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天星の宇宙 銀河の三英傑の一人は別の銀河の高校生  作者: 咲良喜玖
第一章 銀河の三英傑の邂逅

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第21話 デルタアングル宙域戦裏 会議

 「エデル。会議に遅れるとはどういうことだ」

 

 重要会議には皇帝がいる事が決まっている。

 しかし現在の皇帝は病気療養中の為に、何も出来なくとも、幼き皇太子が代理としてその座に座るのが通例となるのだが、そこも欠席となっている。

 どうやら皇后が欠席を命じたらしく、席には誰も座らない形となっていたのだ。


 そして、そのぽっかり空いた席の隣に立っている人物が、この会議の主催となる。

 宰相アルビオン。

 彼が、エデルの入室直後に、咎める言い方で圧力をかけた。

 だが、怒られているエデルは物怖じせず答える。


 「申し訳ありません。しかし、予定された時間は、14時では?」


 現在の時刻は13時59分。

 ギリギリで遅刻ではない。

 怒られるいわれはない。

 エデルは、会議が始まっているとも思っていない。


 「違う。13時45分からだ」


 話に聞いていた時間とは微妙に違う。

 それに、なんとまあ区切りの悪い時間だ。

 45分で開始など今まで聞いたことがない。せめて30分だろう。


 「なるほど」


 姑息な嫌がらせか。

 一瞬で沸騰するかのように頭に血がのぼる。

 そこを察したのが、スタンだ。

 エデルの背後から、こそっと話しかける。


 「閣下。私が切り抜けましょうか」

 

 若干の時間を置いて、エデルがスタンに小声で答える。


 「・・・いや、いい。そこまでの赤ん坊でもない。お守りをしてもらうわけにはいかん」


 親友に何でも頼りっぱなしもいけない。

 エデルは友のおかげで冷静さを取り戻した。


 「わかりました。でしゃばりません」

 「うむ。スタンよ」

 「はい」

 「毎度すまない。感謝する」

 「いいえ。当然の進言です」

 「ふっ」


 私を制御する仕事など、スタン以外は出来ないだろう。

 自分自身の癇癪的な部分を静かに収める事が出来ない。 

 そこを自分では出来ない事を恥じている。

 それがエデルであり。

 そして、親友の存在の有難さが身に染みているのもまたエデルなのだ。

 悪い面と良い面が表裏一体となっている男だ。


 「宰相殿。私の方が、時間を間違えてしまったようで、申し訳ないです。深く詫びますので。皇帝陛下に謝罪しようと思います・・・ですが、陛下は?」


 皇帝陛下がいれば平に謝ると答えた。

 つまり、お前にはそのように謝らないと言っているのと同じだった。

 今のエデルの言動は、ささやかな抵抗でもある。


 「今はおられない。今日はお休みしてもらっているのだ」


 エデルの隠し宣言に気付いている宰相は苦い顔をした。


 「そうでしたか。では、あとで、陛下に直接謝りたいので、お体の調子が良い時に訪問します。なので、ここでは許して頂けると嬉しいです・・・・宰相殿」

 

 最後の宰相殿の言葉にだけ、怒気が籠っていた。

 睨みも凄まじく、相手を脅す気満々だった。


 「・・ん。わ、わかった。この話はここで。これまでにしよう」

 

 エデルの迫力に負けた宰相アルビオンは、目を背けて答えた。


 「で、では会議を行う。整列しろ」


 玉座の間を中心に置いて、左右に別れるようにして、各重要人物たちが並ぶ。

 縦に二列で、エデルは右の列の四番目に並んだ。スタンはその背後にいる。


 神聖フロリアン帝国の階級は皇帝が頂点に君臨。

 そこから、内政で宰相と軍務で元帥が次点となっている。

 だが、帝国の元帥は、ポストとしては存在しているのだが、就任は無いと決定している。

 それは軍の最終決定権は、皇帝に帰属した方がいいとの考えからだ。

 それも五十年前から、誰も何も言わずに明記もせずに、勝手に決まった事だった。

 もはや慣習法に近い存在のルールとなった。


 この意図は、裏切り者が現れないようにするためと言われている。

 元帥の権限が強すぎて、皇帝がお飾りになってしまえば、反旗を翻す恐れが出るからとも言われている。

 

 なので、帝国は元帥の次の役職を作ったのだ。

 それが上級大将である。

 大将を上回る力を得られる役職を作り、それも最低三名選ぶことで、軍事権の分散。バランスを整えたのだ。


 そして此度の政権での上級大将は四名。

 ディヴァーナ。ルスタフ。コリーズ。そしてエデルだ。

 

 四名全てが貴族出身なので、大将の器になれるのは貴族が最低限条件である事が分かる。

 しかも、その貴族の中でもランクがあり、それぞれが名家と呼ばれる家の出身である。

 だが、この中で名家じゃない人物がいる。

 それが、エデルだ。

 彼だけが、名じゃなく。姓じゃなく。実力で上級大将を勝ち取った。


 そんな階級社会の中で、エデルが上級大将になれたのは、二年前の一大事件がきっかけだ。

 皇帝の妾。皇太子の母。

 エヴァ・ノーミスを、悪辣な賊たちから救出した事により、三階級特進の大出世を果たした。

 その事がきっかけで、皇帝から信任を得たのはよかったのだが、同じくして、この事がきっかけで、皆から疎まれて、妬まれることにもなるのが厄介となる。さきほどの小さな嫌がらせも彼の飛び級出世が原因だ。広大な銀河の三大国の一国。帝国でも醜い争いがあるらしい。

