しようにも、受け手側のこちらが大量の音声の波に、情報を整理できなくなるだろう。

 そこで。


 「敵の片翼だな。おそらく敵は、野戦となれば通常の仕掛けをしてくるだろうからな。どちらかの位置に配置しよう」

 「となると、規模は?」

 「んんん。五千か。およそだな」

 「五千・・・技術的には出来るでしょうな」

 「出来るか」


 エデルの声が明るい。

 これで戦争に勝ちやすいと思ったらしい。


 「ええ。ただ閣下。その規模だと発動条件がありますな」

 「どんなのだ」

 「事前設置ですぞ。これをいきなり散布しても、発動が難しく、音声情報を精査できない可能性がありますぞ」

 「なるほど。どれくらいの期間が必要だ」

 「戦争の一週間から三日前がいいです。これくらいの間に、こちらの液体が細かくばら撒かれて、あとはこの中にあるナノマシンが、艦に張り付いて、情報を得ますぞ」

 「ナノマシン?」

 「ええ。液体で保護されたマシンが艦隊にぶつかって弾けてから、張り付くのです。そこで情報を得る。仕事の流れとしては、これだけですぞ。あ、でもこれは大変便利なのですが、敵への直接攻撃は不可能となっていますぞ。攻撃まで出来たら、完璧な兵器ですがね。これはそんな代物じゃないですな」


 兵器とは言えないのは、直接攻撃が不可だから。

 軍研究者としては失格の部類だろうが、エデルにとっては最強の兵器だと思っている。

 戦場で敵の動向を見極めること以外に、素晴らしいことはないからだ。

 

 「十分だ。三日前か・・・そうだアズマ。その実験は宇宙で、実際の艦で成功しているのか?」

 「いいえ。やったことがありませんな。惑星内の実験結果で言ってますぞ」

 「なに!? それを早く言え。急ぎ実験をしよう。宇宙内でも可能かどうか。やるしかあるまい」

 「いいでしょう。大将殿の艦に乗せてくれればすぐに出来ますぞ。ああ。それとあと二つ。艦を用意してください」


 艦を二つ用意して、互いの会話を盗聴すれば、実験は完了する。

 その意味で、艦隊三つを用意せよと言っている。


 「わかった。スタン。すぐに実験に出る。宇宙に急ぐぞ」

 「はっ。では、博士。こちらにどうぞ」

 「うん。スタン殿、助かる」


 さっさとどこかへ行ってしまったエデルに対して、スタンは博士を行き先に導く。

 思い立ったが吉日のエデルには、細やかな気配りの男が合う。


 ◇


 エデルにとっての赤は、イメージカラーでもあり、肉体に宿っている色でもある。

 髪。目。想い。

 真っ赤に燃え滾る炎のように、彼にとっての赤は特別。

 エデルの内面にも外見にも、赤は繋がっている。

 その中で、彼の旗艦エイリーンも真っ赤に染め上げられている。

 敵に狙われやすくなるが、誰よりも目立つ艦でもよいとするエデルは、自分に絶対の自信があるからこの色を旗艦に設定できたのだ。


 エイリーンが宇宙へ飛び立つ寸前。


 「閣下」

 「ん?」


 これから飛び立つ。その瞬間にスタンが口を挟むのが珍しい。エデルは耳を傾けた。


 「連絡が来ました」

 「誰だ」

 「ニルシュ殿です」

 「なに、奴はまだ」

 