 

 皇后。宰相。他の上級大将。

 これらと折り合いが悪いのが、エデルだ。

 敵の地位が高い上にその数も多い。彼の苦しい状況は続いている。

 しかし、そんな敵だらけのエデルを擁護してくれる人物もいる。 

 皇帝と王太后である。

 二人は、幼き皇太子の母を守ってくれた事を、今でも感謝しているのだ。

 味方が少ないエデルだが、この二人は心強い味方でもある。


 だがしかし、エデルという男は味方になってくれる者も、敵になる者も気にしない。

 彼のそばにはスタンがいればいいからだ。

 エデルは、大親友と一部の人間以外は、有象無象の雑魚ばかりだと決めつけている節があるので、この状態をなんとも思っていない。強気な男でもある。


 「此度、向こうが戦争準備をしているそうだ」


 ざわざわと会場に私語が生まれる。

 初耳の情報だと、エデルとスタン以外は驚いていた。


 「我々も迎撃せねばならん。誰がいくか。規模をどうするか。これらを決めておこうと思う。軍務の話でもあるので、上級大将たちから意見を」


 と言われても。

 いきなり聞かれて答えられるものでもない。

 詳しい事情を知らぬ上級大将たちは、軍務の最高点でもあるが元帥ではない。

 宰相と同格だったら、意見を述べても通じるのだが・・・。


 この考えによって、四人は黙る。


 「意見もないか」


 侮蔑に近い物言いに、カチンと来たのはエデルだ。

 やはり激情家の気質が抑えられない。


 「あっても聞いていただけるのでしょうか。宰相殿の耳に、私どもの意見が入るのでしょうかね?」

 「なんだと?」


 自分に歯向かうのか。自分を馬鹿にするのか。

 宰相の声には、その感情が乗る。


 「むしろ、宰相殿の考えは? それを聞いてみたいですな」

 

 『お前の考えはどんなもんなんだ』

 という意味が含まれている。


 「なんだと」


 『どうせ、こちらの意見を聞かないのなら、いっそお前の案を聞いてやろう』 


 こういう風に聞こえたのが宰相アルビオンで。


 『どうせ、ろくでもない考えで、時間の無駄だろうな』

 

 発言直後にこう思っているのがエデルである。



 挑発の応酬の結果。

 最終的に宰相が意見を出す。


 「デルタアングルを封鎖して、敵が出てきた先で戦う。そして同数を用意する」


 思った以上の普通の策。

 顔の表情を変えないエデルは内心では鼻で笑う。

 

 「宰相殿」


 上級大将ディヴァーナが意見を述べようとする。

 ディヴァーナは最年長の上級大将で寡黙な男である。


 「ディヴァーナ。意見があるのか」

 「はい」

 「いいぞ。聞こう」

 「宙域封鎖をするよりは、惑星を利用した方が宜しいかと」

 「なぜだ」

 「宙域封鎖をする場合。軍の維持費がかかります。何万隻もの艦隊が、デルタアングルに駐屯するような形になります。なので、敵の進軍時期を完璧に見極めないと費用がかかります」


 金が掛かる。

 理由は至ってシンプルで、内政官たちにとってだと凄く納得のいく理由だ。

 それと偵察を連邦にまで伸ばさないといけないのも、大変な作業であると重ねて進言した。


 「そうか。敵を待っている間。あの宙域に無駄に艦隊を並べるだけになるという事か」

 「そうです」


 なぜそれに第一に気付かない。

 お前は宰相じゃないのか? 

 内政を束ねる男じゃないのか。

 

 エデルとスタンの二人は同時に思った。


 「その意見が良さそうだな。今は、金銭面も管理しなければならないからな。惑星決戦にしよう」


 内政面から言わせると、皇帝崩御の可能性があるために、戦争に予算を当てられない。

 新たな皇を選ぶ際にかかる費用も馬鹿にならない上に、新皇帝就任式を大きなものにするためにも、今は大きな出費を避けたいと思っているのが、帝国の内政官たちの本音だ。


 「はい。ですがその場合は、三惑星の長に許可を取った方が宜しいかと。宰相殿が陛下の名代として、動かれた方がいいかと思います」

 「なに? 許可だと?」

 「はい。ここを守るために一緒に戦おうと、決意をもってもらいます」


 最前線となる惑星たちが、帝国の元々の領土ではない。

 だから、一緒に戦うためには、気持ちを同じにしてもらう事が大切だと、ディヴァーナは宰相に説いた。


 「そうか・・・・その場合の艦隊数はどうしたらいい」

 「宰相殿。敵の数は?」

 「現段階だと三万前後だそうだ」

 「なるほど。それは決戦ですな」


 これは数が多い。

 伝えた宰相も、聞かされたディヴァーナも思った。

 今まで万を超えて、連邦と戦ったことがない。

 前例のない数に驚いていた。


 だが、エデルは違う。


 「その数。敵と同数を用意できるのでしょうか。ディヴァーナ殿。宰相殿」


 二人に聞いた。


 「・・・」「ん?」


 ディヴァーナは沈黙。

 宰相は、口を挟まれて不機嫌になった。


 「現在の帝国が、ヴァルトラン地域での賊の行動を抑えている状況で、デルタアングルに艦隊を用意できるのでしょうか。それと首都星もですが、旧フロリアン帝国領域内にも、艦隊を置いておかねばならぬでしょう。皇帝陛下の為に」