 そう彼は、第五銀河のヴァルトラン地域の一部の鎮圧の作業に出ていたはず。

 だからこちらに来るには早すぎて、戸惑いがエデルにあった。


 「映像、出しますか」

 「いいぞ。スタン、出せ」


 メインモニターに彼の全身が映った。

 ニコッとした笑顔で挨拶をする。


 「閣下。任務完了です。あっちの鎮圧してきましたよ」

 「ニルシュ! 仕事を終えたのか。鎮圧はさすがだ。だが、その後は」


 そう全てが早すぎるのだ。

 通常は鎮圧から、治安の安定までが仕事だろうに。


 「なんかよく分からん奴に任せましたよ。あれって貴族ですかね? 名前忘れちゃいました。俺の艦が出した自動報告書になら載ってますかね?」


 ニルシュは反乱鎮圧後に、治安維持はこちらがやると言われたらしい。


 「・・・ああ。そうだな。そいつは、おそらく手柄を貰う気だな」


 大体の予想が着く。

 貴族共の浅はかな考え。

 手柄の横取りだ。


 「ええ。俺もそう思います。でも俺、そこに興味ないんで、治安の仕事。引き渡しちゃいましたよ。あれってもしかして閣下の査定とかで迷惑になります?」

 「ふっ・・・いい。その程度、私の迷惑になどならん。それにニルシュの評価は私がする。他の者にはさせん」

 「ならいいや。閣下の評価が貰えるなら、別に帝国のはいいや」


 忠実な部下な上に、超優秀な配下。

 それが、ニルシュ・バーンネイド。

 お気楽そうな感じの話し方をするが、戦う時はその性格と反して冷静型である。

 得意な戦法は焦らし。

 相手の攻撃をのらりくらりと躱し続けて、相手の弱点を見抜くのが上手く、こちらの長所を活かすのが上手いために持久戦が最も得意だ。


 「そうだ。ちょうどいい。ニルシュ。実験に付き合うか。今はまだ宇宙にいるのか」

 「ええ。首都にもうすぐ到着しますね・・・それに実験ってなんですか?」

 「今度の戦いで使用する秘密兵器だ」

 「へぇ・・面白そうですね」


 ニヤリと笑ったニルシュは、実験に付き合うことなった。



 ◇


 「アズマ。どう使う?」

 「砲弾のようにして放出するか。爆発させて散布でもいいですぞ」

 「爆発だと?」

 「ええ。例えば、戦闘艦を無人にして破壊。それで勝手に散布ですな」

 「・・・はぁ。大規模だな」

 「ええ。花火の打ち上げと一緒ですな」

 「・・・そうだな」


 博士の考えがぶっとんでいるために、さすがのエデルでも呆れていた。


 「それは後で考えるとして、今は実験をしよう。とりあえず、二機の周りに出せばいいか」

 「そうですな」


 ニルシュの艦と、もう一つ用意した艦に、ビンの中身を散布。

 実験を開始した。

 秘密回線を使用してもらい、その音声を拾う実験だ。

 

 「あ。あ・・ああ! あ! あの、これって聞こえるんですかね。これ聞こえたら、歴史が変わる感じしますね」


 回線を使用せずに、ニルシュの声が聞こえた。

 相手との会話でも、軽い返事のままである。


 傍受が成功しているエデルは、博士を見た。


 「これは成功。そうだな」

 「ええ。そうみたいですな」


 無事に成功していても、表情変えずに博士は頷く。


 「これでその通信に割って入れれば、儂としては大成功なのですがね」


 実はこの研究は、通信傍受ではなく、通信妨害の研究だった。

 相手の通信を乱すことが目的だった。

 偽の文書や、音声など。

 敵に偽計を仕掛けるのが最終目標だったが、今はその途中段階の音声傍受が完成しただけなのだ。

 だから、博士としては満足いく結果ではないのである。


 「いい。それでも十分だ。アズマ。よくやった」

 「ええ。でもまだまだ研究したいですな。いいですかね?」

 「もちろんだ。好きなようにやれ。お前は予算を考えなくていい。スタンがなんとかする」 

 「ありがたいですぞ。お金だけが心配でしたからな」


 厄介事は全部スタンがやる。

 スタンが常に大変である事は、説明しなくても誰もが予想出来る事だった。


 「よし。戦争は勝ちが決まったな。後は準備の策を練らねばならんな。スタン。ここからは準備だ。いいな」

 「はっ!」


 全てを成功に導くために、エデルは部下たちと共に、デルタアングル戦に向けて、罠を仕掛けたのである。

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