 皇帝陛下の為に。

 このエデルの意見には含みがある。

 皇帝陛下とその世継ぎの安全を図るために、防衛の艦隊が、首都星に存在しないといけない。


 実は、現在の帝国は、元ヴァルトラン王国領土内に不安分子を抱えている。

 宇宙海賊や旧王国騎士団たちが、帝国内で暴れているのだ。

 それを注視しながら、敵と戦い。そして、彼らの動向が首都星にまで及んだ場合の防衛まで考えねばならないのが、今の状況なんだぞと、エデルは全体の盤面図で正確な答えを述べた。

 

 「貴様。ではどうしろと。敵の侵略を見過ごせというのか」


 エデルではなく、貴様となったのは、正しい指摘が苦言に聞こえたからだ。

 

 「いいえ。同数もいらないという事を言いたかっただけです」

 「なに!?」

 「こちら側が、用意する数が多すぎます。連邦など雑魚。二万もあれば勝てます」

 「な、なんだと。二万? 貴様。口先だけ威勢良くても、信用しないぞ」


 三万対二万。

 一万の差は人の差であれば、覆す可能性があるが。

 これは艦隊数の数だ。

 ありえない。

 一万の数の艦隊数の違いがあれば、それだけビーム砲の数も違うのだから。


 「私の艦隊を使っても良いと、そちらの了承を頂ければ、連邦に勝ちます。それに、策が嵌れば敵を壊滅にまで追い込めます。こうなれば、しばらく敵がこちらを攻めてくることはなくなるでしょう」

 

 三万もの艦隊が宇宙に沈めば、いくら連邦がもう一度戦いとなっても、立て直すのに時間がかかる。

 飛びつきたい。魅力ある提案ではあった。

 しかし。


 「そんな出来ぬ事を口に出すものではない。不用意すぎるぞ」


 ディヴァーナが横目で睨みつけた。


 「ディヴァーナ殿は、私にそれが出来ぬと考えで?」


 エデルは何食わぬ顔で聞き返した。


 「当然だ。数の違いは、そのまま結果に繋がる。どんな将であろうとも、覆す事は出来ぬ」


 無駄に艦も人も散らせて戦う事になる。

 ディヴァーナは、双方を大切にしている考えであった。


 「いいえ。勝てますので、ご安心を。ただし、私の艦隊を使っても良いと、許可が出た場合だけですがね」

 

 要は、有象無象の雑魚どもが鍛えた艦隊では勝てない。

 エデル直属の部下たちを使用しても良いとなった時だけ勝てると言っている。

 部下たちへの信頼の言葉でもあった。


 「くっ。引き下がらないのか。エデル上級大将」


 ディヴァーナは顔色を変えずに聞いたが、声には怒りが少しだけ混じっている。

 

 「ええ。下がりません。ただ、条件が飲めないなら下がります」

 

 一度出した意見を引っ込めない。エデルの意地が垣間見える。


 「エデ・・・」


 ディヴァーナが怒りかけた時。


 「待てディヴァーナ」


 宰相アルビオンが引き留めた。


 「さ、宰相?」

 「いいんだ。ディヴァーナ。こやつにやらせてみよう・・・エデルよ。もし勝てなかった場合。どうなるか分かっているか」

 

 そこまで豪語するからには、勝ち以外は許されない。

 そしてもし負けた場合。厳重な処罰をする。いくら皇帝からの信頼を得ていようが、罰する理由が出来る。

 宰相の言葉には、複雑な思いが込められている。


 ただ、その意味を理解したうえで。


 「ええ。もちろんです」


 エデルは自信満々の態度を貫いたまま答えた。

 自分に負けはない。

 絶対の自信が、エデルにはあるのだ。


 「わかった。許可しよう。エデル。貴様に、デルタアングルでの戦いの軍権を与える。艦隊を使っても良い」

 「ありがとうございます。皇帝陛下代理の宰相殿!」

 

 皇帝でもないのに、あなたが単独で決めても良いのか。

 とは言わないが、暗に言っている事である。


 「よし。では決まった。一番の憂いとなる。連邦軍との戦いは、エデルに任せる事とする。以上だ。解散で良い」


 こうして、帝国の重要な会議で、エデルの出陣が決まったのである。


 気高い魂を持つ男を止める者など、この銀河に現れるはずがない。

 この時のエデル、スタン、そしてその部下たちは、その自信があった。

 あの青き竜に出会うまではである。

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